日本語でわかる最新の海外医学論文|page:802

新薬の投与量はどのように設定されているのか

 フランス・聖マルグリット病院のN. Simon氏らは、新規薬剤の投与量設定におけるファーマコメトリクス分析の応用について概説した。その主旨は、臨床の場で直面しうる、すべての状況での薬剤反応を把握することが重要であり、その手段としてファーマコメトリクス分析が利用可能ということである。具体的には、過剰曝露を避けつつ最大限の効果を達成する投与量の決定に、薬物動態(PK)モデリング、薬力学(PD)モデリング、そしてPK-PDモデルリングというステップを踏み、最終的にモンテカルロ・シミュレーションを実施して最適な投与量が決定されるという。Encephale誌オンライン版2015年3月9日号の掲載報告。

冠動脈疾患の検出、CT血管造影 vs.機能的検査/NEJM

 冠動脈疾患(CAD)が疑われる症状を有する患者への非侵襲的検査について、CT血管造影(CTA)と機能的検査(運動負荷心電図、運動/薬剤負荷心筋シンチ、負荷心エコー)を比較した結果、追跡期間中央値2年間の患者の臨床的アウトカムに違いはみられないことが示された。米国・デューク大学のPamela S. Douglas氏らが無作為化試験の結果、報告した。CADの示唆的な症状は多くの患者でみられ、診断検査が行われる頻度は高いが、治療ガイドのための無作為化試験のデータは限定的であった。NEJM誌オンライン版2015年3月14日号掲載の報告より。

アスピリン・NSAIDsと大腸がんリスクの関連メカニズム/JAMA

 遺伝子と環境の相互作用を考慮したゲノムワイド研究で、アスピリンと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の単独または両薬の常用と、大腸がんリスク低下との関連が遺伝子レベルで明らかにされた。米国・インディアナ大学のHongmei Nan氏らが報告した。検討により、染色体12と15の一塩基多型(SNP)で、常用とリスクとの関連は異なることが示され、遺伝子型によっては常用でリスクが高まる人がいることが明らかにされた。所見を受けて著者は「被験者を追加した検討で今回の所見が確認されれば、ターゲットを絞った大腸がんの予防戦略を促進するだろう」と述べている。JAMA誌2015年3月17日号掲載の報告より。

降圧は「The faster the better(速やかなほど、よし)」へ(解説:桑島 巌 氏)-331

 これまで降圧速度に関しては、急激な降圧が臓器虚血を誘発する可能性があるとの考え方から、概念的に「The slower the better(ゆっくりなほど、よし)」というコンセプトを持つ専門家が多かった。しかし、この考え方を支持する科学的根拠はほとんどなかったのである。

抗うつ薬の副作用発現を予測するために

 抗うつ薬の代謝において、シトクロムP450酵素は重要な役割を担っている。これら酵素の高度に多様な性質は、抗うつ薬の代謝率の変動と関連しており、P450の遺伝子型判定を利用した推奨治療の決定につながる可能性がある。しかし、P450遺伝子の違いが治療効果に影響を及ぼすかどうかは明らかになっていない。英国のキングス・カレッジ・ロンドンのKaren Hodgson氏らは、P450遺伝子型および抗うつ薬の血清濃度と副作用との関連を検討した。Psychopharmacology誌オンライン版2015年3月12日号の報告。

脳梗塞の発症しやすい曜日

 脳卒中発症の時間的なパターンを知り、可能性のあるトリガーを探索することは、脳卒中発症率を減少させるために重要である。脳卒中が特定の曜日に頻繁に発症する場合、何らかの「トリガー因子」が脳卒中を誘発するものと考えられる。京都府医師会脳卒中登録事業委員会では、11年間にわたる病院ベースの脳卒中登録より、曜日による脳卒中発症率の違いを調査した。その結果、脳梗塞においては、年齢・性別にかかわらず日曜日より月曜日のほうが発症率が高かった。著者らは、脳梗塞では発症の「トリガー因子」が存在するという仮説を提案している。BMJ Open誌2015年3月24日号に掲載。

エナラプリル+葉酸、脳卒中を有意に低下/JAMA

 降圧薬エナラプリル(商品名:レニベースほか)単独よりも、葉酸を併用したほうが、高血圧患者の脳卒中初発が有意に低下したことが報告された。中国・北京大学第一病院のYong Huo氏らが、同国高血圧患者で脳卒中または心筋梗塞の既往歴がない2万702例を対象に行った無作為化二重盲検試験CSPPTの結果、報告した。これまで、脳卒中1次予防に関する葉酸の効果については、データが限定的および一貫性がないため不明であった。JAMA誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。

