日本語でわかる最新の海外医学論文|page:473

慢性膵炎に伴う疼痛に対して内視鏡的治療か早期の外科的治療か?(解説:上村直実氏)-1203

「慢性膵炎に伴う腹痛」に対する治療に関しては、最初に内科的保存治療(脂肪制限食+禁酒+NSAIDs、制酸剤+高用量膵酵素)が施行され、その無効例に対して砕石目的のESWLと主に狭窄部の拡張を目的とした内視鏡的治療(ステント装着および結石除去)が優先され、内視鏡的治療の無効例や再発例に対して外科的治療を選択することが一般的とされていたが、最近報告された観察研究やRCTの結果から外科的治療の有用性が見直されており、今回実施されたオランダの多施設共同RCTの結果、内視鏡的治療を先行して行う方法に比べて早期に実施する外科的治療のほうが、優れた疼痛緩和効果を示したことが再確認されている(Issa Y, et al. JAMA. 2020;323:237-247)。

オラパリブ、BRCA遺伝子変異膵がん維持療法として希少疾病用医薬品に/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、3月17日、オラパリブ(商品名:リムパーザ)がBRCA遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵がんにおける維持療法として、希少疾病用医薬品指定を取得したと発表。  海外第III相臨床試験(POLO試験)において、オラパリブは生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性転移性膵がん患者の無増悪生存期間(PFS)の中央値を、プラセボ群3.8ヵ月に対し7.4ヵ月と、ほぼ2倍に延長した。また、POLO試験におけるオラパリブの安全性および忍容性プロファイルは、これまでの試験とほぼ一致していた。

オシメルチニブ、uncommon EGFR変異にも有効か/JCO

  uncommon変異はEGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者の約10%にみられる。 EGFR変異陽性のNSCLCにおけるオシメルチニブの有用性は広く知られているが、 uncommon変異についてはどうか。 uncommon EGFR変異を有するNSCLC患者に対するオシメルチニブの有効性と安全性を評価した韓国の多施設単群非盲検第II相試験がJournal of Clinical Oncology誌2019年2月10日号で発表された。 対象:exon19 del、L858R、T790M変異以外の転移または再発NSCLC

マンモグラフィ、AIと医師一人読影の併用で高精度に

 人工知能(AI)は人間によるマンモグラフィ読影の限界を克服できるのだろうか。今回、米国・セージバイオネットワークスのThomas Schaffter氏らが検討したところ、AI単独では放射線科医を上回ることはなかったが、放射線科医の一人読影との併用で精度が改善することが示された。JAMA Network Open誌2020年3月2日号で発表した。診断精度に関する本研究は2016年9月~2017年11月に実施され、マンモグラフィ検診の読影に絞ったAIアルゴリズム開発を促進するために、国際的なクラウドソーシングチャレンジが開催された。44ヵ国126チーム、1,100人以上が参加し、2016年11月18日に分析を開始した。

現場に即した新型コロナ対策シンポジウムを配信/ファイザー

 ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区)は、新型コロナウイルス感染症に関する情報提供の一環として、3月23日(月)、31日(火)に医療者向けインターネットシンポジウムを開催する。両日とも、現場の第一線で活躍する忽那 賢志氏らが講演を行う予定で、同社の無料会員制サイト『PfizerPRO』から視聴可能である。  詳細は以下のとおり。 (1)COVID-19セミナー 現場に届け、緊急新型コロナ対策  演題名:「新型コロナ:今分かっている事、出来る事」

インスリンポンプ療法に特化したQOL尺度を新規開発

 最近の1型糖尿病に対する先進的な糖尿病関連デバイスは、持続血糖モニタリング(CGM)や持続皮下インスリン注入療法(CSII)など、めざましい進歩を遂げている。  とくにインスリンポンプ療法は、毎回煩雑な手順を踏んで注射しなくてよいため、食事の際や高血糖時など、目標の血糖まで速やかに修正できるなどのメリットがある。一方、常に装着しておかなければならず、装着部位のかゆみや服の制約などのデメリットもある。

新型コロナ感染後、発症前の2次感染が多い可能性

 新型コロナウイルスの連鎖感染の連続症例の発症間隔について、北海道大学の西浦 博氏らが28ペアの連続症例のデータから推計したところ、潜伏期間中央値(約5日)と同等もしくはそれより短かった。この結果は、感染から発症までの間に、多くの2次感染が起こっている可能性を示唆している。International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2020年3月4日号に掲載。流行初期に湖北省武漢市で報告されたデータを使用した疫学研究(Li Q, et al. N Engl J Med. 2020 Jan 29. [Epub ahead of print])では、連続症例の

