感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

インフルワクチンの効果、若年には有意だが80歳以上で認められず/日本臨床内科医会

 日本臨床内科医会が毎年実施しているインフルエンザに関する前向き多施設コホート研究の統合解析が行われ、インフルエンザワクチンは40歳未満の若年層や基礎疾患のない人々において中等度の有効性を示す一方で、高齢者や基礎疾患を持つ人々では有効性が低下することが明らかになった。日本臨床内科医会 インフルエンザ研究班の河合 直樹氏らによる本研究はJournal of Infection and Public Health誌2025年11月号に掲載された。

抗アレルギー点鼻薬がコロナ感染リスクを低減

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の曝露前予防には、ワクチン接種以外の医薬品の選択肢は限られている。今回、抗アレルギー薬であるヒスタミン受容体拮抗薬アゼラスチンの点鼻スプレーは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の発生率の有意な減少と関連し、SARS-CoV-2以外の呼吸器病原体の総感染リスク低減とも関連していたことを、ドイツ・ザールランド大学のThorsten Lehr氏らが明らかにした。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2025年9月2日号掲載の報告。

成人の心血管疾患患者は一般的な感染症のワクチンを接種すべき/ACC

 米国心臓病学会(ACC)が、心血管疾患の成人患者における予防接種に関する専門家のコンセンサス声明である「2025 Concise Clinical Guidance: An ACC Expert Consensus Statement on Adult Immunizations as Part of Cardiovascular Care(2025年簡潔版臨床ガイダンス:心血管ケアの一環としての成人予防接種に関するACC専門家コンセンサス声明)」を作成し、「Journal of the American College of Cardiology」に8月26日公表した。声明では、心血管疾患患者が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、インフルエンザ、RSウイルス感染症などの一般的な感染症を予防するワクチンを接種することの重要性が強調されている。

肺炎リスクから考える、ICU患者の「口腔ケア」

 気管挿管後に発症する人工呼吸器関連肺炎(VAP)は、集中治療室(ICU)に入院する患者における主な感染性合併症であり、その発生率は8~28%に上る。今回、ICU患者において口腔ケアを実施することで、口腔内の細菌数が有意に減少することが確認された。また、人工呼吸器の挿管によって、口腔内の細菌叢(マイクロバイオーム)の多様性が低下することも明らかになった。研究は、藤田医科大学医学部七栗歯科の金森大輔氏らによるもので、詳細は「Critical Care」に7月23日掲載された。

3学会がコロナワクチン定期接種を「強く推奨」、高齢者のリスク依然高い

 日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の3学会は2025年9月1日、今秋10月から始まる新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの定期接種を「強く推奨する」との共同見解を発表した。高齢者における重症化や死亡のリスクが依然として高いことや、ウイルスの変異が続いていることを主な理由としている。  3学会によると、国内のCOVID-19による死亡者数は2024年に3万5,865例に上り、同年のインフルエンザによる死亡者数2,855例を大きく上回っている。COVID-19による死者数のピークだった2022年の4万7,638例からは減少しているものの、依然として高い水準で推移しており、大きな減少はみられていない。

dalbavancinは複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の新たな選択肢か?―DOTSランダム化臨床試験から―(解説:栗山哲氏)

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の菌血症は、病態の多様性や重篤度からの治療の長期化などからランダム化臨床試験(RCT)が少なく、推奨される治療に関して明確な世界的コンセンサスは得られていない(Holland TL, et al. JAMA. 2014;312:1330-1341.)。DOTS試験は、複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の患者に対して、リポグリコペプチド系抗生物質・dalbavancinの有効性と安全性を従来の標準治療と比較した初めてのRCTである(Turner NA, et al. JAMA. 2025;13:e2512543.)。本剤は、わが国では未承認薬である。

日本における手術部位感染の分離菌の薬剤感受性~全国サーベイランス

 手術部位感染(SSI)から分離された原因菌に対する各種抗菌薬の感受性について、日本化学療法学会・日本感染症学会・日本臨床微生物学会(2023年には日本環境感染学会も参画)による抗菌薬感受性サーベイランス委員会が、2021~23年に実施した第4回全国サーベイランス調査の結果を報告した。第1回(2010年)、第2回(2014~15年)、第3回(2018~19年)のデータと比較し、主に腸内細菌目細菌において抗菌薬感受性が低下した一方、MRSA発生率は減少したことが示された。Journal of Infection and Chemotherapy誌2025年9月号に掲載。

LP.8.1対応組換えタンパクコロナワクチン、一変承認を取得/武田

 武田薬品工業は8月27日のプレスリリースで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株LP.8.1を抗原株とした組換えタンパクワクチンの「ヌバキソビッド筋注1mL」について、厚生労働省より一部変更承認を取得したと発表した。ヌバキソビッド筋注は、同社がノババックスから日本での製造技術のライセンス供与を受けたもので、LP.8.1対応ワクチンは9月中旬以降に供給が開始される予定。  2025年5月28日に開催された「厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会 季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」において、2025/26シーズンの定期接種で使用する新型コロナワクチンの抗原組成は、WHOの推奨と同様に、「1価のJN.1、KP.2もしくはLP.8.1に対する抗原又は令和7年5月現在流行しているJN.1系統変異株に対して、広汎かつ頑健な中和抗体応答又は有効性が示された抗原を含む」とされている。

米国の小児におけるインフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)(解説:寺田教彦氏)

本報告は、米国2023~24年および2024~25年シーズンにおける小児インフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)の症例シリーズである。IA-ANEは、インフルエンザ脳症(IAE)の重症型で、米国2024~25年シーズンのサーベイランスにおいて小児症例の増加が指摘されていた(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2025 Feb 27)。同レポートでは、小児インフルエンザ関連死亡例の9%がIAEによる死亡と報告され、早期の抗ウイルス薬使用と、必要に応じた集中治療管理、インフルエンザワクチン接種が推奨されていた。

複雑性黄色ブドウ球菌菌血症へのdalbavancin週1回投与、標準治療に非劣性/JAMA

 複雑性黄色ブドウ球菌菌血症で、初期治療により血液培養の陰性化と解熱を達成した入院患者において、標準治療と比較してdalbavancin週1回投与は、70日の時点で「アウトカムの望ましさ順位(desirability of outcome ranking:DOOR)」が優越する確率は高くないが、臨床的有効性は非劣性であることが、米国・デューク大学のNicholas A. Turner氏らが実施した「DOTS試験」で示された。黄色ブドウ球菌菌血症に対する抗菌薬静脈内投与は、一般に長期に及ぶためさまざまな合併症のリスクを伴う。dalbavancin(リポグリコペプチド系抗菌薬)は、終末半減期が14日と長く、in vitroで黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性菌を含む)に対する抗菌活性が確認されていた。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年8月13日号で報告された。