日本語でわかる最新の海外医学論文|page:408

医療従事者の新型コロナ感染に対応の補償制度スタート/日本医師会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に限定した医療従事者対象の労災補償上乗せ保険として、新たな補償制度が創設された。11月9日から募集がスタートしている。COVID-19対応医療機関でなくてもすべての医療機関が加入可能で、より少ない負担で医療従事者に対する補償を行うことができる仕組みとなっている。11月11日の日本医師会定例記者会見で、今村 聡副会長が活用を呼びかけた。  治療の最前線で働く医療従事者が、万一感染した場合であっても一定の収入が補償されることが重要であるとして、COVID-19患者に対応した医療従事者が感染し休業した場合の支援制度への補助を日本医師会では国に対して要望してきた。今回創設された本制度では日本医師会他医療団体からの寄付金、国の補助金が充当される。今村氏は、「感染拡大が顕著になる中、医療従事者が万一罹患した場合の収入面の不安を少しでも解消し、安心して医療に従事するためのサポートとして、より多くの医療機関に加入していただきたい」と話した。

認知症予防に対するサウナの効果

 サウナのような温熱環境の繰り返しの利用は、認知症発症を予防するうえで、有益である可能性が示唆されている。しかし、疫学的エビデンスはあまり多くない。フィンランド国立保健福祉研究所のPaul Knekt氏らは、サウナによる温熱環境(サウナの利用頻度、セッション回数、滞在時間、温度)とその後の認知症発症リスクとの関連を調査するため、プロスペクティブコホート研究を実施した。Preventive Medicine Reports誌2020年10月2日号の報告。  対象は、Finnish Mobile Clinic Follow-up Surveyにおける認知症でない30~69歳の男女1万3,994例。フォローアップ期間39年の間に、1,805例が認知症と診断された。サウナの利用状況は、アンケートにより収集した。Coxモデルに基づく分析には、サウナ利用変数と潜在的な交絡因子を含めた。

低リスク前立腺がん、監視療法の転帰に人種は影響するか/JAMA

 監視療法を受けた低リスク前立腺がん患者について、アフリカ系米国人は非ヒスパニック系白人と比較して、病勢進行および根治的治療の10年累積発生率が統計学的に有意に増加したが、転移または前立腺がん特異的死亡率は増加しなかった。米国・VHA San Diego Health Care SystemのRishi Deka氏らが、後ろ向きコホート研究(追跡調査期間中央値7.6年)で明らかにした。これまでの研究で、低リスク前立腺がんのアフリカ系米国人は、非ヒスパニック系白人に比べ進行性の疾患が隠れている可能性が懸念されるとして、監視療法が安全な選択肢であるかは不明であった。JAMA誌2020年11月3日号掲載の報告。

ホルモン補充療法の乳がんリスク、治療法と期間で異なる/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らの同国コホート内症例対照研究で、ホルモン補充療法(HRT)の乳がんリスクのレベルは、HRTの種類により異なり、併用療法および長期投与で高いことが示された。ただし、メタ解析と比較し、長期のHRTに関連した乳がんのリスク増加は小さく、治療の中止でリスクは顕著に低下することも示されている。先行研究では、長期的なHRTは乳がんのリスク増加と関連しており、治療中止後はリスク増加が減るものの数年間はリスクが高いままであることが、また最近の大規模メタ解析ではHRTに関連した乳がんリスクが予想よりも高いことが示されていた。BMJ誌2020年10月28日号掲載の報告。

双極性障害の向精神薬多剤併用に影響を及ぼす因子~MUSUBI研究の分析

 北海道・足立医院の足立 直人氏らは、医師が双極性障害に用いる治療薬を選択する際に影響を及ぼす因子を明らかにするため、日本における全国調査のデータを用いて検討を行った。Human Psychopharmacology誌オンライン版2020年10月22日号の報告。  精神科クリニック176施設より、双極性障害外来患者3,130例の臨床データを、連続的に収集した。患者の一般的特性5項目(性別、年齢、教育、職業、社会的適応)、患者の精神疾患特性5項目(発症年齢、併存する精神疾患、ラピッドサイクラー、精神病理学的重症度、フォローアップ期間)、医師特性5項目(性別、年齢、専門医経験年数、開業年数、開業場所)の合計15項目について評価を行った。薬物療法の指標として、向精神薬(気分安定薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠鎮静薬)の数を用いた。各クリニックから収集したデータを分析した。

