神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:51

基礎疾患がある若年者、コロナワクチン後の抗体陽性率高い/成育医療研究センター

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏らによって、免疫抑制状態を含む基礎疾患を有する12~25歳の患者における新型コロナワクチン接種後の安全性と抗体価が調査された。その結果、基礎疾患のある患者であっても、ワクチン2回接種後の抗体陽性率は高く、その抗体価は12~15歳の患者のほうが16~25歳の患者よりも高いことが明らかになった。これまでの新型コロナワクチンに関する調査は主に健康な人を対象としており、基礎疾患を有する小児や青年での安全性や抗体価の情報は限られていた。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2022年9月21日掲載の報告。

片頭痛患者のスマホ使用が痛みの強さや治療に及ぼす影響~多施設横断比較研究

 スマートフォンユーザーは、世界中で飛躍的に増加している。スマートフォン使用中または使用後にみられる症状として、頭痛、睡眠障害、物忘れ、めまい、その他の疾患などが挙げられる。また、片頭痛は身体的衰弱を伴う疾患であり、身体障害の原因として世界で2番目に多い疾患といわれている。パキスタン・Jinnah Medical and Dental CollegeのMehwish Butt氏らは、スマートフォンの使い過ぎが片頭痛患者の障害レベル、痛みの強さ、睡眠の質、全体的なQOLにどのような影響を及ぼすかを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、スマートフォンの使い過ぎは、片頭痛患者の痛みを増強させ、薬物治療効果を減弱させる可能性が確認された。このことから著者らは、片頭痛患者は症状悪化を避けるために、スマートフォンの使用を制御することが推奨されるとしている。Brain and Behavior誌オンライン版2022年9月20日号の報告。

高齢乳がんサバイバー、CRP高値が認知機能障害に関連/JCO

 高齢の乳がんサバイバーと非がん対照者のC反応性蛋白(CRP)値とその後の認知機能を調査した大規模前向き全国コホート研究の結果、サバイバーは対照群と比べて長期にわたりCRPが高く、CRPが高かったサバイバーは認知機能障害を発症する可能性が高かった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJudith E. Carroll氏らが、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年9月30日号で報告した。

認知症患者の死亡率に対するコリンエステラーゼ阻害薬の影響~システマティックレビュー

 コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)は、神経活動だけでなく心血管系への作用も有していることから、死亡率に影響を及ぼす可能性がある。フランス・ソルボンヌ大学のCeline Truong氏らは、ChEIによる治療が認知症患者の死亡率を改善するかを検討した。その結果、認知症患者に対するChEIの長期治療とすべての原因による死亡リスク低下との関連が認められ、そのエビデンスの質は中~高であることが示唆された。著者らは、これらの調査結果は、認知症患者に対するChEI治療の決定に影響を与える可能性があるとしている。Neurology誌オンライン版2022年9月12日号の報告。  2021年11月までに公表された文献をPubMed、EMBASE、Cochrane CENTRAL、ClinicalTrials.gov、ICRTPより検索し、レビュー、ガイドライン、これらに含まれる研究の参考文献をスクリーニングした。あらゆるタイプの認知症患者を対象に、ChEIによる治療とプラセボまたは通常治療との比較を6ヵ月以上実施した、バイアスリスクのより低いランダム化比較試験(RCT)および非RCTを分析に含めた。2人の独立した研究者により、研究の包含およびバイアスリスクを評価し、事前に規定されたフォーマットに従いデータを抽出した。研究者間の不一致事項については、ディスカッションおよびコンセンサスにより解決した。すべての原因による死亡および心血管死に関するデータは、粗死亡率または多変量調整ハザード比(HR)として測定し、ランダム効果モデルを用いてプールした。集積されたデータは、逐次解析(trial sequential analysis:TSA)を用いて評価した。なお、本研究はPRISMAガイドラインに従って実施した。

糖尿病性末梢神経障害性疼痛治療に新たなエビデンスが報告された(解説:住谷哲氏)

糖尿病性末梢神経障害DPN(diabetic peripheral neuropathy)は無症状のことが多く、さらに網膜症に対する眼底撮影、腎症に対する尿アルブミンのような客観的診断検査がないため見逃されていることが少なくない。しかしDPNの中でも糖尿病性末梢神経障害性疼痛DPNP(diabetic peripheral neuropathic pain)は疼痛という自覚症状があるため診断は比較的容易である。不眠などにより患者のQOLを著しく低下させる場合もあるので治療が必要となるが、疼痛コントロールに難渋することが少なくない。多くのガイドラインでは三環系抗うつ薬であるアミトリプチリン(以下A)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬SNRIであるデュロキセチン(以下D)、電位依存性カルシウムチャネルα2δリガンドのガバペンチノイドに分類されるプレガバリン(以下P)およびガバペンチン(以下G)の4剤が有効性のある薬剤として推奨されている。疼痛をコントロールするためには十分量の薬剤を投与する必要があるが、実際にはそれぞれの薬剤の持つ特有の副作用で増量が困難となり、中断や他の薬剤の併用を必要とすることが多い。ちなみにわが国での神経障害性疼痛に対する最大投与量は、A 150mg、D 60mg、P 600mgとなっている。GはPと同様の作用機序であるが、添付文書上は抗てんかん薬としての適応のみであり神経障害性疼痛に対する保険適応はない。しかし社会保険診療報酬支払基金では最大投与量2,400mgまで認めているという不思議な状況である。

