最新版QRISK2、高い心血管疾患リスク予測能を確認

提供元:ケアネット

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公開日:2012/08/10

 

心血管疾患の10年リスクの予測において、英国で開発されたQRISK2は、従来から同国で使用されてきた米国のFraminghamモデルの修正版に比べ予測能が優れることが、オックスフォード大学のGary S Collins氏らの調査で示された。最近まで、英国では国立医療技術評価機構(NICE)による修正版Framinghamモデルが用いられてきたが、リスクの過大評価が指摘されていた。QRISK2は自国の大規模コホートのデータに基づいて開発され、2008年の発表後、2010年、2011年と改訂が進められているが、診断能を客観的に評価するには改訂リスク予測モデルの外的妥当性の検証が必要とされる。BMJ誌2012年7月28日号(オンライン版2012年6月21日号)掲載の報告。

QRISK2-2011の予測能を前向きコホート試験で評価
研究グループは、英国のプライマリ・ケア受診患者コホートにおける心血管疾患の10年リスクを予測する最新版QRISK2(QRISK2-2011)の予測能を評価し、QRISK2の旧版(QRISK2-2008、QRISK2-2010)およびNICE版Framingham方式との比較を行うプロスペクティブなコホート試験を実施した。

英国の364のプライマリ・ケア施設が参加するThe Health Improvement Network(THIN)データベースに、1994年6月27日~2008年6月30日までに登録されたデータから、30~84歳の208万4,445人(1,186万2,381人・年)、9万3,564件の心血管イベントを抽出した。

主要評価項目は、診療録に記載された心血管疾患(心筋梗塞、狭心症、冠動脈心疾患、脳卒中、一過性脳虚血発作)の初回診断とした。

良好な予測能、高リスク検出能、キャリブレーションを確認
QRISK2-2011に関する独立の外的妥当性の検証では、NICE版Framingham方式に比べ良好な予測能を示した。QRISK2-2011は、NICE版Framingham方式よりも心血管疾患の高リスク者の検出能が優れていた。

キャリブレーション(心血管疾患の予測された10年リスクと実際の10年リスクの一致)は、QRISK2-2011では75~85歳でわずかに予測リスクが実際のリスクを上回っていたものの全体としてはほぼ一致していたのに対し、NICE版Framingham方式には明らかな過大予測がみられ、35~74歳の男性で約5%過大に予測し、女性では全年齢を通じて予測リスクが上回っていた。

QRISK2-2011とQRISK2-2008の間に、心血管疾患リスクの予測能やキャリブレーションに大きな差はなかった。これら2つのモデルは閾値(>20%を高リスクと定義)のベネフィットも同等であり、いずれもNICE版Framingham方式に比べ優れていた。

著者は、「QRISK2-2011は、NICE版Framingham方式に比べ識別能やキャリブレーションが優れる有用なモデルと考えられる」と結論し、「現行のNICE版Framingham方式による高リスクの閾値は、男性、女性ともに臨床的ベネフィットはないと考えられる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)