ステント留置後DAPTの至適期間は?/Lancet

 薬剤溶出ステント留置後1年超の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、心筋梗塞およびステント塞栓症のリスクは低いが、死亡リスクは増大することが明らかにされた。同群の死亡増大は、心臓死の減少分よりも非心血管死の増大分が大きかったためであった。イタリア・ボローニャ大学のTullio Palmerini氏らがネットワークメタ解析の結果、報告した。直近の試験報告でも、ステント留置後DAPTの至適期間は不明なままであった。Lancet誌オンライン版2015年3月13日号掲載の報告より。

PMS RegistryにおけるTAVRの1年成績(解説:許 俊鋭 氏)-330

 RCTの結果とreal-worldの結果では、新規デバイス治療において患者対象も治療成績も異なる可能性がある。米国でのTAVRの30日生存と1年生存成績を最新のものに更新する目的で、STS/ACC Transcatheter Valve Therapies RegistryとCMS診療報酬請求データをリンクさせ、2011年9月~2013年6月までの米国299病院、1万2,182症例を1年間経過観察した。

ペルフェナジン、他の抗精神病薬との違いは

 ペルフェナジンはハロペリドール同様、古典的なフェノチアジン系抗精神病薬で、長年にわたり使用されており、北部ヨーロッパおよび日本での使用頻度が高い。ドイツ・デュッセルドルフ大学のBenno Hartung氏らは、統合失調症患者に昔から使用されているペルフェナジンの有効性と安全性を明らかにするため、これまでの研究をレビューした。その結果、検討した試験はすべて非常に質の低いエビデンスであったが、ペルフェナジンが他の抗精神病薬と同様の有効性と安全性を示すことを報告した。そのうえで、安価で使用頻度の高いペルフェナジンの特性を明確にする、さらなる研究の必要性を指摘した。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年3月6日号の掲載報告。

テリパラチドは椎体圧潰を予防する?

 椎体骨折はしばしば骨粗鬆症患者に認められる。骨粗鬆症薬テリパラチド(商品名:フォルテオほか)は骨癒合促進作用も期待されていることから、中通総合病院(秋田県秋田市)の土江 博幸氏らは、骨粗鬆症性新鮮椎体骨折に対するテリパラチドの椎体圧潰予防効果について検討した。その結果、テリパラチド20μg/日連日投与はリセドロネート(商品名:アクトネルほか)17.5mg/週投与に比べ、腰痛、椎体圧潰率、局所後弯角ならびにクレフト発生率が有意に低かった。結果を踏まえて著者は「テリパラチドは、脊椎骨折の後弯脊椎圧潰進行予防効果が示唆される」と述べている。Journal of Bone and Mineral Metabolism誌オンライン版2015年3月14日号の掲載報告。

クロ-ン病の新規経口薬、臨床的寛解を維持/NEJM

 クローン病に対する新規開発経口薬のモンジャーセン(mongersen)について、第II相の二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果、寛解維持および臨床効果の達成割合が有意に高いことが示された。イタリア・トルヴェルガタ大学のGiovanni Monteleone氏らが報告した。モンジャーセンは、経口SMAD7アンチセンスオリゴヌクレオチドで、回腸および結腸のSMAD7を標的とすることが示されていた。クローン病に関連する炎症は、免疫サイトカインのトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)の活性低下によって特徴付けられ、TGF-β1の低下は、SMAD7の発現量が増加しTGF-β1シグナルを阻害するためであることが知られていた。NEJM誌2015年3月19日号掲載の報告より。

オランザピンの代謝異常、アリピプラゾール切替で改善されるのか

 統合失調症患者では、抗精神病薬で誘発される代謝異常の頻度が高い。そして、そのために心血管疾患を生じやすい。このことを念頭に、インド・スリナガル医科大学のRayees Ahmad Wani氏らは、オランザピンでメタボリックシンドロームを発症した安定期統合失調症患者における、アリピプラゾール切り替え後のさまざまな代謝パラメータへの影響を、非盲検試験で調査した。Neuropsychiatric disease and treatment誌オンライン版2015年3月13日号の報告。