神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:24

認知機能低下の早期発見にアイトラッキングはどの程度有用か

 アルツハイマー病(AD)患者では初期段階から、眼球運動に反映されるように、視空間処理障害が認められる。杏林大学の徳重 真一氏らは、ビジュアルタスク実行中の視線動向パターンを評価することで、認知機能低下の早期発見に役立つかを調査した。その結果、いくつかのタスクを組み合わせて視空間処理能力を可視化することで、高感度かつ特異的に認知機能の低下を早期に検出し、その後の進行の評価に役立つ可能性があることを報告した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年3月21日号の報告。

30代で高血圧の人は70代になった時に脳の健康が悪化している?

 成人期の早い段階で高血圧を発症した人は、高齢期に入った時点で脳の健康状態が悪化している可能性のあることが報告された。特に男性においてその関連が強いという。米カリフォルニア大学デービス校のKristen George氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に4月3日掲載された。  中高年者では高血圧を有することが、アルツハイマー病や認知症のリスクを示す頭部画像所見の多さと関連のあることが知られている。それに対して、中年期以前の高血圧と頭部画像所見との関連については知見が少ない。また、中年期以前に高血圧を発症した患者のうち女性患者は、女性ホルモンの保護作用によって脳の構造的な変化が男性よりも抑制される可能性がある。そこでGeorge氏らは、初期成人期の血圧と頭部画像所見との関連、およびその性差を検討した。

CGRPモノクローナル抗体に反応しやすい日本人片頭痛患者の特徴

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチドモノクローナル抗体(CGRPmAb)は、頭痛障害が従来の予防的治療オプションに奏効しない片頭痛患者にとって有用な薬剤であると考えられる。しかし、日本国内におけるCGRPmAbの使用実績は2年と短く、治療反応が得られやすい患者とそうでない患者を治療前に判別することは困難である。慶應義塾大学の井原 慶子氏らは、CGRPmAbに奏効した日本人片頭痛患者の臨床的特徴を明らかにするため、リアルワールドデータに基づいた検討を行った。その結果、年齢が高く、過去の予防薬治療失敗の合計回数が少なく、免疫リウマチ性疾患の病歴のない片頭痛患者は、CGRPmAbに対する良好な治療反応が期待できることが示唆された。The Journal of Headache and Pain誌2023年3月9日号の報告。

夢で記憶が定着、レム睡眠とノンレム睡眠はどちらが重要?

 脳は睡眠中に記憶の整理などを行っていることが、近年明らかになっている。また、睡眠中には起床時の記憶が夢に登場することがあるため、夢が記憶の定着に関連しているのではないかといわれている。そこで、米国・ファーマン大学のLauren Hudachek氏らは、学習課題に関連する夢と睡眠後の記憶との関連について、システマティックレビューおよび16試験のメタ解析を実施し、夢と記憶の間には関連があることが明らかになった。また、記憶はレム睡眠よりもノンレム睡眠との関連が大きいことも示唆された。Sleep誌オンライン版2023年4月14日号の報告。

女性の認知症、出産回数・初産年齢との関連は弱い

 出産回数の多さや初産の年齢の高さが女性の認知症リスクと関連しているとされ、妊娠に伴う生理学的な変化への曝露と説明されてきた。しかし、社会経済学的およびライフスタイルの要因が関連しているとも考えられ、男性でも同様のパターンがみられる可能性がある。デンマーク・Statens Serum InstitutのSaima Basit氏らは、女性の出産回数の多さや初産の年齢の高さと認知症リスクとの関連性について、男女両方に当てはまるかを検討した。その結果、子供の数や親になる年齢と認知症リスクとの関連性が男女間で同様であることから、社会経済学的およびライフスタイルの要因が認知症リスクと関連している可能性が示唆された。BMC Neurology誌2023年3月1日号の報告。

脊髄刺激療法で治療抵抗性の糖尿病性神経障害が改善

 治療抵抗性の有痛性糖尿病性神経障害(painful diabetic neuropathy;PDN)に対する脊髄刺激療法(spinal cord stimulation;SCS)の有用性が報告された。患者の疼痛症状の改善に加えて神経学的評価の改善も認められたという。米アーカンソー大学のErika Petersen氏らが行った無作為化比較試験の報告であり、第75回米国神経学会(AAN2023、4月22~27日、ボストン)での発表に先立ち、研究要旨が2月28日にオンラインで公開された。  米国の糖尿病患者数は約3700万人とされており、最大でその25%がPDNに罹患しているとされる。PDNに対してはさまざまな治療薬が臨床応用されているが、それらの治療に抵抗性を示す患者も少なくない。Petersen氏らは、そのような治療抵抗性PDN患者に対するSCSの安全性と有効性を検討した。

ワクチン接種者はコロナ後遺症リスクが4割以上低い可能性

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期以降にさまざまな症状が遷延する、「コロナ後遺症」と呼ばれる状態(post-COVID-19 condition;PCC)のリスクに関連する因子が報告された。女性や喫煙者、急性期に入院を要した人などはリスクが高く、反対にワクチン接種によってリスクが大幅に抑制されている可能性が示された。英イースト・アングリア大学のVassilios Vassiliou氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に3月23日掲載された。

ミトコンドリアはアルツハイマー病の予防や治療の新たな扉を開くか

 アルツハイマー病リスクが高い人の特定は、予後や早期介入に重要である。縦断的な疫学研究では、脳の不均一性と加齢による認知機能低下が観察されている。また、脳の回復力は、予想以上の認知機能として説明されてきた。この「回復力(resilience)」の構造は遺伝的要因や年齢などの個人的特性と相関することが示唆されている。さらに、アルツハイマー病の病因とミトコンドリアの関連がこれまでのエビデンスで確認されているが、遺伝学的指標(とくにミトコンドリア関連遺伝子座)を通じて脳の回復力を評価することは難しかった。

ビタミンD不足で認知症リスク上昇~コホート研究

 ビタミンD活性代謝物は、神経免疫調節や神経保護特性を有する。しかし、ヒドロキシビタミンDの血清レベルの低さと認知症リスク上昇の潜在的な関連については、いまだ議論の的である。イスラエル・ヘブライ大学のDavid Kiderman氏らは、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の血清レベルの異なるカットオフ値において、ビタミンD欠乏症と認知症との関連を調査した。その結果、不十分なビタミンDレベルは認知症との関連が認められ、ビタミンDが不足または欠乏している患者においては、より若年で認知症と診断される可能性が示唆された。Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology誌オンライン版2023年3月8日号の報告。

社会的孤立と糖尿病を含む既知のアルツハイマー型認知症リスク因子が関連

 社会的な孤立が、アルツハイマー型認知症を予防するための修正可能なリスク因子の可能性があるとする、マギル大学(カナダ)のKimia Shafighi氏らの研究結果が「PLOS ONE」に2月1日掲載された。社会的孤立や周囲からのサポートの欠如と、糖尿病を含む身体疾患をはじめとする、アルツハイマー病の種々のリスク因子との関連が明らかになったという。  アルツハイマー病とそれに関連する認知症(alzheimer’s disease and related dementias;ADRD)の増加は、多くの国で公衆衛生上の重要な課題となっている。ADRDの治療法はいまだ確立されていないが、予防に関しては、修正可能なリスク因子の管理によって、最大40%程度、発症を抑制できる可能性が報告されている。