日本語でわかる最新の海外医学論文|page:814

2型糖尿病発症予防とPrecision Medicine(解説:住谷 哲 氏)-334

 日本ではあまり報道されなかったが、本年1月米国のオバマ大統領は一般教書演説においてPrecision Medicineの推進を宣言した。Precision Medicineとは、簡単に言えば、個々の患者の遺伝情報、環境因子などの情報に基づいた最適な医療、鍵と鍵穴とがぴったりと符合するような医療である。それに近いものは、わが国で個別化医療、オーダーメイド医療、テーラーメイド医療などとさまざまに呼称されているものが含まれる。本論文においては「有益性に基づいたテーラーメイド治療(benefit based tailored treatment)」と名付けられているが、その意義は2型糖尿病発症予防とPrecision Medicineの文脈において理解する必要がある。

統合失調症の自殺にプロラクチンは関連するのか

 ホルモンの調節不全は、さまざまな精神障害における自殺の危険因子と関連している。甲状腺ホルモンやプロラクチンは、統合失調症の病態生理に影響を及ぼしている。インド・ジャワハルラール医学教育研究大学院研究所のJancy Jose氏らは、統合失調症患者における甲状腺ホルモンとプロラクチンレベルを分析し、疾患の重症度や自殺リスクとの関連を調査した。Clinica chimica acta; international journal of clinical chemistry誌オンライン版2015年2月10日号の報告。

PCV13、高齢者市中肺炎にも有効/NEJM

 高齢者への13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)接種について、ワクチン型の肺炎球菌性、菌血症性、および非血症性の市中肺炎と、ワクチン型の侵襲性肺炎球菌感染症の予防に有効であることが明らかにされた。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのM.J.M. Bonten氏らが、8万4,496例の65歳以上高齢者を対象に行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。PCVワクチンは、新生児において肺炎球菌感染症の予防が認められているが、65歳以上高齢者の肺炎球菌性市中肺炎の有効性は明らかにされていなかった。試験の結果では、あらゆる原因による市中肺炎へのワクチンの有効性は示されなかったが、著者は「ワクチン型の市中肺炎が46%減少しており、高齢者の市中肺炎の減少に寄与すると思われる」とまとめている。NEJM誌2015年3月19日号掲載の報告より。

BMS後のDAPT延長、虚血性イベントを抑制せず/JAMA

 米国・クリスト病院心血管センターのDean J. Kereiakes氏らはDAPT無作為化試験(Dual Antiplatelet Therapy Randomized Clinical Trial)の結果、ベアメタルステント(BMS)留置後12ヵ月間のアスピリン+チエノピリジン系薬の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の忍容性を認めた患者について、さらに同療法を18ヵ月間延長しても、ステント塞栓症、主要有害心・脳血管イベント(MACCE)、中等度~重度の出血の発生に関して、プラセボと比較して統計的に有意な差はみられなかったことを報告した。ただし今回の結果について著者は、BMSサブセットの検出力の不足を指摘し、さらなる検討が必要だとまとめている。JAMA誌2015年3月17日号掲載の報告より。

ワルファリン出血の急速止血に新たな選択肢?(解説:後藤 信哉 氏)-333

 臨床家は50年にわたり、ワルファリンを使用してきた。新規の経口抗トロンビン薬、抗Xa薬が開発され、使用可能になったとはいっても、真の意味での血栓イベントリスクが高くない非弁膜症性心房細動など、薬剤の必要性が必ずしも高くない症例なので、これらの症例で出血が怖ければ薬剤を使用しないとの選択があった。ワルファリンを使用している症例は、人工弁、血栓性素因など抗凝固薬の必要性が著しく高い症例である。これらの症例でも、ワルファリンコントロールの良否にかかわらず、重篤な出血イベントが起こる場合がある。消化管出血などであれば、開腹、長時間の圧迫止血など、薬剤以外の手段がまったくないわけではない。頭蓋内出血となると、とても困る。時間と共に症状が増悪している頭蓋内出血では、頭蓋内圧増加が止血に寄与しても、ワルファリンの効果が持続している状態では止血は期待し難い。

新薬の投与量はどのように設定されているのか

 フランス・聖マルグリット病院のN. Simon氏らは、新規薬剤の投与量設定におけるファーマコメトリクス分析の応用について概説した。その主旨は、臨床の場で直面しうる、すべての状況での薬剤反応を把握することが重要であり、その手段としてファーマコメトリクス分析が利用可能ということである。具体的には、過剰曝露を避けつつ最大限の効果を達成する投与量の決定に、薬物動態(PK)モデリング、薬力学(PD)モデリング、そしてPK-PDモデルリングというステップを踏み、最終的にモンテカルロ・シミュレーションを実施して最適な投与量が決定されるという。Encephale誌オンライン版2015年3月9日号の掲載報告。

冠動脈疾患の検出、CT血管造影 vs.機能的検査/NEJM

 冠動脈疾患(CAD)が疑われる症状を有する患者への非侵襲的検査について、CT血管造影(CTA)と機能的検査(運動負荷心電図、運動/薬剤負荷心筋シンチ、負荷心エコー)を比較した結果、追跡期間中央値2年間の患者の臨床的アウトカムに違いはみられないことが示された。米国・デューク大学のPamela S. Douglas氏らが無作為化試験の結果、報告した。CADの示唆的な症状は多くの患者でみられ、診断検査が行われる頻度は高いが、治療ガイドのための無作為化試験のデータは限定的であった。NEJM誌オンライン版2015年3月14日号掲載の報告より。

