感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:104

ファイザーの経口コロナ治療薬、入院・死亡リスク89%減

 米国・ファイザーは11月5日付けのプレスリリースで、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規経口治療薬であるPF-07321332・リトナビル配合剤(商品名:Paxlovid)について、入院していない成人のCOVID-19高リスク患者を対象にした第II/III相試験(EPIC-HR試験)の中間解析で、発症3日以内に治療を開始した場合、プラセボと比較して入院または死亡のリスクが89%減少したことを発表した。28日目までの全試験集団において、プラセボ投与群の死亡が10例に対して、本剤投与群で死亡例はなかったという。EPIC-HR試験の中間解析結果を受け、同社はこの研究への追加登録を中止し、今後米国での緊急使用許可を目指してFDAへ速やかにデータを提出する予定。

子供へのマスクはどうするの?疑問に回答/成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は社会生活を混乱させただけでなく、子供たちの日常も奪った。12歳未満の子供にはCOVID-19ワクチンの接種も、現在わが国ではできないことから、今後の感染の増加について子供の保護者や学校関係者などは危惧をしている。また、この時期に妊娠した妊婦は情報が少ない中での生活に不安を抱えている。  こうした不安や心配の声に応えるべく国立成育医療研究センター(理事長:五十嵐 隆氏)は、11月5日に同センターのホームページに「コロナ禍の今、あらためて伝えたいお子さんと妊婦さんのためのQ&A」を公開し、COVID-19やそれ以外の感染症対策や症状、こころの問題について、情報発信を開始した。

変異株流行期はワクチン接種率高くても制限解除は難しい?/Lancet

 集会の中止・禁止や教育施設の閉鎖、出入国制限、個人の移動制限、都市封鎖、個人用保護具の供給量増などの非医薬品介入(NPI)時期とワクチン接種状況とのバランスを慎重に調整すれば、NPIの緩和が原因となる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者急増のリスクは大幅に軽減される可能性があるものの、デルタ変異株については、ワクチン接種率が高くても、イングランドでの入院や死亡の再急増(第3波)を招くことのないNPIの全面解除はできなかった可能性があることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRaphael Sonabend氏らが実施した数理モデル解析で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年10月27日号に掲載された。  研究グループは、英国のコロナ対策ロードマップ、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ変異株の影響、および将来に起こりうる感染流行の軌跡を評価する目的で、疫学的数理モデルを用いた後ろ向き研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成を受けた)。

ロナプリーブがコロナ発症抑制に適応追加、投与対象は?

 厚生労働省は11月5日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として今年7月、国内における製造販売を承認した「ロナプリーブ」について、患者との濃厚接触者および無症状のSARS-CoV-2陽性者の発症抑制を目的とした使用を新たに認めた(適応追加の特例承認)。併せて、すでに承認されているCOVID-19治療においても、静脈内投与が困難な場合に皮下投与が可能となった。ただ、予防投与の対象は、ワクチン未接種またはワクチンによる効果が不十分な濃厚接触者または無症状の陽性者(いずれも原則として重症化リスク因子を有する人)と限定的になっている。また、発症予防の基本はワクチン接種であり、添付文書には同薬剤が「ワクチンに置き換わるものではない」と明記されている。

日本のワクチン啓発活動、米国団体の助成金を獲得

 コロナワクチンに関する情報提供を行う医師らが組織する「一般社団法人コロワくんサポーターズ」は、The Alliance for Advancing Health Online(AAHO)が運営するワクチン・コンフィデンス・ファンドの研究助成金を受賞した。  コロワくんサポーターズはマウントサイナイ医科大学で内科医として勤務する山田 悠史氏が中心となり、日本で新型コロナワクチンの接種がはじまった今年から、サイトやLINEボット、書籍などのかたちでワクチンに関する情報を発信している。

ミュー変異株、ワクチン接種者が持つ中和抗体にきわめて高い抵抗性/NEJM

 新型コロナウイルスの注目すべき変異株の1つであるミュー株(B.1.621系統)が、新型コロナウイルスに感染した人およびワクチン接種した人の血清に含まれる中和抗体に対し、きわめて高い抵抗性を示したことが明らかになった。本結果は東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究によるもので、NEJM誌オンライン版2021年11月3日号のCORRESPONDENCEに掲載された。  ミュー株の発生源はコロンビアで、最初に分離されたのは2021年1月11日。2021年8月30日時点で南米諸国など39ヵ国から検出されている。  本試験では、ミュー株のスパイクタンパク質を有するシュードウイルスと、従来株の新型コロナウイルスに感染した人の回復後の血清(13例)、およびファイザー製ワクチン接種を完了した人の血清(14例)を用いた中和試験を実施。その結果、ミュー株は従来株に比して、感染者が持つ中和抗体に対して10.6倍、ファイザー製ワクチン接種者が持つ中和抗体に対して9.1倍の抵抗性を示した。これにより、ミュー株はベータ株よりも高い抵抗性を有する、既存の変異株の中で最も抵抗性の高い変異株であることが明らかとなった。

