消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

医療費適正効果額は1千億円以上、あらためて確認したいバイオシミラーの有効性・安全性

 日本国内で承認されているバイオシミラーは19成分となり、医療費適正化の観点から活用が期待されるが、患者調査における認知度は依然として低く、医療者においても品質に対する理解が十分に定着していない。2025年8月29日、日本バイオシミラー協議会主催のメディアセミナーが開催され、原 文堅氏(愛知県がんセンター乳腺科部)、桜井 なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト)が、専門医・患者それぞれの立場からみたバイオシミラーの役割について講演した。  化学合成医薬品の後発品であるジェネリック医薬品で有効成分の「同一性」の証明が求められるのに対し、分子構造が複雑なバイオ医薬品の後続品であるバイオシミラーでは同一性を示すことが困難なために、「同等性/同質性」を示すことが求められる。

中等症以上の潰瘍性大腸炎へ新たな経口治療薬が登場/ファイザー

 ファイザーは、2025年9月12日に中等症~重症の潰瘍性大腸炎に対するスフィンゴシン1-リン酸受容体(S1P1,4,5)調節薬エトラシモド(商品名:ベルスピティ)を発売した。  潰瘍性大腸炎は、大腸におけるびまん性および連続性の粘膜炎症性病変を特徴とし、寛解と再燃を繰り返す慢性炎症性腸疾患で、主な症状として粘血便、下痢、腹部不快感、腹痛などがあり、倦怠感や貧血なども現れる。

20歳以降の体重10kg増加が脂肪肝リスクを2倍に/京都医療センター

 20歳以降に体重が10kg以上増えた人は、ベースライン時のBMIにかかわらず5年以内に脂肪肝を発症するリスクが約2倍に上昇し、体重変動を問う質問票は脂肪肝のリスクが高い人を即時に特定するための実用的かつ効果的なスクリーニング方法となり得る可能性があることを、京都医療センターの岩佐 真代氏らが明らかにした。Nutrients誌2025年8月6日号掲載の報告。  脂肪性肝疾患は、心血管疾患や代謝性疾患、慢性腎臓病のリスク増大と関連しており、予防と管理のための効果的な戦略の開発が求められている。脂肪肝に関連する質問票項目を特定することで、脂肪性肝疾患の高リスク者の早期発見につながる可能性があることから、研究グループは一般集団の健康診断データベースから収集した生活習慣情報を縦断的に分析し、脂肪肝リスクの高い個人を特定する質問票の有用性を検討した。

健康的な食事と運動は飲酒による肝臓のダメージを抑制して死亡を減らす

 ビール、ワイン、ウイスキーなどを楽しむなら、健康的な食事と運動を続けた方が良いかもしれない。飲酒は肝臓の障害による死亡リスクを高める一方、健康的な食事と運動によりそのリスクが低下することを示唆するデータが報告された。米インディアナ大学のNaga Chalasani氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Hepatology」に8月26日掲載された。  論文の上席著者である同氏は、「あらゆる飲酒パターンにおいて、質の高い食事や活発な身体活動の習慣が、肝臓関連死亡リスクの低下と関連していることが分かった」と述べている。なお、米国では成人の半数以上(53%)が習慣的に飲酒し、毎年約17万8,000人が大量飲酒により死亡しているという。

GLP-1RAが2型糖尿病患者のGERDリスク増大と関連

 2型糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の処方が、胃食道逆流症(GERD)のリスク増大と関連していることを示すデータが報告された。GLP-1RAが処方されている患者では、SGLT2阻害薬(SGLT2i)が処方されている患者に比べて、GERDおよびGERDに伴う合併症の発症が有意に多く認められるという。全南大学校(韓国)のYunha Noh氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に7月15日掲載された。  2型糖尿病および肥満の治療薬であるGLP-1RAは胃排出遅延作用を有しており、これが血糖上昇抑制や食欲低下に部分的に関与していると考えられている。しかし一方でこの作用は、理論的にはGERDのリスクとなり得る。とはいえ、GLP-1RAの処方とGERDとの関連を示す大規模な研究に基づくエビデンスは十分ではないことから、Noh氏らは英国の臨床データベース(Clinical Practice Research Datalink)を用いて、SGLT2iを実薬対照とするターゲット試験エミュレーション研究を実施し、GERDおよびGERD関連合併症の発症リスクを比較した。

