日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1008

分娩第3期の積極的管理、臍帯牽引は省略できるか?

分娩第3期の積極的管理では、コントロール下の臍帯牽引を省略すると重度出血のリスクがわずかながら高まる可能性があることが、世界保健機構(WHO)のA Metin Gulmezoglu氏らの調査で示された。分娩第3期の積極的管理により分娩後の出血リスクが低減する。積極的管理に含まれるコントロール下の臍帯牽引は高度な技術を要するが、出血抑制への影響が大きくないことが証明されれば省略が可能となり、医療資源の有効活用などへの寄与が期待されるという。Lancet誌2012年5月5日号(オンライン版2012年3月6日号)掲載の報告。

MTX抵抗性関節リウマチに対する生物学的製剤のアドオン治療2年後の結果:Swefot試験

メトトレキサート(MTX)抵抗性の関節リウマチ(RA)患者では、生物学的製剤インフリキシマブ(商品名:レミケード)の追加治療は、従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の追加治療に比べ2年後の手足の画像所見が良好なことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のRonald F van Vollenhoven氏らが進めるSwefot試験のフォローアップ解析で示された。同試験の治療1年後の解析で確認された同薬追加による臨床アウトカムの改善効果は、2年後にはみられなかった。Lancet誌2012年5月5日号(オンライン版2012年3月29日号)掲載の報告。

ラベプラゾールは低用量アスピリンによる消化性潰瘍再発リスクを低減するか?:国内における前向き無作為化実薬対照試験結果

低用量アスピリンを使っている患者では、胃・十二指腸粘膜病変、上部消化管症状のリスクが上昇することが知られている。心血管または脳血管疾患に対して低用量アスピリンを服用している消化性潰瘍の既往歴がある261例を対象として、前向き無作為化実薬対照試験が行われた。試験結果から、ラベプラゾール(商品名:パリエットなど)はゲファルナート(商品名:ゲファニールなど)よりも、消化性潰瘍、食道炎、そして低用量アスピリンによる消化管症状の再発リスクを減らす効果が高いという結論が得られた。主要評価項目は12週目における胃・十二指腸潰瘍の累積発現率である。神戸 大学の佐貫氏らが「J Gastroenterol」誌オンライン版に4月17日に報告した。

双極性I型障害におけるアリピプラゾールの有効性-AMAZE試験より-

2012年、抗精神病薬アリピプラゾールは、日本における「双極性障害における躁症状の改善」の効能追加を取得した。九州大学の神庭氏らはアジアの双極性I型障害患者における急性躁病または混合性エピソードに対するアリピプラゾールの有効性および忍容性を調査し、発表した。

虫垂炎疑いへの低線量CT、標準量CTと比べて非劣性

虫垂炎が疑われる患者に対し、低線量CTによる診断は標準量CTに対して非劣性であることが明らかにされた。韓国・国立ソウル大学のKyuseok Kim氏らが行った15~44歳の若年成人891例を対象とする単施設単盲検非劣性試験の結果による。成人では、虫垂炎診断ではCT検査が優勢を占めるようになってきているが、子どもや若者では、CT放射線被曝についての不安がある。Kim氏らは、低線量CTと標準量CTとによる診断結果に基づく不必要な虫垂炎手術の実施割合について評価を行った。NEJM誌2012年4月26号掲載報告より。

2型糖尿病肥満、薬物療法+外科的肥満手術で血糖コントロール有意に改善

2型糖尿病非コントロールの肥満患者について、薬物療法に加えて胃バイパス術など外科的肥満手術を行うことが、薬物療法単独よりも有意に血糖コントロールを達成するとの報告が発表された。米国・Bariatric and Metabolic InstituteのPhilip R. Schauer氏らが、無作為化非盲検単独施設試験の結果、報告したもので、これまでは観察研究においては、胃バイパス術などを受けた2型糖尿病患者における病状の改善が認められていた。NEJM誌2012年4月26日号(オンライン版2012年3月26日号)掲載報告より。

維持期の統合失調症患者において現在の薬物投与量は最適か?

統合失調症の薬物療法において、ドーパミンD2受容体の占有率を最適化することが求められる。従来から、統合失調症の適切な治療域(therapeutic window)としてD2受容体占有率を65-80%に保つべきとされてきた。慶応大学の水野氏らは、統合失調症の維持治療期においても同様なD2受容体占有率が必要か否かを検討した。水野氏らは「安定期の統合失調症患者においては65%以上のD2受容体占有率が必ずしも必要でない可能性がある」と報告した。

MEDiSHAREキックオフ~ITによる学生からの医療改革~ イベント開催のご案内

ITによる学生からのボトムアップ医療改革を目指す医療学生の団体「MEDiSHARE」は5月26日(土)、Apple Store, Ginza 3F theater にてキックオフイベント「ITによる学生からの医療改革」を開催する。また、スペシャルゲストにはチーム医療3.0のメンバーであり、TEDxOsakaのオーガナイザーでもある神戸大学の杉本真樹氏を迎える。

心臓デバイス感染性心内膜炎、早期デバイス摘出で死亡率は半減

心臓デバイス感染性心内膜炎(cardiac device infective endocarditis:CDIE)の患者では、弁病変を併発している割合が高く1年死亡率が約15%と高いこと、一方で早期にデバイス摘出を行うことで、同死亡リスクは半分以下に減少することが報告された。オーストラリア・Barwon HealthのEugene Athan氏らが、28ヵ国の医療機関を通じて行った前向きコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月25日号で発表した。

慢性虚血性心不全に対する自己骨髄単核細胞の経心内膜注入、改善効果は?

