日本語でわかる最新の海外医学論文|page:813

医療事故調査制度の注意点とその対策

 2015年10月より「医療事故調査・支援センター」にて、医療事故調査が行われることが決定した。この制度の目的は、「医療安全の確保」であるが、その事故調査報告書が、民事・刑事訴訟で使用されるとも限られず、運用が懸念されている。今回のシンポジウムでは、医療事故調査制度の実務上の注意点と対策を話し合うために開催される。

重症大動脈弁狭窄へのTAVR、5年転帰良好/Lancet

 手術非適応の重症大動脈弁狭窄(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)vs. 標準治療を検討した無作為化試験PARTNER1の5年アウトカムが、米国・クリーブランドクリニックのSamir R Kapadia氏らにより報告された。TAVRの有益性が示され、著者は、非手術適応患者の生存および機能を改善するためにTAVR施術の検討を強化すべきであると提言している。また、患者の適切な選択により、TAVRの有益性を最大限に引き出すことになり、重篤な併存疾患による死亡を抑制することにもつながるだろうと述べている。すでにPARTNER試験の早期評価の結果で、TAVRが重症AS患者で手術非適応の患者について忍容性のある治療であることは報告されているが、より長期の臨床アウトカムに関する情報は限定的であった。Lancet誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。

乳房生検、病理医による診断の精度は?/JAMA

 乳房生検について、病理医による診断vs. 参照診断の一致率は75.3%であったことが、米国・ワシントン大学のJoann G. Elmore氏らにより報告された。検討は、病理医115人が行った240症例のスライド標本の診断6,900件について、3人のエキスパート病理医から成るコンセンサスパネルが下した診断との一致を調べて行われた。一致率は、浸潤がんで高く、非浸潤性乳管がん(DCIS)や異型過形成では低いことも判明した。結果を踏まえて著者は、「さらなる検討を行い、これら一致率と患者マネジメントとの関連について理解する必要がある」と述べている。乳房の病理診断の結果は、治療やマネジメント決定の根拠となるが、その精度については十分に解明されていなかった。JAMA誌2015年3月17日号掲載の報告より。

家族性高コレステロール患者は糖尿病になりにくい…?!(解説:吉岡 成人 氏)-341

 スタチン薬の投与により、糖尿病の新規発症が約1.1倍(オッズ比[OR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.02~1.17)増加する。アトルバスタチンやシンバスタチンなどの疎水性のスタチン薬は、親水性のプラバスタチンと異なり、インスリンの作用を低下させることが報告されている。

天馬PEGASUSは空を駆けるか?心筋梗塞後長期の抗血小板療法の意味と価値:PEGASUS-TIMI 54試験(解説:後藤 信哉 氏)-340

 1980年代に循環器内科に進んだわれわれ世代の循環器内科医にとって、「心筋梗塞は死に至る病」であった。実際、再灌流療法も、抗血栓療法も標準化していない当時の心筋梗塞は院内死亡率も10%を超えていた。日本以上に冠動脈疾患の有病率の高い欧米では、「心筋梗塞」が日本の「がん」並みに恐ろしい病気と理解されたことは容易に想像できる。1970~80年代には心筋梗塞の原因が「冠動脈血栓」であるとの知識も普及していなかった。筆者ら、血栓症の専門家がAHA、ACCなどの欧米のmajorな学会では1990年代になってもマイノリティーであった。

親の年齢とADHDリスク

 親の年齢と精神障害との関連性を示す研究が増加しているが、注意欠如/多動症(ADHD)との関連については矛盾した結果が出ている。今回、フィンランド・トゥルク大学Roshan Chudal氏らは、出生時の親の年齢がADHDと関連しているかどうかをコホート内症例対照研究で検討した。その結果、ADHDは出生時の父親または母親の年齢が若いことと関連していた。著者らは「医療者は若い親と協力し、子供のADHDのリスク増加に注意すべき」としている。Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry誌オンライン版2015年3月26日号に掲載。

ピタバスタチンの糖尿病への影響は?:メタ解析結果発表

 興和株式会社は4月8日、3月22日~25日にイギリス・グラスゴーで開催された「第83回 欧州動脈硬化学会」のポスターセッションにおいて、高コレステロール血症治療剤「ピタバスタチン」(商品名:リバロ錠/リバロOD錠)の糖代謝に対するメタ解析の結果が発表されたことを報告した。

PCI前の血栓除去は有効か?RCTの結果/NEJM

 プライマリPCIを受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者への、ルーチンの用手的血栓除去の実施は、180日間の心血管死や心筋梗塞の再発などの複合アウトカムを改善しなかったことが示された。一方で、30日以内の脳卒中発生率は、用手的血栓除去により約2倍増大した。カナダ・ハミルトン総合病院のS.S. Jolly氏らが、1万732例について行った無作為化試験の結果、報告した。プライマリPCI時の用手的血栓除去は遠位塞栓を抑制し、微小血管の循環を改善するとされる。先行研究の小規模試験では、血栓除去による臨床転帰の改善が示唆されたが、大規模試験では相反する結果が報告されていた。NEJM誌2015年4月9日号(オンライン版2015年3月16日号)掲載の報告より。

