感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

溶連菌咽頭炎への抗菌薬、10日間から短縮可能?

 本邦では、『気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言(改訂版)』において、A群溶血性レンサ球菌(GAS)が検出された急性咽頭・扁桃炎に対して、抗菌薬を投与する場合にはアモキシシリン内服10日間を検討することが推奨されている。ただし、海外では臨床的な治療成功については、短期治療(5~7日)が10日間の治療と同等であるいう報告もあり、短期治療の可能性が検討されている。  2022年にニュージーランドで実施された抗菌薬適正使用の取り組みの一環として、GAS咽頭炎に対する抗菌薬治療期間の短縮が、地域的に促進された。この介入により、抗菌薬の投与期間が10日間から5日間や7日間などへ短縮されるようになったが、治療成績に及ぼす影響は明らかになっていなかった。そこで、Max Bloomfield氏(Awanui Laboratories、Te Whatu Ora/Health New Zealand)らの研究グループは、後ろ向きコホート研究により治療期間の短縮の影響を検討した。その結果、治療期間を短縮しても治療成績に悪影響はみられなかった。本研究結果は、Open Forum Infectious Diseases誌2025年6月6日号に掲載された。

JN.1対応コロナワクチン、発症・入院予防の有効性は?(VERSUS)/長崎大

 2024年度秋冬シーズンの新型コロナワクチン定期接種では、JN.1系統に対応した1価ワクチンが採用された。長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究チームは、2024年10月1日~2025年3月31日の期間におけるJN.1系統対応ワクチンの有効性について、国内多施設共同研究(VERSUS study)の第12報となる結果を、2025年6月11日に報告した。本結果により、JN.1系統対応ワクチンの接種により、発症予防、入院予防において追加的な予防効果が得られる可能性が示された。

肺炎へのセフトリアキソン、1g/日vs.2g/日~日本の約47万例の解析

 肺炎患者へのセフトリアキソン(CTRX)の投与量は1~2g/日とされているが、最適な用量は明らかになっていない。市中肺炎患者では1g/日と2g/日の有効性は同等とする報告もあるが、ICU入室を要する重症例では2g/日が有効であることを示唆する報告もある。そこで、谷口 順平氏(東京大学大学院医学系研究科)らの研究グループは、DPCデータを用いた解析により、肺炎で入院した患者におけるCTRX 1g/日と2g/日の有効性および安全性を比較した。その結果、30日院内死亡率について、全体集団ではCTRX 1g/日群と2g/日群の間に有意差はみられなかったが、機械的換気を要する重症例では2g/日群のほうが有意に低かった。本研究結果は、Journal of Antimicrobial Chemotherapy誌オンライン版2025年6月10日号に掲載された。

COVID-19パンデミック期の軽症~中等症患者に対する治療を振り返ってみると(解説:栗原宏氏)

 本システマティックレビューでは、Epistemonikos Foundation(L-OVEプラットフォーム)、WHO COVID-19データベース、中国の6つのデータベースを用い、2019年12月1日から2023年6月28日までに公表された研究が対象とされている。当時、未知の疾患に対し、手探りで実施された40種類の薬剤が評価対象となっている。  調査対象となった「軽症~中等症」は、WHO基準(酸素飽和度≧90%、呼吸数≦30、呼吸困難、ARDS、敗血症、または敗血症性ショックを認めない)に準じて定義されている。

帯状疱疹ワクチンは心臓の健康も守る

 帯状疱疹ワクチンが、高齢者の心臓の健康を守る可能性のあることが報告された。ワクチン接種者は心臓病のリスクが23%低く、これにはワクチンによる炎症抑制、血液凝固抑制が関与していると考えられるとのことだ。慶熙大学校(韓国)のDong Keon Yon氏らが、約130万人の医療データを解析して明らかにした結果であり、詳細は「European Heart Journal」に5月5日掲載された。ワクチンによる心保護効果は最大8年間続くという。  帯状疱疹は、以前に水痘に感染したことがある人に発症する。水痘の原因ウイルス(帯状疱疹のウイルスでもある)は、神経節の細胞の中に数十年間も潜伏し続け、ある時、再び活動し始めて帯状疱疹を引き起こし、痛みを伴う発疹や水疱を出現させる。「ワクチン接種を受けない場合、生涯で約30%の人が帯状疱疹を発症する可能性がある」とYon氏は解説する。そして、「帯状疱疹は発疹に加えて、心臓病のリスク上昇とも関連のあることが示唆されている。そのため、われわれは、ワクチン接種によって心臓病のリスクが低下するのではないかと考えた」と、研究背景を語っている。

