日本語でわかる最新の海外医学論文|page:972

血中プロニューロテンシン値、生活習慣病発症・死亡リスクと関連

 血中プロニューロテンシンが、生活習慣病に関するバイオマーカーとして期待できるのか、スウェーデン・ランド大学のOlle Melander氏らが検討した結果、空腹時血中プロニューロテンシン値が、糖尿病、心血管疾患、乳がんの発症、および全死亡率、心血管死亡率と有意に関連することが示されたと報告した。主に中枢神経系や消化管で発現する13-アミノ酸ペプチドのニューロテンシンは、実験的試験で満腹感や乳がん細胞の増殖を制御することが知られるが、乳がんや心血管代謝疾患の発症における役割、有用性についてはほとんどわかっていなかった。JAMA誌2012年10月10日号掲載報告より。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(29)〕 抗血栓薬やスタチン薬時代においてβ遮断薬の有用性は証明されず

 心筋梗塞後の症例に対するβ遮断薬処方は、すでに標準治療として定着している。これは多数のエビデンスに基づいているが、その多くはすでに10年以上以前のものである。はたして、今日のようにPCIが一般的になり、かつスタチン薬や抗血小板薬治療などが普及した今日においてもなお、β遮断薬の有用性はあるのであろうか。またβ遮断薬は、冠動脈疾患症例や高リスク症例に対しても有用と思われがちだが、その有用性は必ずしも証明されている訳ではない。それが本論文におけるメタ解析のアンチテーゼである。

統合失調症の症状悪化に関連?「喫煙」「肥満」の影響

 これまで多くの研究者が、統合失調症などの精神疾患患者における不規則な生活がその後の症状や治療と関連しているかどうかを検討している。Cerimele氏らは統合失調症や双極性障害患者における健康リスク行動(health risk behaviors)が、その後の症状や機能レベルに関連づけられるかを検証するため、システマティックレビューを行った。Gen Hosp Psychiatry誌オンライン版2012年10月5日号の報告。

アピキサバンのリスク・ベネフィットバランスは?

すでにアピキサバンは、AVERROES試験により、心房細動患者に対し、アスピリンよりも脳卒中発症を減少させることが明らかになっている。この度、出血パターンや出血リスクを明らかにすることを目的としたAVERROES試験のサブ解析が発表された。その結果、アピキサバンは、アスピリンに比べ、ベースの脳卒中リスクによらず、リスクとベネフィットのバランスにおいて期待できることが明らかとなった。Flaker GC氏らによる報告(Stroke誌オンライン版2012年10月2日号掲載)。

てんかん治療の術前評価/切除が標準化、一方で困難な患者が増大

術前評価と手術はてんかん治療の標準となりつつある。ドイツ・ボン大学医療センターのBien氏らは、1988~2009年の単一施設での治療実績の傾向を調べた。その結果、てんかん手術は、とくに明確に定義された局所病変を有する患者において効果が高いことが明らかになったと報告。一方で、調査をした同施設では、困難な患者が増えており、術前評価前のてんかん症状を有した期間が延びていることにも言及した。J Neurol Neurosurg Psychiatry誌オンライン版2012年10月10日号の報告。

乾癬の発生率、赤道から遠く離れるほど高い?

世界的な乾癬の発生率および有病率は、十分には明らかとなっていない。英国・マンチェスター大学のParisi R氏らは、住民ベースで検討された文献を適格としたシステマティックレビューを行った。その結果、年齢や地域によって格差があることなどが明らかとなった。著者は、乾癬の発生率と有病率を調べることで疾病負荷への理解を深めることができたと述べるとともに、さらなる乾癬疫学や時間経過に伴う発生率の傾向などの理解を深め、既存の知見とのギャップを埋める必要があると指摘している。J Invest Dermatol誌2012年9月27日号の掲載報告。

アルツハイマー病の興奮、抗精神病薬をどう使う?

アルツハイマー病患者にしばしばみられる精神症状や興奮、攻撃性に苦慮することは少なくない。このような症状に対し抗精神病薬が使用されることもあるが、使用中止による症状再発の危険性は確立されていない。Devanand氏らは、アルツハイマー病患者の精神障害や興奮に対する抗精神病薬の使用を中止した際の再発リスクを検証した。N Engl J Med誌2012年10月18日号の報告。

慢性腰痛症患者の年間医療費、非慢性腰痛症患者の倍

慢性腰痛症の治療と関連医療費について後ろ向きに検証した結果、診察費や処方薬といった直接的なコストだけでも、患者にとって相当な経済的負担があることが明らかにされた。慢性腰痛症は一般的な健康問題である。英国・ロンドン大学経済社会科学部のHong J氏らが、GPリサーチデータベース(GPRD)から、慢性腰痛症の治療に関連する12ヵ月分の医療費を分析し報告した。Spine誌オンライン版2012年10月2日号の掲載報告。

患者アウトカムの公表は医師を萎縮させる?