狭心症疑い、CT冠動脈造影で診断確度アップ/Lancet

 冠動脈性心疾患(CHD)で狭心症が疑われた患者に対し、コンピュータ断層撮影を用いた冠動脈造影(CTCA)を実施することで、診断確度が増大することが示された。CTCAにより介入ターゲットが明確になり、有意差は示されなかったが将来的な心筋梗塞リスクを低下可能であることが示されたという。英国・ボーダーズ総合病院のDavid Newby氏らSCOT-HEART研究グループが、4,146例を対象に行った無作為化試験の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。

成人に対する13価肺炎球菌結合型ワクチンの有効性を示したCAPiTA trial(解説:小金丸 博 氏)-339

 肺炎球菌結合型ワクチンは、小児における肺炎球菌性肺炎、侵襲性肺炎球菌感染症、中耳炎、およびHIV感染症患者における肺炎球菌感染症を予防できることが示されてきた。成人においては、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)は23価肺炎球菌多糖ワクチン(PPSV23)と比較し、免疫原性が優れていることは示されていたが、実際に成人の肺炎球菌感染症を予防できるかどうかはわかっていなかった。

歴史的なジギタリスと心房細動:ROCKET-AF試験(解説:後藤 信哉 氏)-338

 筆者の世代の循環器医にとって、ジギタリスはなじみの深い薬物である。学生のころ、ジギタリスは南米の矢毒から分離されたと教わったが、本当であるか否かを確認していない。筆者の世代にとって、心不全治療の唯一の選択ともいえる時代があった。ジギタリスは房室伝導を阻害するので、頻拍性不整脈に対しても広く使用されていた。また心房細動症例に対しても、脈拍コントロールのための主要薬剤であった。

小児への抗精神病薬使用で推奨される血糖検査、その実施率は

 米国糖尿病協会(ADA)は2004年に、小児および青少年について、第2世代抗精神病薬の治療開始前後に代謝スクリーニングを実施することを推奨する治療ガイドラインを発表した。これに関連し、ブリガム&ウィメンズ病院のJohn G. Connolly氏らは、ガイドライン発表時期とその後8年間のスクリーニング実施率の変化を調べ、ガイドライン発表後はわずかに実施率が上昇したが、その後は低下していたことを明らかにした。先行研究で、ガイドライン公表時期に小児および成人の血糖検査がわずかだが増大していることが報告されていたが、その後についての報告は限定的であった。Psychiatr Services誌オンライン版2015年3月1日号の掲載報告。

経カテーテル大動脈弁置換術の5年転帰/Lancet

 高リスク大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、標準治療である外科的大動脈弁置換術(SAVR)とほぼ同等の臨床転帰をもたらすことが、米国・Baylor Scott & White HealthのMichael J Mack氏らが実施したPARTNER 1試験で示された。本試験では、TAVRの1年死亡率は、非手術例では標準的非手術療法よりも優れ、手術を行った高リスク例ではSAVRに対し非劣性であり、これらの知見は2年、3年時も維持されていた。研究グループは今回、高リスク例における5年時の臨床転帰の解析を行い、Lancet誌オンライン版2015年3月15日号で発表した。

「エドキサバンは日本の薬なのに…」2~エドキサバン減量と出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)-337

 EBM(Evidence Based Medicine)を基本原理とする現在の医療において、臨床データベースの保有には圧倒的な意味がある。エドキサバンは日本企業が開発した薬剤である。日本企業には抗トロンビン薬があるがトロンビンの時代から、選択的凝固因子阻害薬の開発力は外資企業に先行していた。残念ながら、分子としての抗Xa薬を介入したときの個人の反応は予測不可能な程度にしか、現在の医学は成熟していない。結果として、エドキサバン介入時の臨床データベースを持っているものが強い。

「エドキサバンは日本の薬なのに…」1~遺伝子型と抗血栓療法下の出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)-336~

 エドキサバンは、日本企業が開発した薬剤である。日本が国際共同試験をリードして、日本国内に臨床データベースがあれば、日本の研究者は数多くの興味深い臨床的研究を発表できたはずである。今回Mega博士らが発表した遺伝子型とワルファリンの薬効については、高橋 晴美博士をはじめ、日本人研究者による先行研究がある。ENGAGE AF-TIMI 48試験は科学的にきわめて質の高い研究であり、かつ登録された症例の数が多いので、Mega博士らの本研究は今後も世界にインパクトを持つ。

認知症への抗精神病薬使用は心臓突然死リスクに影響するか

 死亡診断書や処方箋データを用いた研究によると、認知症患者に対するハロペリドールによる治療は、心臓突然死のリスク増大と関連していることが示唆されている。ルーマニア・トランシルバニア大学のPetru Ifteni氏らは、ハロペリドールで治療した認知症患者の突然死例において心臓突然死率が高いかどうかを、剖検所見を用い調査した。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2015年3月19日号の報告。

急性冠症候群、経橈骨動脈アクセスの安全性/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者に対する侵襲的処置では、経橈骨動脈アクセスが、経大腿動脈アクセスに比べ臨床的有害事象の抑制効果が優れることが、オランダ・エラスムス医療センターのMarco Valgimigli氏らが行ったMATRIX Access試験で確認された。ACS患者に対する抗血栓療法を併用した早期の侵襲的処置の重要な目標は、出血イベントを抑制しつつ効果を維持することである。侵襲的処置で頻度の高い出血部位は心臓カテーテル検査時の大腿動脈穿刺部であり、経橈骨動脈アクセスは技術的な困難を伴うが止血の予測がしやすいとされる。2つのアクセス法の有害事象を比較した試験では、相反する結果が提示されているという。Lancet誌オンライン版2015年3月13日号掲載の報告。