日本語でわかる最新の海外医学論文|page:11

糖尿病患者の認知症リスク低減、GLP-1薬とSGLT2阻害薬に違いは?

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)およびSGLT2阻害薬と2型糖尿病患者のアルツハイマー病およびアルツハイマー病関連認知症(ADRD)のリスクを評価した結果、両剤はともに他の血糖降下薬と比較してADRDリスクの低下と関連しており、GLP-1薬とSGLT2阻害薬の間には有意差は認められなかったことを、米国・University of Florida College of PharmacyのHuilin Tang氏らが明らかにした。JAMA Neurology誌2025年4月7日号掲載の報告。  GLP-1薬およびSGLT2阻害薬とADRDリスクとの関連性はまだ確認されていない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1薬およびSGLT2阻害薬に関連するADRDリスクを評価するために、2014年1月~2023年6月のOneFlorida+ Clinical Research Consortiumの電子健康記録データを使用して、無作為化比較試験を模倣するターゲットトライアルエミュレーションによる検証を実施した。対象は50歳以上の2型糖尿病患者で、ADRDの診断歴または認知症治療歴がない者とした。ADRDは臨床診断コードを用いて特定した。

既治療のEGFR exon20挿入変異NSCLCへのzipalertinib(REZILIENT1)/ASCO2025

 EGFR exon20挿入変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、2024年にアミバンタマブが使用可能となった。しかし、アミバンタマブで病勢進行が認められた場合や有害事象などによって中止となった場合、アミバンタマブが使用できない場合の治療選択肢は確立していない。そこで、新規EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のzipalertinibが開発されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Helena Alexandra Yu氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、EGFR exon20挿入変異を有する既治療のNSCLC患者を対象とした国際共同第I/II相試験「REZILIENT1試験」の第IIb相の結果を報告した。本試験において、zipalertinibはプラチナ製剤を含む化学療法±アミバンタマブによる治療歴のあるNSCLC患者においても有効であることが示唆された。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年6月1日号に同時掲載された。

CDK4/6+AI治療後に進行したHR+/HER2-転移乳がん、ipatasertib+フルベストラントがPFS改善(CCTG/BCT MA.40/FINER)/ASCO2025

 CDK4/6阻害薬+アロマターゼ阻害薬(AI)による1次治療後に病勢進行したホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)転移乳がん患者において、経口AKT阻害薬ipatasertib+フルベストラント併用療法は、プラセボ+フルベストラントと比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に延長した。カナダ・BC Cancer AgencyのStephen K. L. Chia氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの41施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(CCTG/BCT MA.40/FINER試験)の結果を発表した。

コロナワクチン、デマ対策より「接種開始時期」が死亡者数に大きく影響か/東大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいて、世界中でさまざまな誤情報が拡散した。ワクチンの有効性や安全性に関する内容も多く、これらの誤情報がワクチン忌避につながったことが多くの先行研究で報告されている。東京大学国際高等研究所新世代感染症センターの古瀬 祐気氏と東北大学大学院医学系研究科の田淵 貴大氏の研究グループは、ワクチンに関する誤情報が、日本における新型コロナワクチン接種率およびCOVID-19による死亡者数に及ぼした影響について、数理モデルを用いた反実仮想シミュレーションによって解析した。その結果、誤情報対策による接種率の変動よりも、ワクチン導入のタイミングが、死亡者数抑制により大きな影響を与えた可能性が示された。本結果はVaccine誌2025年6月20日号に掲載。

FUS-ALSの治療、jacifusenが有望/Lancet

 融合肉腫(fused in sarcoma:FUS)の病原性の変異体に起因する筋萎縮性側索硬化症(FUS -ALS)において、FUS pre-mRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤であるjacifusenは、安全で有効性が期待できる治療薬となる可能性があることが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのNeil A. Shneider氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月22日号で報告された。  研究グループは、FUS-ALSの治療におけるjacifusenの安全性、薬物動態、バイオマーカー、臨床データ、病理所見などの評価を目的に、医師主導型の多施設共同非盲検症例集積研究を行った(ALS Associationなどの助 融合肉腫(fused in sarcoma:FUS)の病原性の変異体に起因する筋萎縮性側索硬化症(FUS -ALS)において、FUS pre-mRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤であるjacifusenは、安全で有効性が期待できる治療薬となる可能性があることが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのNeil A. Shneider氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月22日号で報告された。

軽症~中等症COVID-19、40種の薬物療法を比較/BMJ

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する40種の薬物療法のうち、ニルマトレルビル/リトナビルとレムデシビルは入院を減少させる可能性が高く、コルチコステロイド全身投与とモルヌピラビルは、この2剤ほどではないが同様の効果を有する可能性があり、アジスロマイシンなどは、症状の解消までの時間を短縮する可能性が高いことが、カナダ・McMaster UniversityのSara Ibrahim氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年5月29日号に掲載された。