慢性虚血性心不全に対する自己骨髄単核細胞(BMC)の経心内膜注入手技について、左室収縮終末期容積(LVESV)や最大酸素消費量などの心機能の改善は認められなかったことが報告された。米国・Texas Heart InstituteのEmerson C. Perin氏らが行った、2つのプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年4月25日号で発表した。

ここまでわかったプラザキサ ~1年の臨床実績からなにを学び、なにが確立されたのか~

 2012年5月10日、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社主催のプレスセミナーが行われた。演者は、山下武志氏(心臓血管研究所所長)。演題は「ここまでわかったプラザキサ~1年の臨床実績からなにを学び、なにが確立されたのか~」。この内容をレポートする。

耐糖能異常から糖尿病に移行する患者は、高血圧も発症しやすい

耐糖能異常において2型糖尿病の発症と高血圧の発症は深く関連しており、αグルコシダーゼ阻害薬アカルボース投与によって、食後高血糖を改善することにより高血圧の発症を糖尿病の発症と同様に抑制することがSTOP-NIDDMの事後解析の結果、示唆された。この解析結果は5月8日に、Journal of Hypertension誌のオンライン版に速報された。

膵管ステント留置はERCP後膵炎を予防できるか?:国内における無作為化比較試験結果

 国内における無作為化比較試験から、膵管ステント留置により、安全かつ効果的に内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)後膵炎を予防できることを示唆する論文が、World Journal of Gastroenterology誌2012年4月14日号に掲載された。これは、東海大学の川口義明氏らの報告で、高リスク患者への膵管ステント留置術を勧めている。

英医学部入試に導入された臨床適性試験UKCATの影響

英国では、医学部新入生の社会的背景枠を広げるための一つのイニシアティブとして、2006年より医学部入学者選考過程に、言語理解力や定量的推論、抽象的推論、決定分析の能力を試す臨床適性試験(UKCAT)を導入した。ダーラム大学のPaul A .Tiffin氏らは、UKCATが、特定の社会階層出身志願者の不利益を減少させたかを評価するため、2009年入学者選考を対象に前向きコホート研究を行った。結果、公正な機会を与えるものとなっており、「全員とまではいかないが、今よりも多くの、社会経済的低階層の学生を英国医師集団に迎え入れていくことになるだろう」と結論している。BMJ誌(オンライン版2012年4月17日号)掲載報告より。

進行胃がん治療におけるベバシズマブのバイオマーカーの検討:無作為化第III相試験(AVAGAST)での評価

進行胃がんの1stライン治療において、ベバシズマブ(商品名:アバスチン、胃がんには未承認)を化学療法と併用する場合の転帰を予測するバイオマーカーとして、血漿VEGF-Aと腫瘍neuropilin-1が候補となることが、5月7日付Journal of Clinical Oncology誌オンライン速報版に掲載された。これは、未治療の局所進行または転移性胃がん患者における、化学療法へのベバシズマブ併用の有用性を検討した無作為化第III相試験であるAVAGASTにおいて評価されたもの。Eric Van Cutsemらが報告した。

【第56回日本リウマチ学会】 新規TNF抗体の患者QOLに与える影響 ~迅速かつ持続的な改善~

2012年4月26日~28日に第56回日本リウマチ学会総会・学術集会が品川で開催された。その中で開発中のTNF抗体「セルトリズマブペゴル(以下CZP)」の日本での臨床試験(HIKARI試験、J-RAPID試験)の患者QOL改善効果に関する解析結果が東京女子医科大学 山中寿氏によって報告された。

精神疾患患者におけるメタボリックシンドローム発症要因は?

精神疾患患者における心血管イベント発症要因の一つとして葉酸が関与しているといわれている。特にメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)やカテコール-o-メチルトランスフェラーゼ(COMT)の異常がリスクを増大させると考えられる。Ellingrod氏らはこれら遺伝子異型が抗精神病薬とメタボリックシンドロームとの関係にどのような影響を及ぼすのかを分析した。

職場におけるうつ病患者に対し電話認知行動療法は有効か?

 年々増加している職場におけるうつ病は、生産性の低下など大きな社会的損失をきたす。そのため、様々な治療法が検討されている。古川氏らは職場における小うつ病(閾値下うつ病)および労働効率が低下している状態(presenteeism)に対する電話認知行動療法(tCBT)の有効性を検討した。古川氏らは「tCBTは職場におけるうつ病患者への簡便な治療法のひとつとなりうるが、さらに長期間の検討が必要である」と結論づけている。