日本語でわかる最新の海外医学論文|page:446

切除可能NSCLC、アテゾリズマブ+化学療法は新たな術前治療の選択肢/Lancet Oncol

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の新たな術前補助化学療法として、PD-L1阻害薬アテゾリズマブ+化学療法の有効性と安全性を評価した第II相試験の結果が示された。米国・コロンビア大学のCatherine A. Shu氏らによる多施設共同単群試験で、高い病理学的奏効率が得られ、忍容性も良好であったという。著者は「切除可能NSCLC患者にとってアテゾリズマブ+化学療法は、新たな補助化学療法となりうることが示された」と述べている。NSCLCの約25%は切除可能なStageIB~IIIAであり周術期化学療法が標準治療だが、この治療戦略は生存期間をわずかに改善するのみである。一方で免疫チェックポイント阻害薬が転移NSCLCに有効であることから、著者らは本検討を行った。Lancet Oncology誌オンライン版2020年5月7日号掲載の報告。

出生前母体ステロイド治療、子供の精神・行動障害が増加/JAMA

 出産前の母親への副腎皮質ステロイド治療によって、子供の精神障害および行動障害が増加することが、フィンランド・ヘルシンキ大学のKatri Raikkonen氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年5月19日号に掲載された。1週間以内に早産が予測される妊娠期間34週以内の妊婦に対しては、胎児の成熟の促進を目的とする出生前の副腎皮質ステロイド治療が標準治療とされる。近年、妊娠期間34週以降への適応拡大が議論されているが、長期アウトカムのデータは限られ、とくに治療を受けた母親の子供の神経発達に関するデータは少ないという。

COVID-19の入院リスク、RAAS阻害薬 vs.他の降圧薬/Lancet

 スペイン・University Hospital Principe de AsturiasのFrancisco J de Abajo氏らは、マドリード市内の7つの病院で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の調査「MED-ACE2-COVID19研究」を行い、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬は他の降圧薬に比べ、致死的な患者や集中治療室(ICU)入室を含む入院を要する患者を増加させていないことを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月14日号に掲載された。RAAS阻害薬が、COVID-19を重症化する可能性が懸念されているが、疫学的なエビデンスは示されていなかった。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、そのスパイクタンパク質の受容体としてアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を利用して細胞内に侵入し、複製する。RAAS阻害薬はACE2の発現を増加させるとする動物実験の報告があり、COVID-19の重症化を招く可能性が示唆されている。一方で、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)は、アンジオテンシンIIによる肺損傷を抑制する可能性があるため、予防手段または治療薬としての使用を提唱する研究者もいる。また、RAAS阻害薬は、高血圧や心不全、糖尿病の腎合併症などに広く使用されており、中止すると有害な影響をもたらす可能性があるため、学会や医薬品規制当局は、確実なエビデンスが得られるまでは中止しないよう勧告している。

心不全で突然死はどのくらい起こるのか?(解説:香坂俊氏)-1234

天気予報の精度が年々上がってきていることに皆さんはお気付きだろうか? とくにこの数年その進歩は著しく、翌日の天気であればほぼ時間単位での予測が可能になっている。これは実は「アルゴリズムの勝利」とも言うべきものであり、これまで集積されてきた情報をデータ化し、そこにAIを用いた数理モデルを駆使して予測を立てることができるようになってから飛躍的に進歩した分野なのである。そして、心不全の領域においても、そのイベントの発生の予測はだいぶできるようになってきた。これも天気予報と同様に数理モデルを応用して、危険因子をはじき出し、個々の患者さんの状況に当てはめるというやり方が成果を出しつつある(米国のフラミンガムリスクスコアや日本の吹田スコアなどはその好例だ)。

統合失調症患者における性機能障害~メタ解析

 多くの臨床研究において、統合失調症患者は性機能障害(SD)の発症リスクが高いと報告されているが、SDの有病率を算出した研究は十分ではない。中国・Taizhou Central HospitalのShankun Zhao氏らは、統合失調症患者におけるSDの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。The Journal of Sexual Medicine誌オンライン版2020年4月13日号の報告。  統合失調症患者の性機能に関する適格な報告をMEDLINE(PubMed)、Embase(OVID)、Cochrane Libraryデータベース、PsycINFOよりシステマティックに検索し、メタ解析を実施した。統合失調症とSDとの関連は、相対リスク(RR)、95%信頼区間(CI)を算出することで検出した。エビデンスの質は、GRADE-profilerを用いて評価した。

