日本語でわかる最新の海外医学論文|page:770

経鼻インフルエンザワクチン、卵アレルギー児も接種可?/BMJ

 卵アレルギーのある未成年者(2~18歳)を対象に、卵成分を含む弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)の安全性について検討した結果、卵アレルギーのある児でLAIVによる全身性アレルギー反応が起きるリスクは低く、またコントロール良好な喘息児への同接種について忍容性が認められるとの見解が示された。英国インペリアル・カレッジ・ロンドンPaul J Turner氏らが国内30施設778例を対象とした非盲検第IV相介入試験の結果、報告した。英国では小児予防ワクチンスケジュールに経鼻LAIVが導入されたが、卵アレルギーは頻度が高く、就学前児童では2~6%に及ぶとされる。卵アレルギーや喘息を有する未成年者へのLAIV接種に関する安全性データは限定的で、ガイドラインの中には、喘息持ちの5歳未満児でのLAIV接種は避けるよう勧告するものもあった。BMJ誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。

第2世代抗うつ薬と認知行動療法、アウトカムは同等/BMJ

 大うつ病性障害の初期治療において、第2世代抗うつ薬投与および認知行動療法(CBT)の治療効果や有害作用は同等であることを、米国・ノースカロライナ大学のHalle R. Amick氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。すでに第2世代抗うつ薬およびCBTの、大うつ病性障害における効果および有害性は実証されている。しかし、プライマリケア医からは、最適な治療オプションを選択できるよう質の高い治療比較のエビデンスを求める声が寄せられていた。BMJ誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。

高齢者のSU薬とワルファリンの併用、低血糖リスク増大/BMJ

 高齢者のワルファリンとスルホニル尿素薬(SU薬)の同時服用は、SU薬単独服用時に比べ、低血糖による病院救急部門受診・入院リスクを約1.2倍に増大することが、また、転倒リスクも約1.5倍に増大することが明らかにされた。米国・南カリフォルニア大学のJohn A. Romley氏らが、65歳以上のメディケア出来高払いプラン加入者の保険請求データを基に後ろ向きコホート試験を行った結果、示されたという。著者は、「結果は、これら薬物間の重大な相互作用の可能性を示唆するものだ」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年12月7日号掲載の報告。

重症肺気腫に気管支バルブ治療は有用か/NEJM

 気管支バルブ治療が葉間側副換気がない重症肺気腫患者の、肺機能および運動耐容能を有意に改善したことが、オランダ・フローニンゲン大学のKarin Klooster氏らによる無作為化試験の結果、報告された。一方向性の気管支バルブを用いた気管支鏡下肺容量減少療法は、重症肺気腫患者の治療として有望視されているが、これまでに報告された有益性はわずかなものであった。一方で先行研究において、葉間側副換気がない患者における有益性の可能性が示唆されており、研究グループはその仮説について検証した。NEJM誌2015年12月10日号掲載の報告。

血栓吸引療法に引導は渡ったか?TOTAL試験1年追跡(解説:香坂 俊 氏)-463

このところ血栓吸引療法の旗色がよろしくない。(1)急性心筋梗塞では冠動脈内でプラークが破裂し、血栓を形成する。(2)その血栓はバルーンやステントを行う前に吸引しておいたほうが良さそうだ。(3)実際、小規模のランダム化試験ではうまくいった(TAPAS試験)。この三段論法で、とくに日本のカテーテルインターベンション(PCI)の現場では広く行われてきた。自分たちでもKiCSという関東一円の多施設共同PCIレジストリで集計してみたところ、ST上昇心筋梗塞症例に対するPCIの実に65.4%で血栓吸引が行われていた。

コリンエステラーゼ阻害薬の副作用、全世界の報告を分析

 アルツハイマー病(AD)に対してコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)が臨床使用できるようになって以来、AD患者におけるChEIの副作用スペクトラムを評価する世界的な医薬品安全性監視(ファーマコビジランス)研究は実施されていない。カナダ・ラバル大学のEdeltraut Kroger氏らは、WHO国際医薬品モニタリングプログラムのデータベース(VigiBase)を用い、16年にわたるADにおけるChEI関連副作用を分析した。その結果、精神神経系障害の副作用が最も多いこと、心血管系障害の副作用の重要性が過小評価されていた可能性があることなどを示した。結果を踏まえ、著者らは「患者のフレイルや高頻度の併用薬使用によっては、ChEIの投与を開始する前に副作用について注意が必要である」とまとめている。Annals of Pharmacotherapy誌2015年11月号(オンライン版2015年8月31日号)掲載報告。

