日本語でわかる最新の海外医学論文|page:333

COVID-19アルファ株とデルタ株の組換え体を検出/感染研

 国立感染症研究所は、10月18日に同研究所のホームページでアルファ株とデルタ株の組換え体のウイルスを6体検出したと発表した。  この検体は8月12日~9月1日に採取された検体で、検体の遺伝子配列のアライメント解析を行ったところ、21A(デルタ)系統であるものの、ORF6遺伝子からN遺伝子にかけて、20I(アルファ、V1)系統と同一の変異プロファイルを有する配列が存在した。また、ORF6遺伝子とORF7a遺伝子の間に組換えが起きた箇所と考えられる部位が存在した。  遺伝子解読において、当該検体に2種類のウイルスが混入していた可能性を示す所見はなく、両変異株の同時感染や他検体の混入によるものではないと考えられる。

若年性認知症の特徴~千葉県での多施設調査

 若年性認知症は、65歳未満で発症した認知症と定義されており、頻度はまれであるものの、その社会的影響は大きい。千葉大学の平野 成樹氏らは、千葉県の認知症センター11施設における若年性認知症患者の診断や臨床的および社会的な特徴について調査を行った。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2021年8月26日号の報告。  レトロスペクティブに1年間調査を実施した。臨床診断、発症年齢、調査年齢、神経心理学的検査、家族歴、就業、生活状況に関するデータを収集した。  主な結果は以下のとおり。

コロナ外来患者へのアスピリン・アピキサバン投与は?/JAMA

 臨床的に安定した症候性新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、アスピリンまたはアピキサバンによる治療はプラセボと比較し複合臨床アウトカムを改善しなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJean M. Connors氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ACTIV-4B試験」の結果を報告した。急性期のCOVID-19入院患者は通常、抗血栓療法を受けるが、COVID-19外来患者における抗血栓療法のリスクとベネフィットは確立されていなかった。なお、本試験は、イベント発生率が予想より低かったため、予定症例数の9%が登録された時点で試験中止となった。JAMA誌オンライン版2021年10月11日号掲載の報告。

J&Jコロナワクチン、ギラン・バレー症候群発症が約4倍/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するAd26.COV2.Sワクチン(Janssen/Johnson & Johnson製)の接種により、ギラン・バレー症候群の発症リスクがわずかではあるものの統計学的に有意に高まることが、米国食品医薬品局(FDA)のEmily Jane Woo氏らの解析で明らかとなった。FDAは、承認後安全性サーベイランスにおいてAd26.COV2.Sワクチン接種後のギラン・バレー症候群発症に関し懸念を示していた。なお、著者は今回の結果について、「受動的な報告システムと推定症例の定義の限界があり、確定診断を下すための医療記録の分析が終わるまでは予備的なものと考えなければならない」との見解を述べている。JAMA誌オンライン版2021年10月7日号掲載の報告。

コロナワクチン3回目接種の有効率95.6%、第III相試験結果/ファイザー

 米国・ファイザーは10月21日に発表したプレスリリースで、同社の新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンについて、3回目のブースター接種の効果を検証した第III相臨床試験の結果、95.6%の有効性を示したことを公表した。ファイザー製ワクチンを巡っては、米国においては9月22日より、65歳以上および重症化リスクが高い18〜64歳、SARS-CoV-2への頻繁な曝露を伴う18〜64歳へのブースター接種がすでに実施されているほか、日本を含むワクチン使用国で検討が進んでいる。ファイザーは、「本結果はブースター接種のメリットを示すさらなるエビデンスを提供するものだ」とコメントしている。

週末のキャッチアップ睡眠とうつ病との関係

 週末のキャッチアップ睡眠とうつ病との関係を検討するため、韓国・延世大学校医科大学のKyung Min Kim氏らは、調査を行った。Sleep Medicine誌オンライン版2021年9月1日号の報告。  2016年の第7回韓国国民健康栄養調査のデータを用いて検討を行った。うつ病の定義は、こころとからだの質問票(PHQ-9)スコア10以上とした。キャッチアップ睡眠の時間は、0時間以下、0~1時間、1~2時間、2時間以上で分類した。  主な結果は以下のとおり。

