日本語でわかる最新の海外医学論文|page:409

運動30分前のカフェインが脂肪を燃やす

 運動30分前のカフェイン摂取が最良の脂肪燃焼法かもしれない。これまでの研究で、カフェインが最大脂肪酸化率(MFO)と有酸素能力を増加させることが明らかになっているが、運動と組み合わせた効果は詳しくわかっていなかった。今回、スペイン・グラナダ大学のMauricio Ramirez-Maldonado氏らが、運動テスト中におけるMFOの日内変動に対するカフェイン摂取の影響を調査した結果、有酸素運動30分前のカフェイン摂取は、時間帯に関係なく運動中の脂肪酸化を増加させることを発見した。The Journal of the International Society of Sports Nutrition誌2021年1月7日号に掲載。

肺動脈性高血圧症へのsotatercept、24週後の肺血管抵抗性を低下/NEJM

 肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対するsotaterceptの皮下投与は、24週後の肺血管抵抗性を低下することが示された。NT-proBNP値の低下との関連性も認められたという。フランス・パリ・サクレー大学のMarc Humbert氏らが106例を対象に行った第II相多施設共同無作為化比較試験「PULSAR試験」の結果で、NEJM誌2021年4月1日号で発表された。PAHは、肺血管のリモデリングと細胞増殖、長期転帰は不良という特徴を有し、骨形成タンパク質経路シグナル伝達の機能不全が、遺伝性および特発性の両サブタイプに関連しているとされる。新規融合タンパク質sotaterceptは、アクチビンと増殖分化因子を結合させることで、増殖促進シグナル伝達経路と増殖抑制シグナル伝達経路のバランスを回復させる狙いで開発が進められている。

AZ製ワクチン、英国型変異株に有効率70.4%/Lancet

 新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな変異株であるB.1.1.7系統への中和活性は同系統以外の変異株との比較において低いことがin vitroにおいて示されたが、変異株B.1.1.7に対する臨床的有効率は70.4%で有効であることが示された。なお、同系統以外のウイルスに対する有効性は81.5%だった。英国・オックスフォード大学のKatherine R. W. Emary氏らが同国で行った、約8,500例を対象とした第II/III相無作為化試験の事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2021年3月30日号で発表した。変異株B.1.1.7は2020年11月以降、英国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主因を占めるようになっていた。

ワクチン接種者、検査・隔離なしで旅行が可能に/CDC

 2021年4月2日、米国疾病予防管理センター(CDC)はガイドラインを更新し、新型コロナワクチン接種を完了した人は、PCR検査の陰性証明や隔離期間なしに米国内を旅行できるとした。これまでのガイドラインではワクチン接種者であっても国内外の旅行を控えるよう呼びかけていたが、ワクチン接種者が急激に増加し、ワクチンの有効性に関するデータも集積されてきたことを受け、今回の変更が行われた。ワクチン接種完了の定義は、最後の接種を受けてから2週間経過後とされており、今回追加された項目は下記のとおり。 ・ワクチン接種完了者は、海外の目的地で必要とされない限り、旅行前に検査を受ける必要はなく、帰国後の隔離の必要もない。 ・ワクチン接種完了者は、米国へのフライトの搭乗前にCOVID-19検査を受けて陰性である必要があり、帰国後3~5日以内に再度検査を受ける必要がある。 ・ワクチン接種完了者は、海外旅行中もマスクやソーシャルディスタンスの確保といった感染予防策をとる必要がある。

転移乳がんにおけるBRCA1/2変異、予後への影響は?/JCO

 転移を有する乳がん患者において、がん感受性遺伝子の生殖細胞系列変異の頻度や、これらの変異の臨床的関連性は不明である。今回、ドイツ・University Hospital ErlangenのPeter A. Fasching氏らは、転移を有する乳がん患者の前向きコホートで、BRCA1とBRCA2を含む乳がん素因遺伝子変異の頻度と変異患者の臨床的特徴を調べ、変異が転帰に及ぼす影響を検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年3月29日号に掲載。

高齢者糖尿病治療ガイド2021を発行/日本糖尿病学会・日本老年医学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木浩二郎)は、同学会と日本老年医学会で合同編集・執筆した『高齢者糖尿病治療ガイド2021』を同学会のホームページで3月24日に発表し、刊行した。  超高齢社会のわが国では、高齢者の糖尿病管理は深刻な問題であり、両学会は2015年4月に合同委員会を設置。「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」の策定・公表やさまざまなガイドを発行することで高齢者糖尿病診療に道筋を示してきた。  今回改訂されたガイドでは、高齢糖尿病患者に多い認知症、サルコペニア・フレイル、“mulitimorbidity”などの併存症、介護保険など高齢者をサポートする諸制度などの高齢者糖尿病患者に特化した内容が掲載されている。また、読者の理解に役立つようにと「高用量SU薬投与中の高齢者」や「中等度の認知症」など11の具体的な症例を提示し、糖尿病診療に従事する医療者以外にでも参考にできるように工夫されている。

