日本語でわかる最新の海外医学論文|page:421

日本人双極I型うつ病に対するルラシドン単剤療法~二重盲検プラセボ対照試験

 主に米国と欧州で実施されたこれまでの研究において、双極I型うつ病に対するルラシドン(20~120mg/日)の有効性および安全性が報告されている。理化学研究所 脳神経科学研究センターの加藤 忠史氏らは、日本人を含む多様な民族的背景を有する患者において、双極I型うつ病に対するルラシドン単剤療法の有効性および安全性を評価した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年8月22日号の報告。  対象患者を、ルラシドン20~60mg/日群(182例)、同80~120mg/日群(169例)、プラセボ群(171例)にランダムに割り付け、6週間の二重盲検治療を実施した。主要評価項目は、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)のベースラインから6週目までの変化とした。

ALS、フェニル酪酸ナトリウム+taurursodiolが機能低下を遅延/NEJM

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者へのフェニル酪酸ナトリウム+taurursodiol投与は、24週間の機能低下をプラセボよりも遅らせる可能性があることが、米国・ハーバード大学医学大学院のSabrina Paganoni氏らによる、ALS患者137例を対象とした多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。フェニル酪酸ナトリウムおよびtaurursodiol投与は、実験モデルでは神経細胞死を抑制することが示されていたが、ALS患者に対する2剤併用の有効性と安全性は明らかになっていなかった。今回の試験では、副次アウトカムについて2群間で有意差は認められず、結果を踏まえて著者は、「有効性と安全性を評価するには、より長期かつ大規模な試験を行う必要がある」と述べている。NEJM誌2020年9月3日号掲載の報告。

非心臓手術後の新規AF、脳卒中リスクを増大/JAMA

 非心臓手術を受けた患者において、術後30日間に新規の心房細動(AF)を発症した患者は非発症患者と比較して、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)のリスクが有意に増大することが、米国・メイヨー・クリニックのKonstantinos C. Siontis氏らによる550例を対象とした後ろ向きコホート試験で示された。非心臓手術後に発症したAFのアウトカムについて明らかになっていない中で今回の試験は行われたが、得られた所見について著者は「抗凝固療法の必要性など、今回の所見を術後AFの治療に適用するには、無作為化試験による検討が必要である」と述べている。JAMA誌2020年9月1日号掲載の報告。

患者とどこまでわかり合える?「医療マンガ大賞2020」開催

 医療現場では、同じ出来事でも、患者と医療従事者では受け取り方や感じ方が異なることが少なくない。横浜市は、こうした視点の違いによるコミュニケーションギャップの可視化を目的に、「第2回医療マンガ大賞」の開催を発表した。  これは、医療広報の一環として、患者や医療従事者が体験したエピソードを基に、それぞれの視点の違いを描く漫画を公募する取り組み。昨年開催された第1回では、55作品の漫画が応募され、「人生の最終段階」をテーマに患者・家族の視点を描いた油沼氏(ペンネーム)の作品が大賞を受賞した。

FGFR阻害薬pemigatinib、胆管がんに国内申請/インサイト

 インサイト・ジャパンは、2020年9月14日、FGFR阻害薬pemigatinibについて、FGFR2融合遺伝子陽性の局所進行または転移のある胆管がん患者の治療薬として、国内製造販売承認申請を提出したと発表した。pemigatinibは同適応症で、希少疾病用医薬品の指定も受けている。  pemigatinibは米国では、FGFR2融合遺伝子または遺伝子再構成が検出され、治療歴を有する、切除不能な局所進行または転移のある胆管がんの成人患者の治療薬として、FDAの製造販売承認を受け商品名Pemazyreとして販売されている。

