日本語でわかる最新の海外医学論文|page:486

CVD患者へのAKCEA-APO(a)、用量依存的にLp(a)値低下/NEJM

 リポ蛋白(a)値が高く心血管疾患を有する患者に対して、肝細胞直接作用型アンチセンスオリゴヌクレオチドAKCEA-APO(a)-LRx(APO(a)-LRx)の投与は、用量依存的にリポ蛋白(a)値を低下することが示された。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のSotirios Tsimikas氏らが、286例を対象に行った第II相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、明らかにされた。リポ蛋白(a)値は遺伝的に規定されており、上昇が認められる場合は心血管疾患および大動脈弁狭窄症のリスク因子となることが報告されている。しかしリポ蛋白(a)値を降下させる承認治療薬はないのが現状である。NEJM誌オンライン版2020年1月1日号掲載の報告。

芸術に触れる人は長生き(解説:桑島巖氏)-1166

音楽会や美術館に年に1、2回行く人は行かない人より14%死亡リスクが低く、もっと頻回に2~3ヵ月に1回は行く人では、31%も低いという興味ある成績である。演奏をしたり絵を描かなくとも芸術を見たり聴いたりして楽しむ、いわゆる受容芸術活動できる人が長生きということを、50歳以上(平均65.9歳)の住民6,710人を約14年間追跡した調査でこの論文は明らかにした。

日本人高齢者の認知症発症率に対する感覚障害の影響

 認知症および認知症の周辺症状(BPSD)は、高齢者の介護の必要レベルに影響を及ぼす。高齢者では、加齢に伴い感覚障害の発生率が上昇し、認知症の発症を加速させる。大勝病院の丸田 道雄氏らは、視覚障害(VI)、聴覚障害(HI)などの感覚障害とBPSDおよび認知症の発症率との関連について調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2019年12月4日号の報告。  日本のある都市における2010~17年の介護保険データを用いて、レトロスペクティブ研究を実施した。2010年時点で認知症でなかった高齢者2,190人を、感覚障害の4つのカテゴリー、VI群、HI群、VIとHI両方の感覚障害(DSI)群、感覚障害なし(NO)群に分類した。認知症の発症率は、カプランマイヤー生存分析およびlog-rank検定を用いて調査した。NO群と比較した、感覚障害に関連する認知症発症リスクは、Cox比例ハザード分析を用いて調査した。4群間のBPSD有病率は、ピアソンのχ2検定を用いて比較した。

進展型小細胞肺がんに対するペムブロリズマブ+化学療法の成績(KEYNOTE-604)/Merck

 Merck社は、2020年1月6日、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)1次治療におけるペムブロリズマブと化学療法併用の第III相KEYNOTE-604試験において、主要評価項目の1つである無増悪生存期間(PFS)を達成したと発表。  同研究では、ペムブロリズマブと化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)併用は、化学療法単独(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)と比較して統計的に有意なPFSの改善がもたらした(HR:0.75、95%CI:0.61~0.91)。

医学研究者に週末や休日はあるか/BMJ

 医学研究者は、全般に週末や祝日、深夜の時間外労働(論文の投稿、査読結果の報告)の割合が高いが、国によって差がみられ、この傾向は経時的にほとんど変化していないことが、オーストラリア・クイーンズランド工科大学のAdrian Barnett氏らの調査で明らかとなった。大学の格付け順位表は、研究者に「論文を発表せよ、しからずんば去れ(publish or perish)」を促す管理手段として活用されている。研究者は、研究と論文執筆の要請に応えるために長時間働いていると考えられ、学術および臨床における過重労働には苦言も多いという。BMJ誌2019年12月19日号クリスマス特集号の「Shiny Happy People」より。

左冠動脈主幹部狭窄、PCIはCABGより5年臨床転帰不良/Lancet

 左冠動脈主幹部病変の血行再建術では、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は冠動脈バイパス術(CABG)に比べ、5年時の臨床転帰が不良であることが、デンマーク・オーフス大学病院のNiels R. Holm氏らが行った「NOBLE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月23日号に掲載された。PCIは近年、左冠動脈主幹部病変を有する患者の血行再建において、標準治療のCABGに代わり使用機会が増えている。本研究では、追跡期間中央値3.1年の時点で、これら2つの介入法の死亡率は類似するが、PCIでわずかに高かったと報告されている。

