日本語でわかる最新の海外医学論文|page:420

重症血友病A、BIVV001融合蛋白による第VIII因子補充療法が有効/NEJM

 重症血友病Aの男性患者の治療において、新規融合タンパク質BIVV001(rFVIIIFc-VWF-XTEN)の単回静脈内注射により、第VIII因子活性が高値で維持され、半減期は遺伝子組み換え第VIII因子の最大4倍に達し、本薬は投与間隔1週間の新規クラスの第VIII因子機能代替製剤となる可能性があることが、米国・Bloodworks NorthwestのBarbara A. Konkle氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年9月10日号に掲載された。第VIII因子機能代替製剤は血友病A患者の治療を改善したが、これらの製剤は半減期が短く、患者QOLの改善は十分ではないという。また、遺伝子組み換え第VIII因子の半減期は、von Willebrand因子(VWF)のシャペロン作用のため15~19時間とされる。BIVV001は、この半減期の上限を克服し、第VIII因子活性を高値で維持するようデザインされた新規融合蛋白である。

ダロルタミド、転移のない去勢抵抗性前立腺がんの生存率改善/NEJM

 転移のない去勢抵抗性前立腺がん患者の治療において、ダロルタミドはプラセボに比べ、3年生存率が有意に高く、有害事象の発現はほぼ同程度であることが、フランス・Institut Gustave RoussyのKarim Fizazi氏らが行った「ARAMIS試験」の最終解析で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年9月10日号に掲載された。ダロルタミドは、独自の化学構造を持つアンドロゲン受容体阻害薬で、本試験の主解析の結果(無転移生存期間中央値:ダロルタミド群40.4ヵ月、プラセボ群18.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.34~0.50、p<0.0001)に基づき、転移のない去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として、すでに米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている。主解析の時点では、全生存(OS)を解析するためのデータは不十分であり、試験期間を延長してフォローアップが継続されていた。

BIVV001か遺伝子治療かエミシズマブか:血友病Aにとって期待の新薬BIVV001(解説:長尾梓氏)-1286

血友病Aの治療では頻回の静脈注射が大きな課題である。従来の遺伝子組み換え第VIII因子製剤(rFVIII)は週3~4回の静脈注射を行っても関節出血を完全には抑制しきれなかった。2016年に蛋白融合技術による半減期延長製剤が登場して、週1~2回の注射に減らすことができるようになった。2018年に上梓されたエミシズマブは最大4週に1回の皮下注射で、出血抑制効果が認められ、急速に使用者が拡大している。ただ、FVIIIを補う治療とは異なる機序であることから測定上の課題なども残存し、今も臨床研究が複数行われている。

COVID-19関連肺炎へのアクテムラ、第III相試験で主要評価項目達成/ロシュ

 ロシュ社(スイス)は9月18日、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体アクテムラ(一般名:トシリズマブ)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連肺炎における有効性を評価する第III相EMPACTA試験で主要評価項目を達成したことを発表した。  EMPACTA試験は、新型コロナウイス(SARS-CoV-2)感染が確認され、SpO2<94%で、非侵襲的または侵襲的な機械的換気を必要としない、18歳以上の入院患者が対象。米国、南アフリカ、ケニア、ブラジル、メキシコ、ペルーから389例が登録された。

EGFR変異肺がんへのオシメルチニブのアジュバント、CNS含む再発を有意に減少(ADAURA)/ESMO2020

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)へのオシメルチニブの術後療法については、第III相ADAURA試験の結果が本年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2020 Virtual Scientific Program)で発表され、主要評価項目である無病生存期間(DFS)についてはオシメルチニブ群の有意な改善が報告されていた(HR:0.17、95%CI:0.12~0.23、p<0.0001)。今回の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、国立がん研究センター東病院の坪井 正博氏が同試験の再発に関するデータを発表した。

alpelisib+フルベストラント、PIK3CA陽性進行乳がんに対するOS最終結果(SOLAR-1)/ESMO2020

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)、PIK3CA変異陽性の進行乳がんに対する、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラントの併用療法は、統計学的有意差には達しなかったものの、フルベストラント単剤療法と比較し全生存期間(OS)を7.9ヵ月延長した。フランス・Institut Gustave RoussyのFabrice Andre氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で第III相SOLAR-1試験のOS最終結果を発表した。  HR+/HER2-乳がん患者の約40%がPIK3CA変異を有し、予後不良と関連する。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、プラセボ群5.7ヵ月に対しalpelisib+フルベストラント併用群11.0ヵ月と有意な改善を示し(ハザード比[HR]:0.65、 95%信頼区間[CI]:0.50~0.85、片側検定p=0.00065)、米国FDA は2019年5月、欧州委員会は2020年7月に同併用療法を承認している。

