日本語でわかる最新の海外医学論文|page:240

複雑性虫垂炎の術後抗菌薬投与2日間vs.5日間/Lancet

 複雑性虫垂炎に対する術後抗菌薬静脈内投与は、90日以内の感染性合併症または死亡に関して、2日間投与が5日間投与に対して非劣性であることが示された。オランダ・エラスムス大学医療センターのElisabeth M. L. de Wijkerslooth氏らが、同国15施設で実施したプラグマティックな非盲検無作為化非劣性試験「APPIC(antibiotics following appendicectomy in complex appendicitis)試験」の結果を報告した。複雑性虫垂炎に対する術後抗菌薬の適切な投与期間は明らかになっていない。抗菌薬耐性の脅威が世界的に高まっていることから、抗菌薬の使用を制限する必要があり、それによって副作用、入院期間や費用も削減できるとされている。著者は、「今回の結果は、豊富な資源がある医療環境で実施される腹腔鏡下虫垂切除術に適用される。この戦略により、抗菌薬の副作用の減少や入院期間の短縮が期待できる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年1月17日号掲載の報告。

フルボキサミン、軽~中等症コロナの症状回復期間を短縮せず/JAMA

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、フルボキサミン50mgの1日2回10日間投与はプラセボと比較し回復までの期間を改善しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果、示された。米国・Weill Cornell MedicineのMatthew W. McCarthy氏らが報告した。著者は、「軽症~中等症のCOVID-19患者に対して、50mg1日2回10日間のフルボキサミン投与は支持されない」とまとめている。JAMA誌2023年1月24日号掲載の報告。  ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた完全遠隔法による分散型臨床試験で、参加者の募集は2021年6月11日に開始され、現在も継続中である。

コロナ抗体薬エバシェルドの緊急使用許可を停止/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は1月26日、新型コロナウイルス抗体薬のチキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)について、緊急使用許可(EUA)を改訂し、本剤の使用を停止することを発表した。今回の改訂により、本剤に非感受性のSARS-CoV-2変異型が国内に占める割合が90%以下の場合に限り、使用が許可されることとなる。本改訂に基づき、エバシェルドはFDAから追って通知がない限り、米国での使用が許可されない。

日本における片頭痛オンライン診療の現状

 2020年3月以降、COVID-19パンデミックによりオンライン診療の必要性が高まっている。日本では2022年4月に、ほとんどの疾患に対するオンライン診療が正式に開始された。長野・こむぎの森 頭痛クリニックの勝木 将人氏は、オンライン診療のみで治療を行った日本人頭痛患者の初の症例集積研究となる、初診から3ヵ月間の治療成績を報告した。その結果、オンライン診療のみで治療を行った3ヵ月の時点で、Headache Impact Test-6(HIT-6)スコア、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)の有意な改善が認められた。著者は、オンライン診療は頭痛治療におけるアンメットニーズを解決するために普及することが期待されると、本報告をまとめている。Cureus誌2022年11月3日号の報告。

BA.4/5対応ワクチンの中和抗体価とT細胞応答/NEJM

 2022年8月末に米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可し、その後、日本の厚生労働省でも特例承認されたモデルナ製とファイザー製のオミクロン株BA.4/5対応2価ワクチンについて、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのAi-ris Y. Collier氏らの研究グループが、これらのワクチンの追加接種における免疫原性について検証した。その結果、追加接種によって中和抗体価は著しく上昇するが、T細胞応答は実質的に増大しないことが示され、過去の抗原曝露による免疫の刷り込みの影響が示唆された。本結果は、NEJM誌オンライン版2023年1月11日号のCORRESPONDENCEに掲載された。

心不全へのトラセミドvs.フロセミド、全死亡に有意差なし/JAMA

 心不全で入院後退院した患者において、トラセミドvs.フロセミドは追跡期間中央値17.4ヵ月で全死亡に有意差は認められなかった。米国・デューク大学のRobert J. Mentz氏らが、米国の60施設で実施したプラグマティックな非盲検無作為化試験「TRANSFORM-HF(Torsemide Comparison With Furosemide for Management of Heart Failure)試験」の結果を報告した。フロセミドは心不全患者において最も一般的に用いられているループ利尿薬であるが、トラセミドの有用性を示唆する研究も散見されていた。JAMA誌2023年1月17日号掲載の報告。

骨折後の血栓予防、アスピリンvs.低分子ヘパリン/NEJM

 手術を受けた四肢骨折患者、または手術有無を問わない骨盤・寛骨臼骨折患者の血栓予防において、アスピリンは致死的イベント抑制に関して低分子ヘパリンに非劣性を示すことが示された。アスピリンによる深部静脈血栓症・肺塞栓症・90日での全死亡の発現頻度は低かった。米国・メリーランド大学のRobert V. O'Toole氏らMajor Extremity Trauma Research Consortium(METRC)が、米国およびカナダの外傷センター21施設で実施した医師主導の実用的多施設共同無作為化非劣性試験「Prevention of Clot in Orthopaedic Trauma trial:PREVENT CLOT試験」の結果を報告した。臨床ガイドラインでは、骨折患者に対する血栓予防に低分子ヘパリンが推奨されている。しかし、低分子ヘパリンの有効性をアスピリンと比較した試験はこれまでなかった。NEJM誌2023年1月19日号掲載の報告。

true worldにおけるAMI治療の実態を考える(解説:野間重孝氏)

