日本語でわかる最新の海外医学論文|page:880

避難所で発症した消化性潰瘍、約9割が出血性―東日本大震災後の症例対照研究

 避難所生活は、大規模災害後における出血性潰瘍の強力なリスク因子であることが、東北大学大学院の菅野 武氏らによる研究で明らかになった。著者らは「大規模災害時には、酸抑制薬を使用するなど、ストレス誘発性消化性潰瘍を減少させることが重要である」と結論づけている。Journal of gastroenterology誌オンライン版2014年2月15日号の報告。

アブレーションは発作性心房細動の第一選択になりうるか/JAMA

 未治療の発作性心房細動(AF)患者に対する高周波アブレーションvs. 抗不整脈薬治療について検討した結果、高周波アブレーションのほうが2年時点の心房性頻脈性不整脈の発生率が低かったことが、カナダ・マックマスター大学のCarlos A. Morillo氏らによる無作為化試験の結果、示された。現行ガイドラインでは、発作性AFの第一選択治療は抗不整脈薬治療が推奨され再発減少に有効である一方で、高周波アブレーションは抗不整脈薬治療に失敗した場合の第二選択治療として推奨されている。しかしながら先行研究では、第一選択治療としての位置づけをさらに検討すべきであることを示唆する報告がなされていた。JAMA誌2014年2月19日号掲載の報告より。

アルツハイマー病の焦燥性興奮にシタロプラムは有効か/JAMA

 アルツハイマー病とみられ焦燥性興奮(agitation)を呈し心理社会的介入を受けている患者に対して、SSRI薬のシタロプラムの追加治療は、焦燥性興奮および介護者の負担を有意に減少することが、米国・ロチェスター大学医歯学部のAnton P. Porsteinsson氏らによるプラセボ対照の無作為化試験の結果、示された。ただし、認知機能や心臓への有意な有害作用もみられ、臨床で用いることが可能な用量には限界があることも判明した。先行研究でシタロプラムは、認知症の焦燥性興奮や攻撃性に対する有効性が示唆されていたが、エビデンスは限定的であり、著者らは有効性および安全性、忍容性の検討を行った。JAMA誌2014年2月19日号掲載の報告より。

大気汚染微粒子状物質の長期暴露による冠動脈疾患発生リスク増大への警鐘(コメンテーター:島田 俊夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(179)より-

 これまで大気汚染微粒子状物質(PM)の暴露による冠動脈疾患への影響に関しては、米国、英国などからすでに報告があり、大気中のPM2.5, coarse PM(2.5-10.0), PM10の一定増量分/m3が冠動脈疾患イベントを増大させる、させないと一見矛盾したものも散見される。世界中で大気汚染の問題は年々深刻さの度合いを増し、とくにアジアにおいては、経済発展に伴いPMの健康被害の問題は避けて通れない大きな社会問題となっている。本論文はBMJ2014年1月21日号に掲載された時流を反映した論文であり、私見を加えコメントする。

HDLコレステロールは乳がんリスクと逆相関する~仏・全国的コホート研究

 コレステロール、とくに高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールが抗酸化および抗炎症特性により発がんに影響しうるというメカニズムは、いくつかの実験的研究によって報告されている。しかし、特定の脂質代謝のバイオマーカーとがんリスクとの関連を調べた前向き研究の結果は一定ではない。仏・パリ13大学のMathilde His氏らは、総コレステロール、HDLコレステロール、低比重リポ蛋白コレステロール、アポリポ蛋白A1およびB、中性脂肪について、乳がん、前立腺がん、およびがん全体のリスクとの関連を調査した。その結果、総コレステロール、HDLコレステロール、アポリポ蛋白A1の血清レベルが、がん全体および乳がんリスクと逆相関することが示唆された。European journal of epidemiology誌オンライン版2014年2月13日号に掲載。