PCI後心筋梗塞、クロピドグレルによるde-escalation戦略が好結果/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の安定した急性心筋梗塞(AMI)患者において、チカグレロルからクロピドグレル(ローディングなし)への非ガイド下でのde-escalation抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)戦略は、虚血リスクを増大することなく出血リスクを有意に低下し、12ヵ月までの臨床イベントリスク低下がチカグレロルを継続するDAPT戦略よりも優れている。韓国・カトリック大学議政府聖母病院のChan Joon Kim氏らによる同国32施設で実施した医師主導の多施設共同無作為化非盲検非劣性試験「TALOS-AMI試験」の結果を報告した。PCI後のAMI患者に対しては、クロピドグレルよりも強力なP2Y12受容体阻害薬を最大1年間投与することが推奨されているが、維持期に出血リスクが高い状態が続くことが懸念されていた。Lancet誌2021年10月9日号掲載の報告。

COPD増悪入院患者、肺塞栓症診断戦略の追加は?/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪で入院した患者において、通常治療に積極的な肺塞栓症(PE)の診断戦略を追加しても、通常治療のみと比較し複合的な健康アウトカムの有意な改善は認められないことが、スペイン・Universidad de AlcalaのDavid Jimenez氏らが同国18施設にて実施した、多施設共同無作為化非盲検試験「Significance of Pulmonary Embolism in COPD Exacerbations trial:SLICE試験」の結果、示された。PEはCOPDの増悪を呈した患者に多くみられることが報告されているが、増悪により入院したCOPD患者においてPEを積極的に検査することで臨床アウトカムが改善されるかどうかを評価した臨床試験はこれまでなかった。JAMA誌2021年10月5日号掲載の報告。

事実探求にはある程度の強引さも必要?(解説:野間重孝氏)

現在全国あちこちで心肺蘇生法の講習が行われている。可及的速やかに、最低限の動脈血流を維持することが生命予後に重大な影響を与えると考えられ、実際各方面から支持されているからである。ここで注意しなければならないのは、なぜ最低限の血流を保つことが重要であるかである。それは心肺系の機能維持のためではない。脳神経系の機能の維持が最大の目的なのである。脳は10~15秒間虚血が続くだけで重大な損傷を受ける。これに対して心筋は10~15分の虚血に晒されても、損傷は受けるものの回復が可能である。であるならば、心肺蘇生から回復した人の最大の予後規定因子は中枢神経系の損傷の程度であるはずである。本studyはこの事実を対象を広く取って最終的に証明してみせたものである。

ブレークスルー感染、重症化因子に肥満や心疾患

 ブレークスルー感染で重症化する患者の特性は何か。米国で行われた研究結果がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版9月7日号に掲載された。  イエール医科大学のPrerak V. Juthani氏らはイエール大学のヘルスケアシステムのデータを使い、SARS-CoV-2感染が確認された入院患者を対象としたシステマティックレビューを行った。2021年3月23日~7月1日にSARS-CoV-2で入院した患者(入院時にPCR検査で陽性)を対象とした。接種したワクチンはmRNA-1273(モデルナ製)、BNT162b2(ファイザー製)、Ad.26.COV2.S(Janssen製)で、ワクチンの完全接種は症状発現または検査陽性より少なくとも14日前にワクチン接種を完了(モデルナ・ファイザー製は2回、Janssen製は1回)していること、とした。