日本における若年性認知症の有病率とサブタイプ

 若年性認知症患者の生活には、その年代に合った社会的支援が求められる。最新情報を入手し、適切なサービスを提供するためには、疫学調査が必要である。東京都健康長寿医療センター研究所の粟田 主一氏らは、若年性認知症の有病率、サブタイプの内訳、患者が頻繁に利用するサービスを明らかにするため、調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2020年8月19日号の報告。  本研究は、マルチサイト人口ベース2ステップ研究として実施された。全国12地域(北海道、秋田県、山形県、福島県、茨城県、群馬県、東京都、新潟県、山梨県、愛知県、大阪府、愛媛県[対象となる人口:1,163万322人])の医療機関、介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所、相談機関などを対象にアンケートを実施した。ステップ1として、過去12ヵ月間で若年性認知症患者がサービス求めたかまたは滞在したかを調査した。ステップ1で「はい」と回答した施設に追加のアンケートの協力を求め、若年性認知症患者へ質問票を配布し、認知症サブタイプなどのより詳細な情報を収集した。

米国Novavax社の新型コロナワクチン、第I相試験で安全性確認/NEJM

 開発中の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のワクチン「NVX-CoV2373」は、接種後35日の時点で安全と考えられ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の回復期血清中のレベルを上回る免疫応答を誘導することが、米国・NovavaxのCheryl Keech氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月2日号に掲載された。NVX-CoV2373は、三量体完全長(すなわち膜貫通ドメインを含む)のスパイク糖蛋白から成る遺伝子組み換えSARS-CoV-2(rSARS-CoV-2)ナノ粒子ワクチンと、Matrix-M1アジュバントを含有する。動物モデルでは、SARS-CoV-2に対する防御効果が確認されている。なお、Novavaxは本ワクチンの日本国内での開発、製造、流通について、武田薬品と提携している。

本邦におけるレムデシビルの投与基準は妥当か?(解説:山口佳寿博氏)-1285

レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)はエボラウイルス病(旧エボラ出血熱)の原因病原体(マイナス1本鎖RNAウイルス)に対する治療薬として開発が進められてきた。レムデシビルは核酸類似体でRNA依存RNA合成酵素を阻害する。この薬物が、プラス1本鎖RNAウイルスである新型コロナにも効果が期待できる可能性があり、世界レベルで治験が施行されてきた。とくに、米国における期待度は高く、米国の新型コロナ感染症の第1例目にレムデシビルが投与され劇的な改善が得られたと報告された。それ以降、米国では科学的根拠が曖昧なまま“人道的(compassionate)”投与が繰り返された(Grein J, et al.N Engl J Med. 2020;382:2327-2336.)。しかしながら、中国・武漢で施行されたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial(症状発現より12日以内の中等症以上の患者、237例)では、薬物投与群(レムデシビル10日投与)と対照群の間で有意差を認めた臨床指標は存在しなかった(Wang Y, et al. Lancet. 2020;395:1569-1578.)。本稿で述べる重症度分類は本邦厚労省の『新型コロナウイルス感染症診療の手引き』に準ずる。米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のスポンサーシップの下で施行されたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial(本邦を含む世界9ヵ国が参加、中等症以上の患者、1,059例)の中途解析(731例)では、臨床症状/所見の回復が薬物投与群(レムデシビル10日投与)で対照群より4日短縮されることが示された(Beigel JH, et al. N Engl J Med. 2020 May 22. [Epub ahead of print])。この結果を受け、米国FDAは5月1日にレムデシビルの重症例に対する緊急使用を承認した。本邦の厚労省も5月7日に呼吸不全を合併する中等症患者、機械呼吸/ECMOを必要とする重症患者(小児を含む)に対してレムデシビルの特例使用を許可した。投与期間に関しては、機械呼吸/ECMO導入例では最大10日間、それ以外の場合には5日間と規定された。

バリシチニブ、中等~重症アトピー性皮膚炎への単剤有効性・安全性を確認

 経口JAK1/2阻害薬は、COVID-19重症患者のサイトカインストーム治療に有用と報告されている。その1つ、経口JAK1/2阻害薬バリシチニブは、わが国を含め70ヵ国で関節リウマチの治療薬として承認されているが、外用コルチコステロイド薬で効果不十分な中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)への同薬剤の有効性と安全性を検討した、米国・オレゴン健康科学大学のE. L. Simpson氏らによる、2件の第III相試験の結果が報告された。投与16週以内で臨床徴候と症状の改善が認められ、かゆみが速やかに軽減、安全性プロファイルは既知の所見と一致しており、新たな懸念は認められなかったという。これまで第II相試験において、バリシチニブと外用コルチコステロイド薬の併用が、ADの重症度を軽減することが示されていた。British Journal of Dermatology誌2020年8月号掲載の報告。