ADHD発症にトリプトファンが関連か

 ノルウェー・ベルゲン大学のTore Ivar Malmei Aarsland氏らは、成人の注意欠如・多動症(ADHD)とトリプトファンおよびその代謝物の血清中濃度との関連を検討した。その結果、トリプトファン、キヌレン酸、キサンツレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸などの血清中濃度低値、およびコチニンの血清中濃度高値がADHDと有意に関連していたことを報告した。必須アミノ酸のトリプトファンは、主にキヌレニン経路によって異化される。一方で、慢性炎症状態およびうつ病や統合失調症などいくつかの神経精神障害において、循環血中キヌレニン濃度に変化が認められるとの報告があり、また候補遺伝子研究により、キヌレニン異化に関連する遺伝子とADHDとの関連が示唆されていた。さらに、ADHD患者はうつ病や不安をしばしば併存していることが報告されており、研究グループは、ノルウェーの成人ADHD患者および成人対照における血清キヌレニン濃度を検討した。Behavioral and Brain Functions誌2015年11月号の掲載報告。

「怠薬防止」に統合失調症治療のカギあり

 「統合失調症のリカバリー実現に向けた有力な治療選択肢」というテーマで、大塚製薬株式会社主催のプレスセミナーが2015年12月9日に開催された。統合失調症患者は社会コミュニティに参加できないことも多く、患者は苦しみを抱えている。患者のQOLを向上し、健常人と変わりない生活を続けてもらう、いわゆる「リカバリー」を実現するためには、どのような点が重要となるのだろうか。

過度のHbA1c検査が糖尿病治療の過剰化をもたらす/BMJ

 血糖コントロールが安定した2型糖尿病患者の多くでは、糖化ヘモグロビン(HbA1c)の検査回数が多過ぎ、そのため血糖降下薬による治療が過剰となる可能性があることが、米国メイヨークリニックのRozalina G McCoy氏らの検討で示された。米国では、インスリン製剤を使用せずに血糖コントロールが達成、維持され、直近の糖尿病関連の急性合併症がみられない成人2型糖尿病患者(妊婦を除く)には、年に1~2回のHbA1c検査が推奨されている。一方、HbA1cの検査回数が多いと保健医療における冗長性(redundancy)や無駄が増えることが報告されているが、これらの試験は規模が小さいため、過剰なHbA1c検査が治療に及ぼす影響の評価は難しいという。BMJ誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。

うつ病の新規発症予防へ、早期介入プログラム

 うつ病の新規発症への認知行動予防(CBP)プログラムは、早期に開始するほど有効であり、6年後も明らかな効果がみられるなど持続的効果があることが明らかにされた。米国・ピッツバーグ大学医学部のDavid A. Brent氏らが、通常ケアと比較した無作為化比較試験の結果、報告した。両親がうつ病歴を有する子供は、青年期にうつ病や機能障害を発症するリスクがある。しかし、青年期うつや機能障害に対する予防プログラムの長期効果については知られていなかった。今回の結果を踏まえ、著者らは「CBPの効果は、ブースターセッションの追加や両親のうつ病に対する同時治療により増強される可能性がある」と述べている。JAMA Psychiatry誌2015年11月号の掲載報告。

腰椎分離症の新たな後方固定術、成績良好

 腰椎分離症に対する手術療法の成績は比較的良好であるが、現在の手術法には隣接椎間の変性、軟部組織の損傷、適応の制限などまだ多くの限界がある。中国・West China Hospital of Sichuan UniversityのXing Rong氏らは、wiltseアプローチを用いた分離部修復を伴うISOBAR TTLによる腰椎後方固定の有効性を後ろ向き研究で評価した。

大腸がんスクリーニングの受診率を高めるには/Lancet

 英国・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのJane Wardle氏らは、NHS大腸がんスクリーニングプログラム(ASCEND)の受診に関する、社会経済的格差低減のための戦略を明らかにするため、4つのエビデンスのある受診勧奨の介入(小冊子配布など)について検討を行った。その結果、効果が認められたのは、スクリーニングの申し込みを再度促すバナー付きリマインダーレター送付の介入であったという。英国では国家的な大腸がんスクリーニングプログラムが行われているが、受診状況は社会経済的状況によってばらつきがあるという。研究グループは、スクリーニングの健康ベネフィットを改善するため、この格差を低減するための4つの介入について検討を行った。Lancet誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。