降圧薬で腸管血管性浮腫の報告、重大な副作用を改訂/厚労省

 2025年9月9日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などの降圧薬で重大な副作用が改められた。  今回、ACE阻害薬、ARB、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)および直接的レニン阻害薬の腸管血管性浮腫について評価した。その結果、「血管性浮腫の一種である腸管血管性浮腫についても、潜在的なリスクである可能性があること」「国内外副作用症例において、腸管血管性浮腫に関連する報告が認められていない薬剤もあるものの、複数の薬剤において腸管血管性浮腫との因果関係が否定できない症例が認められていること」「医薬品医療機器総合機構で実施したVigiBaseを用いた不均衡分析において、複数のACE阻害薬およびARBで『腸管血管性浮腫』に関する副作用報告数がデータベース全体から予測される値より統計学的に有意に高かったこと」を踏まえ、改訂に至った。

がん患者への早期緩和ケア、終末期の救急受診を減少

 がん患者を中心に、早期からの緩和ケア介入の重要性が示唆されているが、実際の患者アウトカムにはどのような影響があるのか。緩和ケア受診後の救急外来受診のタイミングと回数について調査した、韓国・ソウル大学病院で行われた単施設後ろ向きコホート研究の結果がJAMA Network Open誌2025年7月15日号に掲載された。  ソウル大学病院のYe Sul Jeung氏らは、2018~22年に、ソウル大学病院で緩和ケア外来に紹介され、2023年6月25日までに転帰が確定した成人の進行がん患者3,560例(年齢中央値68歳、男性60.2%)を解析した。主要評価項目は全期間と終末期(死亡前30日内)の救急外来受診数だった。

肥満手術、SADI-SはRYGBを凌駕するか/Lancet

 2007年以来、Roux-en-Y胃バイパス術(RYGB)に代わる肥満治療として、スリーブ状胃切除術+単吻合十二指腸バイパス術(SADI-S)が提案されている。フランス・Hospices Civils de LyonのMaud Robert氏らSADISLEEVE Collaborative Groupは、2年のフォローアップの結果に基づき、肥満治療ではRYGBよりもSADI-Sの有効性が高いとの仮説を立て、これを検証する目的で多施設共同非盲検無作為化優越性試験「SADISLEEVE試験」を実施。術後2年の時点で、RYGB群と比較してSADI-S群は優れた体重減少効果を示し、安全性プロファイルは両群とも良好であったことを報告した。研究の詳細は、Lancet誌2025年8月23日号で報告された。

DGAT-2阻害薬ION224、MASHを改善/Lancet

 ジアシルグリセロール O-アシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)を標的とした肝指向性アンチセンスオリゴヌクレオチドのION224は、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に対する安全かつ有効な治療薬となりうることを、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRohit Loomba氏らION224-CS2 Investigatorsが、米国およびプエルトリコの43の臨床施設で実施した「ION224-CS2試験」において初めて明らかにした。ION224は、MASHの病態に重要な、脂肪毒性ならびに炎症、肝細胞障害および肝線維化に関連する代謝経路であるde novo脂肪合成を抑制する。著者は、「本試験で観察された組織学的改善は体重の変化とは無関係であり、GLP-1をベースとした治療など他の治療との併用が期待される」とまとめている。Lancet誌2025年8月23日号掲載の報告。

胆道がんのリスク因子とは?大規模データで明らかに

 胆道がんは、進行期で発見されやすく、予後の悪いがんとして知られている。今回、60万人以上を対象とした大規模コホート研究から、胆道がんの各サブタイプに共通するリスク因子に加え、サブタイプごとに特有のリスク因子も明らかになったとする報告が発表された。研究は静岡県立総合病院消化器内科の佐藤辰宣氏、名古屋市立大学大学院医学研究科の中谷英仁氏、静岡社会健康医学大学院大学の臼井健氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に7月8日掲載された。  胆道がんは、胆管がん(BDC)、胆嚢がん(GC)、乳頭部がん(AC)を含み、その罹患率と死亡率は世界中で増加している。日本では年間2万人以上が新たに罹患し、がん死亡原因の第6位(2019年の全がん死亡者の約3.7%)を占める。また、胆道がんは進行期で発見されることが多く、胆道がんの切除が困難な患者では生存期間の中央値は1年程度とされ、切除可能な時までに発見および診断されることが重要である。早期発見のためにはリスク因子の特定が重要で、胆道がんには肥満や糖尿病、胆石、膵・胆管合流異常など多くの因子が関与すると報告されている。従来の研究では、胆道がんのサブタイプであるBDC、GC、ACについて、それぞれ個別にリスク因子が検討されてきたものの、これらを単一の大規模コホート内で同時に評価した研究はほとんどなかった。またACに関しては、元よりリスク因子に関する情報が乏しかった。そこで本研究では、医療ビックデータから1つの大規模コホートを生成し、各サブタイプに共通するリスク因子および特有のリスク因子を包括的に明らかにすることを目的とした。