日本語でわかる最新の海外医学論文|page:473

フレイル施策を掲げる、国の本当の狙いとは/日本医師会

 2020年度から75歳以上の健康診査にフレイルが追加される。高齢者の低栄養に医師の介入が求められることから、国からのプライマリケア医に対する期待は大きいであろう。2019年11月28日、「人生100年時代の健康と栄養を考える-フレイル予防対策における日本型食生活の役割-」が開催(日本医師会、米穀安定供給確保支援機構主催)。本稿では飯島 勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構 教授)による基調講演の内容についてお届けする。

認知症の有病率に関するメタ解析

 認知症は、重度の神経変性疾患であり、異なる病原性によりいくつかのサブタイプに分類することができる。中国・南京医科大学のQing Cao氏らは、地理的、年齢的、性別的観点から認知症の有病率を包括的に分析した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2019年12月26日号の報告。  1985年1月~2019年8月の期間の認知症に関する文献について、PubMedおよびEMBASEより検索を行った。地理、年齢、性別で層別化を行い、分析を行った。群間の有意差検定には、メタ回帰を用いた。

潰瘍性大腸炎患者の大腸がんリスク、時間の経過で変化?/Lancet

 潰瘍性大腸炎(UC)患者は非UC者に比べて、大腸がん罹患のリスクが高く、大腸がん診断時の進行度は低いが、大腸がんによる死亡リスクは高いことが示された。一方で、それらの過剰なリスクは時間の経過とともに大幅に低下することも認められたという。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOla Olen氏らによる、UC患者9万6,447例を対象とした住民ベースのコホート試験の結果で、著者らは、「国際的なサーベイランスガイドラインを改善する余地がまだあるようだ」と述べている。Lancet誌2020年1月11日号掲載の報告。

心房細動患者、断酒の効果は有りか無しか/NEJM

 習慣的に飲酒をしている心房細動患者が断酒をすることで、不整脈の再発が減少したことが、オーストラリア・アルフレッド病院のAleksandr Voskoboinik氏らが、140例を対象とした多施設共同前向き非盲検無作為化比較試験の結果、示された。これまで、過剰な飲酒が心房細動の新規発症や有害な心房リモデリングと関連することは知られていたが、断酒による心房細動2次予防への効果は明らかにされていなかったという。NEJM誌2020年1月2日号掲載の報告。

BMI高値は、NSCLCの免疫チェックポイント阻害薬治療の予後良好因子か/JAMA Oncol

 BMI高値は、悪性黒色腫における免疫チェックポイント阻害薬のサバイバルベネフィットの独立した関連因子であるが、進行非小細胞肺がん(NSCLC)におけるその関係は明らかではない。オーストラリア・フリンダース大学のGanessan Kichenadasse氏らは、NSCLCにおけるPD-L1阻害薬アテゾリズマブのアウトカムとBMIの関連を調べるため、4つの国際的多施設臨床研究から事後解析を行った。4つの試験は、単群の第II相試験(BIRCH試験、FIR試験)と、2群の無作為化臨床試験(POPLAR試験、OAK試験)で、データ分析期間は2019年2月28日~9月30日であった。BMIと全生存期間(OS)、 無増悪生存期間(PFS)および毒性との関係についてITT解析した。研究の詳細はJAMA Oncology誌オンライン版2019年12月26日号に掲載された。

境界性パーソナリティ障害に対する薬物療法~16年間の変遷

 ドイツ・ゲッティンゲン大学のCharles Timaus氏らは、2008~12年の境界性パーソナリティ障害入院患者に対する薬理学的治療戦略を評価し、1996~2004年の薬物療法との比較を行った。BMC Psychiatry誌2019年12月12日号の報告。  2008~12年にゲッティンゲン大学医療センターで入院治療を受けた境界性パーソナリティ障害患者87例を対象に、レトロスペクティブに評価を行った。入院治療ごとに、入院および退院時の薬剤を含む向精神薬療法について調査した。2008~12年の処方と1996~2004年の処方の比較を行った。