治療薬にソトロビマブを追加した診療の手引き6版/厚労省

 11月2日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第6版」を公開した。 第6版の主な改訂点は以下の通り。 【1 病原体・疫学】 ・変異株について、VUM(監視下の変異株)を追加 ・感染経路・エアロゾル感染について更新 ・国内/海外発生状況を更新 【2 臨床像】 ・重症化リスク因子に日本COVIREGI-JPの解析を追加 (入院時酸素投与が必要である割合のリスクと入院中の死亡率が高い基礎疾患) ・小児の重症度について、日本小児科学会のレジストリ調査を追加 ・妊婦例の特徴について、日本産婦人科学会の調査を追加 ・症状の遷延(いわゆる後遺症)について、国内の調査を追加

ファイザー製ワクチン後、4ヵ月と6ヵ月で効果の差は?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のデルタ変異株に対する免疫は、2回目のワクチン接種から数ヵ月後には全年齢層において減弱したことが、イスラエル・Technion-Israel Institute of TechnologyのYair Goldberg氏らの研究で示された。イスラエルでは、2020年12月から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の集団接種キャンペーンが開始され、大流行が急激に抑制された。その後、SARS-CoV-2の感染例がほとんどない期間を経て、2021年6月中旬にCOVID-19の流行が再燃。その理由として、デルタ(B.1.617.2)変異株に対するワクチンの有効性の低下と、免疫の減弱が考えられたが、イスラエルにおけるデルタ変異株に対するBNT162b2ワクチン免疫の減弱の程度は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年10月27日号掲載の報告。

ワクチンの3回目Booster接種は感染/重症化予防効果を著明に改善する(解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

前論評(山口, 田中. ワクチン接種後の液性免疫の経時的低下―3回目Booster接種必要性の基礎的エビデンス)で論じたように、ワクチン接種後の液性免疫は、野生株、従来株、Delta株を中心とする変異株の別なく、月単位で有意に低下する。この液性免疫の経時的低下によって、Delta株を中心とする新型コロナウイルスの感染拡大(第6波)が今年の12月以降の冬場に発生する可能性を論評者らは危惧している。第6波の発生を避けるためには、ワクチン接種後の時間経過と共に低下した液性免疫を再上昇させるためのワクチン3回目接種(Booster接種)、あるいは、Delta株を中心とするコロナ変異株抑制能力が高く効果持続期間がワクチンと同等、あるいは、それ以上に長いIgG monoclonal抗体をワクチン代替薬として考慮する必要がある。

ワクチン接種後の液性免疫の経時的低下 - 3回目booster接種必要性の基礎的エビデンス (解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

Levin氏らはイスラエルにおいてBNT162b2を2回接種した一般成人におけるS蛋白IgG抗体価、野生株に対する中和抗体価の時間推移を6ヵ月にわたり観察した(Levin EG, et al. N Engl J Med. 2021 Oct 6. [Epub ahead of print] )。その結果、S蛋白IgG抗体価はワクチン2回接種後30日以内に最大値に達し、それ以降、IgG値はほぼ一定速度で低下し、6ヵ月後には最大値の1/18.3まで減少することが示された。野生株に対する中和抗体価の低下はS蛋白IgGと質的に異なり、中和抗体価は、2回接種後3ヵ月間は一定速度で低下、それ以降は、低下速度が緩徐となりほぼ横ばいで推移、6ヵ月後には最大値の1/3.9まで低下した。高齢、男性、併存症(高血圧、糖尿病、脂質異常症、心/腎臓/肝疾患)が2つ以上存在する場合にはS蛋白IgG抗体価ならびに中和抗体価の時間経過に伴う低下はさらに増強された。Levin氏らが示したのと同様の知見はShrotri氏らによっても報告された(Shrotri M, et al. Lancet. 2021;398:385-387. )。Shrotri氏らによると、BNT162b2の2回接種後70日(2.3ヵ月)以上経過した時点でのS蛋白IgG抗体価は最大値の1/2まで低下していた。Shrotri氏らは、AstraZenecaのChAdOx1接種後のS蛋白IgG抗体価の時間推移についても検証し、ChAdOx1の2回接種後のS蛋白IgG抗体価の最大値はBNT162b2接種後に比べ1/10と低く、かつ、ワクチン接種後70日以上経過した時点でのS蛋白IgG抗体価は自らの最大値の1/5まで低下することを示した。