統合失調症の認知機能改善に、神経ステロイド追加

 統合失調症治療に関して、認知機能障害をターゲットとしたさまざまな研究が行われている。イスラエル・Tirat Carmel Mental Health CenterのAnatoly Kreinin氏らは、最近発症した統合失調症(SZ)および統合失調感情障害(SA)における認知機能障害に対し、抗精神病薬に神経ステロイドであるプレグネノロン(PREG)を追加した場合の有用性を検討した。その結果、PREGの追加により視覚認知、注意集中欠如、実行機能などの改善が認められたことを報告した。Clinical Schizophrenia & Related Psychoses誌オンライン版2014年2月4日号の掲載報告。

新しい喘息治療薬、FF/VIへの期待

 フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)/ビランテロール(VI)配合剤(商品名:レルベア)は、新しい吸入器(エリプタ)を用いた気管支喘息に対する新規吸入用散剤であり、ICS/LABA配合剤としては、世界初の1日1吸入タイプの薬剤である。国立病院機構東京病院の大田 健氏らは、FF/VIの現時点におけるエビデンスをまとめ、「使用が簡便であることから、アドヒアランスや喘息コントロールを改善させうる可能性があり、実医療下で高い効果が期待できる薬剤であると考えられる」と報告した。アレルギー・免疫誌2014年1月号の掲載報告。

乳がんの病理学的完全奏効は代替エンドポイントとして不適/Lancet

 乳がんの病理学的完全奏効は、無再発生存率(EFS)や全生存率(OS)との関連はほとんどなく、代替エンドポイントとしては不適であることを、米国FDAのPatricia Cortazar氏らが、12試験を対象としたプール解析の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2014年2月14日号掲載の報告より。

禁煙によって精神的な健康が得られる/BMJ

 禁煙は不安やうつ症状を軽減し、精神的QOLやポジティブ感情を向上する効果があり、その効果量は抗うつ薬療法と同等以上であることが、英国・バーミンガム大学のGemma Taylor氏らが行った、26試験についてのメタ解析の結果、明らかにされた。BMJ誌オンライン版2014年2月13日号掲載の報告より。

C型慢性肝炎は3ヵ月の経口内服薬で90%以上治癒する時代へ―副作用のないIFNフリー療法が目前に―(コメンテーター:溝上 雅史 氏、是永 匡紹 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(178)より-

 C型慢性肝炎に対する最新治療は、週1回のペグインターフェロン(PegIFN)注射とPegIFNの有効性を高めるリバビリン(RBV)に、直接ウイルスに作用する抗ウイルス剤(シメプレビル:SMV)を内服する3剤併用療法である。治療期間は24週間、前治療でウイルスが感度未満にならない(Non-Viral Response:NVR)一部の難治例を除けば、ウイルス排除(Sustained Viral Response:SVR)率は90%を超える。しかし、わが国のC型慢性肝炎患者の多くは65歳以上の高齢者のため、副作用が多いIFN治療そのものが導入できない現状があり、「IFNフリー=副作用が少ない治療」が必要不可欠である。

双極性障害に抗うつ薬は使うべきでないのか

 双極性障害I型およびII型は、現在の標準治療が行われている場合でも、うつ病を認める患者の割合が著しく高い。双極性障害I型患者では、病気の経過中または発症時から治療を受けていてもフォローアップ期間の50%において有症状を認め、未解決の症状の75%はうつ病である。一方で、典型的な双極性うつ病の特徴として、抗うつ薬治療への反応が不良で治療抵抗性うつ病(TRD)を呈したり、抗うつ薬による躁病の発症リスクがきわめて高いこと、などが広く認識されている。しかし、このことは、利用可能な研究報告で一貫した支持を得ているわけではない。米国・マクリーン病院のLeonardo Tondo氏らは、双極性障害において高頻度に認められるTRDについて、関連研究を調べた。その結果、比較試験はわずか5件であったが、無比較試験10件も含めた利用な可能な研究から、双極性障害のTRDは必ずしもすべての治療に抵抗性ではなく、抗うつ薬は有効である可能性が示唆されたという。また、抗うつ薬により躁転リスクが高まるとの懸念に対しては、その程度はさほど大きくないとの見解を示した。Current Psychiatry Reports誌2014年2月号の掲載報告。