急性心筋梗塞(AMI)の治療成績・予後の決定因子としては、発生から冠動脈再開通までの時間(total ischemic time:TIT)のほか、年齢、基礎疾患や合併症、血管閉塞部位と虚血領域の大きさ、血行動態破綻の有無などが挙げられる。この中でもっぱら時間経過が改善項目として議論されるのは、他の因子は医療行為によっては動かすことができず、時間経過のみが可変因子であるからである。

世界初「NASH治療用アプリ」の効果を臨床試験で確認/東大

 肥満を背景に発症する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、国内に200万人程度(予備軍は推定1,000万人以上)存在すると考えられているが、確立された治療法がなく、減量のための栄養指導や医師からの運動の励行など、個々の施設の取り組みにとどまっているのが現状である。そこで、東京大学医学部附属病院検査部の佐藤 雅哉氏らの研究グループは、疾患治療用プログラム医療機器の開発を手がけるCureAppと共同開発した「NASH治療用アプリ」を用いた第II相試験を実施し、その有用性が認められた。本研究結果は、American Journal of Gastroenterology誌オンライン版2023年1月20日号に掲載された。

mobocertinib、EGFR exon20挿入NSCLCに中国で承認/武田

 武田薬品工業は、2023年1月13日、プラチナベース化学療法で進行したEGFR exon20挿入変異陽性(exon20 ins)の進行非小細胞肺がん(NSCLC)治療に対するmobocertinibの適応を、中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)が承認したと発表。  mobocertinibは、exon20挿入変異を標的として設計された経口TKIで、NMPAのブレークスルーセラピーとして審査された。

腎移植後のコロナワクチン3回目接種、抗体陽性率は71%/名大

 大きな手術後の患者に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを接種した場合、抗体価にどのような変化があるのだろうか。この疑問に藤枝 久美子氏(名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学)らの研究グループは、腎移植後の患者における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン2回接種後から3回接種後の抗体価の変化を調査した。その結果、3回目のワクチン接種により抗体獲得率が上昇し、腎移植後の方におけるワクチン追加接種の重要性が示された。

不眠症におけるレンボレキサント長期治療中止後の影響

 不眠症に対する長期的な薬物療法を中止すると、リバウンドや禁断症状が出現し、最適でない治療につながる可能性がある。琉球大学の高江洲 義和氏らは、レンボレキサントの第III相臨床試験の事後分析を行い、不眠症治療におけるレンボレキサント長期治療中止後の影響を評価した。その結果、レンボレキサントは反跳性不眠リスクが低く、6~12ヵ月後の長期治療後に突然中止した場合でも、その有効性が維持されることを報告した。Clinical and Translational Science誌オンライン版2022年12月23日号の報告。

妊婦の罹患・死亡リスク、オミクロン株優勢中に増大/Lancet

 新型コロナウイルスのオミクロン株が懸念される変異株となった半年間について調べたところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を受けた妊婦は、MMMI(maternal morbidity and mortality index、妊婦の罹患率・死亡率指数)リスクが増大していたことが明らかにされた。とくに、ワクチン未接種の重症COVID-19妊婦で、同リスク増大はより顕著だった。また、COVID-19の重症合併症に対するワクチンの有効性は、完全接種(2回またはAd26.COV2.Sワクチン1回)で48%と高かった。英国・オックスフォード大学のJose Villar氏らが、4,618人の妊婦を対象に行った大規模前向き観察試験「INTERCOVID-2022試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2023年1月17日号で発表された。

オミクロン株対応2価ワクチン、4回目接種の有用性は?/NEJM

 1価・2価のオミクロン株(B.1.1.529)BA.1系統対応BNT162b2(ファイザー製)ワクチンは、BNT162b2ワクチン(30μg)と同様の安全性プロファイルを有し、祖先株とオミクロン株BA.1系統に対して顕著な中和反応を示した。また、程度は低いものの、オミクロン株亜系統のBA.4、BA.5、BA.2.75も中和した。米国・アイオワ大学のPatricia Winokur氏らが、BNT162b2ワクチン30μgを3回接種した55歳超1,846例を対象にした無作為化比較試験で明らかにし、NEJM誌2023年1月19日号で発表した。

HER2陽性進行乳がん2次治療におけるトラスツズマブ・デルクステカンがOSを延長(解説:下村昭彦氏)

