日本語でわかる最新の海外医学論文|page:894

遺伝子型を用いた個別化医療は可能か不可能か?―ワルファリンの場合―(コメンテーター:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(159)より-

 ワルファリンの薬効には個人差がある。個人差を規定する因子は遺伝子型と生活習慣の差異であろう。遺伝子型が血液型と同じように医療基盤として確立された場合に、ワルファリン治療の質は向上できるだろうか?同じ臨床的疑問にチャレンジした2本の論文がNEJM誌に掲載された。2つの論文は全く別の結論を導きだしている。

アトピー性皮膚炎、FLG変異があるとアレルギー感作リスクが高い

 ハンガリー・デブレツェン大学のG. Mocsai氏らは、皮膚バリア機能と皮膚の炎症の重症度が関連していることを報告した。炎症が重症でフィラグリン(FLG)遺伝子変異と野生型アトピー性皮膚炎(AD)を有する患者では関連が弱まる可能性があり、FLG変異を有する患者のほうが、野生型AD患者よりもアレルギー感作のリスクが高い可能性があることが示唆されたという。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年11月20日号の掲載報告。

これからのうつ病治療はWebベース介入で変わるのか

 大うつ病性障害(MDD)は一般的、かつ重篤な障害である。MDDに対し効果的な治療が存在するものの、医療システムのキャパシティー不足などにより、多くの患者が未治療の状態にある。待機期間中は、慢性化のリスクとともに、苦しみや障害が長引く。うつ病において、Webベース介入の有効性に関するエビデンスが多くの研究で示されており、問題の軽減に役立つ可能性がある。BMC Psychiatry誌2013年11月26日号の掲載報告。

腎動脈ステントは薬物療法を超えるか?/NEJM

 アテローム硬化性腎動脈狭窄で、高血圧あるいは慢性腎臓病を有する患者への腎動脈ステントは、薬物療法単独と比べて臨床イベントの予防に関して有意なベネフィットをもたらさないことが明らかになった。米国・トレド大学のChristopher J. Cooper氏らによる多施設共同オープンラベル無作為化対照試験「CORAL」の結果、報告された。高齢者に一般的にみられるアテローム硬化性腎動脈狭窄について、先行研究2件において、腎動脈ステントは腎機能改善にベネフィットがないことが示されていた。しかし、重大有害腎・心血管イベント予防に関しては不明であったことから本検討が行われた。NEJM誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。

遺伝子型に基づきワルファリンの初期投与量を決める試み/NEJM

 遺伝子型に基づきワルファリンの初期投与量を決めることで、投与開始12週間に治療域の国際標準比(INR)2.0~3.0であった時間の割合が改善したことが示された。過剰抗凝固(INR 4.0以上)の発生率も、有意に低下したという。英国・リバプール大学のMunir Pirmohamed氏らが、心房細動または静脈血栓塞栓症の患者を対象とした前向き無作為化比較試験の結果、報告した。NEJM誌オンライン版2013年11月19日号掲載の報告より。

精神病性うつ病に、抗うつ薬+抗精神病薬は有効か

 精神病性うつ病に対しては、抗うつ薬と抗精神病薬の併用、抗うつ薬単独療法または抗精神病薬単独療法などが考慮されるが、最適な薬物治療のエビデンスは限られていた。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJaap Wijkstra氏らは、精神病性うつ病に対する薬物療法のエビデンスをレビューした。その結果、抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法が、抗うつ薬単独療法または抗精神病薬単独療法に比べ、うつ症状の軽減に有効であることを報告した。今回の知見についても、著者は「精神病性うつ病に関する検討は多いが、結論の信頼性は十分なものではなかった。抗うつ薬と抗精神病薬の併用がそれぞれの単独またはプラセボに比べて有効であることを示すエビデンスがいくつかあるが、抗うつ薬または抗精神病薬単独療法のエビデンスは限られている」と報告している。Cochrane Database of Systematic Reviews2013年11月26日号の掲載報告。

ロタウイルスワクチン、乳児けいれん発作に予防効果

 ロタウイルスワクチンを完全接種(RV5を3回またはRV1を2回)した乳児は、非接種児と比較して、けいれん発作リスクが統計的に有意に低下(初発けいれん発作リスクの18%低下、1年間の全けいれん発作リスクの21%低下)したことが明らかになった。米国国立予防接種・呼吸器疾患センター(NCIRD)のDaniel C. Payne氏らが、2006~2009年のVaccine Safety Datalink(VSD)登録の乳児25万人のデータを後ろ向きに分析し報告した。著者は、「今回示された乳児けいれん発作の減少は、ロタウイルスワクチン関連ベネフィットである、下痢による入院の予防効果を補完するものである」とまとめている。Clinical Infectious Disease誌オンライン版2013年11月20日号の掲載報告。