うつ病ケアに対する薬剤師介入の影響

 うつ病は、健康に重大な影響を及ぼす疾患である。うつ病患者の健康アウトカムを改善するために、薬剤師が関与した診療が役立つ可能性がある。タイ・シラパコーン大学のWaranee Bunchuailua氏らは、うつ病患者に対する薬剤師介入の影響を評価するため、ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Annals of Pharmacotherapy誌オンライン版2021年8月29日号の報告。  2019年12月までに報告された研究を国際データベース4件、国内データベース3件よりシステマティックに検索した。事前に定義した包括基準に基づき研究を選択し、バイアスリスク基準を用いて品質評価を行った。プールした推定値を分析し、相対リスク(RR)および標準平均差(SMD)を算出した。メタ解析において、研究間の不均一性が認められた場合には、変量効果モデルを用いた。

ファイザー製ワクチン後の心筋炎、非接種者と比較した発症率/NEJM

 mRNAワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)接種後の心筋炎の罹患率は、低率だが、とくに若い男性の2回接種者で増大すること、また臨床症状は概して軽症であったことを、イスラエル・Hadassah Medical CenterのDror Mevorach氏らが同国保健省のモニタリングデータを分析して報告した。イスラエルでは2021年5月31日時点で、約510万人がmRNAワクチン・BNT162b2の完全接種を受けている。同国保健省は、有害事象のモニタリングにおいて心筋炎が報告された早期の段階から積極的なサーベイランスを行っていたという。NEJM誌オンライン版2021年10月6日号掲載の報告。

ファイザー製ワクチン後の心筋炎、発症率と重症度/NEJM

 イスラエルの大規模医療システムにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)を1回以上接種した人の推定心筋炎罹患率は2.13/10万人で、16~29歳の男性の罹患率が最も高く、重症度は軽症~中等症だったという。イスラエル・Rabin Medical Center・Beilinson HospitalのGuy Witberg氏らが、1回以上接種者250万人超を調べた結果を報告した。心筋炎発症とCOVID-19のmRNAワクチン接種との関連を示唆する報告がされているが、これまで頻度や重症度について大規模な調査は行われていなかった。NEJM誌オンライン版2021年10月6日号掲載の報告。

抗うつ薬はいつまで続ければよいのか?(解説:岡村毅氏)

抗うつ薬をいつまで内服すればよいのかという質問をよく受ける。世間的には「ずっと内服させるなんて論外だ、精神科医よ、さっさと減量・中止させよ」という声が大きいと思う。ところが現実はそう単純ではない。それを説明しよう。うつ病エピソードで、恐る恐る、あるいは半信半疑で精神科の外来を初診した患者さんがいるとする。『うつ病ですよ、薬物治療をしたほうがいいですよ』と言うと、最初は「薬は嫌だなあ」とか「どうしても飲んだほうがいいですか?」という姿勢の方も多い。治療が順調に進むと、会社に復帰し、さまざまな症状が良くなって、本人も自信を取り戻す。また医師ともなじみの関係になってきて、外来で冗談の1つも言うようになる。月日がたち、医師の側が『ではそろそろ減量して中止しましょう』と言うと、「それはよかった」と喜ぶ人と、「でも再発は嫌だなあ、あんな体験は絶対に嫌だ、ずっと薬飲んじゃだめですか」という人がいる。

MASTER DAPT試験とその解釈、出血イベント定義の難しさ(解説:中川義久氏)

MASTER DAPT試験は、テルモ製のUltimasterステントを留置後に、高出血リスク患者における最適な抗血小板療法を検証した試験である。2021年欧州心臓病学会での発表と同時にNew England Journal of Medicine誌に論文が公表されるという快挙を達成した。日本発のステントを用いた研究であり、日本人医師としては悪い気はしないというか、爽快感もあるのが率直な感想である。このMASTER DAPT試験は、ステント留置から1ヵ月が経過した時点でDAPTから単剤治療に変更する群(短縮群)と、さらに最低2ヵ月以上DAPTを継続する群(継続群)にランダマイズし、割り付けから335日経過時点で両群の安全性と有効性を以下の3つの項目で評価している。

