日本語でわかる最新の海外医学論文|page:953

CO、PM2.5による大気汚染で心不全増加/Lancet

 大気中の特定のガス状物質や粒子状物質と、心不全による入院や死亡リスクとの関連が、英国エジンバラ大学のAnoop S V Shah氏らの検討で明らかとなった。心不全の有病率は加齢とともに上昇し、罹患者は世界で2,300万人以上に上ることから、公衆衛生学上の課題として浮上している。一方、WHOの推算では、世界で毎年100万人以上の死亡に大気汚染が影響を及ぼしている。大気汚染への急性曝露と心筋梗塞との関連が知られているが、心不全に対する影響はこれまで不明であった。Lancet誌オンライン版2013年7月10日号掲載の報告。

脳卒中にも抗血小板併用療法は必要か?(コメンテーター:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(114)より-

 心筋梗塞急性期には、多くの症例が冠動脈インターベンションを受ける。内科的治療に終わった症例であっても、急性冠症候群後1年間はアスピリンとクロピドグレルの抗血小板併用療法を行なうことにより、心血管死亡/心筋梗塞/脳卒中のリスクを低減できることが、1990年代に施行されたランダム化比較試験により示された。脳梗塞と心筋梗塞、急性冠症候群には類似点が多い。いずれも動脈硬化を基盤とする動脈系の血栓性疾患である。

抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始

 「高齢うつ病患者に対し手紙を出すという介入で、抑うつ状態を改善できるのか」というプラグマティックな無作為化試験が、京都大学東南アジア研究所フィールド医学の今井必生氏、同教授・松林公蔵氏らにより開始された。「手紙による介入」は1976年に米国で、大うつ病退院患者の自殺予防を目的に初めて行われたが、地域在住の抑うつ状態の高齢者への適用は本試験が初めてだという。Trials誌オンライン版2013年7月9日号で、その試験概要が報告された。

SGLT2阻害薬追加、血糖管理不良な2型糖尿病に有用/Lancet

 ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬カナグリフロジン(canagliflozin)は、メトホルミン単独では血糖管理が十分でない2型糖尿病患者に対する追加治療として良好な血糖改善効果を発揮し、忍容性も良好なことが、米国・ペニントン生物医学研究所のWilliam T Cefalu氏らが行ったCANTATA-SU試験で示された。メトホルミンへの上乗せが可能な既存薬の多くは体重増加や低血糖の懸念があるが、SGLT2の阻害という作用機序はこれらの問題を回避し、また尿糖排泄の促進作用により総カロリーの消費が進むため体重が減少する可能性もあるという。一方、本薬剤には軽度の浸透圧利尿がみられるため、頻尿や多尿の懸念があるという。Lancet誌オンライン版2013年7月12日号掲載の報告。

急性VTEへのアピキサバン投与、従来レジメンと非劣性で出血リスクは低下/NEJM

 急性静脈血栓塞栓症(VTE)へのアピキサバン(商品名:エリキュース)投与は、従来レジメンによる治療法と比べ、症候性VTE再発やVTE関連の死亡について非劣性が認められ、出血リスクも半減することが示された。イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らによる、5,000例超を対象に行った無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2013年7月1日号で発表した。

統合失調症、双極性障害の家族特性を検証!

 米国・ロザリンドフランクリン医科学大学S. Kristian Hill氏らは、統合失調症と双極性障害の神経心理学的機能障害の特徴について調べた。その結果、両疾患ともに強い認知障害が認められ、それは家族性であること、一親等の認知機能障害は、統合失調症よりも双極性障害においてより緊密にパーソナリティ障害と関連していることなどを報告した。American Journal of Psychiatry誌オンライン版2013年6月17日号の掲載報告。

せん妄や認知症の高齢者、専門病棟への入院で患者の精神状態や家族満足度は改善/BMJ

 せん妄や認知症の高齢者は、精神的ケアの専門家と医療者が連携する専門病棟に入院することで、通常の老人病棟への入院に比べ、患者の精神状態や家族介護者の満足度が改善することが報告された。一方で、自宅への一時帰宅日数や死亡率などについては改善は認められなかった。英国・ノッティンガム大学のSarah E Goldberg氏らが行った、無作為化比較試験「NIHR TEAM」の結果で、BMJ誌2013年7月2日号で発表した。

ACSに対する早期侵襲的治療vs.保存的治療/BMJ

 急性冠症候群(ACS)患者に対し、早期侵襲的治療は保存的治療と比較して、わずかだが急性腎損傷(AKI)リスクを増加することが示された。透析および末期腎疾患(ESRD)進行リスクについては差はなかった。カナダ・カルガリー大学のMatthew T James氏らによる傾向マッチコホート研究の結果、報告された。先行研究において、侵襲的治療後のAKIがESRDや死亡を含む有害転帰と関連していることが示されており、そのため高リスクの腎臓病を有するACS患者に対しては、早期侵襲的治療が行われない一因となっていた。しかし、腎臓の有害転帰との関連について早期侵襲的治療と保存的治療とを比較した検討は行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年7月5日号掲載の報告より。

治りにくい大人の湿疹、生後3ヵ月で決まる?