日本人高齢者の睡眠時間と認知症リスクとの関係~NISSINプロジェクト

 大阪公立大学の鵜川 重和氏らは、身体的および社会的に自立した日本人高齢者における毎日の睡眠時間と認知症発症リスク(高血圧、糖尿病、心血管疾患などの併存疾患の有無にかかわらず)との関連を調査するため、日本人の年齢別コホートを行った。その結果、日々の習慣的な睡眠時間は、将来の認知症発症リスクの予測因子であることが示唆された。Sleep Medicine誌オンライン版2022年9月3日号の報告。  64~65歳の日本人1,954人(男性:1,006人、女性:948人)を含むプロスペクティブコホート研究を実施した。1日の睡眠時間、症状、人口統計学的因子、ライフスタイル特性に関するデータは、ベースラインアンケート調査および健康診断調査(2000~05年)より収集した。認知症発症は、厚生労働省が提唱する全国標準化認知症尺度を用いて確認した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、競合リスクモデルを用いた。死亡例も競合イベントとして扱った。

lecanemabが早期アルツハイマー病の症状悪化を抑制、今年度中の申請目指す/エーザイ・バイオジェン

 エーザイ株式会社とバイオジェン・インクは2022年9月18日付けのプレスリリースで、抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabについて、脳内アミロイド病理が確認されたアルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度AD(これらを総称して早期ADと定義)を対象とした第III相Clarity AD試験において、主要評価項目ならびにすべての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成したと発表した。  Clarity AD試験は、早期AD患者1,795例を対象とした、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、無作為化グローバル臨床第III相検証試験。被験者は、lecanemab10mg/kg bi-weekly投与群またはプラセボ投与群に1:1で割り付けられた。ベースライン時における被験者特性は両群で類似しており、バランスがとれていた。被験者登録基準においては、幅広い合併症あるいは併用治療(高血圧症、糖尿病、心臓病、肥満、腎臓病、抗凝固薬併用など)を許容している。試験実施地域は日本、米国、欧州、中国。

認知症リスク低下に寄与する1日当たりの歩数

 認知症予防ガイドラインでは身体活動を推奨しているが、認知症の発症と歩数やその強度との関連は明らかになっていない。南デンマーク大学のBorja Del Pozo Cruz氏らは、英国成人を対象に毎日の歩数やその強度とすべての原因による認知症発症との関連を調査した。その結果、歩数が多いほどすべての原因による認知症発症リスクが低く、1日当たり1万歩を少し下回る程度の歩数が、最も効果的であることが示唆された。JAMA Neurology誌オンライン版2022年9月6日号の報告。  UK Biobankの集団ベース・プロスペクティブコホート研究(2013年2月~2015年12月)を実施し、フォローアップ期間は6.9年、データ分析は2022年5月に行った。10万3,684人中、有効な歩数データを有する40~79歳の成人7万8,430人を分析対象に含め、認知症発症はレジストリベースで2021年10月までに確認した。歩数計から得られた1日の歩数、1分当たり40歩未満の偶発的な歩数、1分当たり40歩以上の意図的な歩数、1日の最も歩数の多い30分間(ピーク30分間)における1分当たりの歩数(必ずしも連続とは限らない)を分析した。主要アウトカムは、致死的および非致死的な認知症の発症とし、入院記録またはプライマリケア記録と関連付けて収集するか、死亡記録の死因を参照した。歩数との用量反応関連を評価するため、Spline Cox回帰を用いた。

人工甘味料の種類別、心血管疾患リスクとの関連は/BMJ

 人工甘味料の摂取量の増加に伴って心血管疾患のリスクが上昇し、なかでもアスパルテームは脳血管疾患、アセスルファムカリウムとスクラロースは冠動脈性心疾患のリスクと関連することが、フランス・ソルボンヌ パリ北大学のCharlotte Debras氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年9月7日号に掲載された。  研究グループは、あらゆる食事(飲料、卓上甘味料、乳製品など)由来の人工甘味料(全体、種類別[アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース])と、心血管疾患(全体、脳血管疾患、冠動脈性心疾患)の関連の評価を目的に、住民ベースの前向きコホート研究を行った。

夜間ブルーライトカット眼鏡による片頭痛予防効果

 片頭痛は有病率の高い一次性頭痛であり、現役世代で発症しやすいことから、生産性の低下による社会的損失につながることが問題視されている。国際頭痛分類第3版(ICHD-3、ベータ版)の診断基準では、片頭痛の発作時には過敏、とくに光過敏が認められ、光が頭痛の誘発因子であることが示唆されている。獨協医科大学の辰元 宗人氏らは、片頭痛発作の悪化につながる内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)への光刺激を減少させる夜間のブルーライトカット(Blue Cut for Night:BCN)眼鏡を開発し、その効果を検証した。その結果、ipRGCへの光刺激を減少するBCN眼鏡の使用は、片頭痛発作の軽減に有用である可能性が示唆された。Internal Medicine誌オンライン版2022年8月20日号の報告。