神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:52

血管性認知症やパーキンソン病認知症と尿酸値との関連~メタ解析

 中国・Shenyang Medical CollegeのQian Li氏らは、尿酸値と血管性認知症(VaD)およびパーキンソン病認知症(PDD)との関連を調査するため、メタ解析を実施した。その結果、尿酸値はPDDとの関連が認められたが、VaDとは認められなかった。著者らは、本研究がVaDやPDDの病態生理に関する知識を強化し、予防や治療戦略の開発促進に役立つことが期待されるとしている。Neurological Sciences誌オンライン版2023年1月24日号の報告。  2022年5月までに公表された関連研究を、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Collaboration Databaseより検索した。プール分析、感度分析、出版バイアスの評価を実施した。すべての分析にSTATA 16を用いた。

免疫便潜血検査陽性と認知症との関連

 免疫便潜血検査(FIT)は、大腸がん(CRC)のスクリーニングに広く用いられているが、CRC以外の疾患の場合でもFIT陽性になることがある。韓国・ソウル大学のYu Kyung Jun氏らは、FIT陽性結果と認知症発症との関連を調査した。その結果、FIT陽性は、とくに65歳未満の人で認知症リスクの増加と関連が認められた。著者らは、FIT陽性者で悪性腫瘍が認められない場合、臨床医は認知症の可能性を考慮すべきであるとまとめている。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年1月12日号の報告。

6つの“健康的な生活習慣”で高齢者の記憶力低下が遅延/BMJ

 健康的な生活習慣(喫煙をしない、飲酒をしない、健康的な食事、定期的な運動、活発な認知活動と社会的接触を組み合わせた)は、アポリポ蛋白E(APOE)ε4遺伝子型保有者においても、記憶力低下の進行を遅らせることを、中国・首都医科大学のJianping Jia氏らが地域住民を対象とした10年間の前向きコホート研究「China Cognition and Ageing Study(COAST)」の結果、報告した。健康的な生活習慣が認知機能に及ぼす影響に関する研究は増えているが、記憶力への影響に目を向けた研究は少なく、長期にわたる健康的な生活習慣と記憶力低下との関係を評価するには不十分なものであり、また遺伝的リスクとの相互作用は考慮されていなかった。著者は、「今回の研究は、記憶力の低下から高齢者を守るための重要な情報を提供するだろう」とまとめている。BMJ誌2023年1月25日号掲載の報告。

日本人片頭痛患者に対するフレマネズマブ オートインジェクターの第III相臨床試験

 ヒト化抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)モノクローナル抗体であるフレマネズマブは、片頭痛発作の発症抑制を適応とする皮下注射製剤である。2022年、フレマネズマブに、自宅での自己注射が可能となるオートインジェクター(AI)製剤が新たな選択肢として加わった。獨協医科大学の平田 幸一氏らは、フレマネズマブのAI製剤の安全性を調査するために実施された第III相臨床試験の結果を報告した。その結果、自宅でのフレマネズマブのAI製剤自己注射は、一般的な安全性および良好な忍容性が認められた。著者らは、有用性およびアドヒアランス改善の観点から、フレマネズマブのAI製剤による投与戦略は臨床的に意義があると考えられると報告している。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2022年12月28日号の報告。

高齢者の歩行速度と認知症リスク~久山町研究

 九州大学の多治見 昂洋氏らは、高齢者の歩行速度と脳体積および認知症発症リスクとの関連を調査した。その結果、最高歩行速度が低下すると認知症リスクが上昇しており、この関連には海馬、島皮質の灰白質体積(GMV)減少および白質病変体積(WMHV)増加が関連している可能性が示唆された。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2023年3月号の報告。  MRIを実施した65歳以上の認知症でない日本人高齢者1,112人を対象に、5.0年間(中央値)フォローアップを行った。対象者を、年齢および性別ごとに最高歩行速度の四分位により分類した。GMVおよびWMHVの測定には、voxel-based morphometry(VBM)法を用いた。最高歩行速度とGMVとの横断的な関連を評価するため、共分散分析を用いた。最高歩行速度と認知症発症リスクとの関連を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。最高歩行速度と認知症との関連に対する脳体積の影響を検討するため、媒介分析を行った。