T-DXd、HER2+乳がん脳転移例で良好な結果(DESTINY-Breast01)/ESMO BC2020

 CNS転移を有する既治療のHER2陽性乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、DS-8201)の有効性が示された。ベルギー・リエージュ大学のGuy Jerusalem氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)でDESTINY-Breast01試験のサブグループ解析結果を報告した。  DESTINY-Breast01試験は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療を受けたHER2陽性の再発・転移を有する乳がん患者を対象としたグローバル第II相試験。独立中央判定委員会による奏効率は60.9%、PFS中央値は16.4ヵ月であり、持続的な腫瘍縮小効果が示されている。

23%が以前の生活に戻れないと回答/アイスタット

 新型コロナウイルス感染症の拡大について、一般市民の意識変遷の実態を知る目的に、株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀保夫)は、5月20日に3回目の「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」を行った。  アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員で20~79歳の300人を対象に調査を実施したもの。  同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。

コロナ感染流行に一服、診療所医師の懸念はどう変化?~連続アンケート結果

 ケアネットでは、2020年4月第2週から週次で、病床を有していない診療所で勤務する会員医師を対象に「直近1週間のCOVID-19疑い例の診療状況」についてアンケートを行っている。調査対象地域は関東(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、名古屋(愛知県)、関西(京都府、大阪府、兵庫県)、福岡(福岡県)の4エリア、現在は第7回分まで、50日間の経過を掲載中だ。  毎回750~900人の医師から回答が集まり、エリアごとに多少の差はあるものの、全体で見ると4月第3週(調査対象期間:4月9~15日)をピークに、疑い例の平均患者数は50日間で半分近くまで減り(4月第3週:2.77人→5月第3週1.14人)、PCR検査で陽性となった平均患者数も半減した(4月第3週:0.12人→5月第3週0.06人)。

FDA、化学療法を限定して追加したニボルマブとイピリムマブの併用療法を肺がん1次治療に承認/BMS

 米国食品医薬品局(FDA)は、5月26日、 PD-L1発現を問わず 、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療薬として、化学療法を限定して追加したニボルマブとイピリムマブの併用療法を承認した。  今回の承認は、第III相CheckMate -9LA試験の中間解析に基づいたもの。ニボルマブとイピリムマブの併用療法にプラチナ製剤を含む 2 剤併用化学療法2サイクルを追加した併用療法は、同試験において(最短8.1カ月の追跡調査)、PD-L1発現および腫瘍の組織型にかかわらず、化学療法と比較して良好な全生存期間(OS)の延長を示した。

心血管疾患、発症率や死亡率に性差/Lancet

 心血管疾患の治療は、1次予防に関しては男性より女性で多く行われており、2次予防については反対の傾向がみられたものの、心血管疾患の既往の有無にかかわらず男性より女性のほうが、一貫してアウトカムは良好であることが観察された。カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らが、27ヵ国の35~70歳、20万2,072人が参加した大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological(PURE)研究」の解析結果を報告した。主に高所得国の研究では、男性と比較して女性は心血管疾患に対するケアをあまり受けておらず死亡リスクが高い可能性があることが報告されているが、リスク因子、1次あるいは2次予防の服薬、心血管疾患の発症、死亡を系統的に報告している研究はほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2020年5月20日号掲載の報告。

COVID-19、ヒドロキシクロロキンの使用は支持されない/BMJ

 ヒドロキシクロロキンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効な治療薬として期待され世界的に注目されていたが、リアルワールドで収集した観察データを用いた臨床研究の結果、酸素投与を要するCOVID-19肺炎入院患者へのヒドロキシクロロキン使用は、支持されないことを、フランス・パリ・エスト・クレテイユ大学のMatthieu Mahevas氏らが報告した。COVID-19による呼吸不全や死亡を予防する治療が緊急に必要とされる中、ヒドロキシクロロキンは、in vitroでCOVID-19の原因である新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抑制効果が報告され、小規模な臨床試験でも有効性が示唆されていた。BMJ誌2020年5月14日号掲載の報告。

TN乳がん1次治療へのipatasertib+PTXのOS結果(LOTUS)/ESMO BC2020

 手術不能な局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療において、経口AKT阻害薬ipatasertibをパクリタキセル(PTX)に併用することにより、全生存期間(OS)が延長する可能性が、二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であるLOTUS試験の最終解析で示された。シンガポール・National Cancer Centre SingaporeのRebecca Dent氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)で報告した。なお、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)については、すでに有意に延長することが報告されている。

COVID-19、医療従事者の感染リスクは?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療にあたる医療従事者の感染リスクと臨床的特徴について、中国・華中科技大学のXiaoquan Lai氏らが武漢の3次医療機関における約1万人の医療従事者を調査した。その結果、医療従事者の感染のほとんどがアウトブレークの初期に発生していた。また、これまでのウイルス感染症の流行時とは異なり、発熱外来や発熱病棟などで勤務する医療従事者に比べ、それ以外で勤務する医療従事者の感染率が高かった。著者らは、感染した可能性がある医療従事者を迅速に特定し、無症状者に対する定期的なスクリーニングを行うことで医療従事者を守ることができるとしている。JAMA Network Open誌2020年5月21日号に掲載。

