消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

若年発症大腸がん、主な要因は赤肉か

 近年、50歳以下で大腸がんを発症する若年発症大腸がん患者が増加傾向にあるが、赤肉や加工肉がその主な原因である可能性があるようだ。代謝産物と腸内微生物叢のデータ分析から、食事由来、中でも赤肉や加工肉に関連する代謝産物が若年発症大腸がんリスクの主な要因である可能性が示された。米クリーブランドクリニックのNaseer Sangwan氏らによるこの研究の詳細は、「NPJ Precision Oncology」に7月17日掲載された。  研究グループは過去の研究で、若年発症大腸がん患者と平均的な年齢で発症した大腸がん患者では代謝産物に違いがあることを明らかにしていた。また別の研究では、大腸がんの若年患者と高齢患者では腸内微生物叢に違いがあることが示されている。Sangwan氏は、これらの研究は、若年発症大腸がんの研究を進める上で多くの示唆をもたらしたが、がんリスクに関わる要因が増えることにより、研究結果の解釈やその後の計画も複雑になると指摘する。さらに、腸内微生物が代謝産物を消費して独自の代謝産物を生成するという代謝産物と腸内微生物叢の相互作用も、問題をさらに複雑化する。

ATTR型心アミロイドーシスへのブトリシラン、全死亡を低下/NEJM

 進行性の致死的疾患であるトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)患者において、ブトリシランによる治療はプラセボとの比較において、全死因死亡および心血管イベントのリスクを低下させ、機能的能力とQOLを維持することが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMarianna Fontana氏らHELIOS-B Trial Investigatorsが行った二重盲検無作為化試験で示された。ブトリシランは、肝臓のトランスサイレチンの産生を阻害する皮下投与のRNA干渉(RNAi)治療薬である。NEJM誌オンライン版2024年8月30日号掲載の報告。

男性のがん罹患状況、2022年データから2050年を予測

 男性は飲酒や喫煙など、がんの修正可能なリスク因子を有する割合が高く、結果としてがんの発症率が高く、生存率が低くなる。年齢層や国による差異を含め、男性におけるがん負担に関する包括的なエビデンスは乏しい。オーストラリア・クイーンズランド大学のHabtamu Mellie Bizuayehu氏らは、がんの罹患や死亡に関する2022年の世界的な統計データ(GLOBOCANデータ)を用いて2050年の予測値を算定、Cancer誌オンライン版2024年8月12日号で報告した。

大腸がん術後合併症、電動自動吻合器の活用でリスク削減の可能性

 吻合部出血や縫合不全など、大腸がん術後の吻合に関する合併症は依然として深刻な問題となっている。大阪大学の三吉 範克氏・水元 理絵氏らは、単施設の後ろ向きコホート研究および同研究を含む2,700例以上を対象としたメタ解析を行い、吻合部合併症リスク削減のための電動自動吻合器(以下、電動吻合器)の有用性を検討した。Oncology Letters誌オンライン版2024年8月22日号掲載の報告より。  2018年1月~2022年12月までに大阪大学医学部附属病院で円形吻合器を用いた大腸がんの根治切除および吻合術を受けた患者を対象に、後ろ向きコホート研究が実施された。緊急手術、炎症性腸疾患を有する症例、およびほかのがんと同時手術の症例は除外され、主要評価項目は吻合部の合併症率であった。経験豊富な消化器外科医が電動吻合器(ECHELON CIRCULAR Powered Stapler)または手動吻合器(ETHICON Circular Stapler CDHまたはEEA Circular Stapler)を使用して手術を行い、術者によるバイアスは確認されなかった。すべてのデータは術後 30 日までの医療記録から収集された。

アスピリンによる大腸がん予防効果、肥満・喫煙者に恩恵大

 アスピリンに大腸がんの予防効果があることが過去に報告されているが、新たなデータによると、アスピリンは不健康な生活習慣を持つ人、とくに肥満や喫煙者で予防効果が高いことが示唆されたという。米国・マサチューセッツ総合病院のDaniel R. Sikavi氏らによる本研究は、JAMA Oncology誌オンライン版2024年8月1日号に掲載された。  研究者らは、看護師健康調査(1980~2018年)に参加した女性6万3,957例と、医療専門家追跡調査(1986~2018年)に参加した男性4万3,698例の長期追跡データを用いた前向きコホート研究を実施した。

高齢者の単純性虫垂炎、最適な治療は?

