家庭料理をターゲットに地域介入、減塩・降圧に効果/BMJ

家庭内の調理人と家族をターゲットとしたコミュニティベースの減塩教育やモニタリングが、食塩摂取量および血圧の低下に有効であったことを、中国・疾病予防管理センターのXiaochang Zhang氏らが報告した。中国6省6都市、60コミュニティの788家族を対象に行ったクラスター無作為化比較試験の結果で、著者は、「こうした介入は、食塩の主な摂取源が依然として家庭料理である中国および他国で、広く用いることができるだろう」と述べている。中国の食塩摂取量は推奨制限量の2倍を超えており、摂取が主に加工食品からの西欧諸国とは異なり、中国では76%が家庭料理に由来していることが報告されていたが、これまで家庭料理をターゲットとした介入の無作為化試験によるエビデンスはなかった。BMJ誌2023年8月24日号掲載の報告。
1年後の24時間尿中ナトリウム排出量の変化を評価
研究グループは、2018年10月~19年12月にかけて、中国6省6都市から60コミュニティ(各省から10コミュニティずつ)を募集してクラスター無作為化比較試験を行い、家庭料理と家族員を対象にデザインされた減塩介入の効果を評価した。各コミュニティから18~75歳の成人を26人ずつ(13家族から2人ずつ)集めた。参加条件は、週4日以上家庭料理を食べている家族で、日常的に調理を担当している家庭内の調理人と家族員(家庭内調理人の配偶者または複数の家族員が参加を希望する場合は性別が異なる家族を優先して選定)とした。
介入群の参加者は、減塩支援のための環境整備、減塩に関する6回の教育セッション、7日間の食塩摂取モニタリング(食塩および塩味調味料を計量し記録)などの介入を12ヵ月間にわたり受けた。対照群の参加者は、いずれの介入も受けなかった。
主要アウトカムは、12ヵ月の追跡期間中の、24時間尿中ナトリウム排泄量で測定した食塩摂取量の変化の群間差だった。
介入群は収縮期血圧(2.0mmHg)、拡張期血圧(1.1mmHg)も低下
788家族からの1,576人(男性775人[49.2%]、平均年齢55.8歳[SD 10.8])が、ベースライン評価を完了した。その後、30コミュニティの786人が介入群に、30コミュニティの790人が対照群に割り付けられた。試験中に、157人(10%)が追跡不能となり、介入群706人と対照群713人が追跡評価を完了した。12ヵ月の追跡期間中、24時間尿中ナトリウム排泄量が、介入群では4,368.7(SD 1,880.3)mgから3,977.0(1,688.8)mgへと減少したのに対し、対照群では4,418.7(1,973.7)mgから4,330.9(1,859.8)mgへの減少だった。調整混合線形モデル解析の結果、対照群と比較した介入群の24時間尿中ナトリウム排泄量は、24時間当たり336.8(95%信頼区間[CI]:127.9~545.7)mg減少した(p=0.002)。
収縮期血圧と拡張期血圧についても、それぞれ2.0(95%CI:0.4~3.5)mmHg、1.1(0.1~2.0)mmHg低下した(それぞれp=0.01、p=0.03)。適切な食塩摂取に関する知識や態度、行動についても、介入群で対照群に比べ有意に改善した。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
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地域ぐるみでの食事を作る家族への減塩指導が食塩摂取量を減少させ血圧を低下させる(解説:石川讓治氏)
コメンテーター : 石川 讓治( いしかわ じょうじ ) 氏
東京都健康長寿医療センター 循環器内科 部長
J-CLEAR推薦コメンテーター