中皮腫の初回治療、ベバシズマブ上乗せでOS延長/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2016/01/13

 

 悪性胸膜中皮腫の初回治療について、標準療法であるシスプラチン+ペメトレキセドの併用療法へのベバシズマブの上乗せは、全生存期間(OS)を有意に改善することが、フランス・カーン大学のGerard Zalcman氏らによる第III相の非盲検無作為化試験の結果、示された。毒性効果として循環器系の有害事象が増えるものの、著者は、「予想の範囲内のものであり、ベバシズマブの上乗せは適切な治療と見なすべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2015年12月21日号掲載の報告。

標準初回治療への上乗せ効果を無作為化試験で検討
 悪性胸膜中皮腫は進行が早く予後は不良で、職業性のアスベスト曝露との関連が知られている。初回治療は、シスプラチン+ペメトレキセドの併用療法とされているが、その適用はシスプラチン単独との比較でOS中央値12.1(ビタミンB12、B9服用群では13.3) vs.9.3ヵ月、無増悪生存(PFS)中央値5.7 vs.3.9ヵ月のデータに基づく。また、進行性悪性中皮腫へのペメトレキセド+カルボプラチン併用療法の第II相の試験で示された結果は、OS中央値12.7ヵ月、PFS中央値6.5ヵ月であった。

 こうした中、先行研究で、中皮腫細胞の病態生理において血管内皮増殖因子(VEGF)シグナルが重大な役割を果たすことが示唆されたことから、研究グループは、VEGFをターゲットとする抗血管新生治療薬が効果を示すのではないかと本検討を行った。

 試験は、フランスの73病院から被験者を集めて行われた。18~75歳、切除不能の悪性胸膜中皮腫で化学療法未治療、全身状態はEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)スコアで0~2、重大な心血管疾患の併存はなく、CTで評価が可能な病変(胸水)または測定可能な病変(胸膜肥厚)が少なくともいずれか1つあり、余命は12週超の患者を対象とした。除外基準は、中枢神経系への転移あり、抗血小板薬(アスピリン325mg/日以上、クロピドグレル、チクロピジン、ジピリダモール)を使用、ビタミンK拮抗薬を有効量使用、低分子量ヘパリンを有効量使用、非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けている、であった。

 被験者を、ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg)の静注投与(PCB)群、またはベバシズマブの代わりにプラセボを投与する(PC)群に1対1の割合で無作為に割り付け、3週間に1回を最大6サイクル、病勢進行または毒性効果が認められるまで行った。なお、無作為化には最小化法を用い、患者を組織学的(上皮型 vs.肉腫型、または混在型)、全身状態(ECOGスコア0~1 vs.2)、試験病院、喫煙状態(非喫煙 vs.喫煙)で層別化した。

 主要アウトカムはOS。intention-to-treat解析にて評価した。

OSが有意に延長、18.8ヵ月 vs.16.1ヵ月
 2008年2月13日~14年1月5日に、計448例の患者を無作為化した(PCB群223例[50%]、PC群225例[50%])。被験者は、男性75%、年齢中央値65.7歳、上皮型81%、ECOGスコア0~1が97%、喫煙者57%などであった。

 6サイクルを完遂したのは、PCB群74.9%、PC群76.0%。フォローアップ中央値は39.4ヵ月で両群に差はなかった。

 主要アウトカムのOS中央値は、PC群(16.1ヵ月、95%信頼区間[CI]:14.0~17.9)と比べてPCB群(18.8ヵ月、15.9~22.6)で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.62~0.95、p=0.0167)。

 なお、PFSもPCB群で有意な改善が認められた(9.2ヵ月 vs.7.3ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.50~0.71、p<0.0001)。

 Grade3/4の有害事象の報告は、全体ではPCB群158/222例(71%)、PC群139/224例(62%)であった。PC群と比べてPCB群では、Grade3以上の高血圧症(51/222例[23%] vs.0例)、血栓イベント(13/222例[6%] vs. 2/224例[1%])の頻度が高かった。

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コメンテーター : 小林 英夫( こばやし ひでお ) 氏

防衛医科大学校 内科学講座 准教授

J-CLEAR推薦コメンテーター