日本語でわかる最新の海外医学論文|page:804

ガイドライン改善には個人データに基づくメタ解析の活用を/BMJ

 臨床ガイドラインの作成に当たり、被験者個人データ(IPD)に基づくメタ解析の引用の割合は4割未満であることが明らかにされた。英国・ロンドン大学のClaire L Vale氏らが、177の診療ガイドラインについて調べた結果、報告した。IPDに基づくメタ解析は、エビデンスのゴールド・スタンダードと考えられており、臨床ガイドライン作成の鍵となるエビデンスを示している可能性も大きいとされる。結果について著者は、「IPDに基づくシステマティック・レビューとメタ解析が、活用されていないことが示された」と述べ、「ガイドライン開発者はルーティンに質のよい最新のIPDメタ解析を探索すべきである。IPDメタ解析の活用増大が、ガイドラインの改善につながり、最新の最も信頼性のあるエビデンスに基づくケアを患者にルーティンに提供することが可能となる」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年3月6日号掲載の報告より。

ドイツでは国家機関が新薬に関する評価を公表している(解説:折笠 秀樹 氏)-324

 2011年、ドイツでは新薬を上市する際に特別の書類(dossier)を提出するための法律を制定した。その法律はAMNOG(Act on the reform of the market for medicinal products)と呼ばれ、新薬に関する情報提供を促す法律である。また、その提出書類はIQWiG(ヘルスケアの質と効率に関する研究所)の協力の下に評価され、Federal Joint Committeeという国家機関が評価書類として公表している。なお、IQWiGという組織は2004年頃からあったようである。ちなみに、提出書類は平均446ページに及ぶ膨大な資料のようであり、また、評価書類のほうは平均83ページとみられる。ホームページでいろいろ調べたが、提出書類および評価書類の実物を見ることはできなかった。なお、書類はほとんどドイツ語で書かれているようである。

【日本発】FRAXの骨折予測精度を高める方法

骨折リスク評価ツールFRAXは骨折リスクの評価に利用されているが、その精度は十分とはいえず、改善が望まれている。  そこで近畿大学の伊木 雅之氏らは、12の地域に住む65歳以上の高齢日本人男性2,000人を対象に、FRAXを補完する手段として海綿骨スコア(TBS)が有用であるかどうかの調査を行った。  その結果、TBSはFRAXと組み合わせることで予測精度を向上させる可能性が示唆された。Osteoporos Int誌 オンライン版2015年3月10日掲載の報告。

難治性しゃっくり、抗精神病薬で治るのはなぜか

 しゃっくりは横隔膜のリズミカルな不随意運動であり、延髄や脊柱上の吃逆中枢の神経核機能阻害などさまざまな条件により引き起こされる。しゃっくりの病態に関与する神経伝達物質や受容体は十分に定義されていないが、ドパミンは重要な役割を果たすと考えられている。難治性のしゃっくりの治療には、クロルプロマジンや他の抗精神病薬が使用されることがあるが、その有効性は限られている。島根県・清和会西川病院の西川 正氏らは、難治性しゃっくり患者のエピソードを紹介した。Annals of general psychiatry誌オンライン版2015年3月5日号の報告。

蜂窩織炎・膿瘍への抗菌薬 治癒率に違いはある? クリンダマイシンvs.トリメトプリム・スルファメトキサゾール

 蜂窩織炎および膿瘍において、クリンダマイシンまたはトリメトプリム・スルファメトキサゾール(TMP-SMX)を10日間投与したところ、治癒率や副作用プロファイルは同程度であったことが、米国・カリフォルニア大学のLoren G. Miller氏らにより報告された。NEJM誌2015年3月19日号の掲載報告。

アログリプチン、心不全リスク増大せず:EXAMINE試験の事後解析結果/Lancet

 2型糖尿病で直近に急性冠症候群(ACS)を発症した患者について、DPP-4阻害薬アログリプチン(商品名:ネシーナ)は心不全リスクを増大しないことが示された。フランス・ロレーヌ大学のFaiez Zannad氏らがEXAMINE試験の事後解析を行い明らかにした。同試験では、2型糖尿病で直近にACSを発症した患者の主要有害心血管イベント(MACE)について、アログリプチンがプラセボに対して非劣性であることが示された。しかし、他のDPP-4阻害薬試験で院内心不全の過剰な発生に対する懸念が報告され、研究グループは本検討を行った。Lancet誌オンライン版2015年3月9日号掲載の報告より。  EXAMINEは、2009年10月~2013年3月に49ヵ国898施設から被験者を登録して行われた多施設共同無作為化二重盲検試験であった。被験者は、2型糖尿病と直近15~90日以内にACSイベントを経験した患者で、糖尿病と心血管疾患予防のためアログリプチンまたはプラセボ+標準治療に無作為に割り付けられた。

