日本語でわかる最新の海外医学論文|page:974

双極Ⅰ型障害患者の症状発症に関連する“キヌレン酸”

 双極Ⅰ型障害患者の、脳脊髄液におけるキヌレン酸と躁症状および精神病症状との関連が明らかにされた。スウェーデン・ヨーテボリ大学のOlsson SK氏らによる検討の結果。著者らは、すでに先行研究において、統合失調症と双極性障害の患者における脳内のキヌレン酸レベル上昇が報告されていることに触れたうえで、「因果関係を検証する必要はあるが、ドパミン伝播と行動に影響するキヌレン酸の働きは、躁病や精神病症状の発症における病態生理学的な役割を示している可能性がある」と報告している。Bipolar Disord誌オンライン版2012年10月3日号の掲載報告。

小児悪性腫瘍診断の遅れによる転帰への影響は?

 小児悪性腫瘍における診断の遅れは医療過誤訴訟の主な原因である。フランスのBrasme氏らによって、小児悪性腫瘍の診断までの時間の分類、決定要因、予後の情報を系統的にレビューし、カナダとフランスにおける医療過誤訴訟での国選の専門家の知見と比較した。その結果、診断の遅れと転帰の関係は複雑であり、おそらく保護者や医療の要因よりも腫瘍生物学的要因によることが示唆された。Lancet Oncol誌2012年10月号の報告。

てんかん発作には乳幼児早期からの積極的な症状コントロールが重要

 非コントロールのてんかん発作は認知機能を障害し、その影響は発症が乳児期の場合に最も大きく、発症年齢の上昇とともに減弱することが、米国・ノースウエスタン大学小児記念病院のBerg AT氏らによる前向きコホート研究の結果、明らかにされた。この知見を踏まえて、著者は「てんかん発作に対し、乳幼児期の早期からの積極的な治療と発作コントロールが必要であることを強調するものである」と述べている。Neurology誌2012年9月25日号(オンライン版2012年9月12日号)の掲載報告。

統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か?

 統合失調症の認知障害は、心理社会的パフォーマンスに少なからず影響を及ぼす。統合失調症患者における認知機能障害は、小胞体タンパク質であるσ-1受容体に関与しており、σ-1受容体アゴニスト作用を有するフルボキサミンが統合失調症の動物モデルや一部の統合失調症患者で認知機能障害の治療に有効であった例がいくつか報告されている。千葉大学の新津氏らは、統合失調症患者におけるフルボキサミン併用療法のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を行った。J Clin Psychopharmacol誌2012年10月号の報告。

ロタウイルスワクチンの定期接種、入院および死亡を低下

 マレーシア大学医療センターのLee WS氏らは、同国で隔離されたロタウイルスA (RV-A)遺伝子型について精査し、同国内のRV-Aワクチン定期接種の有効性を推定した。その結果、ロタウイルス胃腸炎関連の入院および死亡率の低下が推定でき、ワクチン定期接種は有効であるとまとめた。Hum Vaccin Immunother誌オンライン版2012年9月28日号の掲載報告。

ニジェールの子どもの死亡率、MDG4達成を上回る勢いで低下

 西アフリカのニジェールでは、1998~2009年の5歳未満の子どもの死亡の年間低下率が5.1%に達し、ミレニアム開発目標4(MDG4)の達成に必要とされる4.3%を上回ったことが、米国・ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院のAgbessi Amouzou氏らが行った調査で明らかとなった。MDG4は、2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減することを目標とする。近年、ニジェールでは、近隣の他の西アフリカ諸国に比べ子どもの死亡率の大幅な低減が達成され、生存のための介入が積極的に進められているが、その実情はよくわかっていなかった。Lancet誌2012年9月29日号(オンライン版2012年9月20日号)掲載の報告。

妊婦、子どもの死亡率が高い国へのODA拠出が減少傾向に

 近年、妊婦、新生児、子どもの健康に対する政府開発援助(ODA)の拠出額は増加を続けてきたが、2010年に初めて減少に転じ、増加率も2008年以降は低下している実態が、英国・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のJustine Hsu氏らの調査で示された。2010年のG8ムスコカ・サミットでは、ミレニアム開発目標の乳幼児死亡率の削減(MDG4)および妊産婦死亡率の削減(MDG5A)の達成に向け、2010~2015年までに参加国が共同で50億ドルを出資することが約束された。また、最も必要性の高い国へのODAの集中的な拠出が求められているが、実情は不明であった。Lancet誌2012年9月29日号(オンライン版2012年9月20日号)掲載の報告。

小児救急における急性下痢症状へのプロバイオティクス乳酸菌の効果

 アメリカのNixon氏らによって、小児救急における急性感染性下痢症状の罹患期間を減らすことを目的として、プロバイオティクス乳酸菌(ラクトバチルスGG;LGG)の有用性が検討された。その結果、LGGは2日以上下痢症状を呈する患児の罹患期間を短縮する可能性が示唆された。Pediatr Emerg Care誌2012年10月号の報告。

PCV13はPCV7よりも広範な防御を提供する可能性

 韓国・延世大学校医療院セブランス病院のKim DS氏らは、同国の小児ワクチン定期接種における小児肺炎球菌ワクチンについて、7価(PCV7)と13価(PCV13)の免疫原性と安全性に関して比較した。その結果、「PCV13の免疫原性と安全性が認められた。PCV13はPCV7よりも広範な防御を提供するだろう」と結論している。Pediatr Infect Dis J誌オンライン版2012年9月24日号の掲載報告。

