消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

セマグルチドは代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の予後を改善する(解説:住谷哲氏)

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)へ、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)へと呼称が変更されてから約2年が経過した。“alcoholic”および“fatty”が不適切な表現であるのが変更の理由らしい。この2年間に米国のFDAは甲状腺ホルモン受容体β作動薬であるresmetiromをMASHの治療薬として条件付きで承認している。わが国でresmetiromの承認に向けて治験が開始されているか否かは寡聞にして筆者は知らないが、本論文で用いられたセマグルチドはわが国でも使用可能であり臨床的意義は大きい。

DOACによる消化管出血での死亡率~20研究のメタ解析

 抗凝固薬による消化管出血は、発生頻度や死亡リスクの高さから、その評価が重要となる。しかし、重篤な消化管出血後の転帰(死亡を含む)は、現段階で十分に特徴付けられておらず、重症度が過小評価されている可能性がある。今回、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のNicholas L.J. Chornenki氏らは、直接経口抗凝固薬(DOAC)関連の重篤な消化管出血が30日全死亡率の有意な上昇と関連していることを明らかにした。Thrombosis Research誌2025年5月24日号掲載の報告。

米国では30年でアルコール関連がんの死亡が倍増/ASCO2025

 米国では、1990年から2021年までの30年間でアルコール摂取に関連するがん(以下、アルコール関連がん)による死亡数がほぼ倍増しており、男性の死亡数がこの急増の主な原因であることが、新たな研究で明らかになった。米マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのChinmay Jani氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO25、5月30日~6月3日、米シカゴ)で発表された。  米国公衆衛生局(PHS)長官は2025年初頭に勧告を発出し、飲酒ががんのリスクを高めることに関する強力な科学的エビデンスがあると米国民に警告した。米国立がん研究所(NCI)によると、アルコールは1987年以来、国際がん研究機関(IARC)によって発がん物質に分類されている。また、米国立毒性学プログラム(NTP)も2000年以来、アルコールはヒトに対する既知の発がん物質とする認識を示している。

軽症の免疫チェックポイント阻害薬関連肺臓炎へのステロイド、3週vs.6週(PROTECT)/ASCO2025

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が広く使用されるようになり、免疫関連有害事象(irAE)マネジメントの重要性が高まっている。irAEのなかで比較的多いものの1つに、薬剤性肺障害(免疫関連肺臓炎)がある。免疫関連肺臓炎の治療としては、一般的にステロイドが用いられるが、適切な治療期間は明らかになっていない。そこで、免疫関連肺臓炎に対するステロイド治療の期間を検討する無作為化比較試験「PROTECT試験」が本邦で実施された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、藤本 大智氏(兵庫医科大学)が本試験の結果を報告した。本試験において、ステロイド治療期間を3週間とする治療レジメンは、6週間の治療レジメンに対する非劣性が示されなかった。

食道がんへの術後ニボルマブ、長期追跡でもベネフィット示す(CheckMate 577)/ASCO2025

 日本も参加するCheckMate 577試験は、術前化学放射線療法(CRT)+手術後に残存病理学的病変を有する食道がん/胃食道接合部がん(EC/GEJC)患者における、術後ニボルマブ投与の有用性をみた試験である。すでにプラセボと比較して無病生存期間(DFS)を有意に延長したことが報告されている(22.4ヵ月対11.0ヵ月、HR:0.69)。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、ベイラー大学医療センター(米国・ダラス)のRonan J. Kelly氏が、本試験の副次評価項目である全生存期間(OS)の最終解析結果およびDFSの長期追跡結果を報告した。

HER2陽性胃がん2次治療、T-DXd vs.ラムシルマブ+PTX(DESTINY-Gastric04)/NEJM

 前治療歴のある切除不能または転移のあるHER2陽性胃がんまたは胃食道接合部腺がんの患者において、2次治療としてのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はラムシルマブ+パクリタキセル(RAM+PTX)と比較して全生存期間(OS)を有意に延長した。有害事象は両群で多くみられ、既知のリスクであるT-DXd投与に伴う間質性肺炎または肺臓炎は、主として低グレードであった。国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏らDESTINY-Gastric04 Trial Investigatorsが、国際非盲検無作為化第III相試験「DESTINY-Gastric04試験」の結果を報告した。T-DXdは第II相試験に基づき、トラスツズマブベースの治療を含む2ライン以上の治療歴を有する進行・再発のHER2陽性胃がんまたは胃食道接合部腺がん患者に対する投与が承認されている。DESTINY-Gastric04試験では、2次治療としてのT-DXdの有効性と安全性をRAM+PTXと比較した。NEJM誌オンライン版2025年5月31日号掲載の報告。

H. pylori検査と除菌後胃がん、知っておくべき7つのQ&A

 胃がんの罹患者・死亡者数は減少傾向にあるものの、依然として日本人の主要ながんであり、2022年の罹患数は約12万例、死亡数は約4万例と報告されている。胃がんはその大部分がHelicobacter pylori(H. pylori)感染に起因するとされ、H. pyloriの診断と除菌治療は胃がんの1次予防として極めて重要である。日本では2013年より陽性判定者の除菌治療が保険適用となり、広く行われるようになっている。そして、H. pylori感染診断・除菌治療が一般的になった今、H. pylori検査や胃がんを巡る新たな問題が生じているという。H. pylori研究の第一人者である大分大学・兒玉 雅明氏に、今医療者が知っておくべきポイントを聞いた。

既治療CLDN18.2陽性胃がん、CAR-T療法satri-celがPFS改善(CT041-ST-01)/Lancet

 既治療のCLDN18.2陽性進行胃または食道胃接合部がん患者において、医師が選択した治療と比較してsatricabtagene autoleucel(satri-cel、自家CLDN18.2特異的キメラ抗原受容体[CAR]T細胞療法)による治療は、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)について有意差はないものの臨床的に意義のある改善をもたらし、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・Peking University Cancer HospitalのChangsong Qi氏らが実施した「CT041-ST-01試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月31日号に掲載された。  CT041-ST-01試験は、既治療のCLDN18.2陽性進行胃・食道胃接合部がんにおけるsatri-cel治療の有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化実薬対照比較第II相試験であり、2022年3月~2024年7月に中国の24施設で参加者のスクリーニングを行った(CARsgen Therapeuticsの助成を受けた)。

III期dMMR大腸がん、術後補助療法にアテゾリズマブ上乗せでDFS改善(ATOMIC)/ASCO2025

 III期大腸がんの標準的な補助化学療法は、フッ化ピリミジンまたはオキサリプラチン併用療法である。ATOMIC試験は、StageIIIでミスマッチ修復機能欠損(dMMR)を有する患者において、補助療法として5-フルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチン(mFOLFOX6)に抗PD-L1抗体アテゾリズマブを追加投与することで、患者予後を改善できるかを評価するために実施された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションにおいて、米国・メイヨークリニックのFrank A. Sinicrope氏が本試験の2回目の中間解析結果を発表した。

胃がん周術期、FLOTにデュルバルマブ上乗せでEFS改善(MATTERHORN)/ASCO2025

 欧米において、化学療法FLOT(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)は切除可能な胃がんにおける術前術後の標準治療だが、再発率は依然として高い水準にある。胃がんにおける免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、切除不能例において化学療法との併用で承認されているが、術前術後療法では承認されていない。  MATTERHORN試験は切除可能な胃がん患者を対象に、術前術後療法としてFLOTにICIであるデュルバルマブ上乗せの有用性をみた試験である。