完全人工膵臓実現へのさらなる一歩(解説:住谷哲氏)-1167

数年前に米国FDAは、世界初のclosed-loop insulin delivery systemであるMiniMed 670G(Medtronic)を認可した。これは基礎インスリン分泌basal insulin deliveryのみを自動化したものでhybrid closed-loop systemと呼ばれている。本試験で用いられたのは、基礎インスリン分泌に加えて高血糖時の補正インスリンcorrection bolusも自動化した新しいclosed-loop systemである。人工膵臓 artificial pancreasはグルコース濃度を感知するセンサー、投与インスリン量を計算するアルゴリズム、インスリンを注入するポンプの3つから成る。本試験で用いられたのはそれぞれDexcom G6 CGM(Dexcom)、Control-IQ Technology(Tandem Diabetes Care)、t:slim X2インスリンポンプ(Tandem Diabetes Care)を組み合わせたシステムである。Control-IQ Technologyの基礎となったアルゴリズムinControlは米国・バージニア大学で開発され、後にTypeZero Technologiesに引き継がれたが、同社は近年Dexcomと合併した。t:slim X2インスリンポンプは唯一のタッチパネル式のインスリンポンプであり、その使いやすさから市場を伸ばしている。人工膵臓開発の分野は競争が熾烈で、これら複数の企業と米国のバージニア大学が共同で実施したInternational Diabetes Closed Loop(iDCL)trialが本試験である。

うつ病予防の主要ターゲットとしての入眠障害

 うつ病は、世界中で問題となる疾患の1つであり、再発率が高いため、うつ病発症を予防することが重要である。メタ解析において、不眠症が、うつ病の修正可能なリスク因子であることが示唆されていたが、これまでの研究では、不眠症がうつ病前の残存症状なのか、うつ病の併存症状なのかについては、十分に考慮されていなかった。オランダ神経科学研究所のTessa F. Blanken氏らは、睡眠障害がうつ病のリスク因子であるかを検討するため、6年間のプロスペクティブ研究を実施した。Sleep誌オンライン版2019年12月2日号の報告。

電子タバコ関連の肺障害、酢酸ビタミンEが関与か/NEJM

 米国では現在、電子タバコまたはベイピング製品の使用に関連する肺障害(electronic-cigarette, or vaping, product use-associated lung injury:EVALI)が、全国規模で流行している。同国疾病予防管理センター(CDC)のBenjamin C. Blount氏らLung Injury Response Laboratory Working Groupは、EVALIの原因物質について調査し、酢酸ビタミンEが関連している可能性が高いと報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年12月20日号に掲載された。2019年12月12日現在、米国の50州とワシントンD.C.、バージン諸島、プエルトリコで、2,400人以上のEVALI罹患者が確認されている。すでに25州とワシントンD.C.で52人が死亡し、罹患者の78%が35歳未満だという。症状は、呼吸器(95%)、全身(85%)、消化器(77%)が多く、数日から数週間をかけて緩徐に進行すると報告されているが、その原因物質は同定されていない。

B細胞NHLへのR-CHOP、4サイクルvs.6サイクル/Lancet

 60歳以下の低リスク中悪性度(アグレッシブ)B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療において、リツキシマブとシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone(R-CHOP)併用療法の4サイクル投与は6サイクル(標準治療)に対し、有効性が非劣性で、毒性作用は治療サイクルが少ない分、抑制されることが、ドイツ・ザールラント大学のViola Poeschel氏らGerman Lymphoma Allianceが行った「FLYER試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2019年12月21/28日合併号に掲載された。国際予後指標(IPI)の年齢調整リスク因子がなく、非bulky病変(腫瘍最大径<7.5cm)を有するアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者では、6サイクルのR-CHOP様レジメンの予後はきわめて良好と報告されている。一方、多くの患者にとって、このレジメンに含まれる6サイクルの細胞傷害性薬剤の併用療法(CHOP様)は過剰治療となっている可能性があるという。