胃がん周術期、FLOTにデュルバルマブ上乗せでEFS改善(MATTERHORN)/ASCO2025

 欧米において、化学療法FLOT(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)は切除可能な胃がんにおける術前術後の標準治療だが、再発率は依然として高い水準にある。胃がんにおける免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、切除不能例において化学療法との併用で承認されているが、術前術後療法では承認されていない。  MATTERHORN試験は切除可能な胃がん患者を対象に、術前術後療法としてFLOTにICIであるデュルバルマブ上乗せの有用性をみた試験である。

統合失調症とうつ病における幻聴の違いは

 統合失調症および統合失調症様疾患では、4人に 3人以上の患者が幻聴を経験しているのに対し、うつ病では、6%の患者に幻聴が認められると報告されている。この2つの疾患における幻聴の鑑別は、診断および予後予測において重要である。インド・Dr D.Y. Patil Medical CollegeのTahoora Ali氏らは、統合失調症とうつ病における幻聴の特徴を比較した。Industrial Psychiatry Journal誌2025年1~4月号の報告。  対象は、3次医療の精神科センターの入院患者より抽出された統合失調症およびうつ病患者110例。社会人口統計学的情報、臨床的特徴に関連する情報、幻聴評価尺度の特徴を含む本検討のために設計されたプロフォーマを用いて、評価を行った。

進行尿路上皮がん1次治療、EV+ペムブロリズマブによるCR・PR症例の探索的解析結果(EV-302/KEYNOTE-A39)/ASCO2025

 局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の1次治療において、エンホルツマブ ベドチン(EV)+ペムブロリズマブ併用療法と化学療法の有効性を比較したEV-302/KEYNOTE-A39試験の探索的解析の結果、EV+ペムブロリズマブ群で完全奏功(CR)を達成した患者の割合は化学療法群の約2倍であり、レスポンダー(CR+部分奏功[PR]症例)では適切な用量調整のもとで長期間治療を継続していることが明らかとなった。米国・Cleveland Clinic Taussig Cancer InstituteのShilpa Gupta氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

乳がん内分泌療法に伴うホットフラッシュにelinzanetantが有効(OASIS-4)/ASCO2025

 HR+乳がんの内分泌療法に伴うホットフラッシュなどの血管運動神経症状(VMS)はQOLに影響し、アドヒアランスを低下させ乳がんの転帰を悪化させるが、有効な治療法はほとんどなく承認された薬剤もない。今回、内分泌療法を受けているHR+乳がん治療中もしくは乳がん発症リスクが高い女性を対象に、ニューロキニン(NK)-1,3受容体拮抗薬elinzanetant(EZN)の有用性を検討した多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第III相OASIS-4試験の結果を、ポルトガル・ABC Global AllianceのFatima Cardoso氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で報告した。本試験において、EZNが内分泌療法に伴うVMSの頻度と重症度を早期に減少させ、その効果は52週まで継続し、忍容性も良好であったという。この結果はNEJM誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された。

がん患者のワクチン接種率を上げるカギは医療者からの勧め/日本がんサポーティブケア学会

 第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会において、国立がん研究センター東病院の橋本 麻子氏は「がん患者を対象としたワクチン接種に関する2年間のアンケート調査」の内容をもとに、がん患者におけるワクチン接種の実態と課題について発表した。  がん患者は、治療や疾患の進行に伴って免疫機能が低下していることが多く、感染症予防は非常に重要である。そのため、学会などでも季節性インフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹、新型コロナウイルスワクチンの定期接種が推奨されている。

好奇心は加齢に伴い減退する?

 ある種の好奇心は、高齢になっても増していくようだ。好奇心とは一般に、新しい情報や環境を学び、経験し、探索したいという欲求のことを指す。これは、個人の比較的安定した性格的な傾向としての「特性好奇心」と、特定の物事に反応して情報を得ようとする一時的な「状態好奇心」に分けられる。新たな研究では、加齢に伴い「特性好奇心」は減退する一方で、「状態好奇心」は強まることが明らかにされた。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の心理学者であるAlan Castel氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に5月7日掲載された。

コントロール不良の高血圧、zilebesiran単回投与の上乗せが有効/JAMA

 インダパミド、アムロジピンまたはオルメサルタンによる治療下でコントロール不良の高血圧患者において、RNA干渉薬zilebesiran単回投与の追加により、プラセボと比較して3ヵ月時の収縮期血圧(SBP)の有意な低下が認められ、重篤な有害事象の発生は少なかったことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAkshay S. Desai氏らが北米、英国など8ヵ国の150施設で実施した第II相無作為化二重盲検比較試験「KARDIA-2試験」で示された。高血圧患者を対象とした先行の単剤投与試験では、zilebesiranの単回皮下投与により3ヵ月時および6ヵ月時の血清アンジオテンシノーゲン値およびSBPの低下が認められていた。JAMA誌オンライン版2025年5月28日号掲載の報告。