インスリン使用患者の実態が明らかに~早期の人ほど悪い血糖コントロール~

 2014年2月25日(火)都内にて、インスリン自己注射を行う2型糖尿病患者407名の意識調査をテーマにセミナーが開かれた(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社主催)。演者である東京医科大学の小田原 雅人氏(内科学第三講座 主任教授)は、「血糖コントロールが悪い人ほど、罹病期間が短い」という調査結果を受け、早期からの積極的コントロールの必要性をあらためて強調した。

生体腎提供によって末期腎不全のリスクは高まるか/JAMA

 生体腎移植のドナーが末期腎不全(ESRD)を有するリスクは、適合健常非ドナーと比べ有意に高いが、非スクリーニング一般集団と比べると、絶対リスクの増加はわずかであることが明らかにされた。米国ジョンズ・ホプキンス大学のAbimereki D氏らが、米国の生体腎ドナー9万6,217例を追跡調査して報告した。これまで腎ドナーのESRDリスクについて、一般集団との比較は行われておりリスクが高いことが報告されていた。しかし、非スクリーニング一般集団という高リスク集団との比較は行われておらず、ドネーション後の後遺症をより適切に推定しうるスクリーニング健常非ドナーとの検討も十分ではなかった。著者は、「今回の結果は、生体腎提供を考えている人への検討材料の一助となるだろう」とまとめている。JAMA誌2014年2月12日号掲載の報告より。

BRCA遺伝子変異乳がん、両側乳房切除で死亡リスクが5割低下/BMJ

 BRCA遺伝子変異保有者で乳がんステージI・IIの患者について、対側乳房の切除を行ったほうが片側乳房切除よりも、20年死亡リスクが48%低いことが、カナダ・トロント大学のKelly Metcalfe氏らが行った後ろ向き分析の結果、示された。先行研究で、BRCA1もしくはBRCA2遺伝子に変異を有する女性の乳がんリスクは60%であり、片側乳房の診断後15年以内の対側乳房のがんリスクは34%であることが示されている。これまでの検討では、対側乳房の切除は乳がんリスクを低減するが、乳がん死の減少は示されていなかった。著者は、「BRCA遺伝子変異保有者や若年の乳がん発症患者には、両側乳房切除の選択肢が検討されるべきである」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年2月11日号掲載の報告より。

精神疾患におけるグルタミン酸受容体の役割が明らかに:理化学研究所

 理化学研究所 脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームの窪田 美恵氏らは、気分障害および統合失調症におけるグルタミン酸受容体のADAR2とRNA編集(RNA editing)の役割を明らかにした。両者の剖検脳から、気分障害および統合失調症ではADAR2発現の低下が認められ、同低下がAMPAグルタミン酸受容体でのRNA編集の減少と関連していることが示唆されたという。これらの所見を踏まえて著者は、「ADAR2発現低下によるAMPA受容体のRNA編集の効率が、精神疾患の病態生理に関与している可能性がある」と述べている。Molecular Brain誌2014年1月号の掲載報告。

オピオイドの慢性腰痛への短期効果

 慢性腰痛に対するオピオイドの使用が著しく増加しているが、利点とリスクは明らかになっていない。今回、2007年のコクランレビューがコロンビア・Hospital Pablo Tobon UribeのLuis Enrique Chaparro氏らによりアップデートされ、慢性腰痛の短期治療においてオピオイドはプラセボに比し疼痛をやや改善し、機能障害もわずかながら改善することが示された。

StageII/III大腸がんでのD3郭清切除術「腹腔鏡下」vs「開腹」:ランダム化比較試験での短期成績(JCOG 0404)

 臨床的StageII/IIIの大腸がんに対して、日本のオリジナルであるD3リンパ節郭清を伴う腹腔鏡下手術の有効性および安全性はいまだ明らかではない。JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)により、全生存期間について開腹手術に対する腹腔鏡下手術の非劣性を検討するランダム化比較試験が実施されているが、今回、D3郭清を伴う腹腔鏡下手術の短期成績における安全性および臨床的ベネフィットが報告された。Annals of surgery誌オンライン版2014年2月6日号に掲載。なお、主要評価項目の解析結果については2014年のうちに報告される予定。