統合失調症に対する抗精神病薬の維持療法

 統合失調症の症状や徴候は、脳の辺縁系に代表される特定の領域における高レベルのドパミンと関連している。抗精神病薬は、脳内のドパミン伝達をブロックし、統合失調症の急性症状を軽減させる。本レビューの元となる2012年発表のレビューでは、抗精神病薬が再発防止にも有効であるか調査された。今回、イタリア・ブレシア大学のAnna Ceraso氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬の維持療法の効果について、薬剤を中止した場合と比較し、検討を行った。The Cochrane Database of Systematic Reviews誌2020年8月11日号の報告。

経口可逆的DPP-1阻害薬brensocatibが気管支拡張症の増悪を抑制/NEJM

 気管支拡張症患者において、brensocatib投与による好中球セリンプロテアーゼ活性の低下は気管支拡張症の臨床アウトカムを改善することが、英国・Ninewells Hospital and Medical SchoolのJames D. Chalmers氏らが行った、投与期間24週の第II相無作為化プラセボ対照用量範囲試験で示された。気管支拡張症患者は、好中球性炎症に関連すると考えられる増悪を頻繁に起こす。好中球エラスターゼなどの好中球セリンプロテアーゼの活性と数量は、ベースラインで気管支拡張症患者の喀痰中で増加し、さらに増悪によって増大することが知られる。brensocatib(INS1007)は、開発中の経口可逆的ジペプチジルペプチダーゼ1(DPP-1)阻害薬で、DPP-1は好中球セリンプロテアーゼの活性に関与する酵素である。NEJM誌オンライン版2020年9月7日号掲載の報告。

日本人超高齢の心房細動、エドキサバン15mgは有益/NEJM

 標準用量の経口抗凝固薬投与が適切ではない、非弁膜症性心房細動(AF)の日本人超高齢患者において、1日1回15mg量のエドキサバンは、脳卒中または全身性塞栓症の予防効果がプラセボより優れており、大出血の発生頻度はプラセボよりも高率ではあるが有意差はなかったことが示された。済生会熊本病院循環器内科最高技術顧問の奥村 謙氏らが、超高齢AF患者に対する低用量エドキサバンの投与について検討した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベントドリブン試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年8月30日号で発表された。超高齢AF患者の脳卒中予防のための経口抗凝固薬投与は、出血への懸念から困難と判断されることが少なくない。

高齢入院患者のせん妄予防に対する薬理学的介入~メタ解析

 入院中の高齢患者に対するせん妄予防への薬理学的介入の効果について、スペイン・Canarian Foundation Institute of Health Research of Canary IslandsのBeatriz Leon-Salas氏らがメタ解析を実施し、包括的な評価を行った。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2020年9~10月号の報告。  2019年3月までに公表された、65歳以上の入院患者を対象としたランダム化比較試験を、MEDLINE、EMBASE、WOS、Cochrane Central Register of Controlled Trialsの電子データベースよりシステマティックに検索した。事前に定義した基準を用いて研究を抽出し、それらの方法論的な質を評価した。

早期乳がん/DCISへの寡分割照射による乳房硬結リスク(DBCG HYPO試験)/JCO

 Danish Breast Cancer Group(DBCG)では、1982年以来、早期乳がんに対する放射線療法の標準レジメンは50Gy/25回である。今回、デンマーク・Aarhus University HospitalのBirgitte V. Offersen氏らは、リンパ節転移陰性乳がんまたは非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する放射線療法において、40Gy/15回の寡分割照射が標準の50Gy/25回に比べて3年の乳房硬結が増加しないかどうかを検討するDBCG HYPO試験(無作為化第III相試験)を実施した。その結果、乳房硬結は増加せず、9年局所領域再発リスクは低いことが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年9月10日号に掲載。

初期AFへの早期リズムコントロール、心血管リスクを低減/NEJM

 初期の心房細動(AF)で心血管症状を呈する患者において、早期リズムコントロール療法は、通常ケアよりも心血管アウトカムのリスクを低下させることが、ドイツ・University Heart and Vascular CenterのPaulus Kirchhof氏らによる検討で示された。AF治療は改善されてはいるが、心血管合併症のリスクは高いままである。一方で、早期リズムコントロール療法が同リスクを低減するかは不明であり、研究グループは、国際共同治験担当医主導の並行群間比較による非盲検割付のアウトカム盲検化評価試験で同療法の検討を行った。NEJM誌オンライン版2020年8月29日号掲載の報告。

バリシチニブ、レムデシビルと併用でCOVID-19回復期間を有意に短縮/米・リリー

 米国のイーライリリー・アンド・カンパニーは9月14日、同社の成人関節リウマチ治療薬バリシチニブとレムデシビル(ギリアド・サイエンシズ、商品名:ベクルリー点滴静注液)の併用により、COVID-19の入院患者の回復期間が、レムデシビル単独と比べ中央値で約1日短縮されたと発表した。これは、米国・国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の主導で5月8日から始まったCOVID-19に対するアダプティブデザイン試験(ACTT-2試験)から得られた最初のデータとなる。  ACTT-2試験は、COVID-19の入院患者1,000例超を組み入れ、バリシチニブ4mg 1日1回とレムデシビルの併用療法の有効性および安全性をレムデシビル単独療法と比較評価するもので、主要評価項目は回復までの期間短縮。本試験では、投与開始から29日時点で退院するのに十分な健康状態である(入院中でも酸素投与や継続した治療が不要、もしくは29日時点で退院している)ことを回復の定義とした。