双極性障害患者の自殺企図、テストステロンレベルと相関

 テストステロンの最もよく知られている神経行動学的影響は、性的機能と攻撃性である。そして、テストステロンや他のアンドロゲンは、気分障害や自殺行動の病態生理と関与している可能性が示唆されている。米国のSher氏らは、今回初めてテストステロンレベルと双極性障害による自殺の臨床パラメーターとの関係性を検証した。J Psychiatr Res誌2012年10月号の報告。

コントロール不良の喘息患者にチオトロピウム投与で、肺機能、症状増悪リスクが改善/NEJM

 吸入グルココルチコイドと長時間作用性β刺激薬(LABA)で治療を行いながらもコントロール不良の喘息患者に対し、チオトロピウム(商品名:スピリーバ)を投与することで、肺機能が改善し、症状増悪リスクが約2割減少することが、オランダ・Groningen大学医療センターのHuib A.M. Kerstjens氏らによる検討で示された。喘息患者900人超について行った無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年9月27日号(オンライン版2012年9月2日号)で発表した。

小児心臓手術後の血糖コントロール、厳格群vs.標準群のアウトカム

 小児心臓手術後の血糖コントロールについて厳格群と標準群とを比較した結果、厳格群のほうが低血糖の発生率は低くコントロール達成可能だった。しかし感染率、死亡率、心臓ICU入室期間、臓器不全については、有意な変化はみられないことが報告された。米国・ボストン小児病院のMichael S.D. Agus氏らが行った前向き無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年9月27日号(オンライン版2012年9月7日号)で発表した。これまでいくつかの成人を対象とした試験では、心臓手術後の厳格血糖コントロールがアウトカムを改善することが示されていたが、小児に関しては非常に重篤な高インスリン性の低血糖症のリスクがあり、ベネフィットは明らかではなかった。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(25)〕 糖尿病患者の降圧目標値:エビデンスの質を見極める

 糖尿病患者における降圧目標値に関しての議論が盛んになっている。わが国のガイドラインでは、糖尿病患者の降圧目標は130/80mmHgと厳格な降圧を推奨している。その根拠となったトライアルはUKPDS試験とHOT試験であるが、前者では厳格治療群とはいっても144/82mmHgであり、後者のHOT試験ではサブ解析で拡張期血圧が80mmHgまでの降圧達成群が85mmHg群や90mmHg群よりも心血管イベントが少なかったというものである。

アトピー患児の急性副鼻腔炎に対する鼻洗浄の有効性

 鼻洗浄は副鼻腔疾患で補助治療として用いられているが、小児においては調査が十分ではなかった。台湾のWang氏らはアトピー患児の急性副鼻腔炎治療に対する鼻洗浄の有用性を検討し、副鼻腔炎のアトピー患児への鼻洗浄は効果的な補助療法であると結論づけた。J Microbiol Immunol Infect誌2012年9月30日号の報告。

ロタウイルスワクチン接種、親の承認決定因子とは?

 カナダのロタウイルスワクチン接種率は、2008~2009年のサーベイ時点で20%未満であったという。カナダ・ケベック州国立公衆衛生研究所のDube E氏らは、ロタウイルスワクチン接種の親の承認に関する決定因子を調べた。主な決定因子は親の意向(intention)であり、個人的基準に基づく信用(personal normative beliefs)が影響を与えていることなどが明らかとなった。著者は「ヘルスプロモーションが、疾患やワクチンに関する親の知識や態度、信条に向けて行われるならば、ロタウイルスワクチン接種に対する受容性は高まるだろう」と提言した。Health Educ Res誌オンライン版2012年8月20日号の報告。

診察室を出よ

南相馬市立総合病院・神経内科  小鷹 昌明 2012年10月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 初めて経験した福島県浜通りの夏は、想像していたより暑かった。私の故郷の埼玉県嵐山町(熊谷市の近く)は、もっと暑かったであろうが、この南相馬の潮風は、身体にまとわりつくような湿り気を帯び、海辺の街のじっとり感というのも、独特な不快さがあった。結局、日本はどこに行っても蒸し暑いのではないかという気がした。

アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは?

 双極性障害は再発性の躁症状やうつ症状、混合エピソードなど複雑な症状を有する。双極性障害患者の急性期または長期治療においては、症状やエピソードの再発を抑制することが重要である。しかし、単剤での薬物治療のアウトカムは不十分である。そのため、単剤療法で効果が認められない患者や効果不十分な患者に対しては、気分安定薬と抗精神病薬を組み合わせて治療することも少なくない。併用による治療のメリットは大きいものの、副作用発現率上昇に対しては注意を払う必要がある。イタリアのAndrea de Bartolomeis氏らは双極性障害患者に対する急性期および長期の治療において、アリピプラゾールと気分安定薬の併用が有用であるかどうかに関する専門家の意見をまとめた。Expert Opin Pharmacother誌オンライン版2012年9月4日号の報告。

乳がん患者と医療スタッフとのコミュニケーションを円滑にするための冊子

 特定非営利法人キャンサーネットジャパン、日本イーライリリー株式会社、株式会社毎日放送、アメリカンホーム保険会社は4日、乳がんに関する基礎知識や、患者が病気を理解するために医師に質問すべきことなどをまとめた冊子『もっと知ってほしい乳がんのこと』を作成したことを発表した。冊子を活用してもらうことで、乳がん患者が納得のいく治療を受けられるようになることを目的としている。

「片頭痛の慢性化」と「うつ」の関係

 頭痛は精神的なストレスと密接に関係しており、うつ病と頭痛の関係についてさまざまな報告がなされている。アルバート・アインシュタイン医科大学(米国ニューヨーク州ブロンクス)のAshina氏らは、片頭痛の慢性化とうつ病との関係を検討した。J Headache Pain誌オンライン版2012年9月25日号の報告。