産婦人科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:9

シンデレラ体重の若年日本人女性の栄養不良の実態が明らかに

 国内で増加している低体重若年女性の栄養状態を、詳細に検討した結果が報告された。栄養不良リスクの高さや、朝食欠食の多さ、食事の多様性スコア低下などの実態が明らかにされている。藤田医科大学医学部臨床栄養学講座の飯塚勝美氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に5月7日掲載された。  日本人若年女性に低体重者が多いことが、近年しばしば指摘される。「国民健康・栄養調査」からは、20歳代の女性の約20%は低体重(BMI18.5未満)に該当することが示されており、この割合は米国の約2%に比べて極めて高い。BMI18未満を「シンデレラ体重」と呼び「美容的な理想体重」だとする、この傾向に拍車をかけるような主張もソーシャルメディアなどで見られる。実際には、女性の低体重は月経異常や不妊、将来の骨粗鬆症のリスクを高め、さらに生まれた子どもの認知機能や成人後の心血管代謝疾患リスクに影響が生じる可能性も指摘されている。とはいえ、肥満が健康に及ぼす影響は多くの研究がなされているのに比べて、低体重による健康リスクに関するデータは不足している。

メンタルヘルスケアアプリ利用で産後うつリスクが低下する可能性

 メンタルヘルスケアのために開発された、スマートフォンなどで利用可能なアプリケーションが、産後うつのリスクを抑制する可能性のあることが報告された。浜松佐藤町診療所(静岡県)の三浦弓佳氏らが行った、システマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「BMC Pregnancy and Childbirth」に6月14日掲載された。  国内の妊産婦の死亡原因のトップは自殺であり、これには産後うつの影響が少なくないと考えられている。産後うつによる自殺を防ぐためには、産後うつ状態の早期診断と適切なケアが重要だが、産後には育児などのために時間的な制約が生じることや、偏見などのために、うつリスクがあるにもかかわらず受療行動を起こさない女性が少なくない。このような状況に対応して、モバイルテクノロジーを用いたメンタルヘルスケアアプリが開発されてきた。ただ、それらのアプリの有用性の検証がまだ十分でなく、特に産後うつの「治療」ではなく「予防」という視点でのエビデンスはより不足している。そこで三浦氏らは、システマティックレビューとメタ解析による検討を行った。

コーヒー・緑茶で貯蔵鉄が減少、閉経後女性は多飲に注意?~J-MICC佐賀地区研究

 コーヒーや緑茶の摂取は、腸において鉄の吸収を阻害することにより、体内の貯蔵鉄の量を減少させると考えられている。貯蔵鉄が過剰となると酸化ストレスが増加し、心血管疾患やがんの発症リスクとなるため、コーヒーや緑茶の摂取がこれらのリスクを低下させる可能性が指摘されている。しかし、過剰摂取は鉄欠乏を招く可能性もある。そこで、南里 妃名子氏(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)らの研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)佐賀地区の調査に参加した1万435人を対象として、コーヒー、緑茶の摂取量と血清フェリチン値との関係を検討した。その結果、男性および閉経後女性では、コーヒー、緑茶はいずれも摂取量が多いほど血清フェリチン値が低かった。閉経前女性では、緑茶の摂取量のみに同様の関連が認められた。また、閉経後女性において、コーヒーを1日3杯以上飲む人は飲まない人と比べて、鉄欠乏が多くみられた。本研究結果は、Frontiers in Nutrition誌2023年8月10日号に掲載された。

米FDAが産後うつ病の経口治療薬Zurzuvaeを承認

 米食品医薬品局(FDA)は8月4日、産後うつ病(PPD)に対する初めての経口治療薬としてZurzuvae(一般名zuranolone)を承認した。Zurzuvaeの1日当たりの推奨用量は50mgで、毎夕14日間、脂肪の多い食事とともに摂取する。産後うつに対する治療薬としては、2019年にZulresso(一般名ブレキサノロン)がFDAにより承認されている。この承認は画期的ではあったが、Zulressoは、医療機関で医療従事者による点滴投与が必要な上に、点滴には60時間もの時間を要する。

