住宅の断熱改修で居住者の入院率低下/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2021/01/18

 

 住宅を改修し断熱を高めることで入院が減少し、その効果は呼吸器疾患に関してより顕著であることが明らかにされた。ニュージーランド・オタゴ大学ウェリントン校のCaroline Fyfe氏らが、住宅の断熱改修が感冒に関連する入院率を低下させるかを調査する目的で行った、国の改修補助プログラムの評価に関するデータを用いた準実験的後ろ向きコホート研究の結果を報告した。冬季の超過死亡および罹患は、寒冷な気候の国よりも比較的温暖な気候の国のほうが高いことが多い。この矛盾は、温暖な国では住宅の熱効率が悪く室温が低くなりやすく、湿気やカビが生じやすい環境を作り出していることと関連しているとされる。一方、これまで複数の介入研究で、熱効率を改善することにより、感冒関連疾患の症状が改善することが示されていた。BMJ誌2020年12月29日号掲載の報告。

国の補助で断熱改修を行った住宅居住者について調査

 研究グループは、ニュージーランドのエネルギー効率局が2009年7月~2014年6月に実施した「Warm-up New Zealand:Heat Smart(WUNZ)」プログラムを利用して断熱改修の補助金を受けた20万4,405戸の住人99万4,317人を対象に、改修前後の入院件数の変化を後ろ向きに解析した。

 2009年7月1日~2011年12月31日の間にWUNZプログラムで断熱改修を行った住宅に、改修前3年間(ベースライン)と、改修後3年間または2014年7月まで(追跡期間)居住した住民を介入群(46万4,614人)とした。また、2012年1月1日~2014年6月30日の間に、WUNZプログラムで断熱改修を行った住宅の居住者を対照群(52万9,703人)とし、対照群では改修前3年間を追跡期間、さらにその3年前をベースライン(介入群のベースラインと同時期とする)とした。

 主要評価項目は、差分法を用いて比較した介入群と対照群における改修前後(ベースラインと追跡期間)の入院件数の変化であった。

とくに呼吸器疾患や喘息、高齢者の虚血性心疾患で入院が減少

 2006年7月~2014年6月の期間における全体での入院件数(解析対象)は23万4,873件であった。

 検討では、調査対象集団の民族的背景(マオリ、太平洋民族、欧州系、その他)も考慮した分析が行われた。介入群は対照群と比べて、マオリ、太平洋民族が占める割合が低かった。

 改修後の入院率は、太平洋民族の急性入院(率比[RR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.90~0.98)、喘息(RR:0.92、95%CI:0.86~0.99)、心血管疾患(RR:0.90、95%CI:0.88~0.93)、および>65歳の虚血性心疾患(RR:0.79、95%CI:0.74~0.84)を除き、介入群および対照群ともに上昇した。

 ただし上昇率は、対照群と比較して介入群で11%有意に低く(相対率比[RRR]:0.89、95%CI:0.88~0.90)、介入群では入院件数が1,000人当たり9.26(95%CI:9.05~9.47)減少していた。この効果は、呼吸器疾患(RRR:0.85、95%CI:0.81~0.90)、全年齢群の喘息(RRR:0.80、95%CI:0.70~0.90)、および>65歳の虚血性心疾患(RRR:0.75、95%CI:0.66~0.83)で、より顕著であった。

(ケアネット)

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