中年期の健康的な生活様式は平均余命にどう影響?/BMJ

 中年期の健康的な生活様式の順守は、主要慢性疾患(がん、心血管疾患、2型糖尿病)のない平均余命を延長することが、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のYanping Li氏らによる検討の結果、示された。これまで、修正可能な生活様式因子(喫煙、身体活動、アルコール摂取、体重、食事の質)が、平均余命および慢性疾患発症の両者に影響することは知られていた。しかし、複数の生活様式因子の組み合わせと、主要な疾患(糖尿病、心血管疾患、がんなど)のない平均余命との関わりについて、包括的に検討した研究はほとんどなかったという。BMJ誌2020年1月8日号掲載の報告。

short DAPT vs.standard DAPTの新展開:黄昏るのはアスピリン?クロピドグレル?(解説:中野明彦氏)-1170

本邦でBMSが使えるようになったのは平成6年、ステント血栓症予防には抗凝固療法(ワルファリン)より抗血小板剤:DAPT(アスピリン+チクロピジン)が優れるとわかったのはさらに数年後だった。その後アスピリンの相方が第2世代のADP受容体P2Y12拮抗薬:クロピドグレルに代わり、最近ではDAPT期間短縮の議論が尽くされているが、DAPT後の単剤抗血小板薬(SAPT)の主役はずっとアスピリンだった。そして時代は令和、そのアスピリンの牙城が崩れようとしている。

マイコプラズマ市中肺炎児、皮膚粘膜疾患が有意に多い

 かつて、その流行周期から日本では「オリンピック肺炎」とも呼ばれたマイコプラズマ肺炎について、ほかの起炎菌による市中肺炎(CAP)児と比べた場合に、皮膚粘膜疾患が有意に多く認められることを、スイス・チューリッヒ大学小児病院のPatrick M. Meyer Sauteur氏らが明らかにした。現行の診断検査では、肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae)の感染と保菌を区別できないため、皮膚粘膜疾患の原因としてマイコプラズマ感染症を診断することは困難となっている。今回の検討では、M. pneumoniaeによる皮膚粘膜疾患は、全身性の炎症や罹患率および長期にわたる後遺症リスクの増大と関連していたことも示されたという。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年12月18日号掲載の報告。

慢性不眠症患者へのベンゾジアゼピン中止のための心理社会的介入~メタ解析

 ベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用は慢性不眠症の治療には推奨されておらず、心理社会的介入、とくに不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)がBZD中止への潜在的なオプションとして期待される。杏林大学の高江洲 義和氏らは、慢性不眠症患者に対するBZD使用を中止するために心理社会的介入が有用であるかについて、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Sleep Medicine Reviews誌2019年12月号の報告。

パウダーの会陰部使用は卵巣がんと関連?/JAMA

 米国で行われた4つの前向きコホート研究の女性被験者のデータをプール解析した結果、会陰部でのパウダー使用と卵巣がん発生に、統計的に有意な関連はなかったことを、米国・国立環境衛生科学研究所のKatie M. O’Brien氏らが報告した。ただし今回の検討では、リスクのわずかな増大を同定する検出力は不足していた可能性があるとしている。これまで会陰部でのパウダー使用と卵巣がんの関連性について、ケースコントロール試験で関連ありとの報告がなされていたが、コホート試験による検証はされていなかった。米国では最近、パウダーに含まれる鉱物のタルクに関連した訴訟およびメディア報道が高まっており、研究グループは今回の検証を行ったという。JAMA誌2020年1月7日号掲載の報告。

中国と日本の医学研究者は週末や深夜に仕事をする人が多いようだ(解説:折笠秀樹氏)-1169

2012年から2019年にかけて、BMJ/BMJ Open誌に論文が投稿された日時を調べた。加えて、同誌の査読が提出された日時も調べた。週末や深夜に提出されることも多々あり、医学研究者の仕事は9時5時とは限らない現実が明らかになった。国別に分析したところ、中国と日本はダントツで週末や深夜に仕事をする人が多かった。BMJもBMJ Openも大差がなかったので、BMJのデータを見ると、週末・祝日に論文投稿した割合は22%であった。査読提出の割合は31%であった。週末は7分の2(28%)なので、論文執筆は平日に行っているほうが多いが、週末でも22%の割合で仕事をするのはサラリーマンでは考えにくい。論文は本務に位置付けられるが、査読はそうではないので、査読のほうは時間外に行われがちなのだろう。

前糖尿病状態から糖尿病にならないために

 前糖尿病者において、肥満かどうかにかかわらず体重を増加させないことで糖尿病発症リスクを最小限にできることが、国立国際医療研究センターのHuan Hu氏らの研究で示唆された。体重を減らすことは肥満者が前糖尿病状態から正常血糖に戻るのに役立つ一方、体重を維持することは非肥満者が正常血糖に戻るのに役立つ可能性があるという。Clinical Nutrition誌オンライン版2019年12月25日号に掲載。

