日本語でわかる最新の海外医学論文|page:449

低分子ヘパリン皮下注射の選択のない日本に応用できるか?(解説:後藤信哉氏)-1228

静脈血栓症は難しい。抗凝固薬の使用が一般化したのは肺血栓塞栓症の生命予後改善効果確認後であった。新規の経口抗凝固薬の適応拡大試験を施行するのであれば、「生命予後」を有効性の一次エンドポイントとしたい。しかし、重症例をランダム化比較試験に取り込むことは難しい。静脈血栓の再発などを代替的エンドポイントにせざるを得ない。静脈血栓症の定義は難しい。客観的に確認された血栓があっても予後には影響がないかもしれない。本研究のイベントの詳細がsupplementに記載されているが、悪性腫瘍の診断のために施行したCTにて見いだされた血栓なども含まれる。無症候の静脈血栓の臨床的意味は正直わからない。しかも、open labelの試験である。アピキサバンの適応拡大を目指した試験としての意味はあるかもしれないが、臨床的意味は不明とせざるを得ない。

新型コロナ陽性率とBCG接種歴の関係は?/JAMA

 一時期、BCGワクチン接種(以下、BCG接種)をしている人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかりにくい、というニュースが世界中を賑わした。ドイツやアメリカではBCG接種によるCOVID-19予防の有用性を検証するために臨床試験も始まっており、動向が気になるところである。このような状況に先駆け、今回、イスラエル・テルアビブ大学のUri Hamiel氏らは「小児期のBCG接種が成人期のCOVID-19に対して保護効果があるという考えを支持しない」という研究結果を発表。本研究で小児期のBCG接種群と非接種群での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性の結果割合が類似していたことを明らかにした。ただし、重症者の症例数が少ないため、BCG接種状況と疾患重症度との関連については結論付けられないとしている。JAMA誌オンライン版5月13日号のリサーチレターに報告した。

化学療法を限定して追加したニボルマブとイピリムマブの併用療法、肺がん1次治療でOS改善(CheckMate-9LA)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、2020年5月13日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法に化学療法2サイクルを追加した併用療法が、進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療薬として、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある生存ベネフィットを示した第III相CheckMate-9LA試験の結果を公表。化学療法と比較して、良好な全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)および奏効率(ORR)を示した。

小児ADHDに関連する食事パターン~メタ解析

 注意欠如多動症(ADHD)は、世界中の小児にみられる慢性的な精神疾患である。イラン・Shahid Sadughi University of Medical SciencesのElham Shareghfarid氏らは、小児の食事パターンとADHDとの関連について、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Clinical Nutrition ESPEN誌2020年4月号の報告。  Google Scholar、SCOPUS、ISI Web of science、PubMedなどのデータベースより2017年6月までの文献を検索し、ADHD児における食事パターンや食物摂取に関する研究を抽出した。達成された相対リスク(RR)およびオッズ比(OR)については、主な食事パターンのアドヒアランスの最大と最小を比較した。異質性は、コクランのQ検定およびI2検定により評価した。

DS-8201のHER2陽性胃がん、FDAブレークスルーセラピー指定に/第一三共

 第一三共とアストラゼネカは、2020年5月11日、トラスツズマブ デルクステカン(開発コード:DS-8201)が、米国食品医薬品局(FDA)よりHER2陽性の再発あるいは転移のある胃がん治療を対象としてブレークスルーセラピー指定を受けたと発表した。  今回の指定は、トラスツズマブを含む2つ以上の前治療を受けたHER2陽性の進行・再発胃腺がん患者または胃食道接合部腺がん患者を対象とした第II相臨床試験(DESTINY-Gastric01)および日米共同第I相臨床試験の解析結果に基づくもの。第II相臨床試験(DESTINY-Gastric01)の結果は、本年5月下旬に開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表予定である。

