脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:40

tirofiban、知っている?(解説:後藤信哉氏)

動脈血栓の主成分はフィブリンと血小板である。閉塞血栓形成における血小板の機能は血小板凝集と同等と考えられた時期があった。tirofibanは血小板のGP IIb/IIIaに結合して血小板凝集を完全に阻害する。tirofiban、abciximab、eptifibatideの3種のGP IIb/IIIa阻害薬が心筋梗塞などを対象として有効性を示した。血小板凝集を阻害するので出血合併症も多い。日本ではabciximabの治験を行ったが、結局GP IIb/IIIa阻害薬は1つも承認されなかった。血栓形成プロセスはダイナミックである。

外傷性急性硬膜下血腫、開頭術vs.減圧開頭術/NEJM

 外傷性急性硬膜下血腫の手術において、骨弁を還納する開頭術と還納しない減圧開頭術では、1年時点の障害およびQOLのアウトカムは同等だった。一方で、2週間以内の追加手術の発生率は開頭術群で高く、創部合併症の発生率は減圧開頭術群が高かった。英国・Addenbrooke's HospitalのPeter J. Hutchinson氏らが、11ヵ国40施設で行った無作為化比較試験の結果を報告した。外傷性急性硬膜下血腫の手術の選択肢である減圧開頭術は、頭蓋内圧亢進症を予防する可能性が示唆されているが、より良好なアウトカムと関連するかは明らかになっていなかった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。

血小板数が少ない症例に血小板輸血は?(解説:後藤信哉氏)

血小板数が5万を切ると出血性合併症は増える。自然出血も増えるかもしれない。そんな症例でも中心静脈にカテーテルを入れる必要がある場合はある。カテーテル挿入にエコーを利用するようになって、合併症リスクは減少している。カテーテル挿入は必要である。しかし、血小板数が低いときに、一時的にでも血小板輸血をするか? 日常臨床に直結した疑問である。この疑問に対してランダム化比較試験を行ったのが本研究である。血小板数1~5万の症例を対象とした。中心静脈カテーテル挿入前に血小板輸血をする群としない群にランダムに振り分けた。カテーテルによるGrade2~4の出血を主要エンドポイントとした。血小板輸血をしても、出血リスクは事前に設定した非劣性マージンを超えなかった。

辛い食物とアルツハイマー病関連の認知機能低下との関係

 アルツハイマー病または認知機能低下と辛い食物摂取や身体活動とは、関連があるといわれているが、その調査は十分に行われていない。韓国・順天郷大学校のJaeuk Hwang氏らは、身体活動の緩和効果の条件下における辛い食物とアルツハイマー病関連の記憶力低下または全体的な認知機能低下との関連を調査した。その結果、辛い食物摂取は、アルツハイマー病関連の認知機能低下(エピソード記憶)の予測因子であり、とくに身体活動量の低い高齢者では悪化する可能性があることを報告した。Scientific Reports誌2023年5月16日号の報告。

アルツハイマー病治療薬lecanemabの安全性・有効性~メタ解析

 アルツハイマー病に対するlecanemabの有効性および安全性を評価するため、中国・Shengjing Hospital of China Medical UniversityのYue Qiao氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。その結果、実臨床における意義は確立していないものの、lecanemabは、早期アルツハイマー病患者の認知機能、行動に対し有効性を示すことが報告された。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年5月5日号の報告。  2023年2月までに公表された軽度認知障害またはアルツハイマー病患者における認知機能低下に対するlecanemab治療を評価したランダム化対照比較試験を、PubMed、Embase、Web of Science、Cochraneより検索した。臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)、Alzheimer's Disease Composite Score(ADCOMS)、AD Assessment Scale-Cognitive Subscale(ADAS-Cog)、臨床的認知症尺度(CDR)、アミロイドPET SUVr、PETにおけるアミロイド負荷、有害事象リスクに関するアウトカムを収集した。