2022年末のサンアントニオ乳がんシンポジウムで発表され、Lancet誌に同時掲載されたDESTINY-Breast03試験の全生存期間(OS)の解析で、トラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)のトラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)に対する優越性が統計学的に示された。DESTINY-Breast03試験は、HER2陽性乳がん2次治療におけるトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)とトラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)を直接比較した第III相試験である。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は、OS解析時点で28.8ヵ月vs.6.8ヵ月(ハザード比[HR]:0.33、95%信頼区間[CI]:0.26~0.43)と、イベントが集まってきたことでT-DXd群のPFS中央値が明らかとなった(初回の解析時点ではT-DXd群のPFSは未到達であった)。副次評価項目の全生存期間(OS)はいずれの群も変わらず未到達であったが、OSのHR:0.64(95%CI:0.47~0.87、p=0.0037)であり、統計学的有意にT-DXd群で良好であった(前回の解析時点では有意差が示されなかった)。サブグループ解析でもすべてのサブグループでT-DXd群で良好な傾向を示し、T-DXdがHER2陽性乳がん2次治療の標準治療として確立した。

マクロファージは裏切り者!?肺がんの増殖を促進か/大阪大

 大阪大学大学院医学系研究科の石井 優氏らの研究グループは、肺胞マクロファージが、細胞の増殖および分化の調節、神経細胞の生存など、さまざまな生物活性を有するサイトカイン「アクチビンA」を介して、肺がんの増殖を促進させる悪循環を形成していることを初めて明らかにした。肺胞マクロファージは、正常の肺では最も数の多い免疫細胞の1つで、肺機能の維持に重要な役割を果たしていると考えられている。一方、肺がん細胞と肺胞マクロファージとの詳細な関係については、これまでほとんど解明されていなかった。本研究結果はNature Communications誌2023年1月17日号に掲載された。

双極性障害患者の概日活動リズムと日常的な光曝露との関係~APPLEコホート横断分析

 概日活動リズムの乱れは、双極性障害の主な特徴の1つである。藤田医科大学の江崎 悠一氏らは、日常生活における光曝露が双極性障害患者の概日活動リズムの乱れと関連しているかを調査した。その結果、双極性障害の概日活動リズムに対し、日中の光曝露は良い影響をもたらし、夜間の光曝露は悪影響を及ぼすことが確認された。Journal of Affective Disorders誌2023年2月15日号の報告。  日常生活における光曝露と双極性障害の病状との関連を調査したコホート研究「APPLEコホートスタディ」に参加した双極性障害外来患者194例を対象に、横断研究を行った。対象患者の身体活動および日中の照度は、連続7日間にわたりアクチグラフを用いて測定した。夜間の寝室照度の測定には、ポータブル照度計を用いた。概日活動リズムのパラメータは、コサイナー法およびノンパラメトリックな概日リズム解析を用いて算出した。

持続性AF、PVI+左房後壁乖離術で不整脈の再発率は改善せず/JAMA

 持続性心房細動(AF)患者に対する初回カテーテルアブレーションでは、肺静脈隔離術(PVI)に左房後壁隔離術(PWI)を追加しても、PVI単独と比較して12ヵ月の時点での心房性不整脈の再発回避の割合は改善されず、複数回の手技後の再発回避にも差はないことが、オーストラリア・アルフレッド病院のPeter M. Kistler氏らが実施した「CAPLA試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年1月10日号に掲載された。  CAPLA試験は、3ヵ国(オーストラリア、カナダ、英国)の11施設が参加した医師主導の無作為化臨床試験であり、2018年7月~2021年3月の期間に患者の登録が行われた(メルボルン大学Baker Department of Cardiometabolic Healthの助成を受けた)。  年齢18歳以上、症候性の持続性AFで、初回カテーテルアブレーションを受ける患者が、PVI+PWIを行う群またはPVI単独群に無作為に割り付けられた。PVIでは、左右の肺静脈の周囲を広範に焼灼し、PVI+PWIでは、これに天蓋部(roof ablation line)と底部(floor ablation line)の焼灼が追加された。

マインドフルネスも運動も認知機能に影響を与えないというネガティブデータをどう読み解くか(解説:岡村毅氏)

自覚的な物忘れがある地域在住高齢者で、Short Blessed Testというスクリーニング検査で認知症相当ではない人、つまり軽度認知障害なども含まれる地域の人々を、[1]マインドフルネス、[2]運動、[3]マインドフルネスと運動、[4]健康学習(対照群)の4群に分けて介入したが、[1]~[4]まですべてエピソード記憶や遂行機能に差が出ないという結果であった。脳画像においても差が出ていない。惨憺たる結果である。この領域で研究をしている者としては二重に残念な結果であった。まずはFINGER研究(フィンランドからやってきた食事・運動・認知・生活習慣の複合介入で認知機能を改善するというもの)がいつも再現されるわけではなさそうだということ。FINGER研究はなぜかわが国ではファンが多く、多くの似たような研究が行われていると聞くので、悲しい気持ちでこの結果を読む人がいるであろうことを考えると、なかなかつらい。

対側乳がんリスク、生殖細胞変異で違いは?/JCO

 乳がん女性における対側乳がんリスクは年間0.5%と推定され、生殖細胞変異の有無、人種/民族、診断時年齢、閉経状態が大きく影響する。今回、米国・Mayo ClinicのSiddhartha Yadav氏らが、ATM、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2の生殖細胞系列病的変異を有する女性における対側乳がんリスクを推定したところ、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2の変異を有する女性でリスクがかなり高いことがわかった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年1月9日号に掲載。