神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

『認知症になる人・ならない人』著者が語る「最も驚かれた予防策」とは?

 CareNet.comの人気連載「NYから木曜日」「使い分け★英単語」をはじめ、多くのメディアで活躍する米国・マウントサイナイ医科大学 老年医学科の山田 悠史氏。山田氏が6月に出版した書籍『認知症になる人 ならない人 全米トップ病院の医師が教える真実』(講談社)は、エビデンスが確立されている認知症予防法や避けるべき生活習慣を、一般向けにわかりやすく紹介した1冊だ。  本書は 1. 認知症になる人の生活習慣 2. 実は認知症予防に効果がないこと 3. 認知症にならない人の暮らし方 4. 認知症になったときの対応 という章立てになっている。

日本人アルツハイマー病の早期発見に有効な血漿バイオマーカー

 血漿バイオマーカーは、アルツハイマー病(AD)の診断において、アミロイドPETや脳脊髄液(CSF)バイオマーカーに代わる有望な選択肢となる可能性がある。慶應義塾大学の窪田 真人氏らは、ADの診断および病期分類における複数の血漿バイオマーカーの有用性について、日本人コホートを用いた横断研究により評価した。Alzheimer's Research & Therapy誌2025年6月7日号の報告。  評価対象とした血漿バイオマーカーは、Aβ42/40、リン酸化タウ(p-tau181/p-tau217)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)であり、それぞれ単独または併用により評価した。Aβ42/40の測定にはHISCLプラットフォーム、その他のバイオマーカーの測定にはSimoaプラットフォームを用いた。参加対象者は、アミロイドPET画像および神経心理学的検査に基づき、健康対照群、AD群(AD発症前段階、軽度認知障害[MCI]、軽度認知症)、非AD群に分類した。ROC解析により、AβPETの状態、センチロイド値(CL)と認知スコア、ADの各ステージにおけるバイオマーカーの比較を予測した。

日本の実臨床におけるフレマネズマブの2年間にわたる有効性と忍容性

 獨協医科大学の鈴木 紫布氏らは、日本の実臨床におけるフレマネズマブの2年間にわたる長期的な有効性と忍容性を明らかにするため、レトロスペクティブ観察単施設コホート研究を実施した。Neurological Research and Practice誌2025年6月3日号の報告。  対象は、フレマネズマブ治療を行った反復性片頭痛(EM)または慢性片頭痛(CM)患者165例。主要エンドポイントは、ベースラインから1〜24ヵ月までの1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)の変化量とした。副次的エンドポイントは、片頭痛評価尺度(MIDAS)スコアの変化量、有害事象、治療反応率、治療反応予測因子、治療継続率。

自転車に乗ることは認知症リスク低下と関連

 移動手段として定期的に自転車に乗ることは、あらゆる原因による認知症(以下、認知症)リスクの低下と関連することが新たな研究で明らかになった。自転車の利用は、記憶に関わる脳領域である海馬の体積が有意に大きいこととも関連していたという。華中科技大学(中国)同済医学院のLiangkai Chen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月9日掲載された。  Chen氏らは、2006年3月13日から2010年10月1日までの間に収集されたUKバイオバンクのデータを用いて、移動手段と認知症リスクや脳構造との関連を検討した。対象者の総計は47万9,723人で、平均年齢は56.5歳、女性が54.4%を占めていた。参加者の移動手段は、「通勤・通学を除き、過去4週間において最もよく利用した移動手段は何ですか」という質問により調査されていた。その回答に基づき、1)車や公共交通機関などの非活動的移動手段を利用、2)徒歩、3)徒歩と非活動的な移動手段を併用、4)自転車単独および自転車と他の移動手段を併用、の4群に分類された。主要評価項目は、認知症の発症(若年性認知症と遅発性認知症を含む)、副次評価項目は、アルツハイマー病などの認知症のサブタイプや、MRIで評価された脳構造などであった。

TAVIへの脳塞栓保護デバイス、手技関連脳卒中を低減するか/NEJM

 経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)は、手技に関連した脳卒中のリスクがあるが、脳塞栓保護(cerebral embolic protection:CEP)デバイスにより脳循環における塞栓形成が減少し、脳卒中の発生率が低下する可能性があるという。英国・John Radcliffe HospitalのRajesh K. Kharbanda氏らBHF PROTECT-TAVI Investigatorsは、「BHF PROTECT-TAVI試験」において、TAVI単独と比較してTAVI+CEPデバイスは、72時間以内の脳卒中の発生率を低減せず、障害を伴う脳卒中や重症脳卒中、死亡率の改善ももたらさないことを示した。研究の詳細は、NEJM誌2025年6月26日号に掲載された。  BHF PROTECT-TAVI試験は、英国の33施設が参加した盲検下にアウトカムの評価を行う非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年10月~2024年10月に患者の無作為化を行った(英国心臓財団とBoston Scientificの助成を受けた)。

