日本語でわかる最新の海外医学論文|page:691

凝固因子の補充は止血効果がないのか?(解説:今中 和人氏)-653

かねてより、出血多量例ではFFPによる凝固因子を含む血清タンパクのまんべんない補充ではなく、特定の凝固因子の補充によって止血を図るべきだ、との考えが提唱され、凝固カスケードの最終ステップに位置するフィブリノゲン濃縮製剤が、とくに期待されてきた。

テロ襲撃後のPTSDやうつ病、2年前のバルド国立博物館襲撃事件より

 2015年3月18日、2人の武装勢力がチュニジア・チュニスのバルド国立博物館を襲撃し、23人の外国人観光客が犠牲となった。チュニジア・University of Tunis El ManarのFeten Fekih-Romdhane氏らは、人口統計学的要因および社会的支援に関連した、襲撃4~6週間後の博物館勤務者のPTSD(心的外傷後ストレス障害)とうつ症状を評価し、PTSDとうつ症状の決定要因および予測因子を分析した。Community mental health journal誌オンライン版2017年2月7日号の報告。

僧帽弁閉鎖不全へのMitraClip、日本できわめて良好な初期成績~日本循環器学会

 重度の僧帽弁不全症(MR)への新たな治療法として期待されている新規デバイスMitraClip(アボットバスキュラージャパン社)の有効性と安全性に関する30日結果が、3月17~19日に金沢市で開催された第81回日本循環器学会学術集会にて発表された。本試験には全国6施設における、中等度~重度(3+)もしくは重度(4+)の閉鎖不全症(DMR)、または、機能性僧房弁閉鎖不全症(FMR)で、LVEF≧30%、STSスコア≧8%の外科的手術が難しい患者が参加した。クリップでの処置が不適な病変を有する患者や予後が1年未満である患者などは除外された。被験者の平均年齢は80歳超であり、平均STSスコアが約10%の高リスクな層であった。

看護師主導のケアモデルがインスリン導入を促進/BMJ

 看護師主導の新たなケアモデル「Stepping Upモデル」により、プライマリケアにおけるインスリン導入率が増加し、精神的安定が維持されHbA1cが改善することが示された。オーストラリア・メルボルン大学のJohn Furler氏らが、2型糖尿病患者のインスリン導入標準化と血糖コントロール改善のため、Stepping Upモデルの有効性を通常ケアと比較した無作為化試験の結果、報告した。2型糖尿病において早期に血糖コントロール目標を達成し維持することは、長期予後を改善するが、プライマリケアにおいては段階的な治療の強化、とくにインスリン導入に対する障壁があり、介入には限界があった。BMJ誌2017年3月8日号掲載の報告。

冠動脈疾患に、ヘテロ接合体LPL遺伝子変異が関与/JAMA

 リポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子の稀有な機能障害性変異(ヘテロ接合体)は、トリグリセライド高値および冠動脈疾患(CAD)と有意に関連していることが、米国・マサチューセッツ総合病院のAmit V Khera氏らによる横断的研究の結果、明らかとなった。LPLの活性は、トリグリセライドが豊富なリポ蛋白が血中で代謝される際の律速段階に寄与する。そのためLPL遺伝子の機能障害性変異は、終生にわたり酵素活性不足をもたらし、ヒトの疾患に関与する可能性が推察されるが、両者の関連はこれまで確認されていなかった。著者は、「今後、ヘテロ接合体によるLPL欠損症がCADの原因となる機序があるかどうかをさらに検証する必要がある」とまとめている。JAMA誌オンライン版2017年3月7日号掲載の報告。

甘い飲料とアルツハイマー病の関連~フラミンガム研究

 動物モデルでは、糖分の過剰摂取とアルツハイマー病(AD)との関連が報告されている。今回、米国・ボストン大学のMatthew P. Pase氏らは、フラミンガム心臓研究において、糖分の多い飲料の摂取量とADの発症前段階(preclinical AD)のマーカーが関連することを報告した。Alzheimer's & dementia誌オンライン版2017年3月5日号に掲載。

水疱性類天疱瘡へのドキシサイクリン vs.標準治療/Lancet

 水疱性類天疱瘡へのドキシサイクリン投与は、標準治療のプレドニゾロン投与と比べ、短期間での水疱コントロール効果について非劣性であることが示された。さらに安全性については、プレドニゾロン投与に比べ重篤な有害事象リスクが有意に低かった。英国・ノッティンガム大学のHywel C Williams氏らが、253例を対象に行った非劣性無作為化比較試験の結果、明らかにし、Lancet誌オンライン版2017年3月6日号で発表した。

米国の心臓病・脳卒中・糖尿病死の5割が食事に問題/JAMA

 ナトリウムや多価不飽和脂肪酸、ナッツ類、砂糖入り飲料、赤身肉などの不適切量摂取が、心臓病や2型糖尿病といった心血管代謝疾患による死因の約45%を占めることが、米国成人を対象に行った大規模試験の国民健康・栄養調査(NHANES)の結果、明らかにされた。米国・タフツ大学のRenata Micha氏らによる検討で、JAMA誌2017年3月7日号で発表した。米国の個人レベルでの食事因子と特異的心臓病などとの関連については、これまで十分な検討は行われていなかった。