コロナワクチン、デマ対策より「接種開始時期」が死亡者数に大きく影響か/東大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにおいて、世界中でさまざまな誤情報が拡散した。ワクチンの有効性や安全性に関する内容も多く、これらの誤情報がワクチン忌避につながったことが多くの先行研究で報告されている。東京大学国際高等研究所新世代感染症センターの古瀬 祐気氏と東北大学大学院医学系研究科の田淵 貴大氏の研究グループは、ワクチンに関する誤情報が、日本における新型コロナワクチン接種率およびCOVID-19による死亡者数に及ぼした影響について、数理モデルを用いた反実仮想シミュレーションによって解析した。その結果、誤情報対策による接種率の変動よりも、ワクチン導入のタイミングが、死亡者数抑制により大きな影響を与えた可能性が示された。本結果はVaccine誌2025年6月20日号に掲載。

軽症~中等症COVID-19、40種の薬物療法を比較/BMJ

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する40種の薬物療法のうち、ニルマトレルビル/リトナビルとレムデシビルは入院を減少させる可能性が高く、コルチコステロイド全身投与とモルヌピラビルは、この2剤ほどではないが同様の効果を有する可能性があり、アジスロマイシンなどは、症状の解消までの時間を短縮する可能性が高いことが、カナダ・McMaster UniversityのSara Ibrahim氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年5月29日号に掲載された。

HIV小児の2次治療、至適なARTレジメンは?/NEJM

 1次治療に失敗したヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性の小児の2次治療において、バックボーン療法としてのテノホビル アラフェナミドフマル酸塩(TAF)+エムトリシタビン(FTC)に、アンカー薬としてドルテグラビル(DTG)を併用する抗レトロウイルス療法(ART)は、他のレジメンと比較して有効性が高く、安全性の懸念を示す所見はみられないことが、ウガンダ・Makerere UniversityのVictor Musiime氏らが実施した「CHAPAS-4試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年5月15・22日合併号に掲載された。

帯状疱疹ワクチンが認知症を予防する:観察研究が質の低いランダム化比較試験を凌駕するかもしれない(解説:名郷直樹氏)

 水痘ウイルスが長く神経系に留まり、認知機能などに影響を及ぼす可能性が疑われているが、ウェールズでの帯状疱疹生ワクチンと認知症予防の研究とほぼ同時に発表された、オーストラリアの6つの州にまたがる65の一般医(general practitioner)の電子レコードを利用した観察研究である。2016年の帯状疱疹生ワクチンの無料接種が開始された時期に、ワクチン接種対象者と非接種対象者を比較し、認知症の発症との関連を見た、ビッグデータを利用した観察研究である。研究デザインが準実験的研究と書かれているように、観察研究でありながらさまざまな工夫がなされた研究である。まず曝露群と比較対照群の設定であるが、実際の接種者ではなく、無料の接種が始まる前に80歳の誕生日を迎えた非接種対象者と、開始後に誕生日を迎えた接種対象者を比較し、ランダム化比較試験のITT(intention to treat)を模倣した解析を行っている。

モデルナ、プレフィルドシリンジ型コロナワクチンを新発売

 モデルナ・ジャパンは5月26日付のリリースにて、新型コロナウイルスワクチン「スパイクバックス(R)筋注シリンジ」を新たに発売したことを発表した。本ワクチンは、12歳以上を対象とした1回接種用0.5mLを充填したプレフィルドシリンジ製剤で、医療現場での調製時間を短縮し、投与準備を簡便化する。これにより、医療従事者の負担軽減と接種の効率化が期待される。本製剤は、オミクロン株JN.1系統に対応している。  なお、2025年春夏シーズンの任意接種においては、従来からのオミクロン株JN.1系統対応バイアル製剤「スパイクバックス(R)筋注」も引き続き使用可能となっている。