ナッツを毎日食べる人ほど健康長寿/NEJM

 ナッツ摂取頻度が多い人ほど、総死亡やがんなど特異的死亡リスクが低くなるという、逆相関の関連性が認められることが、大規模コホート試験で明らかになった。米国・ハーバードメディカルスクールのYing Bao氏らが、米国の看護師健康調査(1980~2010年)と医療従事者追跡調査(1986~2010年)の参加者約12万人について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2013年11月21日号で発表した。先行研究で、ナッツ摂取量が多い人ほど、心血管疾患や2型糖尿病など主要な慢性疾患リスクが低くなることは知られていたが、死亡リスクとの関連は不明だった。

虚血性心筋症における幹細胞注入療法の安全性/JAMA

 慢性虚血性心筋症患者における自己間葉系幹細胞(MSC)と自己骨髄単核細胞(BMC)による経心内膜幹細胞注入療法は、安全と思われることが報告された。米国・マイアミ大学のAlan W. Heldman氏らが、65例の患者について行った第1相および第2相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。同患者への自己細胞培養による幹細胞注入療法の有効性と安全性については議論の的となっている。著者は、「今回の結果は、サンプルサイズと多重比較の点で限定的だが、より大規模な試験で、安全性の明確なエビデンスを得ること、また治療アプローチの有効性の評価を行うことを支持するものであった」と述べている。JAMA誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。

論文公表率はそんなに低くなかったが、やはり100%を目指してもらいたい。(コメンテーター:折笠 秀樹 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(158)より-

 ClinicalTrials.govへ登録済みである585件の臨床試験の中で、29%が論文として公表されていなかった。また、試験完了から出版までの期間はおよそ30ヵ月であった。500症例以上の大規模試験に限った調査ではあるが、思ったほど悪くないというのが率直な感想である。

双極性障害の認知障害にインターロイキン-1が関与

 双極性障害(BD)の特徴である認知障害は炎症性サイトカインによって悪化する可能性が示唆されていた。このたび、米国・ピッツバーグ大学のFrancis E. Lotrich氏らの検討により、認知障害の悪化にインターロイキン(IL)-1系が関与している可能性を支持する所見が示された。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2013年11月25日号の掲載報告。

複合性局所疼痛症候群に対するTNF-α阻害薬の効果

 複合性局所疼痛症候群(CRPS)には、TNF-αなどの炎症性サイトカインが関与していると考えられることから、TNF-α阻害薬の治療効果が期待されている。オランダ・エラスムス大学医療センターのMaaike Dirckx氏らは、インフリキシマブ(商品名:レミケード)による無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った。

院外心停止に対する機械的心肺蘇生、予後は手動と同等/JAMA

 院外心停止患者に対する、除細動併用の機械的心肺蘇生(CPR)と手動CPRとを比較した結果、4時間生存率に有意差は認められなかったことが判明した。スウェーデン・ウプサラ大学のSten Rubertsson氏らが、英・オランダを含めた3ヵ国6施設で登録された2,589例の院外心停止患者を対象に行った多施設共同無作為化試験「LINC」の結果、報告した。院外心停止に対する機械的CPRは、予後を改善する可能性が示唆されていたが、これまで大規模試験は行われていなかった。なお、6ヵ月時点までの神経学的アウトカムについても報告されているが、両群間に有意差はなく生存患者の94~99%のアウトカムが良好であったという。JAMA誌オンライン版2013年11月17日号掲載の報告より。

ワルファリン投与量を遺伝子ガイドにより調整してみた/NEJM

 抗凝固療法コントロールについて、薬理遺伝学的ベースの遺伝子ガイドによりワルファリン投与量を調整して行っても、治療開始4週間の改善はみられなかったことが大規模無作為化試験の結果、示された。米国・ペンシルベニア大学のStephen E. Kimmel氏らが報告した。遺伝子ガイド(薬理遺伝学的をベースとした)によるワルファリン投与法は、これまで小規模臨床試験および観察試験で検討されたのみで、臨床における有用性は曖昧であった。NEJM誌オンライン版2013年11月19日号掲載の報告より。

糖尿病患者の腎保護作用を期待できる降圧薬は?(コメンテーター:浦 信行 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(157)より-

 まず、在来の臨床研究では尿蛋白低減効果をエンドポイントとしたものが多いが、このメタ解析のエンドポイントをハードエンドポイントである血清クレアチニン濃度の倍化、末期腎不全、死亡としたことに意義がある。われわれの最終目標は腎障害進展抑制、生命予後改善だからである。