脳画像データの機械学習を用いた統合失調症と自閉スペクトラム症の鑑別

 神経精神疾患の診断は、問診による臨床症状に基づいて行われるため、難しい部分がある。ニューロイメージングなどの客観的なバイオマーカーが求められており、機械学習と組み合わせることで確定診断の助けとなり、その信頼性を高めることが可能である。東京大学のWalid Yassin氏らは、統合失調症患者、自閉スペクトラム症(ASD)患者、健常対照者から得た磁気共鳴画像(MRI)の脳構造データを用いて機械学習を行い、鑑別診断のための機械学習器の開発を試みた。Translational Psychiatry誌2020年8月17日号の報告。

ICUでの重症COVID-19、ヒドロコルチゾンは有効か/JAMA

 集中治療室(ICU)での重症COVID-19患者の治療において、ヒドロコルチゾンの使用は、これを使用しない場合に比べ、呼吸器系および循環器系の臓器補助を要さない日数を増加させる可能性が高いものの、統計学的な優越性の基準は満たさなかったとの研究結果が、米国・ピッツバーグ大学のDerek C. Angus氏らの検討「REMAP-CAP試験」によって示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2020年9月2日号に掲載された。コルチコステロイドは、実臨床でCOVID-19患者にさまざまな方法で投与されており、観察研究では有益性と有害性の双方が報告されている。この不確実性を軽減するために、いくつかの研究グループが無作為化臨床試験を開始しているという。

新たな擦過細胞診法によるBarrett食道の診断の有用性(解説:上村直実氏)-1284

Barrett食道は下部食道が円柱上皮に置換された状態であり、腺がんはその中の腸上皮化生から発生するとされている。近年、欧米の白人男性において著明に増加している食道腺がんの前駆病変として注目されている疾患であるが早期に発見されにくいことでも有名である。最近、内視鏡を用いることなくBarrett食道を診断する新たな方法としてスポンジを内包したカプセルを用いた擦過細胞診(Cytosponge-TFF3テスト)の有用性がLancetに報告された。英国において一般診療所のGERD患者1,654例に対して本法を用いた検査を行った結果、TFF3が陽性となった221症例中131例59%がBarrett食道と診断されている。一方、主治医の判断で内視鏡検査を行う通常ケアでBarrett食道の診断に至ったのは6,388例中わずか13例0.2%であり、この新たな擦過細胞診は欧米諸国におけるBarrett食道と食道腺がんの早期発見に大きな革命をもたらす可能性が示唆されている。

COVID-19重症化への分かれ道、カギを握るのは「血管」

 COVID-19を巡っては、さまざまなエビデンスが日々蓄積されつつある。国内外における論文発表も膨大な数に上るが、時の検証を待つ猶予はなく、「現段階では」と前置きしつつ、その時点における最善策をトライアンドエラーで推し進めていくしかない。日本高血圧学会が8月29日に開催したwebシンポジウム「高血圧×COVID-19白熱みらい討論」では、高血圧治療に取り組むパネリストらが最新知見を踏まえた“new normal”の治療の在り方について活発な議論を交わした。

ペムブロリズマブをMSI-High大腸がん1次治療にがん国内申請/MSD

 MSDは、2020年9月10日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(一般名:キイトルーダ)について、切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がんに対する製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。  今回の製造販売承認事項一部変更承認申請は、治療歴のない切除不能な進行・再発のMSI-Highまたはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)を有する結腸・直腸がん患者を対象とする多施設共同無作為化非盲検対照薬比較試験であるKEYNOTE-177のデータ等に基づいたもの。

