神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:52

理解されない患者の苦悩、新たなガイドライン、治療薬に期待

 2022年9月15日、アレクシオンファーマは「重症筋無力症ガイドライン改訂と適正使用に向けて」と題した重症筋無力症(以下、MG)の現状と新たなガイドラインに関するメディアセミナーを開催し、鈴木 重明氏(慶應義塾大学医学部神経内科 准教授)から「MGの現状」について、村井 弘之氏(国際医療福祉大学医学部 脳神経内科学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 脳神経内科 部長)から「2022年5月のMG診療ガイドラインの改訂ポイントとユルトミリス適応追加の意義」について、それぞれ講演が行われた。

認知症の急性興奮症状を軽減する感覚に基づく介入

 認知症患者の興奮症状の発生を長期間にわたり軽減するための介入として、感覚に基づく介入(Sensory-based Intervention)が一般的に行われている。しかし、この介入の即効性に関するエビデンスは十分ではない。香港理工大学のDaphne Sze Ki Cheung氏らは、認知症患者の興奮症状軽減に対して使用されている感覚に基づく介入を特定し、これら介入の即時効果を調査した。その結果、認知症患者において興奮症状軽減に対する感覚に基づく介入の即時効果を検討した研究はかなり不足しているものの、音楽関連の介入における限られたエビデンスは有望である可能性が示唆された。Aging & Mental Health誌オンライン版2022年9月8日号の報告。

睡眠の質と片頭痛との関係

 睡眠状態と片頭痛は密接に関連しているといわれている。しかし、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連をシステマティックに評価した研究はほとんどなく、性差や年齢差についてもよくわかっていない。中国・北京中医薬大学のShaojie Duan氏らは、睡眠の質と片頭痛発症リスクとの関連およびその性差や年齢差について調査を行った。また、睡眠の質と片頭痛患者の苦痛、重症度、身体障害、頭痛への影響、QOL、不安、抑うつ症状との関連も併せて調査した。その結果、睡眠の質の低下は、片頭痛発症リスクや片頭痛関連の苦痛と有意かつ独立して関連していることが明らかとなった。著者らは、睡眠の質の評価をより充実させることで、片頭痛患者の早期予防や治療に役立つであろうとまとめている。Frontiers in Neurology誌2022年8月26日号の報告。  対象は、片頭痛患者134例および年齢・性別がマッチした健康対照者70例。睡眠の質の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。睡眠の質と片頭痛発症リスク、頭痛関連の苦痛との関連を評価するため、ロジスティック回帰分析および線形回帰分析を行った。  主な結果は以下のとおり。

認知症と肥満・糖尿病

 米国では、肥満、糖尿病、認知症などの慢性疾患が増加している。これら慢性疾患の予防や適切なマネジメント戦術に関する知見は、疾患予防のうえで重大かつ緊要である。米国・テキサス工科大学のAshley Selman氏らは、認知症と肥満および糖尿病との関連についての理解を深めるため、それぞれの役割を解説し、新たな治療法についての情報を紹介した。International Journal of Molecular Sciences誌2022年8月17日号の報告。  主な内容は以下のとおり。 ・肥満、糖尿病、認知症の相互関係は、さらに解明されつつある。 ・肥満、糖尿病、認知症の発症に関連する炎症状態の一因として、加齢、性別、遺伝的要因、後天的要因、うつ病、高脂質の西洋型食生活が挙げられる。 ・この炎症状態は、食物摂取の調節不全およびインスリン抵抗性につながる可能性がある。 ・肥満は糖尿病発症につながる基礎疾患であり、後に、2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus:T2DM)の場合には“3型(type 3 diabetes mellitus:T3DM)”すなわちアルツハイマー病へ進行する可能性がある。

日本人高齢者における片頭痛有病率~糸魚川翡翠研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、日本人高齢者の頭痛、片頭痛、慢性連日性頭痛、痛み止めの使い過ぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)の有病率を調査するためアンケート調査を実施し、3ヵ月間の頭痛の有病率とその特徴を明らかにしようと試みた。結果を踏まえ著者らは、日本人高齢者の頭痛有病率は諸外国と比較し、決して高いものではないが、片頭痛による社会経済的損失は重大であり、疾患の理解、適切な治療や予防などが重要であると報告している。また、高齢者は、さまざまな併存疾患に関連する重度な頭痛といった特徴を持つ可能性が示唆された。Journal of Clinical Medicine誌2022年8月11日号掲載の報告。

