日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1002

〔CLEAR! ジャーナル四天王(1)〕 久しぶり・・・電気的除細動と抗不整脈薬をテーマとした無作為化比較試験

 2000年代前半にN Engl J Medに発表され、衝撃を与えたAFFIRM、RACE試験以来、電気的除細動や抗不整脈薬に関する研究は息をひそめていたので、久しぶりという感のする論文である。「一定期間の洞調律時によって電気的リモデリングが回復するならば、長期的な抗不整脈薬投与は不要となる」という仮説を検証したものである。結果的に、本無作為化比較試験は、この仮説の正当性を実証することができなかったといえる。

ARBを含まない3剤併用療法で1ヵ月以内に30mmHgの降圧を達成:レニン阻害薬+Ca拮抗薬+利尿薬

 今や、ARB+Ca拮抗薬+利尿薬の3剤併用療法が降圧治療におけるゴールデンスタンダードとして繁用されている。この3剤以外の併用療法で、強力な降圧効果が期待できる組み合わせは存在するのか?2009年、わが国においてもレニン阻害薬アリスキレン(販売名=ラジレス)が登場し、10余年ぶりの新しい作用機序の降圧薬が治療のラインナップとして加わったが、Lacourcière氏らはアリスキレンを含めた3剤併用療法が2剤併用療法に比べ、有意に強力な降圧効果を発揮することをJournal of Hypertension誌に発表した。なお、この論文は出版前の7月22日に公開された。3剤併用療法では降圧治療開始から2週以内に、2剤併用療法より優れた治療経過を示した。

慢性期統合失調症患者に新たな一手!「高酸素吸入療法」

 神経障害に対する高酸素療法については、いくつかの研究で肯定的な結果が示されている。また、統合失調症患者では脳への酸素供給を増加させることにより、ミトコンドリア機能障害によるエネルギー代謝障害や前頭葉機能低下が改善される可能性がある。Bloch氏らは統合失調症の有用な治療法として高酸素吸入療法が選択肢となりうると考え、検討を行った。J Clin Psychopharmacol誌2012年8月号の報告。

インスリン療法中の2型糖尿病患者は厳格な大腸がんスクリーニングが必要

 2型糖尿病患者では、内因性高インスリン血症に起因する大腸腺腫および大腸がんのリスクが高い。外因性のインスリン療法はより高い大腸がん発生率と関連している。今回、ペンシルバニア大学のPatricia Wong氏らは、大腸内視鏡検査を実施した50~80歳の2型糖尿病患者における横断研究を行い、2型糖尿病患者における慢性的なインスリン療法が大腸腺腫のリスクを増加させ、また投与期間が長いほどオッズ比が増加したことを報告した。Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌オンライン版2012年8月9日号に掲載。

高齢者の白内障、手術で大腿骨頸部骨折リスク16%低下

白内障の診断を受けた高齢者は、白内障手術を受けたほうが受けない場合に比べ、1年間の大腿骨頸部骨折リスクは約16%低下するとの結果が報告された。米国・ブラウン大学のVictoria L. Tseng氏らが、メディケア受給者110万人超について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月1日号で発表した。視覚障害は骨折のリスク因子であることは明らかにされているが、白内障手術と骨折リスクとの関連についてはこれまでほとんど報告されていないという。

心不全患者への有酸素運動指導、うつ症状を軽減

慢性心不全患者に対し、有酸素運動指導を行うことで、うつ症状が有意に軽減することが示された。また長期の総死亡・入院リスクについても、わずかな低下が認められた。米国・デューク大学メディカルセンターのJames A. Blumenthal氏らが、約2,300人について行った無作為化比較試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月1日号で発表した。心不全患者でうつ症状が認められるのはその4割にも上り、またうつ症状がアウトカムの増悪につながることが、これまでの研究でわかっているという。

糖尿病に対する積極的な降圧はどの程度のベネフィットをもたらすか ーメタアナリシスよりー

 McBrien氏らは、2型糖尿病に対する積極的な降圧は、脳卒中発症のリスクをわずかに減少させることができるが、死亡リスク、心筋梗塞発症リスクを減少させられないことを、無作為化比較試験のメタアナリシスより示した。Arch Intern Med誌に発表されたこの解析結果は、8月6日よりONLINE FIRSTとして公開されている。

高齢者のQOL低下に深く関わる「うつ」

 高齢になればなるほど、生活の質(QOL)が低下することがわかっている。とくに認知症患者では、顕著なQOL低下をきたす。Weiss氏らは各ステージのアルツハイマー型認知症(AD)患者、軽度認知障害(MCI)患者、健常高齢者のQOLを評価し、高齢者におけるQOLの予測因子についてうつ病など気分障害が関与していることを報告した。Neuropsychiatr誌オンライン版2012年7月27日号の報告。

ゲームのやり過ぎは「うつ病」発症の原因か?!

 ここ10年の間にオンラインゲームは急速に広まり、それに伴うさまざまな問題に注目が集まっている。しかしながら、過度なオンラインゲームの利用が精神症状に与える影響に関する報告は多くない。Wei氏らはインターネット調査によりオンラインゲーマーの特性を明らかにし、オンラインゲーム利用時間と社会不安障害、うつ病との関係を検証した。BMC Psychiatry誌オンライン版2012年7月28日号の報告。

太り過ぎの乳がん患者の二次原発がんリスクは有意に高い!肥満による大腸がん発症の相対リスクは1.89

乳がん患者における二次原発がん発生率とBMI(Body Mass Index)との関連が、いくつかの観察研究で検討されている。この関連の強さを評価するために、フランスのDruesne-Pecollo N氏らがエビデンスの系統的レビューとメタアナリシスを行った。解析の結果、肥満により二次原発がんのリスクは有意に増加することが認められ、太り過ぎや肥満の患者を減少させるための予防対策が重要であることが示唆された。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2012年8月5日号における報告。

病床規制の問題3 誘発された看護師引き抜き合戦

亀田総合病院 小松 秀樹 2012年8月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 千葉県は極端に医師、看護師が不足している。このため相当数の許可病床が稼働していない。平成23年度千葉県保健医療計画によると、平成20年末の千葉県の人口10万対医療施設従事医師数、就業看護職員数のいずれも、全国45位だった。しかも、埼玉県、神奈川県と並んで全国屈指のスピードで高齢化が進行しつつある。これに伴い医療・介護の需要が急速に増加しつつある。

最新版QRISK2、高い心血管疾患リスク予測能を確認

心血管疾患の10年リスクの予測において、英国で開発されたQRISK2は、従来から同国で使用されてきた米国のFraminghamモデルの修正版に比べ予測能が優れることが、オックスフォード大学のGary S Collins氏らの調査で示された。最近まで、英国では国立医療技術評価機構(NICE)による修正版Framinghamモデルが用いられてきたが、リスクの過大評価が指摘されていた。QRISK2は自国の大規模コホートのデータに基づいて開発され、2008年の発表後、2010年、2011年と改訂が進められているが、診断能を客観的に評価するには改訂リスク予測モデルの外的妥当性の検証が必要とされる。BMJ誌2012年7月28日号(オンライン版2012年6月21日号)掲載の報告。