良い睡眠には就寝環境も関係する/アイスタット

 世界的にみてもわが国の睡眠時間、睡眠の質は低いといわれている。そして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍の中で、私たちの睡眠環境に変化はあったのであろうか。  3月19日の「春の睡眠の日」に合わせ、「睡眠が快適な人とそうでない人は何が違うのか」また「昼間の眠気は、睡眠事情が関係しているものなのか」を知る目的で、株式会社アイスタットは睡眠に関するアンケートの調査を行った。  アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~59歳の有職者300人が対象。

妊娠中の抗うつ薬使用と子供の自閉スペクトラム症およびADHDリスク~メタ解析

 妊娠中のSSRIやSNRIなどの抗うつ薬使用と子供の自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如多動症(ADHD)リスクとの関連について、観察研究では一貫性が認められていない。関連を指摘する報告に対し、考慮されていない交絡因子の影響を示唆する見解も認められる。イスラエル・ヘブライ大学のRegina Leshem氏らは、この関連性を検討し、バイアス原因を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Current Neuropharmacology誌オンライン版2021年3月3日号の報告。

大うつ病性障害のない認知症患者の抑うつ、非薬物療法が有効/BMJ

 大うつ病性障害のない認知症患者の抑うつ症状の治療において、認知活性化療法やマッサージ/接触療法などを用いた非薬物的介入は、臨床的に意義のある症状の改善効果をもたらすことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のJennifer A. Watt氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年3月24日号で報告された。抑うつや孤立感、孤独感などの症状を軽減するアプローチとして、地域で患者に非薬物的介入を行う「社会的処方(social prescribing)」への関心が高まっている。また、非薬物療法(たとえば、運動)が認知症患者の抑うつ症状を低減することが、無作為化試験で示されている。一方、大うつ病性障害の診断の有無を問わず、認知症患者の抑うつ症状に関して、薬物療法と非薬物療法の改善効果を比較した研究は知られていないという。

新型コロナウイルスの血栓対策(解説:後藤信哉氏)-1374

当初肺炎が主病態と考えられた新型コロナウイルス感染症であるが、症例が蓄積されるとともに主な病態は血管系におけるimmunothrombosisであることがわかってきた。結果として静脈血栓症、脳梗塞などの典型的な血栓症の病態を呈することもあるが、血栓形成の開始機序は明確に異なる。成長メカニズムには相同性と特殊性があると想定される。静脈血栓症、心筋梗塞などの動脈血栓症を標的として抗血小板薬、抗凝固薬が開発されてきたが、新型コロナウイルス感染に対する至適抗血栓療法は現時点では未知である。欧米では静脈血栓リスクが一般に高いためICUに入る症例では全例抗凝固療法を受けるのが普通であった。静脈血栓予防と治療では用量が異なる。血栓治療量は血栓症に対して使用される。新型コロナウイルス感染では、一般的な静脈血栓の有無の判定に用いるD-dimerが陽性のことが多い。ならば血栓予防量と治療量のランダム化比較試験を企画しても倫理的問題は起こらない。本研究では新型コロナウイルス感染にてICUに入院した症例における予防量と治療量の抗凝固療法が比較された。

2番目のKRAS G12C阻害薬adagrasib、非小細胞肺がんに有益性示す(KRYSTAL-1)/ELCC2021

 2つ目となるKRAS G12C阻害薬adagrasibの進行非小細胞肺がん(NSCLC)における試結果が、2021年3月25日、欧州肺癌学会(ELCC VIrtual2021)で発表された。  KRYSTAL-1は、KRAS G12C変異陽性の進行または転移のあるNSCLC79例を対象に、adagrasibを評価したマルチコホート第I/II相試験。  結果、患者の92%が化学療法およびPD-(L)1阻害薬の治療歴を有していた。有効性評価対象51例の45%がadagrasib治療により部分奏効(PR)を示し、26例(51%)が安定(SD)となった。

急性・慢性心不全診療―JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版発表 /日本循環器学会

 3月26~28日に開催された第85回日本循環器学会学術集会のガイドライン関連セッションにおいて、筒井 裕之氏(九州大学循環器内科学 教授)が「2021年JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」を発表した。本講ではHFrEF治療に対する新規薬物の位置付けに焦点が当てられた。  今回のアップデート版は2017年改訂版を踏襲している。まず、筒井氏はアルゴリズムの仕様の変更点について説明。前回の治療アルゴリズムでは、薬物治療と非薬物治療を明確に分けず疾患管理や急性増悪時の対応が不十分であった。これを踏まえ、「薬物治療と非薬物治療を明確に分け、薬物治療から非薬物治療へ移行する際に薬物治療が十分に行われていたかどうかを確認する。疾患管理はすべての心不全患者に必要なため、緩和ケアを含め位置付けを一番下部から上部へ変更し、急性増悪した際には急性心不全のアルゴリズムに移行することを追記した」と話した。

がん関連3学会、がん患者への新型コロナワクチン接種のQ&A公開

 2021年3月29日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A―患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版―」を公開した。昨年に公開された新型コロナとがん診療に関するQ&Aに付随した「ワクチン版」となる。  ワクチン開発段階の臨床試験では、がん患者が対象に組み入れられることは少なかったが、世界各国で接種が進み、がん患者に関するエビデンスが集まりつつある現状を紹介。