認知症の興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性~メタ解析

 子供の主体性や尊厳を尊重する幼児教育理論であるモンテッソーリ教育を、高齢者や認知症介護に取り入れたモンテッソーリケアは、西欧諸国において興奮症状の治療に有用な非薬理学的介入であることが報告されている。しかし、アジア人を対象とした研究のほとんどはサンプルサイズが小さく一貫性が認められていないため、その結果の信頼性は制限されている。中国・The Third Hospital of QuzhouのLingyan Xu氏らは、アジア人認知症患者における認知症関連興奮症状に対するモンテッソーリケアの有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、アジア人認知症患者に対するモンテッソーリケアは、標準ケアと比較し、とくに身体的攻撃性による興奮症状を減少させる可能性が示唆された。しかし著者らは、本研究では、身体的非攻撃行動や言葉による攻撃行動に対する有効性が認められなかったことから、身体的攻撃性に対する効果の信頼性についても、今後のさらなる検討が求められるとしている。Medicine誌2022年8月12日号の報告。

再発性多発性硬化症の再発率をublituximabが低減/NEJM

 再発性多発性硬化症の治療において、抗CD20モノクローナル抗体ublituximabはピリミジン合成阻害薬teriflunomideと比較して、96週の期間における年間再発率を低下させ、MRI上の脳病変を減少させる一方で、障害の悪化リスクを抑制せず、インフュージョンリアクションを増加させることが、米国・スタンフォード大学のLawrence Steinman氏らが実施した「ULTIMATE I/II試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年8月25日号で報告された。  ULTIMATE I/II試験は、再発性多発性硬化症患者におけるublituximabの有効性と安全性を、teriflunomideとの比較において評価することを目的とする、同一デザインの2つの二重盲検ダブルダミー無作為化実薬対照第III相試験であり、2017年9月~2018年10月の期間に、10ヵ国の104の施設で参加者の登録が行われた(米国・TG Therapeuticsの助成による)。

超加工食品の摂取と認知症リスク

 超加工食品の摂取が、うつ病、心血管疾患、すべての原因による死亡といった健康への悪影響と関連することを示唆するエビデンスが増加している。しかし、超加工食品が認知症と関連しているかは、よくわかっていない。中国・天津医科大学のHuiping Li氏らは、UK Biobankのデータを用いて、超加工食品と認知症発症との関連を調査した。その結果、超加工食品の摂取量が多いほど認知症リスクが上昇し、超加工食品の一部を未加工食品または最小限の加工食品に置き換えることで、認知症リスクが低下することを報告した。Neurology誌オンライン版2022年7月27日号の報告。

糖尿病性神経障害性疼痛、併用薬による効果の違いは?/Lancet

 糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP)に対する鎮痛効果は、アミトリプチリン+プレガバリン、プレガバリン+アミトリプチリン、デュロキセチン+プレガバリンで同等であり、単剤療法で効果不十分な場合に必要に応じて併用療法を行うことで、良好な忍容性と優れた鎮痛効果が得られることが、英国・シェフィールド大学のSolomon Tesfaye氏らが英国の13施設で実施した多施設共同無作為化二重盲検クロスオーバー試験「OPTION-DM試験」の結果、示された。DPNPに対しては、多くのガイドラインで初期治療としてアミトリプチリン、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチンが推奨されているが、最適な薬剤あるいは併用すべきかについての比較検討はほとんど行われていなかった。OPTION-DM試験は、DPNP患者を対象とした過去最大かつ最長の直接比較のクロスオーバー試験であった。Lancet誌2022年8月27日号掲載の報告。

ユルトミリス、全身型重症筋無力症の適応追加

 アレクシオンファーマは、「ユルトミリス点滴静注300mg」「ユルトミリスHI点滴静注300mg/3mL」「ユルトミリスHI点滴静注1100mg/11mL」(一般名:ラブリズマブ[遺伝子組み換え]、以下ユルトミリス)について、成人の全身型重症筋無力症(gMG)に対する適応追加の承認を、2022年8月24日付で取得したことを発表した。  ユルトミリスは、最初で唯一の長時間作用型抗補体C5抗体であり、速やかかつ全面的・持続的に終末補体を阻害する。成人の患者において、導入期として初回投与、維持期として初回投与2週後投与、以降8週間ごとに静脈内投与される。