日本語でわかる最新の海外医学論文|page:571

チクングニア熱ワクチン、安全性と有効性を確認/Lancet

 麻疹ウイルスベクターを用いた弱毒生チクングニアワクチン(MV-CHIK)は、優れた安全性・忍容性と、麻疹ウイルスに対する既存免疫と独立した良好な免疫原性を発揮することが示された。ドイツ・Rostock University Medical CenterのEmil C. Reisinger氏らによる、MV-CHIKの第II相の無作為化二重盲検プラセボ/実薬対照試験の結果で、著者は、「MV-CHIKは、世界的に懸念されている新興感染症チクングニア熱の予防ワクチン候補として有望である」とまとめている。チクングニア熱は新興ウイルス性疾患で、公衆衛生上の大きな脅威となっている。チクングニアウイルスに対する承認されたワクチンはなく、治療は対症療法に限られていた。Lancet誌オンライン版2018年11月5日号掲載の報告。

若年時の血圧高値、中年以降CVイベントを招く?/JAMA

 40歳未満の若年成人で、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)ガイドライン2017の「正常高値」「ステージ1高血圧」「ステージ2高血圧」の該当者は、正常血圧者と比較し、その後の心血管疾患(CVD)イベントのリスクが有意に高いことが示された。米国・デューク大学の矢野 裕一朗氏らが、前向きコホート研究「Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)研究」の解析結果を報告した。これまで、若年成人の血圧と中年期のCVDイベントとの関連についてはほとんど知られていない。著者は、「ACC/AHA血圧分類は、CVDイベントリスクが高い若年成人を特定するのに役立つと考えられる」とまとめている。JAMA誌2018年11月6日号掲載の報告。

青年期心血管疾患発症リスク評価における米国新規血圧分類の有用性の検証(CARDIA研究から)(解説:冨山博史氏)-953

従来、140/90mmHg以上が、高血圧として定義されてきた。しかし、2017年に発表された米国高血圧ガイドラインでは収縮期血圧120~129mmHgを血圧上昇(elevated blood pressure)、130~139/80~89mmHgをI度高血圧(StageI高血圧)とし、血圧異常の範疇を拡大することを提唱した。一方、2018年に発表された欧州高血圧ガイドラインでは血圧分類は従来のままで140/90mmHg以上を高血圧と定義している。こうした血圧異常の定義の乖離は、さまざまな議論を呼んでいる。

急性非代償性心不全例へのARNi、ACE阻害薬よりNT-proBNP濃度が低下:PIONEER-HF/AHA

 アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNi)は、2014年に報告されたPARADIGM-HF試験において、ACE阻害薬を上回る慢性心不全予後改善作用を示した。米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会ではそれに加え、急性心不全に対する有用性も示唆された。11月11日のLate Breaking Clinical TrialsセッションでEric J. Velazquez氏(米国・イェール大学)が報告したランダム化試験"PIONEER-HF"である。  PIONEER-HF試験の対象は、急性非代償性心不全(左室駆出率[LVEF]≦40%、NT-proBNP≧1,600pg/mL または BNP≧400pg/mL)で入院後、血行動態が安定した881例である。平均年齢は61歳、72%が男性だった。

高齢者が筋肉をつける毎日の食事とは

 現在わが国では、高齢者の寝たきり防止と健康寿命をいかに延伸させるかが、喫緊の課題となっている。いわゆるフレイルやサルコペニアの予防と筋力の維持は重要事項であるが、それには毎日の食事が大切な要素となる。  2018年10月31日、味の素株式会社は、都内で「シニアの筋肉づくり最前線 ~栄養バランスの良い食事とロイシン高配合必須アミノ酸による新提案~」をテーマにメディアセミナーを開催した。セミナーでは、栄養学、運動生理学のエキスパートのほか、料理家の浜内 千波氏も登壇し、考案した料理とそのレシピを説明した。