未治療CLLへのベネトクラクス+オビヌツズマブ、PFS延長を維持/Lancet Oncol

 ベネトクラクス+オビヌツズマブ療法の長期有効性の知見が報告された。同療法はCLL14試験において、未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対する固定期間治療のレジメンとして確立されたが、ドイツ・ケルン大学のOthman Al-Sawaf氏らは、同試験における治療中止後の有効性をchlorambucil+オビヌツズマブ療法と比較した。その結果、治療中止から2年後においても、ベネトクラクス+オビヌツズマブは、chlorambucil+オビヌツズマブと比較し無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を維持していることが示された。著者は「この結果は、ベネトクラクス+オビヌツズマブを固定期間治療の選択肢として支持するものだ」とまとめている。Lancet Oncology誌2020年9月号掲載の報告。  CLL14試験は、21ヵ国196施設で実施された多施設共同無作為化非盲検第III相試験。研究グループは、18歳以上で併存疾患(累積疾患評価尺度[CIRS]の総スコアが6超またはクレアチニンクリアランスが30~69mL/分)を有する未治療CLL患者を、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群とchlorambucil+オビヌツズマブ群に、1対1に無作為に割り付けた。

医療従事者とその家族のCOVID-19入院リスク/BMJ

 スコットランドにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者のうち、6分の1は医療従事者とその家族であることが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAnoop S V Shah氏らによる国内コホート研究で明らかにされた。また、全体としては入院絶対リスクは低いが、患者との対面サービスを担う(対面職)医療従事者の入院リスクが非対面職医療従事者と比べて3倍、その家族についても2倍高かったという。医療従事者のCOVID-19感染リスクの研究は行われているが、規模が小さく、単一施設をベースとした断面調査で、バイアスの影響を非常に受けやすい手法によるもの、また医師と看護師に限定されたものであり、医療従事者の家族についても評価した研究は不足していたという。BMJ誌2020年10月28日号掲載の報告。

医師への謝礼金額がICD/CRT-Dデバイスの選択に大いに影響/JAMA

 植込み型除細動器(ICD)や両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の初回埋め込み手術の94%が、デバイスメーカーから謝礼金を受けている医師によって行われており、さらに、採用されているのはメーカーから執刀医への謝礼金額が最も高いものである可能性が明らかになったという。米国・Yale-New Haven HospitalのAmarnath R. Annapureddy氏らが、3年間で14万5,900例の患者を対象に行った横断調査の結果を報告した。米国では議会法によって2010年に、医薬品等のメーカーから医師への謝礼金については透明性を確保するため報告開示が義務付けられ(Physician Payments Sunshine Act)、ホームページ「The Facts About Open Payments Data」で詳細情報を入手することができるようになっている。これまでの研究で、医師への謝礼がジェネリック医薬品よりも先発医薬品を処方する可能性を高めることが報告されていたが、デバイスを巡っての研究は行われていなかった。JAMA誌2020年11月3日号掲載の報告。

リアルワールドにおけるSGLT2阻害薬の有用性(解説:住谷哲氏)-1315

SGLT2阻害薬のCVOTとしては腎関連エンドポイントを主要評価項目としたCREDENCEを除けば、エンパグリフロジンのEMPA-REG OUTCOME、カナグリフロジンのCANVAS Program、ダパグリフロジンのDECLARE-TIMI 58、ertugliflozinのVERTIS-CVの4試験がこれまでに報告されている。またそれらのメタ解析もすでに報告され、2型糖尿病患者の心不全による入院の抑制および腎保護作用はほぼ確立した感がある。しかしランダム化比較試験であるCVOTの結果を解釈するときに常に問題となるのは、試験結果の一般化可能性(generalizability)である。

がん患者、抗凝固薬の中止時期を見極めるには/日本癌治療学会

 がん患者は合併症とどのように付き合い、そして医師はどこまで治療を行うべきか。治療上で起こりうる合併症治療とその中止タイミングは非常に難しく、とりわけ、がん関連血栓症の治療には多くの腫瘍専門医らは苦慮しているのではないだろうかー。  10月23日(金)~25日(日)にWeb開催された第58回日本癌治療学会学術集会において、会長企画シンポジウム「緩和医療のdecision making」が企画された。これには会長の弦間 昭彦氏の“Decision Makingは患者の治療選択時に使用される言葉であるが、医療者にとって治療などで困惑した際に立ち止まって考える機会”という思いが込められている。