心房細動を伴う脳梗塞のDOAC開始、早期vs.遅延~メタ解析/Lancet

 急性虚血性脳卒中と心房細動を有する患者において、直接経口抗凝固薬(DOAC)の遅延開始(5日以降)と比較して早期開始(4日以内)は、30日以内の再発性虚血性脳卒中、症候性脳内出血、分類不能の脳卒中の複合アウトカムのリスクを有意に低下させ、症候性脳内出血を増加させないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのHakim-Moulay Dehbi氏らが実施した「CATALYST研究」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年6月23日号に掲載された。  研究グループは、急性虚血性脳卒中発症後におけるDOACの早期開始と遅延開始の有効性の評価を目的に、無作為化対照比較試験の系統的レビューと、個別の患者データのメタ解析を行った(英国心臓財団などの助成を受けた)。

内側側頭葉切除術は薬剤抵抗性てんかんの発作を高率に抑制する

 内側側頭葉(MTL)病変は薬剤抵抗性てんかんの主な原因の一つであり、MTL切除が転帰を改善し得る。しかし実臨床では、外科治療が提案されないまま複数の抗てんかん薬(AED)により長年治療されている患者が少なくなく、より強固なエビデンスの提示が求められている。これを背景に、アル=アズハル大学(エジプト)のSameh M. Salama氏らは、前向きコホート研究によりMTL切除術の有用性を検討。「Cureus」に3月6日論文が掲載された。  この研究は、2022~2024年に薬剤抵抗性側頭葉てんかんのため同大学病院に入院した3~50歳の患者20人を対象に行われた。薬剤抵抗性は2剤以上のAEDで発作をコントロールできない、または副作用のためAEDを使用できないことで定義した。MTL以外に病変を有する患者は除外された。術前の所見に合わせて患者ごとに、選択的扁桃体海馬切除を行うか否かなどが決定された。

脳全体のアミロイドβとタウタンパク質の蓄積量は性別によって異なる

 女性や父親にアルツハイマー病(AD)歴がある人の方が、脳全体のアミロイドβ(Aβ)とタウタンパク質の蓄積量の間に強い関連が認められるという研究結果が、「Neurology」5月13日号に掲載された。  マギル大学(カナダ)のValentin Ourry氏らは、患者自身の性別やADを発症した親の性別がAβとタウタンパク質の蓄積に影響を与えるかどうかを検討するため、カナダで実施されたPresymptomatic Evaluation of Experimental or Novel Treatments for ADコホート研究から対象者243人のデータを分析した。

カフェインと頭痛の重症度との関係

 重度の頭痛や片頭痛は、日常生活に大きな影響を及ぼす非常に一般的な神経疾患である。毎日のカフェイン摂取と重度の頭痛や片頭痛との関係に関する議論は、いまだ続いている。中国・南昌大学のZhiqiang Liao氏らは、食事介入のためにも、カフェイン摂取と重度の頭痛または片頭痛との関連を調査した。Frontiers in Neurology誌2025年5月14日号の報告。  対象は、1999〜2004年に行われた米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータより抽出した20〜49歳の参加者5,234人。食事性カフェイン摂取量と重度の頭痛または片頭痛との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。潜在的な用量反応関係の調査には、制限付き3次スプライン(RCS)回帰モデルを用いた。smoothed two-pieceロジスティック回帰モデルにより、食事性カフェイン摂取量と重度の頭痛または片頭痛の閾値関連の特定を試みた。サブグループ解析により、重度の頭痛や片頭痛に対する食事性カフェイン摂取の影響にサブグループ間で違いがあるかを調査した。カフェインの摂取量に応じて、Q1(最も少ない)〜Q4(最も多い)の四分位に分類した。

けいれんや痛み、麻痺の治療に新たな電極パッドが有用か

 背中に貼り付けたグリッド電極が近い将来、痛みやけいれん、麻痺の治療に役立つ可能性のあることが、新たな研究で示された。この電極を通じて皮膚の上から低電圧の電気刺激を与えることで、脊髄内の神経の機能を短期間、変化させることができたという。米テキサス大学(UT)サウスウェスタン医療センター物理療法学・リハビリテーション医学教授のYasin Dhaher氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Neural Engineering」に4月7日掲載された。  論文の上席著者であるDhaher氏は、体の外側に設置した電極を使って脊髄神経の興奮性を調整できるこの方法は、「侵襲的な脊髄刺激療法を受けられない患者や希望しない患者にとって、有望な代替手段になり得る」とUTのニュースリリースの中で述べている。