日本におけるインターネット依存症の有病率

 インターネット依存症は、深刻な問題であり、近年その発生率は有意な上昇をみせている。愛媛大学の河邉 憲太郎氏らは、青年期のインターネット依存症について4年間にわたる2つの横断研究により調査し、その結果生じる生活の変化についての評価を行った。Pediatrics International誌オンライン版2020年4月16日号の報告。  12~15歳の中学生を対象に、2014年(第1次調査)および2018年(第2次調査)に調査を行った。対象者には、インターネット依存度テスト(Young's Internet Addiction Test:IAT)、GHQ精神健康調査票(General Health Questionnaire:GHQ)日本語版、睡眠習慣と電気機器使用に関するアンケートを実施した。

COVID-19、NY重症患者の死亡リスク増加因子が明らかに/Lancet

 検査で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が確認され、米国・ニューヨーク市内2ヵ所の病院に入院した重症患者257例について前向きコホート試験を行った結果、高年齢、慢性肺疾患、慢性心臓病などが入院死亡リスク増加の独立リスク因子であることが確認された。米国・コロンビア大学アービング医療センターのMatthew J. Cummings氏らが行った試験の結果で、年齢の因子では10歳増加ごとに死亡リスクは1.31倍に、慢性肺疾患は死亡リスクを2.94倍に増加することが示されたという。また、侵襲的機械換気の実施率は重症患者の79%に上っていた。2020年4月28日現在、ニューヨーク市におけるCOVID-19入院患者は4万人を超えている。現況下でのCOVID-19患者の疫学、臨床経過、および重症転帰のデータの必要性から本検討は行われた。Lancet誌オンライン版2020年5月19日号掲載の報告。

降圧による認知症・認知機能障害の予防的効果/JAMA

 降圧薬を服用し血圧を下げることと、認知症や認知機能障害の発生リスクの有意な低下が関連していることが明らかにされた。アイルランド・Galway国立大学・Saolta大学病院グループのDiarmaid Hughes氏らが、無作為化比較試験14件・被験者総数9万6,158例を対象にしたシステマティック・レビューとメタ解析の結果で、JAMA誌2020年5月19日号で発表した。これまで、認知症や認知機能障害に対する降圧の予防的効果は不明であった。  研究グループは、PubMed、EMBASE、CENTRALにおいて、血圧低下と認知機能アウトカムの関連を検証した2019年12月31日までに発表された無作為化比較試験を検索し、システマティック・レビューとメタ解析を行った。

テーマ、デザインともに価値を見いだせない(解説:野間重孝氏)-1233

この研究デザインについてはpre-studyとも言える論文で説明されているというのであるが、元論文に当たってみても著者らが言うような明確と言えるほどの説明はなされていない。この種の評論を書くと意地悪ジイさん扱いされてしまいそうであることを覚悟して書き込ませていただくと、最近の論文は研究デザインとその意味付けといった最も重要な部分や統計処理などを○○参照とかappendix参照などで済ませているケースが目立つ。それでその○○なりappendixに当たってみると―予想通りというか―説明不足であったり、非常にわかりづらかったりするのである。

COVID-19に伴う乳がん診療トリアージについて/日本乳癌学会

 日本乳癌学会は5月25日、COVID-19に伴う乳がん診療トリアージについて指針を公開した。欧米の診療トリアージを参考に、日本における現在の診療に即した形となるようまとめたもの。外来診療、画像診断、外科療法、放射線療法、薬物療法それぞれについて、緊急度を高優先度/中優先度/低優先度の3つに分けて指針を示している。本稿では、外科療法、放射線療法、薬物療法について抜粋して下記紹介する。

FDA、ALK陽性NSCLCの1次治療としてbrigatinib承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年5月23日、ALK陽性転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療にALK阻害薬brigatinibを承認した。  この承認は、未治療のALK陽性の局所進行または転移のあるNSCLC患者におけるbrigatinibとクリゾチニブの有効性と安全性を比較した第III相ALTA-1L臨床試験の結果に基づくもの。  brigatinibの客観的奏効率(ORR)は74%、クリゾチニブでは62%であった。べースラインで測定可能な脳転移のある患者のORR78%、クリゾチニブでは26%であった。無病生存率(PFS)中央値は、brigatinib24ヵ月、クリゾチニブ11ヵ月、ハザード比は0.49であった。