急性期病棟から退院した統合失調症患者の再入院リスク因子

 予定外の再入院率は、精神科医療におけるケアの質を評価するうえで、重要な指標である。しかし、統合失調症スペクトラム障害患者を対象とした、再入院を予測するためのリスクモデルはなかった。中国・Castle Peak HospitalのKeith Hariman氏らは、精神科急性期病棟から退院した統合失調症スペクトラム障害患者における、退院後28日間の事故や救急受診での予定外の再入院を予測するための臨床リスク予測モデルについて検討を行った。BJPsych Open誌2020年1月28日号の

オピオイド中止によって増大するリスクとは?/BMJ

 オピオイド治療を受けている退役軍人保健局の患者では、処方の中止により過剰摂取または自殺による死亡リスクが増大し、治療期間が長い患者ほど死亡リスクが高いことが、米国退役軍人局精神保健自殺予防部のElizabeth M. Oliva氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月4日号に掲載された。米国では、オピオイドの過剰摂取やオピオイド使用障害による死亡の増加に伴い、オピオイド処方関連リスクの軽減戦略が求められており、リスクがベネフィットを上回った時点での治療中止が推奨されている。その一方で、長期の治療を受けている患者では、治療中止後の有害事象(過剰摂取による死亡、自殺念慮、自傷行為、薬物関連イベントによる入院や救急診療部受診)の増加が報告されている。

HIVの維持療法、長期作用型注射薬の有効性は/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者の維持療法において、いずれも長期作用型注射薬であるcabotegravir(CAB、インテグラーゼ阻害薬)とリルピビリン(RPV、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬)2剤併用の月1回投与の有効性は、経口薬3剤の毎日投与に対し非劣性であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のChloe Orkin氏らの「FLAIR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年3月4日号に掲載された。現在の抗レトロウイルス療法(ART)の有効性は高い。そのため、進行中の薬剤開発の焦点の1つは、副作用プロファイルの改善と、治療からの離脱を低減するための利便性だという。また、長期の毎日投与レジメンは、患者に不満を生じさせたり、スティグマの原因となり、アドヒアランスを損なって治療失敗のリスクを高める可能性があることから、より受け入れやすい治療アプローチが求められている。

胃がんの家族歴陽性者に対する除菌は胃がんの発生を抑制する―除菌判定が重要(解説:上村直実氏)-1202

ピロリ菌の除菌による胃がんの抑制効果は世界中でのコンセンサスが形成されており、WHOも胃がん予防のための除菌治療を推奨している。しかし、除菌による胃がん抑制効果が一様でないことから、臨床現場で除菌成功者にも胃がんが発見されることがよく経験され、日本ではこの除菌後胃がんに対する対処法が大きな課題となっている。今回、胃がんの発症リスクが高いとされている胃がんの家族歴陽性者を対象として、除菌治療による胃がん発生抑制効果を検討した韓国におけるRCTの結果がNEJM誌に報告されている。

COVID-19疑い例の診療に関する留意点/日本医師会

 3月11日、日本医師会・釜萢 敏氏(同会感染症危機管理対策室長)は、「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について」記者会見で説明し、一般の医療機関においても十分な周知を求めた。  釜萢氏は、地域の各医療機関の外来に共通する感染予防策として、基本的に誰もが新型コロナウイルスを保有している可能性があることを想定し、すべての患者の診療において、標準予防策であるサージカルマスクの着用と手指衛生の励行を徹底するよう指示した。

COVID-19への初期診療の手引きが完成/日本プライマリ・ケア連合学会

 日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)は、3月11日の同連合学会のホームページ上で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引き」を公開(ダウンロード可能)した。  本手引きは、病院などの療資源の制限されたセッティングでの診療を想定し、理想的な感染管理と現実との間の妥協点の例を案として示すことを目的として、同連合会の予防医療・健康増進委員会の感染対策プロジェクトチームの監修で作成された。

成人社交不安症に対する薬物療法~メタ解析

 社交不安症(SAD)に対する薬物療法について、治療薬の有効性や忍容性、介入効果、エビデンスの質についての評価を含めた情報をアップデートするため、南アフリカ共和国・ケープタウン大学のTaryn Williams氏らは、システマティックレビューとメタ解析を実施した。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2020年2月10日号の報告。SAD治療における薬理学的介入またはプラセボと比較したRCTを、Common Mental Disorder Controlled Trial Registerおよび2つのトライアルレジスターより検索した。ランダム効果モデルを用いて標準的なペアワイズメタ解析を、統計解析ソフトRを用いてネットワークメタ解析を実施した。また、エビデンスの質も評価した。