過剰診断についての情報を含むリーフレットを使うことは乳がん検診のインフォームド・チョイスの支援となるか(解説:山本 精一郎 氏)-323

 この論文は、過去2年間、乳がん検診を受けなかった者をランダムに2群に分け、片方にはリーフレットによって検診による死亡率減少効果と偽陽性についての情報を与え、もう片方にはそれに加えて過剰診断についての情報を、やはりリーフレットによって与えることによって、乳がん検診による知識が高まるか、検診を受けるかどうかのインフォームド・チョイスをする割合が高まるかを調べた研究である。結果、知識も上昇し、インフォームド・チョイスも上昇した。知識が上がった部分は、主に過剰診断に関する項目のおかげであり、インフォームド・チョイスによって検診を受けるという意図を持った者は、少し減少したという結果であった。

母親のFLG変異が、子のアトピーのリスクを高める

 疫学研究から、アレルギーのリスクはインプリンティング(遺伝子刷り込み)により母親から子へ遺伝することが示唆されている。アトピー性皮膚炎(AD)は、フィラグリン遺伝子(FLG)の機能喪失型変異による皮膚バリア機能の欠乏に起因する可能性が知られているが、ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のJorge Esparza-Gordillo氏らは、FLG突然変異の遺伝から独立して母親の遺伝子型の影響がみられることを明らかにした。母親における突然変異誘導性の全身免疫応答が、子のADリスクに影響している可能性を示唆している。PLoS Genetics誌2015年3月10日の掲載報告。

抗うつ効果に文化的背景は影響するか

 大うつ病性障害(MDD)を有するラテン系アメリカ人は、非ラテン系白人と比べ、薬物療法へのアクセス、薬物治療開始、服用、治療維持など、どの定義においても、抗うつ療法の実施が低調である。こうした差異がみられる理由の1つとして、ラテン系アメリカ人の薬物療法に対する文化的適合性が低い可能性が挙げられる。そこで、南カリフォルニア大学のSylvanna M. Vargas氏らは、ラテン系アメリカ人のうつ病と抗うつ療法に対する認識を明らかにする調査を行った。その結果、うつ病を有していないラテン系アメリカ人には、うつ病およびその治療に対して批判的な意見があること、その一方、うつ病患者は抗うつ療法に関心はあるものの、薬物中毒や薬物依存への懸念があることがわかったという。著者は「ラテン系アメリカ人の抗うつ療法への関わり方を改善するには、処方医がそうした見解や懸念に着目していかなくてはならない」と指摘している。Transcultural Psychiatry誌オンライン版2015年3月3日号の掲載報告。

TAVR後、1年アウトカムは?/JAMA

 米国・メイヨークリニックのDavid R. Holmes Jr氏らは、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)を受けた患者1万2,182例について、1年時点のアウトカムを発表した。全死因死亡は23.7%、脳卒中発生は4.1%であり、死亡と脳卒中の複合アウトカムの発生は26.0%であることが明らかにされた。新規医療デバイスに対しては臨床導入後、無作為化試験での結果とはアウトカムが異なるのではないかとの懸念がある。TAVRについてはこれまでに30日時点のアウトカムは報告されていたが、長期アウトカムについては不明なままであった。著者は、「今回の所見を、TAVRを受ける患者とのディスカッションに役立てるべきであろう」と述べている。JAMA誌2015年3月10日号掲載の報告。

ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)-322

 わが国と同様、世界の先進国は超高齢化社会を迎えている。一方において、各国は主要な疾患に対してガイドラインを制定して、標準的治療の推進を呼びかけているという事実がある。実は、この2つは大きな矛盾も抱えているのである。すなわち超高齢化社会の最大の特徴は多様性であり、画一的な集団での研究から得られた臨床研究の結果であるガイドライン、あるいは標準的治療とは必ずしもそぐわないのである。

神経難病へのメマンチンの可能性:群馬大

 脊髄小脳変性症1型(SCA1)はSca1遺伝子内にあるCAGリピートの伸長を原因とする進行性の神経変性疾患である。SCA1症状の発症機序は明確になっていないが、ニューロンの異常活性が、この疾患の特徴であるニューロン細胞死の一因となっている可能性が高い。群馬大学の飯塚 朗氏らは、SCA1ノックイン(KI)マウスにN-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)のメマンチンを長期経口投与し、SCA1の発症メカニズムについて検討した。その結果、マウスの体重減少抑制と生存期間の延長が認められ、SCA1の発症にNMDAR異常活性が関与している可能性を示唆した。Neuroscience Letters誌オンライン版2015年2月25日号の掲載報告。

去勢抵抗性前立腺がん治療、今後の課題は

 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対して、昨年わが国で3つの新薬が承認・発売された。これらの薬剤の特徴や注意点、さらに今後の治療戦略について、3月10日に東京都内で開催された第13回日本泌尿器科学会プレスセミナーにて、鈴木 啓悦氏(東邦大学医療センターさくら病院泌尿器科 教授)が紹介した。

抗凝固療法の出血リスク、遺伝子型で異なる/Lancet

 ワルファリンの出血リスクについて、CYP2C9、VKORC1の遺伝子型を持つ患者において早期出血の傾向がある人を特定できることが示された。米国ハーバード・メディカル・スクールのJessica L Mega氏らが、ENGAGE AF-TIMI 48試験の被験者データを分析し報告した。検討では、ワルファリンと比較して、エドキサバンの早期安全性に関するベネフィットが大きいことも明らかになったという。Lancet誌オンライン版2015年3月10日号掲載の報告より。