アスピリン・NSAIDsと大腸がんリスクの関連メカニズム/JAMA

 遺伝子と環境の相互作用を考慮したゲノムワイド研究で、アスピリンと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の単独または両薬の常用と、大腸がんリスク低下との関連が遺伝子レベルで明らかにされた。米国・インディアナ大学のHongmei Nan氏らが報告した。検討により、染色体12と15の一塩基多型(SNP)で、常用とリスクとの関連は異なることが示され、遺伝子型によっては常用でリスクが高まる人がいることが明らかにされた。所見を受けて著者は「被験者を追加した検討で今回の所見が確認されれば、ターゲットを絞った大腸がんの予防戦略を促進するだろう」と述べている。JAMA誌2015年3月17日号掲載の報告より。

降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巌 氏)-331

 これまで降圧速度に関しては、急激な降圧が臓器虚血を誘発する可能性があるとの考え方から、概念的に「The slower the better(ゆっくりなほど、よし)」というコンセプトを持つ専門家が多かった。しかし、この考え方を支持する科学的根拠はほとんどなかったのである。

抗うつ薬の副作用発現を予測するために

 抗うつ薬の代謝において、シトクロムP450酵素は重要な役割を担っている。これら酵素の高度に多様な性質は、抗うつ薬の代謝率の変動と関連しており、P450の遺伝子型判定を利用した推奨治療の決定につながる可能性がある。しかし、P450遺伝子の違いが治療効果に影響を及ぼすかどうかは明らかになっていない。英国のキングス・カレッジ・ロンドンのKaren Hodgson氏らは、P450遺伝子型および抗うつ薬の血清濃度と副作用との関連を検討した。Psychopharmacology誌オンライン版2015年3月12日号の報告。

脳梗塞の発症しやすい曜日

 脳卒中発症の時間的なパターンを知り、可能性のあるトリガーを探索することは、脳卒中発症率を減少させるために重要である。脳卒中が特定の曜日に頻繁に発症する場合、何らかの「トリガー因子」が脳卒中を誘発するものと考えられる。京都府医師会脳卒中登録事業委員会では、11年間にわたる病院ベースの脳卒中登録より、曜日による脳卒中発症率の違いを調査した。その結果、脳梗塞においては、年齢・性別にかかわらず日曜日より月曜日のほうが発症率が高かった。著者らは、脳梗塞では発症の「トリガー因子」が存在するという仮説を提案している。BMJ Open誌2015年3月24日号に掲載。

エナラプリル+葉酸、脳卒中を有意に低下/JAMA

 降圧薬エナラプリル(商品名:レニベースほか)単独よりも、葉酸を併用したほうが、高血圧患者の脳卒中初発が有意に低下したことが報告された。中国・北京大学第一病院のYong Huo氏らが、同国高血圧患者で脳卒中または心筋梗塞の既往歴がない2万702例を対象に行った無作為化二重盲検試験CSPPTの結果、報告した。これまで、脳卒中1次予防に関する葉酸の効果については、データが限定的および一貫性がないため不明であった。JAMA誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。

ステント留置後DAPTの至適期間は?/Lancet

 薬剤溶出ステント留置後1年超の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、心筋梗塞およびステント塞栓症のリスクは低いが、死亡リスクは増大することが明らかにされた。同群の死亡増大は、心臓死の減少分よりも非心血管死の増大分が大きかったためであった。イタリア・ボローニャ大学のTullio Palmerini氏らがネットワークメタ解析の結果、報告した。直近の試験報告でも、ステント留置後DAPTの至適期間は不明なままであった。Lancet誌オンライン版2015年3月13日号掲載の報告より。

PMS RegistryにおけるTAVRの1年成績(解説:許 俊鋭 氏)-330

 RCTの結果とreal-worldの結果では、新規デバイス治療において患者対象も治療成績も異なる可能性がある。米国でのTAVRの30日生存と1年生存成績を最新のものに更新する目的で、STS/ACC Transcatheter Valve Therapies RegistryとCMS診療報酬請求データをリンクさせ、2011年9月~2013年6月までの米国299病院、1万2,182症例を1年間経過観察した。

ペルフェナジン、他の抗精神病薬との違いは

 ペルフェナジンはハロペリドール同様、古典的なフェノチアジン系抗精神病薬で、長年にわたり使用されており、北部ヨーロッパおよび日本での使用頻度が高い。ドイツ・デュッセルドルフ大学のBenno Hartung氏らは、統合失調症患者に昔から使用されているペルフェナジンの有効性と安全性を明らかにするため、これまでの研究をレビューした。その結果、検討した試験はすべて非常に質の低いエビデンスであったが、ペルフェナジンが他の抗精神病薬と同様の有効性と安全性を示すことを報告した。そのうえで、安価で使用頻度の高いペルフェナジンの特性を明確にする、さらなる研究の必要性を指摘した。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年3月6日号の掲載報告。