骨盤臓器脱、マンチェスター手術vs.仙棘靭帯固定術/JAMA

 骨盤臓器脱に対する初回手術において、仙棘靭帯固定術はマンチェスター手術に比べ、術後2年間の手術成功の複合アウトカムが劣ることが、オランダ・ラドバウド大学医療センターのRosa A. Enklaar氏らが実施した多施設共同無作為化非劣性試験の結果、報告された。多くの国において、仙棘靭帯固定術は骨盤臓器脱の初回手術で最も一般的に行われる子宮温存術である。しかし、仙棘靭帯固定術と、より古い術式であるマンチェスター手術の結果を直接比較したものはなかった。JAMA誌2023年8月15日号掲載の報告。

骨盤臓器脱修復術、周術期の膣エストロゲン併用の効果は?/JAMA

 症候性骨盤臓器脱患者において、周術期の腟エストロゲン投与は、自家組織による経腟的修復術後の骨盤臓器脱再発を改善しない。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのDavid D. Rahn氏らが、米国の3施設で実施した無作為化優越性臨床試験の結果を報告した。膣尖部/前壁脱の外科的修復では、一般的に子宮摘出後の膣断端固定として自家組織の骨盤靭帯が用いられる。骨盤臓器脱の再発抑制を目的に臨床医は膣エストロゲンを推奨することがあるが、膣エストロゲンが骨盤臓器脱の外科的管理に及ぼす影響は不明であった。JAMA誌2023年8月15日号掲載の報告。

妊娠30~34週の硫酸Mg、児の死亡・脳性麻痺を抑制するか/JAMA

 妊娠30週未満の出産前の妊婦に、硫酸マグネシウムを静脈内投与すると、児の死亡と脳性麻痺のリスクが低下することが知られているが、30週以降の効果は不明とされていた。ニュージーランド・オークランド大学のCaroline A. Crowther氏らは、「MAGENTA試験」において、妊娠30~34週に硫酸マグネシウムを投与しても、プラセボと比較して、2年後における児の脳性麻痺のない生存の割合は改善しないことを示した。研究の詳細は、JAMA誌2023年8月15日号に掲載された。

外来・入院・集中治療別マネジメントを記載、COVID-19診療の手引き第10.0版/厚労省

 厚生労働省は8月21日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.0版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知した。2023年2月に公開された第9.0版以来、5類移行後初めての改訂となる本版は、オミクロン株に置き換わって以降の国内外の知見が反映され、よりコンパクトな内容になっている。とくに外来診療にも役立てられるよう、第4章では、前版までは重症度別に記載されていたマネジメントが、「外来診療」「入院診療」「集中治療」別にまとめなおされている。また、本手引きを基に作成された「COVID-19 外来診療の基礎知識」の表も公開された。

産後受診時の心血管健康カウンセリング、減少傾向に/JAMA

 出産をした成人女性において、妊娠前の心血管健康(cardiovascular health、CVH)の不良と有害な妊娠アウトカム(APO)は、その後の心血管疾患(CVD)の重大なリスク因子となる。産後受診は、リスクを有する人のCVHに関する診療の機会となるが、CVHカウンセリングを受けていたのは約60%であったことが、米国・ノースウェスタン大学のNatalie A. Cameron氏らによる調査で明らかにされた。また、5年の調査対象期間(2016~20年)に、わずかだが減少していたという。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。

各がん種の治療推奨度を明確に、ハイパーサーミア診療ガイドライン発刊

 『ハイパーサーミア診療ガイドライン』の初版が発刊された。今回、ガイドライン作成委員会委員長の高橋 健夫氏(埼玉医科大学総合医療センター放射線腫瘍科)に実臨床におけるハイパーサーミアの使用経験や推奨されるがん種などについて話を聞いた。  ハイパーサーミアとは39~45℃の熱を用いた温熱療法のことで、主に放射線治療や化学療法の治療効果を高める目的で用いられている。その歴史は意外にも古く、1980年代に放射線治療の補助療法として導入、1990年代には電磁波温熱療法として保険収載され、その臨床実績は30年以上に及ぶ。本治療は、生体では腫瘍のほうが正常組織よりも温度上昇しやすい点を応用した“43℃以上での直接的な殺細胞効果”が報告されているほか、抗がん剤の細胞膜の透過性亢進、熱ショックタンパク質を介した免疫賦活などの生物学的なメリットなどが示されている。しかし、どのような患者に優先的に勧めるべきか明確に示した指針は認められない、実施可能施設の少なさ、専門的な知識や経験を有するハイパーサーミア治療医が限れているなどの点から認知度がまだまだ低い治療法である。そこで日本ハイパーサーミア学会では2017年にガイドライン作成委員会が発足し、約7年の時を経てガイドラインの発刊に至った。