日本人慢性片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性と安全性

 慢性片頭痛(CM)患者に対し、抗CGRPモノクローナル抗体製剤フレマネズマブによる治療は有効であり、効果発現が早く、忍容性が良好であることが臨床試験で示されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、日本人CM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、2つの臨床試験(Japanese and Korean CM Phase 2b/3、HALO CM Phase 3)のサブグループ解析を実施した。著者らは、「サブグループ解析の限界にもかかわらず一貫した結果が得られており、日本人CM患者に対するフレマネズマブの有効性および忍容性が裏付けられた」と報告している。Journal of Pain Research誌2023年4月20日号の報告。

認知度の低い重症筋無力症の啓発にむけて/アルジェニクスジャパン

 6月は「重症筋無力症」の啓発月間とされている。この疾患の社会的認知度を高めるために、アルジェニクスジャパンは、6月7日にメディア向けセミナーを都内で開催した。  セミナーでは、専門医による疾患解説のほか、医療者、患者、患者会、タレントの渡辺 満里奈氏によるトークセッションや同社が疾患啓発に制作したマンガ動画などが紹介された。同社は、全身型重症筋無力症治療薬の抗FcRn抗体フラグメント製剤エフガルチギモド アルファ(商品名:ウィフガート)を製造販売している。 

急性期脳梗塞へのtirofiban、アスピリンより優れた改善/NEJM

 大・中脳血管の閉塞を伴わない急性期脳梗塞患者の治療において、糖蛋白IIb/IIIa受容体阻害薬tirofibanは低用量アスピリンと比較して、非常に優れたアウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア0または1)が達成される可能性が高く、安全性には大きな差はないことが、中国・陸軍軍医大学のWenjie Zi氏らが実施した「RESCUE BT2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年6月1日号に掲載された。  RESCUE BT2試験は、中国の117施設で実施された二重盲検ダブルダミー無作為化試験であり、2020年10月~2022年6月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(中国国家自然科学基金の助成を受けた)。

血圧管理ケアバンドル、脳内出血の機能的アウトカムを改善/Lancet

 脳内出血の症状発現から数時間以内に、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムとの組み合わせで早期に集中的に降圧治療を行うケアバンドルは、通常ケアと比較して、機能的アウトカムを有意に改善し、重篤な有害事象が少ないことが、中国・四川大学のLu Ma氏らが実施した「INTERACT3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年5月25日号で報告された。  INTERACT3試験は、早期に集中的に血圧を下げるプロトコールと、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムを組み込んだ目標指向型ケアバンドルの有効性の評価を目的に、10ヵ国(低・中所得国9、高所得国1)の121病院で実施された実践的なエンドポイント盲検stepped wedgeクラスター無作為化試験であり、2017年5月27日~2021年7月8日に参加施設の無作為化が、2017年12月12日~2021年12月31日に患者のスクリーニングが行われた(英国保健省などの助成を受けた)。

広範囲虚血患者に対する経皮的脳血栓回収術の有効性が示された(解説:高梨成彦氏)

本研究はこれまで治療適応外とされていた広範囲虚血患者でも、経皮的脳血栓回収術によって予後が改善することを示したものである。先のRESCUE-Japan LIMIT(Yoshimura S, et al. N Engl J Med. 2022;386:1303-1313.)の結果を補強するもので、同じくISC2023において中国から報告されたANGEL-ASPECTSでも同様の結果が示された。今後はASPECTSの低い=虚血コアの大きな患者に対しても血栓回収術の適応が拡大されることになるだろう。研究対象となっているのはCT検査においてASPECTS 5点以下、または潅流CTかMRI拡散強調画像をRAPIDで評価して虚血コアが50mL以上である症例である。90日後のmRSが0~2であった患者の割合は内科治療群が7.0%であったのに対して血管内治療群では20.0%にも達している。興味深いことに、さらに広範な虚血を来した患者についても解析が行われており、70mL、100mL、150mLでも血管内治療群で予後が良好であった。