GLP-1/GCG作動薬mazdutideの減量効果は?/NEJM

 肥満または体重関連合併症を有する過体重の中国人成人において、GLP-1/グルカゴン受容体デュアルアゴニストのmazdutide 4mgまたは6mgの週1回32週間投与により、臨床的に意義のある体重減少が認められたことを、中国・Peking University People's HospitalのLinong Ji氏らGLORY-1 Investigatorsが同国23施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GLORY-1試験」の結果で報告した。インクレチンベースのデュアルアゴニスト療法は肥満に対して有効であることが示されており、mazdutideは第II相試験において肥満または過体重の中国人成人の体重減少が示されていた。NEJM誌オンライン版2025年5月25日号掲載の報告。

局所進行膵腺がん、腫瘍治療電場療法(TTフィールド)の上乗せでOS延長(PANOVA-3)/ASCO2025

 切除不能局所進行膵腺がん(LA-PAC)患者において、腫瘍電場治療(TTフィールド)と化学療法の併用が全生存期間(OS)の改善を示した。  LA-PAC患者を対象にTTフィールドとゲムシタビン+nabパクリタキセル(GnP)の有用性を評価する第III相PANOVA-3試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、米国・Virginia Mason Medical CenterのVincent Picozzi氏から発表された。

進行尿路上皮がん維持療法、アベルマブ+SGがPFS改善(JAVELIN Bladder Medley)/ASCO2025

 1次化学療法後に病勢進行のない切除不能の局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の維持療法として、アベルマブ+サシツズマブ ゴビテカン(SG)併用療法はアベルマブ単剤療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善した。米国・Johns Hopkins Greenberg Bladder Cancer InstituteのJeannie Hoffman-Censits氏が、第II相国際共同無作為化非盲検比較試験(JAVELIN Bladder Medley試験)の中間解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。なお、この内容はAnnals of oncology誌オンライン版5月30日号に同時掲載された。

EGFR-TKI既治療のNSCLC、HER3-DXdの第III相試験結果(HERTHENA-Lung02)/ASCO2025

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による治療歴を有するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、patritumab deruxtecan(HER3-DXd)は、無増悪生存期間(PFS)を改善したものの、全生存期間(OS)を改善することはできなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Tony S. K. Mok氏(中国・香港中文大学)が、国際共同第III相試験「HERTHENA-Lung02試験」の結果を報告した。すでに主要評価項目のPFSが改善したことが報告されており、OSの結果が期待されていた。

ESR1変異のER+/HER2-進行乳がん、vepdegestrantがフルベストラントよりPFS改善(VERITAC-2)/ASCO2025

 CDK4/6阻害薬と内分泌療法で病勢が進行したエストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がん患者を対象に、vepdegestrantとフルベストラントの有効性と安全性を比較した第III相VERITAC-2試験の結果、ESR1変異を有する患者においてvepdegestrant群の無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したことを、米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。本研究は、2025年5月31日のNEJM誌オンライン版に同時掲載された。

抗精神病薬の減量、D2受容体親和性と再発との関連

 抗精神病薬維持療法は、初回エピソード精神疾患の再発予防に有効であるが、抗精神病薬使用患者の多くは、寛解後に副作用、長期的な健康上の懸念、スティグマ、自立への希望から、抗精神病薬の減量または中止を望むことは少なくない。現在のガイドラインでは、抗精神病薬の漸減が推奨されているが、とくに初発エピソードから寛解した患者における最適な漸減スピードは依然として不明である。また、抗精神病薬のD2受容体親和性によっても再発リスクに影響を及ぼす可能性がある。オランダ・University of GroningenのShiral S. Gangadin氏らは、初回エピソード精神疾患患者における寛解後の抗精神病薬減量と再発リスクとの関係およびD2受容体親和性の影響を評価した。World Psychiatry誌2025年6月号の報告。

口唇ヘルペスウイルスがアルツハイマー病リスクと関連か

 単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)感染がアルツハイマー病(AD)発症リスクと関連しており、抗ヘルペス薬の使用がそのリスクを低減する可能性が、米国の大規模リアルワールドデータを用いた後ろ向き症例対照研究で示された。本研究は、米国・ギリアド・サイエンシズのYunhao Liu氏らにより実施された。BMJ Open誌2025年5月20日号に掲載。  本研究では、米国の大規模民間保険請求データベース「IQVIA PharMetrics Plus」を用い、2006~21年の間にADと診断された50歳以上の患者34万4,628例を特定し、年齢、性別、地域、データベース登録年、医療機関受診回数でマッチングした同数の対照者を1対1の割合で抽出し、後ろ向きマッチング症例対照研究を実施した。