高齢ドライバーの運転事故は減少しているか/筑波大

 高齢者の自動車運転に起因する事故が後を絶たない。交通安全推進のため、75歳以上のドライバーを対象に、2009年から運転免許更新時の認知機能検査が義務化され、2017年からその検査結果の運用方法が変更された。これら運用変更後に、高齢ドライバーの事故は減少したのだろうか。  市川 政雄氏(筑波大学医学医療系教授)らの研究グループは、2012~19年までに全国で発生した高齢ドライバーによる交通事故のデータを用い、2017年の運用変更後に、75歳以上のドライバーの事故数が、認知機能検査の対象外である70~74歳と比べ、どの程度変化したのか分析した。また、75歳以上の高齢者が自転車や徒歩で移動中に負った交通外傷の数にも変化があったのか、同様に分析した。

アルツハイマー病治療薬lecanemab、厚労省の優先審査品目に指定/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは1月30日、アルツハイマー病(AD)治療薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabの日本における製造販売承認申請について、厚生労働省より優先審査品目に指定されたことを発表した。優先審査は、重篤な疾病で医療上の有用性が高いと認められた新薬などに与えられ、総審査期間の目標が短縮される。医薬品医療機器総合機構(PMDA)によると、申請から承認までの総審査期間は、通常品目は80パーセンタイル値で12ヵ月のところ、優先品目は9ヵ月となっている。

睡眠薬使用と認知症リスクに関する人種差

 高齢者の認知機能に対する睡眠薬の影響は論争の的となっている。これは、睡眠の質や人種差に依拠している可能性がある。米国・カリフォルニア大学のYue Leng氏らは、睡眠薬使用と認知症発症について15年間の縦断的関連を評価し、夜間の睡眠障害との関連や人種差について調査を行った。その結果、睡眠薬の高頻度の使用が、白人高齢者の認知症リスクと関連していることを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年12月20日号の報告。  対象は、認知症でない地域住民の高齢者3,068人(年齢:74.1±2.9歳、黒人の割合:41.7%、女性の割合:51.5%)。睡眠薬使用は、「睡眠薬や睡眠補助薬を服用していますか?」との質問を3回行って記録し、5段階(まったくない[0回]、ほとんどない[1回/月]、ときどき[2~4回/月]、よくある[5~15回/月]、非常によくある[16~30回/月])で評価した。認知症の発症は、入院記録、認知症薬の使用または全体的な認知機能の臨床的に有意な低下で定義した。

「当事者にも目を向けて」―レビー小体型認知症の多様な症状

 2023年1月17日、住友ファーマ主催のレビー小体型認知症(DLB)に関するプレスセミナーが開催され、大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室 教授の池田 学氏から「第2の認知症、レビー小体型認知症(DLB)の多彩な症状と治療法の進歩」について、近畿大学医学部 精神神経科学教室 主任教授 橋本 衛氏からは「当事者に目を向けた診療のすすめと当事者、介護者、主治医に伝えたいこと」について語られた。  多様な症状を示し、アルツハイマー型認知症と比べてケアが難しいDLBでは、当事者、介護者、主治医の3者の理解が深まることで、当事者のQOL向上と介護者の負担軽減が期待される。

日本における片頭痛オンライン診療の現状

 2020年3月以降、COVID-19パンデミックによりオンライン診療の必要性が高まっている。日本では2022年4月に、ほとんどの疾患に対するオンライン診療が正式に開始された。長野・こむぎの森 頭痛クリニックの勝木 将人氏は、オンライン診療のみで治療を行った日本人頭痛患者の初の症例集積研究となる、初診から3ヵ月間の治療成績を報告した。その結果、オンライン診療のみで治療を行った3ヵ月の時点で、Headache Impact Test-6(HIT-6)スコア、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)の有意な改善が認められた。著者は、オンライン診療は頭痛治療におけるアンメットニーズを解決するために普及することが期待されると、本報告をまとめている。Cureus誌2022年11月3日号の報告。