日本語でわかる最新の海外医学論文|page:480

長期透析中AF患者へのDOAC、臨床的メリットは

 脳卒中リスク低減のため、心房細動(AF)には直接経口抗凝固薬(DOAC)が推奨されているが、長期間に渡って透析治療を受けている患者は出血リスクが高く、臨床的メリットは不明である。米国・マウントサイナイ・ベスイスラエル病院の工野 俊樹氏らは、長期透析中のAF患者に対するDOACの有効性および安全性についてネットワークメタ解析の手法を用いて調査を行った。Journal of American College of Cardiology誌オンライン版2020年1月28日号に掲載。

治療抵抗性統合失調症を予測するための症状

 治療抵抗性統合失調症(TRS)を予測する症状を早期に発見することができれば、クロザピンなどによる治療の早期開始に役立つ可能性がある。ブラジル・サンパウロ連邦大学のBruno B. Ortiz氏らは、TRSを予測する症状パターンを特定するため、探索/複製研究デザインを用いて、調査を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2020年1月16日号の報告。  統合失調症入院患者のコホート研究より164例をフォローアップした。ロジスティック回帰を用いて、TRS患者のベースライン時の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の中で最も影響を及ぼす項目を特定した。特定された症状の複数の組み合わせ予測パターンをテストするため、Receiver Operating Characteristic(ROC)解析を用いた。同項目の組み合わせについて、統合失調症外来患者207例の独立した複製サンプルとのテストを行った。

成人後に5kg増えると閉経前乳がんリスクは?~63万人のプール解析

 女性は成人初期以降に体重が大きく増減することがある。これまでに体の大きさと閉経前乳がんリスクとの関係は報告されているが、体重変化と閉経前乳がんリスクとの関係は不明である。今回、英国・The Institute of Cancer ResearchのMinouk J. Schoemaker氏らが、17件の前向き研究の個人データをプール解析したところ、成人初期の体重に関係なく、成人初期から45〜54歳までの体重増加が閉経前乳がんリスクの低下と関連することが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2020年2月3日号に掲載。

米国2019-nCoV感染1例目、発熱・咳症状9日目に肺炎/NEJM

 中国・湖北省武漢市でアウトブレークが始まった新型コロナウイルス「2019-nCoV」は、瞬く間に拡大し複数の国で新たな感染例の確認が報告されている。米国疾病管理予防センター(CDC)のMichelle L. Holshue氏らは、2020年1月20日に米国で確認された1例目の感染例について、疫学的および臨床的特徴の詳細をNEJM誌オンライン版2020年1月31日号で発表した。その所見から、「本症例で鍵となるのは、パブリックな注意喚起を見た後に患者が自発的に受診をしたこと、患者の武漢市への渡航歴を地域の医療提供者および郡・州・連邦の公衆衛生担当官が共有し、感染拡大の可能性を認識して、患者の迅速な隔離と検査および入院を許可したことだ」と述べ、「本症例は、急性症状を呈し受診したあらゆる患者について、臨床家が最近の渡航歴または病人との接触曝露歴を聞き出し、そして2019-nCoVのリスクがある患者を適切に識別し迅速に隔離して、さらなる感染を抑制する重要性を強調するものである」とまとめている。

救急AF患者、薬物+電気ショックvs.電気ショック単独/Lancet

 急性心房細動で緊急部門に搬送された患者に対する、薬理学的除細動+必要に応じた電気的除細動(薬物ショック)と、電気的除細動のみ(ショック単独)はいずれも、洞調律の回復において高い有効性、迅速性、安全性を示し、再入院の必要性も回避することが、カナダ・オタワ大学のIan G. Stiell氏らが396例を対象に行った無作為化比較試験「RAFF2試験」の結果、示された。薬物ショック群では、薬理学的除細動が約半数に作用し電気的除細動に必要なセデーションを回避できたこと、また、電気的除細動のパッド貼付位置(前後方vs.前外側)による有意差がないことも示された。結果を踏まえて著者は、「緊急部門に搬送された急性心房細動患者では、即時の除細動が、優れたアウトカムに結び付く」とまとめている。Lancet誌2020年2月1日号掲載の報告。

拡張期血圧、下がらなくても大丈夫。本当?(解説:桑島巖氏)-1188

拡張期のみが高い高血圧患者(Isolated Diastolic Hypertension:IDH)の降圧治療には、難渋したことのある医師は少なくないであろう。とくに40~60歳の成人では、収縮期血圧は下げることはできても拡張期血圧をガイドラインで定めるレベルまで下げることは難しい。ガイドラインでも米国のJNC7(2003年)では140/90mmHg未満だったものが、14年後にJNC8に代わって公式発表されたACC/AHAガイドラインでは130/80mmHg未満を目標とせよ、というのだから、90mmHg未満でさえ難渋していたのが、さらに困難になったわけである。