心血管疾患を持つCOVID-19患者、院内死亡リスク高い/NEJM

※本論文は6月4日に撤回されました。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心血管疾患を有する集団で過度に大きな影響を及ぼす可能性が示唆され、この臨床状況におけるACE阻害薬やARBによる潜在的な有害作用の懸念が高まっている。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らは、国際的なレジストリに登録された入院患者8,910例(日本の1施設24例を含む)のデータを解析し、基礎疾患として心血管疾患を有するCOVID-19患者は院内死亡のリスクが高いことを示した。また、院内死亡へのACE阻害薬およびARBの有害な影響は確認できなかったとしている。NEJM誌オンライン版2020年5月1日号掲載の報告。

重症AKIの腎代替療法、開始遅延でも死亡率に影響なし/Lancet

 生命を脅かす合併症がない重症の急性腎障害(AKI)患者への腎代替療法(RRT)の開始時期については、活発な議論が続いている。フランス・AP-HP Avicenne HospitalのStephane Gaudry氏らは、RRTの緊急適応のない重症AKI患者において、RRTを待機的に開始する遅延的戦略は、早期開始戦略と比較して生存への影響に差はなく、緊密な患者モニタリングの下で安全に延期が可能であることを示した。研究の詳細は、Lancet誌2020年5月9日号に掲載された。RRTの早期開始により、代謝異常や、死亡増加に関連する他の合併症のコントロールが改善する可能性があるが、医原性の合併症(低血圧症、出血、感染症、低体温症)をもたらす可能性がある。一方、RRTの開始を意図的に遅らせることで、腎機能が自然に回復するまでの時間を確保でき、RRTの必要性を除去する可能性があるという。

脳内大血管閉塞に対するtenecteplaseの至適用量は?(解説:内山真一郎氏)-1227

tenecteplaseはアルテプラーゼから遺伝子改変により作成された血栓溶解薬であり、アルテプラーゼより半減期が長く、フィブリン特異性も高い。海外のガイドラインではアルテプラーゼの代用薬として記載されているが、日本では開発も承認もされていない。オリジナルのEXTEND-IA TNK試験では、0.25mg/kgのtenecteplaseはアルテプラーゼと比べて再灌流と臨床転帰が優れていたという結果が示されている。そこで、このPart 2試験では、脳内大血管閉塞例において血栓回収療法前に投与された0.40mg/kgのtenecteplaseが0.25mg/kgのtenecteplaseより優れているかどうかをPROBE試験により検討したが、0.40mg/kgが0.25mg/kgより有効であるという結果は示されなかったので、tenecteplaseの至適用量は0.25mg/kgであるというのが本試験の結論である。

偽サイトに関する注意喚起/日本医師会

 5月14日、日本医師会ホームページになりすました偽サイトが作られていることが発覚した。14日16時時点で、偽サイトを悪用した攻撃などは確認できていないが、今後、当該偽サイトを利用して個人情報などを不正に奪取するような攻撃およびその被害が発生する可能性があるとして、日本医師会が注意喚起を行っている。  外部から日医ホームページ(https://www.med.or.jp/)にアクセスする際には、リンクにポインタを置く、アドレス欄をよく見るなど、ドメイン名を必ず確認するよう注意していただきたい。

日本人統合失調症患者におけるブレクスピプラゾール切り替えの安全性と有効性

 東京女子医科大学の石郷岡 純氏らは、日本人統合失調症患者200例を対象に行ったブレクスピプラゾール単剤療法切り替えの試験データを用いて、事後分析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年4月15日号の報告。  試験期間は8週間、4週間の切り替えフェーズと4週間の切り替え後フェーズで構成されている。ブレクスピプラゾールへの切り替えスケジュールは、最初に1mg/日で投与を開始し、第4週目までに2mg/日まで増量した。それまでに使用されていた抗精神病薬は、第3週より徐々に減量し、第4週目までに中止した。ブレクスピプラゾールの投与量は、CGI-I基準に従い、最大4mg/日まで増量可能とした。