自殺企図後も生き続けるためのプロセス

 うつ病は、自殺や自殺企図の強力な危険因子である。これまでの研究では、自殺企図へのパスウェイについて検討されてきたが、自殺克服のために重要な点について検討した研究はほとんどない。スウェーデン・ルンド大学のLisa Crona氏らは、自殺企図後、生き続けるための個人の戦略について検討を行った。BMC psychiatry誌2017年2月13日号の報告。

質の高い論文はここが違う~日本の無作為化比較試験

 読む価値のある論文を、アブストラクトで効率よくスクリーニングすることはできないだろうか。東京大学の米岡 大輔氏らが、どのような文章が質の高い無作為化比較試験(RCT)の指標となるのかを調べるために、日本のRCTの論文を評価したところ、質の高いRCTと質の低いRCTではアブストラクトの文章の特徴にいくつかの有意な差があることがわかった。著者らは、この結果がrisk-of-bias tool の代わりに、価値のある論文をすばやくスクリーニングする新たな判断基準として使用できるとしている。PLOS ONE誌2017年3月9日号に掲載。

MRI対応の新型S-ICD、AFモニタリング機能も:ボストン・サイエンティフィック

 現在日本では、1年間に約7万6,000人が心臓突然死により命を落としているといわれている。その心臓突然死に対する治療方法の1つとして植込み型除細動器(ICD)治療が存在する。ICD患者の半数以上が10年以内にMRI検査と推察されているが、心血管系の埋め込みデバイス患者へのMRI施行は長年にわたり禁忌である。このMRI検査とICD装着患者の安全性については議論が繰り広げられ、本サイトでもいくつかの記事が取り上げられている。

増殖性硝子体網膜症へのデキサメタゾンの有用性

 徐放性デキサメタゾン硝子体内インプラントは、増殖性硝子体網膜症(PVR)の硝子体手術後のアウトカムを改善するのか。英国・Moorfields Eye HospitalのPhilip J Banerjee氏らによる140例を対象とした前向き無作為化試験の結果、主要評価項目とした解剖学的改善を示した患者割合は、標準ケア群と同程度で有意差は示されなかった。試験結果を踏まえて著者は、「さらなる臨床試験によって解剖学的および視覚的アウトカムの改善が示唆されている。一方で、今回の試験では徐放性デキサメタゾン投与を受けた手術眼では、6ヵ月時点で嚢胞様黄斑浮腫(CMO)がより少なかったことが示された」としている。Ophthalmology誌オンライン版2017年2月22日号掲載の報告。

小児がんサバイバー、放射線治療減少で新生物リスク低下/JAMA

 1990年代に診断を受けた小児がんサバイバーの初回診断後15年時の悪性腫瘍のリスクは、上昇してはいるものの、1970年代に診断されたサバイバーに比べると低くなっており、その主な要因は放射線治療の照射線量の減少であることが、米国・ミネソタ大学のLucie M Turcotte氏らの調査で明らかとなった。同氏らは、「現在も続けられている長期の治療毒性の軽減に向けた取り組みが、サバイバーの新生物罹患リスクの低減をもたらしている」と指摘する。JAMA誌2017年2月28日号掲載の報告。

硬膜下血腫例の約半数が抗血栓薬服用、高齢化社会では今後ますます増えることが予想される(解説:桑島 巖 氏)-652

硬膜下血腫は、しばしば認知症と誤診されたり、見逃した場合には死に至ることもある重要疾患である。本研究は、その硬膜下血腫の実に47.3%が抗血栓薬を服用していたという衝撃的な成績を示し、高齢化がいっそう進み、今後さらに急増していくことを示唆している点で重要な論文である。

抗精神病薬のプロラクチンへの影響、ARPとQTPどちらが低い

 高プロラクチン血症は、抗精神病薬により問題となる副作用の1つである。これまで、高プロラクチン血症に関する第2世代抗精神病薬間での直接比較を行った臨床事例はほとんどない。スペイン・カンタブリア大学のBenedicto Crespo-Facorro氏らは、プロラクチンへの影響が少ないといわれている第2世代抗精神病薬の種類によりプロラクチンレベルに違いがあるか、それは性別により影響を受ける可能性があるかを検討した。Schizophrenia research誌オンライン版2017年2月17日号の報告。

PD-L1発現肺がん、ペムブロリズマブで長期生存を得る確率

 ペムブロリズマブの非小細胞肺がん(以下、NSCLC)に対する効果は、一部の患者で非常に持続的である。ペムブロリズマブの長期生存の恩恵を受ける患者の割合はどの程度なのだろうか?このテーマに関する知見が、本年(2017年)のASCO-SITC(SITC:society of immune therapy of cancer)で発表された。