統合失調症と肥満~メタ解析

 統合失調症および抗精神病薬と代謝調整不全との関係は、現在十分に確立された知見が示されているが、肥満に対する影響についてはよくわかっていない。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのEmily Smith氏らは、肥満測定画像技術の所見を統合することにより、統合失調症患者の病状や治療に対する肥満の影響を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2021年8月30日号の報告。  2021年2月までに報告されたケースコントロール研究およびプロスペクティブ縦断研究を、MEDLINE、EMBASE、PsychINFO、Scopusより検索した。主要アウトカムは、体脂肪率、皮下脂肪、内臓脂肪を含む肥満関連の測定値とした。

尿路上皮がんに対する抗FGFR阻害薬とPD-1抗体の併用は有用な可能性(NORSE)/ESMO2021

 転移を有する尿路上皮がん(mUC)に対するerdafitinibとcetrelimabの併用は、erdafitinib単独よりも有用であることが、英国・Queen Mary University St. Bartholomew's HospitalのThomas Powles氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。  erdafitinibは線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の遺伝子異常を標的としたチロシンキナーゼ阻害薬で、2019年に米国で転移のある尿路上皮がんに対して迅速承認されている。一方、cetrelimabは抗PD-1抗体である(両剤ともに本邦未発売)。今回の発表はこの2剤併用の有用性を検討する第II相比較試験の中間解析結果。

急性期脳梗塞の血栓除去療法、直接吸引術併用は有効か/JAMA

 大血管閉塞による急性期脳梗塞患者の機械的血栓除去療法では、直接吸引術(ADAPT)とステント型血栓回収機器(ステントリトリーバー)の併用はステント型血栓回収機器単独と比較して、血栓除去療法終了時のほぼ完全/完全な再灌流の達成率を改善せず、ほとんどの有効性の副次エンドポイントにも差はないことが、フランス・University of Versailles and Saint Quentin en Yvelines, Foch HospitalのBertrand Lapergue氏らが実施した「ASTER2試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年9月28日号で報告された。

主幹脳動脈閉塞にステントリトリーバーと吸引カテーテルの併用は有効か?(解説:内山真一郎氏)

 前方循環系の主幹脳動脈閉塞による急性脳梗塞に対して、ステントリトリーバーと吸引カテーテルの併用をステントリトリーバーのみと比較した無作為化比較試験(ASTER2試験)がフランスで行われた。1次評価項目であった血管内治療終了後の完全またはほぼ完全な再開通率は両群間で有意差がなかったが、2次評価項目のうち、すべての程度の再開通率と、初回割り付け終了後のみの完全またはほぼ完全な再開通率は併用群で有意に高かった。1次評価項目に有意差がなかったのは試験の検出力不足に起因したと考察している。大型のフィブリン血栓はどちらかの治療のみで除去することは困難であり、両者の併用がより有効であろうと考えられている。今後は検出力を高めるため、さらに大規模な臨床試験が必要であろう。また、対象となる血栓の選択も重要と思われる。さらに、血栓除去デバイスの進歩とともに再開通率は飛躍的に向上したことから、今後の吸引カテーテルの機器の進歩にも期待したい。

新型コロナの日本初のレプリコン(次世代mRNA)ワクチン、第I相試験開始/VLPセラピューティクス・ジャパン

 新型コロナウイルス感染症に対する日本初となるレプリコン(次世代mRNA)ワクチン(VLPCOV-01)の第I相試験を開始したことを、VLP Therapeutics Japan合同会社(以下、VLPセラピューティクス・ジャパン)が12日、発表した。  レプリコン(次世代mRNA)ワクチンとは、少量の接種で十分な抗体が作られる自己増殖型のmRNAワクチン。現行のmRNAワクチンの10~100分の1程度の接種量となることから、短期間で日本の全人口分の製造が可能となることや、副反応の低減が期待される。現行のワクチンは新型コロナウイルス表面にある突起状のSタンパク質全体を抗原とするが、レプリコンワクチンはSタンパク質のうちウイルスが人の細胞に結合して感染する受容体結合部位(RBD)のみを抗原にしている。そのため、不要な抗体を作らないことによる高い安全性、多様なRBDへの抗体産生による変異株への効果も期待されるという。