日本語でわかる最新の海外医学論文|page:627

心房細動合併心不全の予後、アブレーションで大幅改善/NEJM

 心房細動を合併した心不全患者で、種々の理由で抗不整脈薬治療を受けられない場合においても、心房細動に対するカテーテルアブレーションを行うことで、薬物治療のみでのレートコントロールやリズムコントロールに比べ、全死因死亡および心不全悪化による入院の複合リスクは、約4割減少することが示された。米国・ユタ大学のNassir F.Marrouche氏らが、患者363例を対象に行った無作為化比較試験で明らかにし、NEJM誌2018年2月1日号で発表した。心房細動を合併した心不全患者は、心不全単独患者よりも脳卒中や心不全悪化による入院、死亡のリスクが高い。心房細動に対するカテーテルアブレーションは、そのほかの心機能は正常で薬物療法が無効の症候性心房細動に推奨されており、これまでの試験で、心房細動合併の心不全患者においてアウトカムを改善することが示唆されていた。

小児腎臓病既往で、末期腎不全リスクが約4倍/NEJM

 小児期の腎臓病既往歴は、たとえ青年期においては腎機能が正常であっても、その後の末期腎不全(ESRD)発症リスクを有意に増大することが明らかになった。イスラエル・ヘブライ大学のRonit Calderon-Margalit氏らが、約152万人の同国青少年についてコホート研究を行い明らかにしたもので、NEJM誌2018年2月1日号で発表した。これまで、小児期に慢性腎臓病(CKD)に進展しなかった小児腎臓病の長期的リスクは明らかにされていないという。

新薬が出ない世界で(2)(解説:岡村毅氏)-809

アルツハイマー型認知症に対する疾患修飾薬(根本治療薬)であるアミロイド抗体(solanezumab)が、軽度のアルツハイマー型認知症の患者さんに対しても効果がなかったという報告である。すでに軽度から中程度においては効果がないことが示されていたが(EXPEDITION 1&2、Doody RS, et al. N Engl J Med. 2014;370:311-321. PMID: 24450890)、この時、軽度の方に対しては効果があるという希望が示されていた。そこで今回の研究(EXPEDITION 3)が遂行されたのだが、残念ながら希望はかなわなかった。

かかりつけ医の初診料に加算を新設:2018年度診療報酬改定 答申

 中央社会保険医療協議会(中医協)は、2018年2月7日の総会で2018年度診療報酬改定案をまとめ、加藤勝信厚生労働相に答申した。今回の改定では団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据えて「地域包括ケアシステムの構築」が柱の1つとして掲げられ、外来医療の機能分化、歯科医・薬剤師との連携や生活習慣病の重症化予防を推進する項目が盛り込まれている。

抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボ効果に関する解析

 抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボの反応率は増加し続けていることから、臨床試験の失敗数の増加を招いていると考えられてきた。最近報告された2件のシステマティックレビューで、この問題が調査されており、それぞれの報告で正反対の見解が示された。京都大学の古川 壽亮氏らは、これまでの結果を再検討する解析を行った。Evidence-based mental health誌オンライン版2018年1月12日号の報告。

術前の呼吸理学療法教育で肺合併症が半減/BMJ

 待機的上腹部手術患者では、術直後の呼吸訓練に関する理学療法の講習を術前に受けることで、院内肺炎を含む術後の呼吸器合併症がほぼ半減することが、オーストラリア・メルボルン大学のIanthe Boden氏らの検討(LIPPSMAck-POP試験)で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年1月24日号に掲載された。呼吸器合併症は、上腹部手術後の最も重篤かつ不良な転帰であり、死亡率や医療費も増加させる。これらの合併症は、術前の理学療法教育や呼吸訓練の指示のみで予防可能なことを示唆する試験がいくつかあるが、このエビデンスには、方法論上の欠点や一般化可能性が乏しいといった限界があるとされていた。

乳がん検診と治療が及ぼす死亡率減少への影響をサブタイプ別に検証(解説:矢形寛氏)-807

Cancer Intervention and Surveillance Network(CISNET)は、国立がん研究所がスポンサーとなっている組織であり、がんの予防、スクリーニング、治療が、がんの頻度や死亡率に及ぼす影響をよりよく理解するためのモデルなどを提供している。2005年のNEJMでは、CISNETモデル用いた検討により、死亡率低下のうち46%がスクリーニング、54%が治療による影響と評価されていた。

抗VEGF薬硝子体内注射の効果をリアルワールドデータで確認

 米国・ラッシュ大学医療センターのElizabeth A. Atchison氏らは、米国眼科学会(AAO)によるIRIS(Intelligent Research in Sight)レジストリのデータを解析し、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体内注射後の眼圧低下は、わずかだが統計的に有意に持続していることを明らかにした。臨床的に有意な眼圧上昇は、治療眼全体で2.6%に認められたという。Ophthalmology誌オンライン版2018年1月11日号掲載の報告。

人工知能(AI)で胃がんを発見する/がん研究会

 2018年1月22日、公益財団法人がん研究会有明病院(院長:山口 俊晴、所在地:東京都江東区)の平澤俊明医師(上部消化管内科副部長)と株式会社AIメディカルサービス(CEO: 多田智裕、所在地:東京都新宿区)の多田智裕医師(ただともひろ胃腸科肛門科院長/東京大学医学部客員講師)らの研究グループは、人工知能(AI)を活用し、胃内視鏡静止画像の中から高精度に胃がんを検出する内視鏡画像診断支援システムを開発したと発表。