新規NK1受容体拮抗薬fosnetupitantの可能性/癌治療学会

 新規NK-1受容体拮抗薬fosnetupitantは、NK1受容体に対して高い選択性を有するnetuspitantのプロドラッグである。また、長い半減期を有し、第I相試験で日本人患者に良好な成績を示している。第56回日本癌治療学会学術集会では、浜松医科大学 乾 直輝氏らが、第II相Pro-NETU試験の結果を発表した。

双極I型障害と双極II型障害の親と子の間の精神病理的相違に関する横断研究

 双極I型障害(BP-I)および双極II型障害(BP-II)を有する親と子の間の精神病理学的な相違について、韓国・順天郷大学校のHyeon-Ah Lee氏らが検討を行った。Psychiatry Investigation誌オンライン版2018年10月26日号の報告。  対象は、BP-IまたはBP-IIの親を有する6~17歳の子供201例。感情病および統合失調症の児童用面接基準(K-SADS)- Present and Lifetime Version韓国版を用いて対照児の評価を行った。Lifetime DSM-5診断、うつ病、小児期のトラウマを含めた精神病理学的および臨床的特徴について評価を行った。Lifetime DSM-5診断は、6~11歳の小学生と12~17歳の青年の間でも比較を行った。

ペムブロリズマブ、単剤と化療併用で頭頸部扁平上皮がん1次治療のOS改善(KEYNOTE-048)/ESMO2018

 再発または転移性の頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)治療では、プラチナ製剤による化学療法後の2次治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ、ニボルマブの有効性が確認されており、本邦ではニボルマブが2017年3月に適応を取得している。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で、HNSCCの1次治療におけるペムブロリズマブ単剤および、化学療法との併用療法が、抗EGFR抗体セツキシマブと化学療法の併用療法と比較して全生存期間(OS)を改善することが明らかになった。イェールがんセンターのBarbara Burtness氏が発表した第III相KEYNOTE-048試験の中間解析結果より。

シンポジウム「2040年のケアマネジメント論~AIによってケアマネジャーの仕事はどう変わるか~」開催

ITヘルスケア学会は、大田区後援のもと、シンポジウム「2040年のケアマネジメント論~AIによってケアマネジャーの仕事はどう変わるか~」を開催する。 「地域包括ケアシステム」の構築が最終段階を迎える一方、介護の質の向上や、労働人口減少および働き方改革を背景とした介護人材不足解消のためのAI活用が実用段階に入りつつある。2040年には、日本はどのように変化するのか、3名の演者による口演と、パネルディスカッションを行う。

40歳未満、130/80mmHg以上の10年CVDリスクは?/JAMA

 韓国の若年成人(20~39歳)において、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)が2017年に発表した高血圧ガイドライン(ACC/AHAガイドライン2017)の定義でステージ1・2の高血圧症者は、男女ともに正常血圧者と比較して、その後の心血管疾患(CVD)イベントリスクの増大と関連することが示された。韓国・ソウル大学校病院のJoung Sik Son氏らが、約249万例を中央値10年追跡して明らかにしたもので、ステージ1群の男性は1.25倍、女性は1.27倍高かったという。これまで、若年成人におけるACC/AHAガイドライン2017とその後のCVDリスクとの関連は検討されていなかった。JAMA誌2018年11月6日号掲載の報告。

COPD増悪リスク、3剤併用で有意に低減/BMJ

 症状が進行した慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対し、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、吸入ステロイド(ICS)の3剤併用療法は、LAMA+LABA、ICS+LABAの2剤併用療法または単独療法に比べ、中等度/重度増悪リスクを低減し、肺機能および健康関連QOLは良好であることが示された。中国・Guangdong Medical UniversityのYayuan Zheng氏らが、21の無作為化比較試験についてメタ解析を行い明らかにしたもので、BMJ誌2018年11月6日号で発表した。研究グループは、既報のメタ解析では3剤併用療法と2剤併用療法を比較した増悪予防に関するエビデンスは十分ではなかったとして、本検討を行ったという。