「新型コロナウイルス感染症~日独の対応」Web講演開催/日本国際医学協会

 日本国際医学協会では、2020年11月26日(木)18時より、第60回国際治療談話会総会「新型コロナウイルス感染症~日独の対応」をWeb講演で開催する。日独それぞれにおける治療の実際、防疫課題についての講演が行われる。 <新型コロナウイルス感染症~日独の対応> 日時:2020年11月26日(木) 18:00~21:00(Web講演) 司会:近藤 太郎氏、ゲオルグ・K・ロエル氏(日本国際医学協会) 【講演I】新型コロナウイルス感染症の臨床像と治療の実際 演者:大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター長)、オリバー・ヴィッツケ氏(エッセン大学病院感染症科 教授、西ドイツ感染症センター[WZI] 理事)

境界性パーソナリティ障害患者の再入院と抗精神病薬使用量との関係

 国立精神・神経医療研究センターの山田 悠至氏らは、境界性パーソナリティ障害の入院患者における再入院に関連する予測因子を特定するため、検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年10月10日号の報告。  本観察研究では、2013年1月~2016年1月に国立精神・神経医療研究センター病院に入院した境界性パーソナリティ障害患者83例を対象に評価を行った。データは、電子カルテよりレトロスペクティブに収集した。

持続性AFへのアブレーション+マーシャル静脈内エタノール注入併用が有効/JAMA

 持続性心房細動(AF)の患者の治療において、カテーテルアブレーションにマーシャル静脈内エタノール注入を併用すると、カテーテルアブレーション単独と比較して、6ヵ月および12ヵ月後の時点の双方でAFまたは心房頻拍が残存しない可能性が高まることが、米国・Houston Methodist DeBakey Heart and Vascular CenterのMiguel Valderrabano氏らが実施した「VENUS試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年10月27日号で報告された。持続性AFに対するカテーテルアブレーションの成功には限界がある。肺静脈隔離を拡大した手技による戦略は、一貫性のある改善効果を示せていない。マーシャル静脈には、逆行性エタノール注入によってアブレーションが可能となる神経支配やAFのトリガーが含まれるという。

Pfizer社の新型コロナワクチン、接種28日目以降の予防効果確認/第III相試験中間解析

 Pfizer社とBioNTech社が開発している、SARS-CoV-2に対するmRNAベースのワクチン候補BNT162b2の第III相試験の最初の中間解析で、感染歴のないボランティアへの2回目の投与(初回から21日後)の7日目以降に90%以上のワクチン有効率を示した。これは、ワクチン接種の開始から28日目以降の予防効果が達成されたことを意味する。Pfizer社とBioNTech社が11月9日に発表した。11月第3週に米国食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請する予定という。  BNT162b2の第III相試験は7月27日に開始。現在までに4万3,538人が登録され、そのうち3万8,955人が11月8日時点で21日間隔・2回目の投与を受けている。中間解析は、評価可能なCOVID-19症例数が94例に達した時点で外部の独立データモニタリング委員会により行われ、2回目の投与の7日後に90%を超えるワクチン有効率を示した。今後の研究の進行に応じて、最終的な有効率は変わる可能性がある。

双極性うつ病に対する補助的ブライトライト光療法~メタ解析

 双極性障害の効果的な補助療法の1つとして、ブライトライト光療法(BLT)が報告されている。これまでのメタ解析では、光療法による補助療法が、双極性うつ病の重症度を有意に改善させることが示唆されている。しかし、メタ解析に含まれた多くの研究は、ケースコントロール研究であり、不眠症治療と組み合わせたBLTに焦点が当てられていた。大分大学の平川 博文氏らは、双極性うつ病に対する補助的BLTに関するランダム化比較試験(RCT)を抽出し、メタ解析を実施した。Brain and Behavior誌オンライン版2020年10月9日号の報告。