果物や野菜の摂取とうつ病との関連

 うつ病は、世界的に主要な精神疾患である。韓国における成人のうつ病有病率は、2006年5.6%、2011年6.7%、2013年10.3%と増加が認められる。韓国・建国大学校のSe-Young Ju氏らは、韓国人成人のうつ病の有病率と野菜や果物の摂取との関連を調査するため、韓国の全国データを用いて検討を行った。Journal of Health, Population, and Nutrition誌2019年12月3日号の報告。

開発中のluspatercept、低~中等度リスクMDSの貧血を軽減/NEJM

 環状鉄芽球を伴う比較的リスクが低い骨髄異形成症候群(MDS)で、定期的に赤血球輸血を受けており、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)に抵抗性または反応する可能性が低い、あるいは有害事象でこれらの製剤を中止した患者の治療において、luspaterceptは貧血の重症度を低下させることが、フランス・パリ第7大学のPierre Fenaux氏らが行った「MEDALIST試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年1月9日号に掲載された。ESA治療が無効の貧血を伴う比較的リスクが低いMDSの患者は、一般に赤血球輸血に依存性となる。luspaterceptは、SMAD2とSMAD3のシグナル伝達を抑制して赤血球の成熟を促すために、トランスフォーミング増殖因子βスーパーファミリーのリガンドと結合する組み換え融合蛋白で、第II相試験で有望な結果が報告されている。

高濃度PM2.5への長期曝露、脳卒中リスクを増大/BMJ

 大気中の相対的に高濃度の微小粒子状物質(PM2.5)への長期の曝露により、低濃度PM2.5への長期曝露に比べ、初発脳卒中とそのサブタイプの発生率が増加することが、中国・北京協和医学院のKeyong Huang氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年12月30日号に掲載された。北米や欧州では、大気中のPM2.5への長期曝露は、相対的に低濃度(典型的には、≦25μg/m3)であっても、脳卒中の発生と関連することが示されている。一方、大気中の高濃度PM2.5への長期曝露(通常、低~中所得国でみられる)と脳卒中の発生との関連を示すエビデンスはないという。

自信あると思わせる強い肯定的表現に惑わされないでほしい(解説:折笠秀樹氏)-1168

研究結果を報告するとき、どのような肯定的用語で表現していたかを調べた。男性研究者で多かったのは、(1)Novel(新規)、(2)Unique(唯一)、(3)Promising(有望)などであった。女性研究者が優位に使っていたのは、Supportive(支持)だけであった。女性のほうが控えめなため、肯定的表現をほとんど使っていなかったことがわかった。この15年間でどれくらい肯定的表現を使うようになったかというと、インパクトファクター(IF)10点以上の臨床医学誌では1.8倍に増えていた。そうでなくても1.4倍に増えていた。そういえば、NEJM誌の投稿規定の冒頭に3条件が示されている。

新型コロナウイルスに関連する患者への対応について/厚生労働省

 中国・湖北省武漢市の当局は20日現在、新型コロナウイルスへの感染者が136人増えて198人となり、3例の死亡が確認されたことを発表している。  一方わが国でも、神奈川県内の医療機関を受診した武漢市の滞在歴がある肺炎患者において、国内で初めて新型コロナウイルス陽性の結果が確認されている。

術前化療で乳房温存療法が適応になる割合は(BrighTNess)/JAMA Surgery

 StageII~III乳がんでは乳房温存療法を可能にするべく術前化学療法が実施されることが多い。今回、米国・Brigham and Women's HospitalのMehra Golshan氏らは、BrighTNess試験の2次解析からトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において術前化学療法により53.2%が乳房温存療法の適応になったことを報告した。また、北米では乳房温存治療適応患者でも乳房温存率が低く、生殖細胞系BRCA変異のない患者での両側乳房切除率が高いことがわかった。JAMA Surgery誌オンライン版2020年1月8日号に掲載。

幼少期のペットとの生活とその後の統合失調症や双極性障害のリスク

 統合失調症や双極性障害などの重篤な精神疾患には、幼少期の環境が関連しているといわれている。幼少期に猫や犬などの家庭用ペットと生活することが、これらの環境要因に影響を及ぼす可能性がある。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のRobert Yolken氏らは、生まれてから12年間における猫や犬などの家庭用ペットとの生活と、その後の統合失調症または双極性障害の診断との関連について調査を行った。PLOS ONE誌2019年12月2日号の報告。