新薬上市にかかる研究開発費用を推定/JAMA

 英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのOlivier J. Wouters氏らは、一般公開されているデータを用い新薬の上市に必要な研究開発投資を推定した。同氏らの検討はこれまでと異なり、解析対象製品が幅広く、公開されている利用可能なデータを反映していること、および基礎とした仮定コスト算出法が違うことだという。その条件を満たした新薬63製剤について調べた結果、研究開発投資額は中央値で約10億ドル、平均値で約13億ドルであったという。直近の研究では、新薬開発の平均費用は3億1,400万~28億ドルと推定され、議論の的となっていた。JAMA誌2020年3月3日号掲載の報告。

魚油サプリ、全死因死亡と心血管疾患死リスクを低下/BMJ

 魚油サプリメントの摂取は、全死因死亡および心血管疾患(CVD)死亡のリスク低下と関連し、一般集団においてCVDイベントに対して最低限の有益性をもたらす可能性があることが示された。中国・南方医科大学のZhi-Hao Li氏らが、大規模前向きコホート研究の結果を報告した。魚油サプリメントは、英国やその他の先進国でよく用いられており、最近の無作為化比較試験13件を対象としたメタ解析で、オメガ3脂肪酸サプリメントと比較して、わずかではあるが有意なCVDの予防効果が示唆された。ただし無作為化試験での魚油サプリメント摂取は、理想的な管理下で評価されたものであり、結果を大規模かつ多様な集団に一般化することは難しいことから、研究グループは、リアルライフ設定での大規模コホート研究で評価を行った。BMJ誌2020年3月4日号掲載の報告。

潰瘍性大腸炎の大腸がんリスクに関する北欧の大規模コホート研究(解説:上村直実氏)-1201

10年以上の長期経過を有する潰瘍性大腸炎(UC)が大腸がん(CRC)発症の明らかなリスクであることは従来からよく知られている。しかし、UCの中でもCRCのリスクが異なることは明らかになっていなかった。今回、スウェーデンとデンマークのナショナルデータベースを用いてUC患者10万人と一般住民100万人を対象として、ほぼ50年近くの長期にわたる大規模集団コホート研究の結果がLancet誌に掲載された。特筆すべき結果はUC患者の中でCRCハイリスクの特徴を明らかにした点である。すなわち、発症年齢が低い若年発症型、罹患範囲の広い全大腸炎型、CRCの家族歴陽性者、原発性硬化性胆管炎(PSC)の合併、これら4因子を有する患者はCRCのリスクが高いことを明確に示している。

Impellaは心原性ショックを伴う急性心筋梗塞に対するPCI症例の循環補助にIABPよりも有効か有害か?:入院死亡率と出血合併症率の比較検討(解説:許俊鋭 氏)-1200

Impellaは2008年に米国FDAの製造販売承認を得たが、当初の適応は重症PCIの補助(Supported PCI)であった。日本では米国治験データでIABPとの比較においてImpellaの優位性が認められず、Supported PCIを適応とせず、2012年に心原性ショック(CS)に対するカテーテル型補助人工心臓としての適応で検討されたが、承認には至らなかった。2016年に米国でImpellaのCS適応が承認され、2017年に日本でもCS適応で保険償還された。しかし、急性心筋梗塞(AMI)に起因したCSに対するImpellaの適応や有効性については異論も多々あり、本Dhruva論文(Dhruva SS, et al. JAMA. 2020 Feb 10. [Epub ahead of print])もその代表的な1つである。

COVID-19、空気・環境表面・PPEからの感染リスクは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における医療機関内での感染が懸念されているが、環境汚染の程度と感染リスクの関係は明らかになっていない。シンガポール国立感染症センターのSean Wei Xiang氏らは、患者が隔離されている部屋と控え室、診察にあたった試験担当医師のPPE(個人用保護具)からサンプルを収集、その汚染程度を調査した結果をJAMA誌オンライン版2020年3月4日号のリサーチレターに報告した。  2020年1月24日~2月4日、COVID-19患者3例が隔離されている部屋と浴室において、1例は定期清掃前、2例は定期清掃後にサンプルを採取した。部屋の接触頻度の多い部分は5,000ppmのジクロロイソシアヌル酸ナトリウムで清拭(1日2回)、床は1,000ppmのジクロロイソシアヌル酸ナトリウムで清拭した(1日1回)。2週間の隔離期間のうち採取を実施したのは5日間だった。

COVID-19、PCR検査検体採取の実際/日本臨床微生物学会

 2020年3月5日、日本臨床微生物学会は「COVID-19緊急Webセミナー」を行った(司会は舘田 一博氏[東邦大学医学部 微生物・感染症学講座 教授]・大塚喜人氏[亀田総合病院 臨床検査部 部長])。  Web配信形式で行われた本セミナーは、臨床検査に関わる医療従事者(医師、臨床検査技師、看護師等)を対象として、PCR検査の検体採取時の注意点、保管・輸送方法、検査結果の解釈等について周知を図る目的で開催された(準備ができ次第、 学会サイトで動画公開予定)。