 患者アウトカムの公表(public reporting)は、ケアの質改善の重大なツールとなるが、一方で一部の人々からは、臨床医に高リスク患者を回避させることにつながるのではないかとの懸念がある。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のKaren E. Joynt氏らは、メディケア患者のアウトカムについて、公表している州としていない州とを比較した。検討は、心筋梗塞患者の経皮的冠動脈介入(PCI)実施率と死亡率との関連で、その結果、公表している州のほうが実施率が低い傾向が認められたという。しかし、全急性心筋梗塞の死亡率の差は認められなかったと報告した。JAMA誌2012年10月10日号掲載報告より。

心臓手術における抗線溶薬アプロチニンは安全性に懸念が残る:メタ解析/BMJ

 心臓手術における抗線溶薬アプロチニンの使用について、カナダ・オタワ病院のBrian Hutton氏らはメタ解析の結果、断定的なことは言えないとしながらも、観察データを含めれば安全性に関して懸念が残ることが示唆されたと述べ、トラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)やイプシロンアミノカプロン酸がより安全で効果的な選択肢であると結論づけた。アプロチニンは安全性の理由から2008年以降、市場供給が停止されていたが、最近、ヨーロッパとカナダで再上市されたという。BMJ誌2012年9月11日号より。

100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増、最大の死因は自殺、とくに若者で

英国・Hergest UnitのHealy D氏らは、統合失調症および関連する精神病の死亡動向について、20世紀初頭と直近とを比較するコホート研究(1875~1924年コホートvs.1994~2010年コホート)を行った。その結果、死亡率は4倍に増大しており、最大の死因は自殺であることなどが明らかとなった。筆者は、「死亡率は大幅に増大した。しかしながら特定領域については介入が可能であり、解析データは、早期介入が、統合失調症患者に標準的な寿命を与える可能性があることを示している」とまとめた。BMJ誌オンライン版2012年10月8日号の掲載報告。

喫煙者のほうが頭頸部の悪性黒色腫リスクが低い!?

喫煙と皮膚がんのリスクの関連性は、十分に解明されていない。今回、Fengju Song氏らは、米国における2つの大規模コホートにおいて、悪性黒色腫、基底細胞がん(BCC)、扁平上皮がん(SCC)のリスクをプロスペクティブに検討し、頭頸部における悪性黒色腫のリスクと喫煙とは逆相関していることを報告した。International Journal of Epidemiology誌オンライン版2012年10月11日号に掲載。

HATCH scoreは、カテーテルアブレーション後の心房細動再発の独立した予測因子とはなりえない

HATCH scoreは、カテーテルアブレーション後の心房細動再発の予測因子とはなりえないことが示された。HATCH scoreは、発作性心房細動の持続性への進展予測因子として知られている。今回の研究では、HATCH scoreがカテーテルアブレーション後の再発を予測する因子となるか検討された。中国のTang RB氏らによる報告(Chin Med J誌2012年10月号掲載)。

バイポーラの躁症状に対するアリピプラゾールの位置付けは?

近年、わが国では双極性障害に適応を有する薬剤が次々と承認されている。従来、気分安定薬を中心とした薬剤が主流であったが、非定型抗精神病薬も使用可能となった。双極性障害患者の急性躁症状に対し、明確な薬理学的および副作用プロファイルを有するアリピプラゾールをどのように使用すべきだろうか。英国のDratcu氏らは、双極性障害患者の急性躁症状に対し、アリピプラゾールの豊富な使用経験を有する英国の医療専門家による委員会にて議論を行った。Int J Psychiatry Clin Pract誌2012年10月号の報告。

外傷性出血患者へのトラネキサム酸投与、重症度を問わず死亡リスクを減少

 外傷性出血患者の死亡および血栓イベントに関するトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)投与の効果について検討した、国際多施設共同無作為化試験「CRASH-2」データ解析の結果、トラネキサム酸投与は重症度を問わず幅広い患者に、安全に投与可能であることが明らかにされた。英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのIan Roberts氏らによる報告で、BMJ誌2012年10月6日号(オンライン版2012年9月11日号)で発表した。