統合失調症患者における抗精神病薬使用と死亡率

 統合失調症における抗精神病薬での治療が、患者の死亡率の増減に関連しているのか、また、特定の薬剤と投与経路との間に臨床的な意味の違いがあるのかは、よくわかっていない。東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬治療と死亡率との関連について検討を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2017年12月20日号の報告。

C肝に8週投与でSVR99%:マヴィレット第III相試験/NEJM

 肝硬変を伴わないC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型または3型感染患者において、グレカプレビル・ピブレンタスビル合剤(商品名:マヴィレット配合錠)の1日1回8週間治療および12週間治療のいずれについても、高率の持続性ウイルス学的著効(SVR)を達成(それぞれ99%、95%)したことが、ドイツ・フランクフルト大学病院のStefan Zeuzem氏らが行った検討の結果、示された。NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬グレカプレビルとNS5A阻害薬ピブレンタスビルは、すべてのHCV遺伝子型(1~6型)に活性を示し、耐性に対して高いバリアを持つ直接作用型抗ウイルス薬である。両薬合剤の第II相試験では、12週間治療のSVRが全遺伝子型で93%以上を達成し、1/3型のSVRは97%を示していた。NEJM誌2018年1月25日号掲載の報告。

身体活動がPTSDに及ぼす影響

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)の有病率は高まっており、治療を受けていない場合、個人、家族および最終的には社会全体へ重大な影響を及ぼす可能性がある。これまでのPTSD治療には、心理療法と薬物療法があるが、患者は、それ以外の治療を受ける機会を制限されている。心理療法と薬物療法を組み合わせたこれまでの治療方法を強化するため、費用対効果の高い補助療法に関する研究が求められている。

男性のAGA、高血圧と有意に関連

 男性型脱毛症(AGA)については、これまでの研究で、メタボリック症候群に関連するさまざまな因子との関係が示されているが、一貫した結果は得られていない。韓国・延世大学校原州医科大学のBo-Kyung Kim氏らが、韓国の地域住民を対象とした断面調査を行った結果、AGAに関連のある因子には性差があり、男性では高血圧とAGAとの有意な関係が認められたことを報告した。著者は、「AGA発症のメカニズムに性差がある可能性があり、AGAの男性患者では血圧を評価し、高血圧の場合は介入したほうがよい」とまとめている。International Journal of Dermatology誌2018年2月号掲載の報告。

ブルーリボンキャラバン~もっと知ってほしい大腸がんのこと2018 in東京~【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器化学療法外科、同院 大腸・肛門外科、同院 腫瘍センター、同大学院 応用腫瘍学講座、同大学院 未来がん医療プロフェッショナル養成プランは、認定NPO法人キャンサーネットジャパンと共催で、2018年3月3日(土)に大腸がん疾患啓発イベント「ブルーリボンキャラバン」を開催する。同イベントは、大腸がんの診断・検査から外科的治療・薬物療法について広く知ってもらうことを目的に、国際的な大腸がん啓発月間でもある3月に毎年開催されている。会場は、東京医科歯科大学M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂。当日は来場者全員にオリジナル冊子「もっと知ってほしい大腸がんのこと」のプレゼントがあり、ブルーを身に着けて来場した方には粗品も用意されている。

急性脳梗塞の血栓除去術、発症後6~16時間でも有用/NEJM

 近位中大脳動脈または内頸動脈の閉塞を呈し、虚血は認めるが梗塞に至っていない組織領域を認める患者では、発症後6~16時間でも、標準的薬物療法単独よりも血管内治療(血栓除去術)を併施したほうが、良好な機能的アウトカムに結びつくことが示された。米国・スタンフォード大学脳卒中センターのGregory W. Albers氏らが「DEFUSE3試験」の結果を報告した。現行、血栓除去術は画像診断での適格性に基づき、発症後6時間以内の脳卒中患者への施術が推奨されている。NEJM誌オンライン版2018年1月24日号掲載の報告。

1日1本のタバコでも心血管疾患リスク増大/BMJ

 1日1本であっても、喫煙は冠動脈疾患および脳卒中の発症リスクを予想以上に増大させ、心血管疾患の発症に害のない安全な喫煙レベルは存在せず、リスク低減には減煙では不十分であることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAllan Hackshaw氏らが実施した141件のコホート試験のメタ解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年1月24日号に掲載された。喫煙者の多くはタバコの本数を減らすことで関連疾患の発症リスクを低減できると考えているが、これまでにも冠動脈疾患のリスクは軽度の喫煙(1日5本未満)でも予想以上に高いことが報告されている。

前立腺がん、患者の受診に同行する家族は半数未満

 バイエル薬品株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:ハイケ・プリンツ)は2018年1月31日、前立腺がんの治療経験のある患者および前立腺患者の家族について、治療への取り組みやコミュニケーションについて意識調査を行った。同調査は、2017年12月21日~12月26日に、前立腺がんの治療経験のある患者103名、前立腺がん患者の家族103名を対象に、インターネットによるアンケート形式で実施した。

てんかん患者におけるMRIに共通する脳SPECT画像の解析

 SISCOMやSTATISCOMは、てんかんの局所発作のためのMRIを中心に、発作/発作間欠期SPECT(単一光子放射断層撮影)分析に効果的であると臨床的に証明されている。最近では、この分析のためにソフトウェアも利用可能となった。米国・メイヨー・クリニックのZaiyang Long氏らは、これら局所発作の分析方法について、その性能の調査と比較を行った。Journal of neuroimaging誌オンライン版2018年1月10日号の報告。