ICUにおける消化管出血のリスクに対するpantoprazoleの有用性は?(解説:上村直実氏)-954

ICU患者3,298例を対象として、ICUにおけるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の有用性を検証する目的で、pantoprazole群(n=1,645)とプラセボ群(n=1,653)に分けた欧州6ヵ国の多施設共同無作為比較試験の結果がNEJM誌に報告された。主要評価項目である90日までの死亡者数はPPI群510例(31%)、プラセボ群499例(30%)で両群に差はなく、また、副次評価である臨床的に重要なイベント(肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染、心筋虚血の複合)の発生率にも差を認めなかった。さらに、臨床的に重篤な消化管出血は、PPI群(2.5%)に比べてプラセボ群(4.2%)が多かったが、症例数が少なく統計学的に有意な差といえなかった。

エピネフリン早期投与は予後を改善するか?(解説:香坂俊氏)-952

ブラックジャックなど昔の医療マンガやドラマで、よく緊急事態に「カンフル!」と医師が叫ぶ場面があった。このカンフルというのは、筆者も使ったことはないのだが、ものの本によると「カンフルとはいわゆる樟脳(しょうのう)であり、分子式C10H16Oで表される二環性モノテルペンケトンの一種」ということで、かつて強心剤や昇圧薬としてよく用いられたとのことである。現在はエピネフリン(Epinephrine:エピ)の大量生産が可能となったため、このカンフルが用いられることはなくなった。そして、現代のカンフルであるこのエピは四半世紀ほど前からACLSによってその使用法が細かく規定されており、心肺蘇生の現場においては、だいたい1A(1mg)を3~5分ごとに静注投与することとなっている。エピの用量や投与間隔については、実はイヌの実験データを基にして設定されたものなのではあるが、その昇圧効果は目に見えて明らかであったので(血圧はすぐ上がる)、今のところほぼ唯一ACLSに必須の薬剤として幅広く使用されている。

TG低下療法によるCVイベント抑制作用が示される:REDUCE-IT/AHA

 スタチン服用下でトリグリセライド(TG)高値を呈する例への介入は、今日に至るまで、明確な心血管系(CV)イベント抑制作用を示せていない。そのような状況を一変させうるランダム化試験がREDUCE-IT試験である。その結果が、米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会の11月10日のLate Breaking Clinical Trialsセッションで報告された。精製イコサペンタエン酸エチル(EPA-E)を用いた服用で、プラセボに比べ、CVイベントリスクは、相対的に25%の有意減少を認めた。

東大が「攻める大学病院経営」をテーマにシンポ 12月8日山上会館

 東京大学「経営のできる大学病院幹部養成プログラム」は、12月8日に東京大学山上会館で「東大発!攻める大学病院経営」と題したシンポジウムを開催する。このシンポジウムは、同大学が2019年5月に開講する「経営のできる大学病院幹部養成プログラム」に先立って行われるもの。KPMGヘルスケアジャパン代表取締役・パートナー松田淳氏など同プログラムの立案・実施に携わる4氏が、大学病院経営の在り方、持続可能かつ社会的意義を生み出し続ける「攻める経営」について講演、討議する。

男性医師と女性医師によるコリンエステラーゼ阻害薬の処方実態比較

 男性医師と女性医師では、患者をケアする方法にわずかではあるが重大な違いがあるといわれており、女性医師は、ベストプラクティスの推奨事項を遵守する傾向が強いとするエビデンスもある。カナダ・トロント大学のPaula A. Rochon氏らは、認知症のマネジメントにおいて推奨用量より低用量でのコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)による薬物療法を開始することで、男性医師と女性医師で処方実態に違いがあるかを検討した。PLOS ONE誌2018年10月22日号の報告。