COVID-19重症化予測、血小板数とFARが有用か

 COVID-19の重症化予測マーカーを調べるため、中国・Wenzhou Medical UniversityのXiaojie Bi氏らがCOVID-19患者の血液検査データを検討した結果、フィブリノーゲン/アルブミン比(FAR)と血小板数が重症化の独立したリスク因子であることがわかった。また、FAR 0.0883未満かつ血小板数13.5万/μL以上の場合、重症化の可能性を除外しうることが示された。Platelets誌オンライン版2020年5月5日号に掲載。  本研究では、Taizhou Public Health CenterにおけるCOVID-19患者113例について臨床的特徴と血液検査データを解析した。COVID-19の重症化を予測するためのバイオマーカーを特定するために多変量Cox分析を行った。その結果に基づいてノモグラムを作成し、予測精度を検量線、決定曲線、臨床影響曲線、Kaplan-Meier分析により評価した。さらに感度、特異度、的中率を算出した。

膵がん患者の悪液質、1次化学療法開始後3ヵ月で3割、1年で6割強に

 悪液質は患者の身体的健康と生活の質に影響を及ぼし、さらにがん治療、とくに殺細胞性抗がん剤に対する患者の忍容性にも影響する。国立がん研究センター東病院の光永 修一氏らは、進行膵管腺がん(PDAC)患者を対象に悪液質について後ろ向きに調査し、1次化学療法開始後早期に悪液質が発現したものの、生命予後因子ではなかったことを明らかにした。ただし、1次化学療法開始後に悪液質が認められた患者では、認められなかった患者に比べ一部の有害事象の発現頻度が高い傾向にあったという。Supportive Care in Cancer誌オンライン版2020年2月26日号掲載の報告。

クロピドグレル、70歳以上の非ST上昇ACS患者に有用/Lancet

 70歳以上の非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)高齢患者において、クロピドグレルはチカグレロル/プラスグレルに比べ、全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中・出血の複合エンドポイントを増加することなく出血リスクを減少させることが認められ、チカグレロルの代替としてクロピドグレルが好ましいことが示された。オランダ・St Antonius HospitalのMarieke Gimbel氏らが、非盲検無作為化比較試験「POPular AGE試験」の結果を報告した。最近のガイドラインでは、ACS後の患者に、チカグレロルまたはプラスグレルを用いた強力な抗血小板療法が推奨されているが、高齢患者における最適な抗血小板療法に関するデータは乏しかった。著者は、「とくに出血リスクが高い高齢患者では、クロピドグレルがP2Y12阻害薬の代替となるだろう」とまとめている。Lancet誌2020年4月25日号掲載の報告。

COVID-19、主要5種の降圧薬との関連認められず/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が重症化するリスク、あるいはCOVID-19陽性となるリスクの増加と、降圧薬の一般的な5クラスの薬剤との関連は確認されなかった。米国・ニューヨーク大学のHarmony R. Reynolds氏らが、ニューヨーク市の大規模コホートにおいて、降圧薬の使用とCOVID-19陽性の可能性ならびにCOVID-19重症化の可能性との関連性を評価した観察研究の結果を報告した。COVID-19患者では、このウイルス受容体がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)であることから、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)に作用する薬剤の使用に関連するリスク増加の可能性が懸念されていた。NEJM誌オンライン版2020年5月1日号掲載の報告。

脳内大血管閉塞に対する血栓回収療法に血栓溶解療法の併用は不要か?(解説:内山真一郎氏)-1226

脳内大血管閉塞による急性虚血性脳卒中に血栓回収療法前のアルテプラーゼ静注療法が有用であるかどうかは確かではなく、大血管閉塞例に関してはアルテプラーゼ静注の併用なしに直接血栓回収療法を行ってもいいのではないかとの意見が以前から存在した。中国で行われた本試験では、血栓回収療法のみでもアルテプラーゼ後の血栓回収療法と比べて90日後の転帰が劣っていなかったという結果が示された。本年ロサンゼルスで開催されたInternational Stroke Conferenceにおいて日本医大脳神経内科からの同様なデザインで行われたSKIP研究の結果が発表されたが、血栓回収単独療法のアルテプラーゼ併用療法に対する非劣性は本試験より症例数が少なかったためか証明されなかったものの、出血リスクは血栓回収療法単独のほうが有意に少なかった。