初回SSRI治療に奏効しない場合の抗うつ薬切り替えへの期待~STAR*D研究

 初回のSSRI治療で奏効しない場合、その多くの臨床試験で抗うつ薬の切り替えが行われる。第2選択治療による治療反応や寛解が、いつ、どのような患者に、どれくらい発生するのか、またどれくらいの試験期間を要するかはよくわかっていない。この問題を解決するため、デューク・シンガポール国立大学のA John Rush氏らが検討を行った。多くの治療法が承認されていることから、エビデンスに基づく適切な治療の定義が求められていた。The Journal of Clinical Psychiatry誌2020年8月11日号の報告。

ARDSを伴うCOVID-19、デキサメタゾンが有効な可能性/JAMA

 中等症~重症の急性呼吸促迫症候群(ARDS)を伴う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者の治療において、標準治療にデキサメタゾンを併用すると、標準治療単独と比較して、治療開始から28日までの人工呼吸器非装着日数(患者が生存し、かつ機械的換気が不要であった日数)が増加することが、ブラジル・Hospital Sirio-LibanesのBruno M. Tomazini氏らCOALITION COVID-19 Brazil III Investigatorsが実施した「CoDEX試験」で示された。研究の成果はJAMA誌オンライン版2020年9月2日号に掲載された。COVID-19に起因するARDSは、実質的に死亡率や医療資源の使用を増大させることが知られている。デキサメタゾンは、ARDSを伴うCOVID-19患者の肺障害を軽減する可能性が示唆されている。

抗凝固薬非適応TAVI例、アスピリン単独 vs.DAPT/NEJM

 経口抗凝固薬の適応がない経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を受けた患者では、3ヵ月間のアスピリン投与はアスピリン+クロピドグレル併用に比べ、1年後の出血や出血・血栓塞栓症の複合の発生が有意に少ないことが、オランダ・St. Antonius病院のJorn Brouwer氏らが実施したPOPular TAVI試験のコホートBの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年8月30日号に掲載された。長期の抗凝固療法の適応のない患者におけるTAVI後の出血や血栓塞栓症イベントに及ぼす効果について、抗血小板薬2剤併用(DAPT)と比較した1剤の検討は十分に行われていないという。

初回エピソード統合失調症の初期段階における抗精神病薬の代謝への影響

 初回エピソード統合失調症の初期段階における抗精神病薬の代謝への影響を明らかにするため、中国・四川大学華西病院のHailing Cao氏らが検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2020年8月10日号の報告。  薬物治療未実施の初回エピソード統合失調症入院患者を含む自然主義的な環境で、レトロスペクティブなリアルワールド研究を実施した。代謝プロファイルは、ベースライン時および抗精神病薬治療の2週間後と4週間後に測定した。

BRCA変異乳がん患者、妊娠による予後への影響/JCO

BRCA変異を有する若年乳がん患者にとって、妊娠は安全であることを示す結果が明らかとなった。乳がん後の妊娠および妊娠による乳がん予後への影響を調べた国際多施設共同後ろ向きコホート試験の結果を、イタリア・ジェノバ大学のMatteo Lambertini氏らが、Journal of Clinical Oncology誌2020年9月10日号に報告した。  2000年1月~2012年12月に、浸潤性早期乳がんと診断された、40歳以下の生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する患者が本研究に組み入れられた。主要評価項目は、妊娠率、および乳がん後の妊娠の有無による患者間の無病生存期間(DFS)。副次的評価項目は、妊娠のアウトカムと全生存期間(OS)であった。生存時間分析は、既知の予後因子を制御するGuarantee-Time Bias(GTB)を考慮して調整された。

ロシアの新型コロナワクチン、第I/II相試験で抗体陽転率100%/Lancet

 ロシアのGamaleya National Research Centre for Epidemiology and Microbiologyで開発されている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの第I/II相試験の結果が、Lancet誌オンライン版2020年9月4日号に掲載された。本ワクチンは、組換えアデノウイルス血清型26(rAd26)ベクターおよび組換えアデノウイルス血清型5(rAd5)ベクターに、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質の遺伝子をそれぞれ組み込んだ2つの成分(rAd26-SおよびrAd5-S)から成り、凍結および凍結乾燥の2つの製剤が開発されている。著者のDenis Y. Logunov氏らは、本試験の結果から、2製剤とも安全性が高く、強い液性および細胞性免疫反応が誘導されたと結論している。