新型肺炎を「COVID-19」と命名、ワクチン開発には18ヵ月か/WHO

 WHO(世界保健機関)は2月11日、スイス・ジュネーブの本部で開いた記者会見で、中国・武漢市を中心に、世界的に感染が拡大している新型コロナウイルス感染症について「COVID-19」と命名し、ワクチンの開発には18ヵ月かかるという見通しを示した。  COVID-19を巡っては、中国国内だけでも4万2,708人の確定症例、1,000人超の死者が報告されており、中国以外では24ヵ国で393例の確定症例、1人の死亡が確認されている(すべて11日6時現在)。各国でワクチンや治療薬の研究が進められており、WHOでは11日から2日の日程で、世界から400人以上の科学者を集めて治療やワクチン開発に関する会議を開催している。

アリピプラゾール長時間作用型注射剤で治療された患者の臨床経過

 抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、統合失調症および関連疾患患者の治療を維持し、アドヒアランスを確保するうえで、効果的な治療オプションである。アリピプラゾールLAIは、治療アドヒアランスを改善し、再発を軽減することが可能な非定型抗精神病薬である。スペイン・Health Centre Los AngelesのJuan Carlos Garcia Alvarez氏らは、6ヵ月間のアリピプラゾールLAI治療による、精神症状や社会機能の改善、副作用の軽減、抗精神病薬併用の減少に対する効果について、評価を行った。International Journal of Psychiatry in Clinical Practice誌オンライン版2020年1月14日号の報告。

フルベストラント+capivasertib、AI耐性進行乳がんでPFS延長(FAKTION)/Lancet Oncol

 capivasertibは、セリン/スレオニンキナーゼAKTの3つのアイソフォームすべてを強力に阻害するAKT阻害薬である。本剤の無作為化二重盲検プラセボ対照第II相試験(FAKTION試験)において、アロマターゼ阻害薬(AI)に耐性の進行乳がん患者に対し、フルベストラントにcapivasertibを追加することで無増悪生存期間(PFS)が有意に延長することを、英国・カーディフ大学のRobert H. Jones氏らが報告した。Lancet Oncology誌オンライン版2020年2月5日号に掲載。

日本人男性の食事と死亡率、60年でこう変わった

 日本人の食事の欧米化が進んでいるが、過去60年間の食事パターンはどの程度変化しているのだろうか。また、それは冠動脈疾患の死亡率に関連しているのだろうか。久留米大学の足達 寿氏らは、Seven Countries Studyの中の日本人コホートである田主丸研究(久留米大学による久留米市田主丸町住民の疫学調査)において、栄養摂取量の変化と冠動脈リスク因子または死亡率の関係を調査した。Heart and Vessels誌オンライン版2020年1月29日号に掲載。

低線量ボリュームCT検診、肺がん死を抑制/NEJM

 肺がんのリスクが高い集団において、ボリュームCTによる検診を受けた集団は、これを受けなかった集団に比べ、10年間の肺がんによる死亡率が低下し、肺がんを示唆する検査結果に対しフォローアップ処置を行う割合も低いことが、オランダ・エラスムス医療センターのHarry J de Koning氏らが行った「NELSON試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年2月6日号に掲載された。全米肺検診試験(NLST)は、低線量CTによる肺がん検診(年1回で3回)は従来の胸部X線に比べ、肺がん死亡率を20%低減したと報告している。一方、このような肺がん検診の死亡に関する有益性を示した無作為化試験のデータは限られているという。

胃がん家族歴ありH.pylori感染者、除菌でリスク低下/NEJM

 第1度近親者に胃がんの家族歴があるHelicobacter pylori感染者では、H. pyloriの除菌治療によって胃がんのリスクが低下することが、韓国・国立がんセンターのIl Ju Choi氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年1月30日号に掲載された。H. pylori感染と胃がんの家族歴は、胃がんの主要なリスク因子とされる。第1度近親者に胃がん罹患者がいるH. pylori感染者の胃がんリスクが、H. pylori除菌治療で低下するかは明らかではなかった。

PCI対CABG:どちらが優れている?(解説:上田恭敬氏)-1187

2008年から2015年の間に1,201症例の血行再建が必要なLMT症例を登録し、PCIとCABGのいずれが優れているかを検討した多施設無作為化比較非劣性試験(NOBLE試験)の5年フォローアップの結果が報告された。主要エンドポイントであるMACCEは全死亡、心筋梗塞、再血行再建術、脳卒中の複合エンドポイントである。カプラン・マイヤー解析による5年MACCEは、PCI群で28%、CABG群で19%となり、非劣性の要件を満たさず、CABGの優位性(p=0.0002)が示された結果となった。エンドポイントの構成成分を見ると、全死亡と脳卒中に有意な群間差はないものの、心筋梗塞がPCI群で8%、CABG群で3%(HR:2.99、95%CI:1.66~5.39、p=0.0002)、再血行再建術がPCI群で17%、CABG群で10%(HR:1.73、95%CI:1.25~2.40、p=0.0009)といずれもCABG群で少ない結果であった。