新型コロナ、抗原検出用キットの活用に関するガイドライン発表/厚労省

 5月13日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」(富士レビオ)が製造販売承認を取得した。これを受け、厚生労働省では同日開催された第40回厚生科学審議会感染症部会において、「SARS-CoV-2 抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」について審議、了承した。ガイドラインでは、これまでに得られている科学的知見に基づき、同キットの最適な使用を推進する観点から、考え方や留意事項が示されている。

糖尿病治療ガイド2020-2021が完成/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、『糖尿病治療ガイド2020-2021』を発行した。本書は、糖尿病診療の基本的な考え方から最新情報までをわかりやすくまとめたガイドで専門医はもとより、非専門の医師、他の医療スタッフなどにも広く活用されている。  今回の改訂では、11章に「病態やライフステージに基づいた治療の実例」を新設し、全面的に内容をアップデートした。  改訂された主な項目は次のとおり。 ・4章「食事療法」の記載内容を、『糖尿病診療ガイドライン2019』に合わせ大幅に改訂。 ・初版以来、基本変更がされていなかった「糖尿病治療の目標」と「インスリン非依存状態の治療」の図を大幅に改訂。 ・6章「薬物療法」と付録「血糖降下薬一覧表」を2020年4月現在の薬剤情報にアップデート。 ・具体的な治療薬の選択基準を示すべく、11章「病態やライフステージに基づいた治療の実例」を新設。  本書の序文では、「日々進歩している糖尿病治療の理解に役立ち、毎日の診療に一層活用されることを願ってやまない」と診療での活用に期待を寄せている。

パクリタキセル+ベバシズマブは非小細胞肺がん2次治療以降の選択肢となるか/Eur J Cancer

 進行非扁平上皮非小細胞肺がん(nsNSCLC)ではプラチナ製剤ベースの化学療法が不応の場合、ドセタキセルが標準治療となっているものの、選択肢は多くない。パクリタキセル+ベバシズマブも有効な選択肢となるのか。nsNSCLCの2次または3次治療において、パクリタキセル+ベバシズマブとドセタキセルを比較した、フランス・リール大学のAlexis B. Cortot氏らの第III相多施設非盲検無作為化試験「IFCT-1103 ULTIMATE試験」の結果が報告された。European Journal of Cancer誌オンライン版2020年4月8日号掲載の報告。

ADHDとうつ病との関連

 注意欠如多動症(ADHD)は、将来のうつ病との関連が示唆されており、両疾患の間には遺伝的関連があるといわれている。英国・カーディフ大学のLucy Riglin氏らは、ADHDやADHDの遺伝的罹病性がうつ病と関連するかについて、2つの異なる方法を用いて調査を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2020年4月6日号の報告。  まず、Avon Longitudinal Study of Parents and Children(ALSPAC)研究より8,310例を用いて、小児ADHD(7歳)と若年成人の再発性うつ病(18~25歳)との関連を評価した。次に、2サンプルのメンデルランダム化(MR)分析により、ADHDの遺伝的罹病性とうつ病との関連を、公開されているゲノムワイド関連解析(GWAS)データを用いて調査した。

血管内血栓摘出術前のrt-PA静注、有益かリスクか/NEJM

 大血管閉塞による急性虚血性脳卒中を呈した中国人の患者において、血管内血栓摘出術の単独施行は、症状の発症4.5時間以内にアルテプラーゼ静脈内投与を行ったうえでの血管内血栓摘出術施行と比べて、機能的アウトカムに関して非劣性であることが示された。中国・Naval Medical University Changhai HospitalのPengfei Yang氏らが、同国内41の大学関連医療施設で行った無作為化試験の結果を報告した。急性虚血性脳卒中において、血管内血栓摘出術の前にアルテプラーゼ静脈内投与を行うベネフィットとリスクについては、不確実性があると指摘されている。NEJM誌オンライン版2020年5月6日号掲載の報告。