エリブリン治療における乳がん患者のOS予測因子は?(EMBRACE試験)

提供元:ケアネット

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公開日:2020/03/12

 

 局所進行または転移を有する乳がん(MBC)患者へのエリブリン治療における、全生存期間(OS)の予測因子が評価された。これまでに、好中球・リンパ球比(NLR)がエリブリン治療における無増悪生存期間(PFS)の予測因子となる可能性が示唆されている。兵庫医科大学の三好 康雄氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年3月5日号掲載の報告より。

エリブリン治療による乳がん患者のOS予測因子としてベースライン時のリンパ球絶対数が示唆される

 研究グループは、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む前治療歴のあるMBC患者に対する、エリブリンと主治医選択薬(TPC)の有効性を比較した第III相EMBRACE試験のPost-Hoc解析を実施。ベースライン時のリンパ球絶対数(ALC)およびNLRとOSの関連が両群で評価された。

 エリブリン治療におけるOSの予測因子を評価した主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時のALCとNLRは、それぞれ751例(エリブリン群500例 vs.TPC群251例)、713例(エリブリン群475例 vs.TPC群238例)で評価可能であった。
・ベースラインALC≧1,500/μLの患者で、エリブリン群はTPC群と比較してOSを有意に延長した(ハザード比[HR]:0.586、95%信頼区間[CI]:0.437~0.784、p<0.001)。
・ALC<1,500/μLの患者では、エリブリン群とTPC群の治療法による有意差はみられなかった(HR:1.002、95%CI:0.800~1.253、p=0.989)。
・単変量および多変量解析の結果、ベースラインALCがエリブリン治療患者におけるOSの潜在的な予測因子として特定された。
・OSの相互作用解析は、カットオフ値として1,500/μLを支持した。
・カットオフ値3のNLRは、エリブリン群におけるOS延長と関連した。しかし、同様の結果がTPC群でも観察され、明らかな相互作用効果は確認できず、NLRはエリブリン群におけるOSの特定の予測因子ではなく、一般的な予後予測因子である可能性が示唆された。

 著者らは、本研究からはベースラインALCがエリブリン治療によるMBC患者のOS延長の独立した予測因子であることが示唆され、追加の侵襲的処置を必要とせずに評価できるため、臨床的に有用な可能性があると考察している。

(ケアネット 遊佐 なつみ)