精神病性うつ病患者の再発に対するベンゾジアゼピンの影響

 ベンゾジアゼピンの長期投与は、依存、転倒、認知障害、死亡リスクを含む有害事象が懸念され、不安以外の症状に対する有効性のエビデンスが欠如していることから、うつ病治療には推奨されていない。しかし、多くのうつ病患者において、抗うつ薬とベンゾジアゼピンの併用が行われている。東京医科歯科大学の塩飽 裕紀氏らは、ベンゾジアゼピン使用がうつ病患者の再発または再燃リスクを低下させるか調査し、リスク低下の患者の特徴について検討を行った。Journal of Clinical Medicine誌2020年6月21日号の報告。

HFrEFへのエンパグリフロジン、心血管・腎への効果は/NEJM

 2型糖尿病の有無を問わず慢性心不全の推奨治療を受けている患者において、エンパグリフロジンの投与はプラセボと比較して、心血管死または心不全増悪による入院のリスクを低下することが、米国・ベイラー大学医療センターのMilton Packer氏らによる3,730例を対象とした二重盲検無作為化試験の結果、示された。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の有無を問わず、心不全患者の入院リスクを抑制することが示されている。同薬について、駆出率が著しく低下した例を含む幅広い心不全患者への効果に関するエビデンスが希求されていたことから、本検討が行われた。NEJM誌オンライン版2020年8月29日号掲載の報告。

躁病エピソードに対するリチウムと抗精神病薬の併用

 韓国・漢陽大学校のHyun Kyung Lee氏らは、双極性障害患者の躁病エピソードに対するリチウムと抗精神病薬の併用について、人口統計学的予測因子の検討および入院期間や総医療費に及ぼす影響の調査を行った。Cureus誌2020年6月11日号の報告。  韓国入院患者サンプルを用いて、リチウム治療を行った躁病エピソードを有する成人双極性障害患者1,435例を調査した。入院期間や総医療費への影響を調査するため、同等性評価を伴う独立標本t検定を用いた。ロジスティック回帰モデルを用いて、併用療法のオッズ比(OR)を算出し、95%信頼区間(CI)を推定した。

コルヒチンで慢性冠疾患の心血管リスクが低下/NEJM

 慢性冠疾患患者においてコルヒチン0.5mg 1日1回投与は、プラセボと比較し、心血管イベントのリスクを有意に低下させることが、オーストラリア・GenesisCare Western AustraliaのStefan M. Nidorf氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「LoDoCo2試験」で明らかとなった。コルヒチンの抗炎症作用が心筋梗塞患者の心血管イベントリスクを低下させることが、最近の研究で示唆されていたが、慢性冠疾患患者におけるエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2020年8月31日号掲載の報告。

大手術時の術中換気、低容量vs.従来換気量/JAMA

 大手術を受ける成人患者において、術中の低容量換気(low-tidal-volume ventilation)は従来の1回換気量と比較し、同一の呼気終末陽圧(PEEP)下では、術後7日以内の肺合併症の有意な減少は認められなかった。オーストラリア・オースティン病院のDharshi Karalapillai氏らが、単施設での評価者盲検無作為化臨床試験の結果を報告した。手術中の人工換気は旧来、超生理学的1回換気量が適用されてきたが、低容量換気に比べ有害で術後合併症を引き起こす懸念が高まっている。しかし、手術中に人工呼吸器を使用する患者における理想的な1回換気量は不明であった。JAMA誌2020年9月1日号掲載の報告。

唾液を用いたCOVID-19の検査の注意点/4学会合同ワーキンググループ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査では、鼻咽頭などからのぬぐい液からのPCR検査、抗原検査が行われているが、検体採取者に感染のリスクを伴うこと、個人防護具やスワブを消費することなど、感染対策においてのデメリットが指摘されてきた。  本年6月に唾液検体を保険適用とする厚生労働省の通知がなされ、また、7月にはPCR検査および抗原定量検査について、唾液検体を用いた検査の対象を無症状者(空港検疫の対象者、濃厚接触者など)にも拡大する方針を示したことにより唾液による検査の増加は今後、増えるものと予想されている。

EGFR変異陽性肺がんアファチニブ→オシメルチニブのシークエンシャル最終解析(GioTag)/ベーリンガー

 ベーリンガーインゲルハイムは、2020年9月2日、GioTagアップデート研究の最終解析結果を発表した。同研究は、T790M変異を有するEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんにおいて、アファチニブの初回治療後にオシメルチニブを投与する治療法を評価したリアルワールド、レトロスペクティブ観察研究。 結果、解析患者203例におけるアファチニブからオシメルチニブへのシークエンシャル治療の全生存期間(OS)中央値は37.6ヵ月、治療成功期間(TTF)は27.7ヵ月に達した。