 高齢者における急性単純性虫垂炎の最適な治療戦略を検討した2万人以上の高齢者を対象としたコホート研究により、即時虫垂切除(入院後1日以内)が非手術的管理より院内死亡率が低いことが示された。また、遅延虫垂切除(入院後1日超)は院内死亡率および合併症発生率が高かった。米国・University of Southern CaliforniaのMatthew Ashbrook氏らが、JAMA Network Open誌2024年8月26日号で報告した。

日本の野菜中心の食習慣がMASLD患者の肝線維化リスクを低減

 日本の日常的な食習慣が代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)および肝線維症に及ぼす影響を調査した横断研究の結果、野菜中心の食習慣がMASLD患者の肝線維化リスクの低減と関連していたことが、弘前大学の笹田 貴史氏らによって明らかになった。Nutrients誌2024年8月28日号掲載の報告。  MASLDの発症・進行には、食習慣が大きく関与している。これまで、日本食、地中海食、西洋食などの国民的食習慣とMASLDの関連について多くの研究がなされているが、国内の同一地域における食習慣の違いがMASLDの発症・進行にどの程度影響するかを疫学的に検討した研究は乏しい。そこで研究グループは、日本の日常的な食習慣がMASLDと肝線維症の予防に有効であるという仮説を立て、日本の農村地域の一般住民におけるMASLDの発症と肝線維症への進行に対する食習慣の影響を調査した。

鉤虫症の治療、emodepside vs.アルベンダゾール/Lancet

 タンザニアで実施された第IIb相無作為化二重盲検実薬対照優越性試験において、カルシウム依存性カリウム(SLO-1)チャネルに作用し寄生虫の麻痺と咽頭ポンピング運動の阻害を引き起こすemodepsideは、アルベンダゾールと比較し高い有効性が認められた。スイス熱帯公衆衛生研究所のLyndsay Taylor氏らが報告した。ただし、emodepsideの安全性について、観察された有害事象はおおむね軽度であったものの、アルベンダゾールと比較して発現頻度が高かった。結果を踏まえて著者は、「emodepsideが有望な駆虫薬の候補であることが確固たるものとなったが、安全性と有効性のバランスを考慮する必要がある」とまとめている。

ICI関連心筋炎の発見・治療・管理に腫瘍循環器医の協力を/腫瘍循環器学会

 頻度は低いが、発現すれば重篤な状態になりえる免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象としての心筋炎(irAE心筋炎)。大阪大学の吉波 哲大氏が第7回日本腫瘍循環器学会学術集会でirAE心筋炎における問題点を挙げ、腫瘍循環器医の協力を呼びかけた。  ICIは今や固形がんの治療に必須の薬剤となった。一方、ICIの適用拡大と共に免疫関連有害事象(irAE)の発症リスクも増加する。心臓に関連するirAEは心筋炎、非炎症性左室機能不全、心外膜炎、伝導障害など多岐にわたる。その中でもirAE心筋炎は、発現すると一両日中に、心不全、コントロール困難な不整脈を併発し、致死的な状況に追い込まれることもある。

がん罹患の40%・死亡の44%が予防できる可能性

 米国におけるがん罹患の約40%とがん死亡の44%が、修正可能なリスク因子に起因していることが新たな研究で明らかになった。とくに喫煙、過体重、飲酒が主要なリスク因子であり、肺がんをはじめとする多くのがんに大きな影響を与えているという。A Cancer Journal for Clinicians誌オンライン版2024年7月11日号の報告。  米国がん協会(ジョージア州・アトランタ)のFarhad Islami氏らは、2019年(COVID-19流行の影響を避けるため、この年に設定)に米国でがんと診断された30歳以上の成人を対象に、30のがん種について全体および潜在的に修正可能なリスク因子に起因する割合と死亡数を推定した。評価されたリスク因子には、喫煙(現在および過去)、受動喫煙、過体重、飲酒、赤肉および加工肉の摂取、果物や野菜の摂取不足、食物繊維およびカルシウムの摂取不足、運動不足、紫外線、そして7つの発がん性感染症が含まれた。がん罹患数と死亡数は全国をカバーするデータソース、全国調査によるリスク因子の有病率推定値、および公表された大規模なプールまたはメタアナリシスによるがんの関連相対リスクから得た。