マクロファージ免疫CP阻害薬、再発・難治性リンパ腫に有望/NEJM

 中悪性度および低悪性度のリンパ腫の治療において、マクロファージ免疫チェックポイント阻害薬Hu5F9-G4(以下、5F9)は、リツキシマブとの併用で有望な抗腫瘍活性をもたらし、臨床的に安全に投与できることが、米国と英国の共同研究で示された。米国・スタンフォード大学のRanjana Advani氏らが、NEJM誌2018年11月1日号で報告した。5F9は、マクロファージ活性化抗CD47抗体であり、腫瘍細胞の貪食を誘導する。CD47は、ほぼすべてのがんで過剰発現している抗貪食作用(“do not eat me [私を食べないで]”)シグナルであり、マクロファージなどの食細胞からの免疫回避を引き起こす。5F9は、リツキシマブと相乗的に作用してマクロファージが介在する抗体依存性の細胞貪食を増強し、B細胞非ホジキンリンパ腫細胞を除去するとされる。

IV期扁平上皮がんへの免疫療法+化学療法併用について(解説:小林英夫氏)-950

肺がんの組織型は非小細胞がんが多くを占め、とりわけ扁平上皮がんと腺がんが中心となっている。1980年代までは扁平上皮がん、なかでも肺門型(中枢型)の扁平上皮がんが多かったが、その後徐々に腺がんが多数となり、扁平上皮がんを診療する機会が減少していた。ところが近年になり、以前の肺門型扁平上皮がんではなく、肺野末梢に発生する扁平上皮がんを経験する機会が増加してきている。なぜ再増加しているのか理由は定かではない。また、切除不能であるIV期の非小細胞肺がんの治療面では、2000年代以降になり遺伝子変異陽性の腺がんに対しチロシンキナーゼ阻害薬などの分子標的治療薬が急速に普及し、腺がんの標準治療は大きく変化してきた。一方で、IV期扁平上皮がん治療に有効な分子標的薬は導入できておらず、細胞障害性抗腫瘍薬または免疫チェックポイント阻害薬が現時点における治療の主役だが、まだまだ十分な効果は得られていない状況にある。

DCS vs.DES:大腿動脈領域はパクリタキセル戦争(解説:中野明彦氏)-948

同じインターベンションでも冠動脈領域(PCI)と末梢動脈領域(EVT)には似て非なる点が多い。まずは両者の違いを列挙してみる。・対象血管の太さ:冠動脈と比較すると腸骨動脈は2~3倍、浅大腿~膝窩動脈は1.5~2倍、膝下動脈は同程度。・病変の長さ:末梢動脈のほうが数倍長い。・ステントプラットホーム:冠動脈では菲薄化と強い支持力を可能とするCoCrやPtCrを用いたballoon-expandable(バルーン拡張型)が、末梢動脈では屈曲・伸展・捻れのストレスにさらされるため柔軟性と支持力を兼ね備えたNitinolを用いたself-expandable(自己拡張型)が主体。・再狭窄のピーク:冠動脈では半年程度だが、自己拡張型ステントにより血管へのストレスが遷延するためか末梢動脈では1年以降も緩徐に再狭窄が進行する。・対象症例・マーケットの大きさ:最新の循環器疾患診療実態調査報告書では国内の症例数はPCI:EVT=4:1である。したがってEVT分野では大規模な臨床試験が遂行しにくい。

CV高リスク・高LDL-C血症の日本人高齢者に対するLDL-C低下療法の有用性は?:EWTOPIA/AHA

 高齢の高コレステロール血症例を対象としたコレステロール低下療法のランダム化試験としては、“PROSPER”がよく知られている(Shepherd J, et al. Lancet. 2002;360:1623-1630.)。しかし同試験には多くの心血管系(CV)2次予防例が含まれており、さらに「82歳」という年齢上限も設けられていた。  そこで、わが国の高LDLコレステロール(LDL-C)血症を呈するCV1次予防高齢者を対象に、LDL-C低下療法の有用性が検討された。ランダム化試験“EWTOPIA75”である。その結果、エゼチミブを用いたLDL-C低下療法で、食事指導のみの対照群に比べ、「脳・心イベント」リスクは相対的に34%有意に低下した。米国・シカゴにて開催された米国心臓協会(AHA)学術集会の11月10日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、大内 尉義氏(虎の門病院 院長)が報告した。