境界性パーソナリティ障害患者の不眠

 睡眠障害と境界性パーソナリティ障害(BPD)は、それぞれの疾患を併発することが少なくない。チェコ・パラツキー大学のJakub Vanek氏らは、BPD患者における睡眠障害関連の知識、睡眠マネジメント、研究の今後の方向性を明らかにするため、ナラティブレビューを実施した。Nature and Science of Sleep誌2021年2月22日号の報告。  PubMedおよびWeb of Scienceより、1980年1月~2020年10月に公表された論文をキーワード(睡眠障害、不眠症、悪夢、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、BPD)を使用して抽出した。選択基準は、査読付きジャーナルへの掲載、ヒトを対象とした研究、関連トピックのレビュー、英語での報告とした。除外基準は、会議録、解説論文、18歳未満を対象とした試験とした。101件のフルテキストを精査し、選択された42件の論文のリファレンスリストを検索し、合計71件の論文をレビューに含めた。

ワクチン接種の経済価値は10年間で50兆円―英国調査

 COVID-19ワクチン接種による集団免疫獲得は経済にどのような影響をもたらすのか。英国において年齢構造化感染モデルと経済モデルを使った試算が行われた。The Lancet Infectious Diseasesオンライン版3月18日号掲載の報告。  研究者らは、今後10年間に渡る英国のワクチン接種プログラムについて、さまざまなシナリオを検討した。

早期肺がん、アテゾリズマブの補助療法が主要評価項目を達成(IMpower010)/Genentech

 RocheグループのGenentechは、2021年3月21日、アテゾリズマブをベストサポーティブケア(BSC)と比較する第III相IMpower010試験の中間分析において、主要評価項目の無病生存期間(DFS)を達成したと発表。  IMpower010は、Stage IB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に、外科的切除とシスプラチンベースの補助療法(最大4サイクル)後のアジュバントにおけるアテゾリズマブの有効性と安全性をBSCと比較した国際第III非盲検試験。無作為割り付けは1,005例が対象となった。

既治療の進行尿路上皮がん、enfortumab vedotinが有望/NEJM

 プラチナ製剤ベースの化学療法と、プログラム細胞死-1(PD-1)/プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)阻害薬による治療歴のある局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の治療において、enfortumab vedotinは標準化学療法と比較して、全生存(OS)期間と無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象の頻度は同程度であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のThomas Powles氏らが実施した「EV-301試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年3月25日号に掲載された。プラチナ製剤ベースの化学療法とPD-1/PD-L1阻害薬による治療後に病勢が進行した進行尿路上皮がん患者の治療法は限られており、ほとんど効果はないとされる。enfortumab vedotinは、ネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であり、ネクチン-4に特異的な完全ヒトモノクローナル抗体と、微小管形成の阻害薬であるモノメチルアウリスタチンEで構成される。ネクチン-4は、尿路上皮がんで高発現している細胞接着分子であり、腫瘍細胞の成長と増殖に寄与すると考えられている。

COVID-19施設内感染対策案を発表/日本感染症学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療では、医療機関の施設内感染対策は重要な課題である。実際、院内感染によるクラスターの発生により通常の診療ができなくなった医療機関も全国に存在する。  こうした状況を鑑み、日本感染症学会(理事長:東邦大学医学部教授 舘田 一博氏)は、3月29日に「COVID-19施設内感染アンケート調査を踏まえた施設内感染対策案」を同学会のホームぺージで発表、公開した。  本対策案では、263施設(追加288施設)にアンケートを行い、実際に施設内伝播のあった42施設の回答をまとめた。この回答結果から反省点や今後の対策が示唆されている。

CAVIは心血管イベントを予測できるか(CAVI-J)/日本循環器学会

 高リスク患者の心血管イベント予測因子として、CAVI(cardio-ankle vascular index:心臓足首血管指数)の付加的有用性を検証したCAVI-J研究の結果を、三好 亨氏(岡山大学循環器内科)が第85回日本循環器学会学術集会(2021年3月26日~28日)のLate Breaking Sessionで発表した。本結果から、CAVIは心血管イベントの予測に役立つことが示唆された。  動脈硬化は心血管イベントの重要な予測因子であり、単一施設または小規模の研究では、CAVIと心血管イベント発症の関連が報告されている。今回、三好氏らは大規模前向きコホートで、心血管リスクのある患者においてCAVIが心血管イベントの予測に優れているかどうか、心血管イベントの予測でCAVIの追加が従来のリスク因子による予測能を改善するかどうかを検討した。

うつ病に対するプロバイオティクスの有効性、安全性

 プロバイオティクス(腸内細菌叢)は、脳腸軸の活性を通じて、気分障害や不安症に関連する症状を改善することが、多くの研究で報告されている。しかし、治療歴のないうつ病患者を対象としてプロバイオティクスの効果を検討した試験は行われていなかった。カナダ・クイーンズ大学のCaroline J. K. Wallace氏らは、治療歴のないうつ病患者10例を対象にプロバイオティクス投与前後の抑うつ症状の変化を調査するため、8週間オープンラベル試験を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2021年2月15日号の報告。