武漢以外の新型コロナウイルス感染患者の臨床的特徴/JAMA

 新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染患者の臨床症状について、健康人集団や武漢以外の患者について、まだあまり報告されていない。中国・北京の中国人民解放軍総医院のDe Chang氏らは、北京市内の病院に入院し2019-nCoV感染が確認された13例の初期の臨床的特徴を、JAMA誌オンライン版2020年2月7日号のリサーチレターに報告した。  著者らは、中国・北京にある3つの病院に2020年1月16~29日に入院した患者(北京清華長庚医院8例、首都医科大学附属北京安貞医院4例、中国人民解放軍総医院1例)を、2月4日まで調査した。2019-nCoV感染の可能性がある患者は入院・隔離し、咽頭スワブのサンプルを収集して中国疾病管理予防センターで2019-nCoVについて定量的PCRアッセイを用いて調べた。また、胸部レントゲンもしくは胸部CT検査を実施した。診断された患者は専門病院に移送した。

転移TN乳がん1次治療、PTXにcapivasertib追加でPFSとOS延長(PAKT)/JCO

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)においてはPI3K/AKTシグナル伝達経路の活性化が頻繁にみられる。TNBCの1次治療でパクリタキセル(PTX)にAKT阻害薬capivasertibを追加したときの有効性と安全性を評価した二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験(PAKT試験)で、capivasertib追加で無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が著明に延長し、とくにPIK3CA/AKT1/PTEN変異TNBCではより顕著であったことを英国・クイーンメアリー大学のPeter Schmid氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌2020年2月10日号に掲載。

うつ病とその後の認知症診断との関連~コホート研究

 うつ病は、認知症リスクの増加に関連する疾患である。しかし、これまでの研究においてはフォローアップ期間の短さ、家族要因の調整不足が、うつ病と認知症との関連に影響を及ぼしていた可能性がある。スウェーデン・ウメオ大学のSofie Holmquist氏らは、家族要因を調整したうえで35年以上のフォローアップを実施し、うつ病とその後の認知症との関連を調査した。PLOS medicine誌2020年1月9日号の報告。  2005年12月31日の時点でスウェーデン在住であり50歳以上の334万1,010人より、2つのコホートを形成した。うつ病と認知症の診断を特定するため、1964~2016年のSwedish National Patient Registerのデータを検索した。コホート1では、うつ病患者11万9,386例と非うつ病対照群を1対1でマッチさせた集団一致コホート研究を実施した。コホート2では、うつ状態が異なる同性の兄弟5万644例を対象とし、兄弟コホートを実施した。

HER2陽性転移乳がんに対するカペシタビン+トラスツズマブに対するtucatinibの上乗せ(HER2CLIMB試験):無増悪生存期間においてプラセボと比較して有意に良好(7.8ヵ月vs.5.6ヵ月)(解説:下村 昭彦 氏)-1185

本試験は、経口チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であるtucatinibのカペシタビン+トラスツズマブへの上乗せを検討した二重盲検第III相比較試験である。主要評価項目は最初に登録された480例における独立中央判定委員会による無増悪生存期間(PFS)で、RECIST v1.1を用いて評価された。PFS中央値は7.8ヵ月vs.5.6ヵ月(ハザード比:0.54、95%CI:0.42~0.71、p<0.001)でありtucatinib群で有意に良好であった。副次評価項目である全登録症例におけるOS中央値は21.9ヵ月vs.17.4ヵ月(ハザード比:0.66、95%CI:0.5~0.88、p=0.005)であり、こちらもtucatinib群で有意に良好であった。

新型コロナウイルス肺炎、重症例の特徴と院内感染の実態/JAMA

 中国・武漢大学中南医院のDawei Wang氏らは、2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)肺炎(NCIP)の臨床的特徴(特に重症例)を明らかにするため、自院の入院患者138例について調査した。その結果、重症例では年齢が高く、高血圧や糖尿病といった併存疾患を有する割合が高く、呼吸困難や食欲不振を訴える患者が多かった。また、138例中57例(41.3%)で院内感染が疑われるという。JAMA誌オンライン版2020年2月7日号に掲載。  著者らは、2020年1月1~28日に同院で2019-nCoVが確認された全症例について後ろ向き調査を実施した。症例はRT-PCRで確認し、疫学的、人口統計学的、臨床的、放射線学的特徴および検査データを解析した。アウトカムは2020年2月3日まで追跡された。

境界性パーソナリティ障害とADHDの関係に対する環境の影響

 近年の研究において、小児期の注意欠如多動症(ADHD)から成人期の境界性パーソナリティ障害(BPD)への移行が示唆されている。一般的な遺伝的影響が知られているが、生涯を通じてある疾患から別の疾患へ移行する可能性に対する環境要因の影響に関するエビデンスは、ほとんどない。スペイン・Hospital Universitary Vall d'HebronのNatalia Calvo氏らは、ADHD児におけるBPD発症リスク因子として、小児期のトラウマの影響を検証するため、既存のエビデンスのレビューを行った。Borderline Personality Disorder and Emotion Dysregulation誌2020年1月6日号の報告。