 湿疹は乳児期において一般的にみられる症状だが、その成人期までの自然史についてのエビデンスはほとんど示されていない。英国・カーディフ大学のM.L. Burr氏らは、とくにアトピーとの関連に着目して、誕生から若年成人期までの湿疹の自然史を明らかにすることを目的としたコホート追跡研究を行った。

高温多湿の国における腰痛の疫学

 腰痛は、患者の受診理由のうち頻度の高い疾患の一つだが、カタール・ワイルコーネル医科大学のAbdulbari Bener氏らは、高温多湿の国カタールでのプライマリ・ケアにおける腰痛の疫学を調査した。その結果、有病率は男性よりも女性のほうが高く、高齢者および肥満者に多いことを報告した。Journal of Primary Care & Community Health誌2013年7月1日号(オンライン版2013年2月19日号)の掲載報告。

【ご案内】杉本真樹氏『医療者・研究者のための人を動かすプレゼンテーション』出版キックオフイベントのお知らせ

 最先端医療の研究開発を通じ、プレゼンテーションとコミュニケーションの新たなアプローチを提唱している神戸大学消化器内科の杉本真樹氏が、著書『医療者・研究者のための人を動かすプレゼンテーション』を出版するのを記念し、7月28日、東京都内にて出版キックオフイベント~プレゼンテーション思考でメディカルとメディアの交差点へ~が開催されます。

医療の一環としてプラセボ治療を行うことに患者は好意的/BMJ

 医療の一環としてプラセボ治療を行うことに対して、多くの患者は好意的な考えを持っていることが、米国・国立衛生研究所(NIH)のSara Chandros Hull氏らによる電話サーベイの結果、報告された。米国では近年、臨床においてプラセボ治療が行われていることが調査によって明らかにされたという(たとえば内科とリウマチ医の調査で半数がプラセボを処方していることが判明したなど)。こうした動向に対しHull氏らは、他国で行われたプラセボ治療についての調査で、患者自身は特定の状況下であればプラセボ治療に寛容であることが示されたという報告を受けて、米国患者のプラセボ治療の使用に対する考え方を調査した。BMJ誌オンライン版2013年7月2日号掲載の報告より。

在宅歩行運動療法、PAD患者の身体機能を改善/JAMA

 集団認知行動療法による患者の動機づけに基づく在宅歩行運動療法が、末梢動脈疾患(PAD)患者の身体機能の改善に有用なことが、米国・ノースウェスタン大学フェインバーグ医学校のMary M McDermott氏らが実施したGOALS試験で示された。下肢PAD患者の身体機能障害の治療法はほとんどなく、監視下トレッドミル運動療法はその有効性が確認されているものの、通常は医療保険の対象外であったり、施設へ通う必要があるなどの問題がある。在宅歩行運動療法も有望視されているが、最近の無作為化試験の結果は一貫性がなく、現行のACC/AHA(米国心臓病学会/米国心臓協会)やTASC(Trans-Atlantic. Inter-Society Consensus)の診療ガイドラインはこれを推奨するエビデンスは十分でないとしている。JAMA誌2013年7月3日号掲載の報告。

急性期脳内出血に対する迅速降圧治療(<140mmHg)は、死亡や重度身体障害を減らすことはないが、機能的転帰の改善をもたらす(コメンテーター:中川原 譲二 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(112)より-

 INTERACT2(Intensive Blood Pressure Reduction in Acute Cerebral Hemorrhage Trial 2)は、脳内出血患者に対する迅速な積極的降圧治療の有効性と安全性を評価することを目的に、多施設共同前向き無作為化非盲検試験として行われた。被験者は、発症6時間以内の脳内出血患者2,839例(平均年齢63.5歳、男性62.9%)で、積極的降圧群(1時間以内の収縮期血圧目標値<140mmHg、1,403例)またはガイドライン推奨群(1時間以内の収縮期血圧目標値<180mmHg、1,436例)に割り付けられた。主要転帰は90日後の死亡と重度身体障害[modified Rankin scale (mRS)で定義されるスコア3~6(死亡)]とされた。

高齢者のせん妄に対する抗精神病薬のリスクは?

 順天堂大学医学部附属病院練馬病院・先任准教授の八田 耕太郎氏らは、一般病院入院中にせん妄を発症した高齢者を対象に1年間の前向き観察研究を実施し、抗精神病薬による有害事象の発現状況を検討した。その結果、重篤な有害事象の発現頻度は0.2%であり、死亡例もなく、リスクは低いことを報告した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2013年6月25日号の掲載報告。

妻と死別や離婚した男性、未婚の男性は自殺リスクが高い~国内前向きコホート研究

 婚姻状況(未婚、既婚、死別または離婚)は自殺の予測因子の一つである。東北大学の福地 成氏らは、国内の大規模な集団によるコホートを用いて(宮城県コホート研究)、自殺リスクに対する婚姻状況の影響を男女別に検討した。その結果、妻と死別または離婚した男性や未婚の男性は既婚男性より自殺のリスクが高い一方、女性ではそのような傾向はないことが示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2013年7月4日号に報告。