紫外線は乳がん予防に有効か~メタ解析

 太陽紫外線(UVR)曝露が乳がん発症リスクを減少させるという仮説がある。今回、カナダ・クイーンズ大学のTroy W. R. Hiller氏らが行った系統的レビューとメタ解析から、夏の数ヵ月間に太陽の下で1日1時間以上過ごすことで、乳がん発症リスクを減らせる可能性が示唆された。Environmental Health Perspectives誌2020年1月号に掲載。  本研究では、Medline、EMBASE、Web of Scienceで太陽UVRへの曝露と乳がんリスクの関連を調査した研究すべてを検索し、太陽の下で過ごした時間と周囲のUVR(居住地の太陽の強さ)の推計値を使用して個別に分析した。関連はランダム効果モデルのDerSimonian-Laird法を用いて推定し、異質性はサブグループ解析とI2統計量で調べた。

長期介護施設入居者の不眠症やベンゾジアゼピン使用と転倒リスク

 高齢者の負傷の主な原因である転倒は、長期介護施設の入居者において、とくに問題となる。中国・復旦大学のYu Jiang氏らは、長期介護施設の入居者を対象に、睡眠の質や睡眠薬の使用が転倒に及ぼす影響について評価した。このような研究は、中国ではこれまでほとんど行われていなかった。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2019年11月21日号の報告。  対象は、上海の中心部にある25の長期介護施設より募集した605例。睡眠の質と睡眠薬の使用に関するベースライン調査、転倒および転倒での負傷に関する1年間のフォローアップ調査を実施した。単変量および多変量解析には、ロジスティック回帰モデルを用いた。

HPVワクチンの接種推進の取り組み

 11月30日・12月1日に開催された「第23回 日本ワクチン学会学術集会」(会長:多屋馨子〔国立感染症研究所〕)では、「サーベイランスから対策へ 有効性と安全性の両輪で考えるワクチン元年」をテーマに、臨床、疫学、製造開発、行政関係などから参加者が一堂に会して開催された。  同集会では、インフルエンザやMRワクチンはもちろん、来年10月より定期接種化される予定のロタワクチンなどに関する発表も行われた。  本稿では、2013年より積極的接種勧奨が中止されているHPVワクチンについて取り上げる。

血圧に差がついてしまっては理論検証にならないのでは?(解説:野間重孝氏)-1165

マルファン症候群は細胞外基質タンパクであるfibrillin 1(FBN1)の遺伝子変異を原因とする遺伝性の結合織疾患であり、種々の表現型、重症度がみられるが、大動脈瘤(とくに大動脈基部)とそれに伴う大動脈弁閉鎖不全症が生命予後の決定因子としてとくに重要であるため、その発生予防が種々議論されてきた。近年、FBN1変異下においては炎症性サイトカインの1つである形質転換増殖因子β(TGFβ)の活性が亢進していることが明らかにされ、この活性亢進が結合織疾患の発生に関与している可能性が示され、動脈瘤の発生予防法として、シグナル伝達系でTGFβの上流に位置するアンジオテンシンII受容体1型活性をアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)によってブロックする治療法が有効である可能性が示唆され、注目を集めるに至った。

長期抗精神病薬治療が体重に及ぼす影響~コホート研究

 抗精神病薬は、長期間にわたり使用されることが多いにもかかわらず、体重への影響に関するエビデンスの大半は、短期的な臨床試験による報告にとどまっている。とくに、抗精神病薬の投与量による体重への影響については、ほとんど調査されていない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJuan Carlos Bazo-Alvarez氏らは、3種類の第2世代抗精神病薬を高用量または低用量で開始した患者における体重への短期的および長期的変化について検討を行った。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2019年11月14日号の報告。