COVID-19パンデミック前後、遠隔皮膚科診療は3倍増に

 本邦のコロナ禍における受診動向の変化については、2020年8月6日の「第10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で、「令和2年4月~6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証について」が発表され耳目を集めた。電話またはオンライン診療の受診者は10歳未満が最も多く、ほかの年齢では発熱での受診が最多であったが、10歳未満の受診は湿疹が最多(22.7%)で、受診科目は内科、小児科に次いで皮膚科が3番目だったことなどが報告されている。  本論は、COVID-19感染者数が米国に次いで現在世界第2位の、インド・R.D. Gardi Medical CollegeのShashank Bhargava氏らが、ウェブベースでグローバルに皮膚科医に診療形態の変化について行ったサーベイ調査の結果である。COVID-19パンデミック前後で、teledermatology(遠隔皮膚科診療:TD)の活用が3倍増になったことなどが報告されている。International Journal of Women's Dermatology誌オンライン版2020年10月12日号掲載の報告。

持続的腎代替療法時の抗凝固療法、クエン酸 vs.ヘパリン/JAMA

 急性腎障害を伴う重症患者への持続的腎代替療法施行時の抗凝固療法において、局所クエン酸は全身ヘパリンと比較して、透析フィルター寿命が長く、出血性合併症は少ないが、新規感染症が多いことが、ドイツ・ミュンスター大学病院のAlexander Zarbock氏らが行った「RICH試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年10月27日号で報告された。欧米の現行ガイドラインでは、重症患者への持続的腎代替療法時の抗凝固療法では局所クエン酸が推奨されているが、この推奨のエビデンスとなる臨床試験やメタ解析は少ないという。

COVID入院患者で注意しなくてはならないのは?(解説:香坂俊氏)-1314

COVIDは11月現在、まだ世界で猛威を振るい続けている。なかでも状況が深刻なのは米国であるが、かの国から興味深い報告がなされた(掲載されたのは珍しくBMJ[英国の雑誌]なのであるが…)。COVID-19の感染が確認された成人患者情報が68の病院のICUから集められ、合計5,019人の「集中治療を要した」COVID患者のデータが解析された。このうち14%が心肺停止となったとされ、このあたりの数値は武漢からの報告ともおおむね一致している(武漢のCOVID専属治療施設での重症例の心肺停止の頻度が20~25%程度であった)。院内心停止が発生した患者は高齢かつ、併存疾患が多く、ICU病床数の少ない病院に入院している傾向にあり、心停止の際にモニターでよく見られたパターンはPEA(無脈性電気活動:50%)とasystole(心静止:24%)であった

COVID-19、家庭・職場で感染リスクが高い行動は?

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染リスクを減らすには何に注意すればよいのだろうか。シンガポール・National Centre for Infectious DiseasesのOon Tek Ng氏らが、COVID-19患者の濃厚接触者におけるSARS-CoV-2感染に関連する因子を調べた結果、家族内では「寝室の共有」「COVID-19患者から30分以上話されること」が、家族以外では「2人以上のCOVID-19患者への曝露」「COVID-19患者から30分以上話されること」「同じ車への乗車」が関連していた。一方、「間接的な接触」「一緒に食事すること」「同じトイレの使用」については独立した関連がみられなかった。Lancet Infectious Disease誌オンライン版2020年11月2日号に掲載。

成人ADHDに対するグアンファシン徐放性製剤の安全性、有効性~第III相延長試験

 昭和大学の岩波 明氏らは、成人の注意欠如多動症(ADHD)に対するグアンファシン徐放性製剤(GXR)の長期における安全性、有効性の評価を行った。BMC Psychiatry誌2020年10月2日号の報告。  本研究は、日本で行われた成人ADHDに対するGXRの非盲検長期第III相延長試験である。対象は、二重盲検試験から延長された成人ADHD患者150例および新規に登録された41例。1日1回のGXR投与を50週間継続した(開始用量:2mg/日、維持用量:4~6mg/日)。主要アウトカムは、治療による有害事象(TEAE)の頻度と種類とした。副次的アウトカムは、成人用ADHD評価尺度ADHD-RS-IV日本語版の合計スコアおよびサブスコア、コナーズの成人期ADHD評価尺度(CAARS)、臨床全般印象度の改善度(CGI-I)、患者による全般印象度の改善度(PGI-I)、QOL、実行機能の0週目からの変化とした。