肝細胞がん2次治療、ペムブロリズマブの有効性は?(KEYNOTE-240)/JCO

 既治療の進行肝細胞がん(HCC)患者に対する、ペムブロリズマブの有効性と安全性に関する結果が示された。第II相試験「KEYNOTE-224」において抗腫瘍活性と安全性が示されたことを踏まえて、無作為化二重盲検第III相試験「KEYNOTE-240」が実施されたが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のRichard S. Finn氏らは、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が事前に規定された統計学的有意性を満たさなかったことを報告した。著者は、「KEYNOTE-240試験の結果はKEYNOTE-224試験と一致しており、既治療のHCC患者におけるペムブロリズマブのリスク対効果比が良好であることは裏付けられた」と述べている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年12月2日号掲載の報告。

頸動脈狭窄症への経頸動脈血行再建、経大腿動脈と比較/JAMA

 頸動脈狭窄症の治療において、経頸動脈血行再建術(transcarotid artery revascularization:TCAR)は経大腿動脈アプローチによるステント留置術と比較し、脳卒中または死亡のリスクが有意に低いことが示された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのMarc L. Schermerhorn氏らが、TCARと経大腿動脈ステント術の転帰を傾向スコアマッチング法により比較した解析結果を報告した。従来の経大腿動脈アプローチによる頸動脈ステント術は、頸動脈内膜剥離術と比較して周術期脳卒中の発生率が高いことがいくつかの試験で観察されていた。一方、TCARは2015年に開発されたリバースフローシステムによる新しい頸動脈ステント術で、経大腿動脈アプローチとは対照的に、頸動脈に直接アクセスすることによって大動脈弓でのカテーテル操作を回避し、標的病変操作前の頸動脈から大腿静脈への体外動静脈シャントによって脳を保護する。TCARは経大腿動脈アプローチによる脳卒中リスクを減少させるために開発されたが、経大腿動脈ステント術と比較した場合のアウトカムはよくわかっていなかった。JAMA誌2019年12月17日号掲載の報告。

進行卵巣がんの維持療法、オラパリブ+ベバシズマブが有効/NEJM

 1次治療のプラチナ製剤+タキサン系薬+ベバシズマブが奏効した進行卵巣がん患者において、維持療法はベバシズマブにオラパリブを追加することで、無増悪生存(PFS)期間が有意に延長することが認められた。この有効性はBRCA遺伝子変異のない相同組み換え修復異常(HRD)陽性患者で大きかった。フランス・クロード・ベルナール・リヨン第1大学のIsabelle Ray-Coquard氏らが、11ヵ国で実施された第III相の国際共同無作為化二重盲検試験「PAOLA-1試験」の結果を報告した。オラパリブは、新たに診断されたBRCA変異陽性の進行卵巣がん患者に対する維持療法として、大きな臨床的有益性をもたらすことが示唆されていたが、BRCA変異の有無にかかわらずオラパリブ+ベバシズマブ併用による維持療法が有効かどうかは不明であった。NEJM誌2019年12月19日号掲載の報告。

日本人トリプルネガティブ乳がんのMSI-H頻度は?

 日本人のトリプルネガティブ乳がん患者におけるMSI-H頻度は高くはないものの、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)のターゲットとなる患者が存在することが示唆された。九州大学の倉田 加奈子氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年1月6日号掲載の報告より。  本邦では、MSI-HまたはdMMRを有する進行固形がんに対しペムブロリズマブが承認されている。また、ゲノム不安定性を有する腫瘍はPD-1 / PD-L1阻害に良好な反応を示し、難治性乳がんの有望なターゲットとなりうることが示唆されている。しかし、日本人のトリプルネガティブ乳がんにおけるMSI-H頻度は明らかになっていない。

男性胚細胞腫瘍の心血管疾患リスクは?/JCO

 男性の胚細胞腫瘍は、まれだが20~30代に比較的多く発生するという特徴がある。その男性胚細胞腫瘍(精巣腫瘍)について、ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン(BEP)併用療法が、治療開始後1年未満の心血管疾患(CVD)リスクを顕著に増加させ、10年後にもわずかだがリスク増加と関連することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJakob Lauritsen氏らによる検討で明らかにされた。また、放射線療法が糖尿病のリスク増加と関連していることも示されたという。なお、経過観察の患者では、CVDリスクは正常集団と同程度であった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年12月10日号掲載の報告。