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メトホルミンとEGFR-TKIの併用、肺腺がんのPFSを有意に延長/JAMA Oncol

 糖尿病治療薬メトホルミンの抗がん剤としての研究は世界的潮流となっているようだ。メキシコ・Instituto Nacional de CancerologiaのOscar Arrieta氏らは非盲検無作為化第II相臨床試験を行い、EGFR-TKI標準治療へのメトホルミン併用投与が、進行肺腺がん患者の無増悪生存期間(PFS)を有意に改善することを示した。これまで前臨床および後ろ向き研究で、メトホルミンが肺がんを含むさまざまな腫瘍の予後を改善することが示され、とくにEGFR-TKIとの相乗作用に関するエビデンスが蓄積されていた。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月5日号掲載の報告。肺腺がんのPFSがメトホルミン併用群で優位に延長 研究グループは、進行肺腺がん患者のPFSをEGFR-TKI単独療法とメトホルミン・EGFR-TKI併用療法を比較する非盲検無作為化第II相臨床試験を行った。 対象は、18歳以上のEGFR変異陽性StageIIIB/IV肺腺がん患者で、メトホルミン(500mg 1日2回)+EGFR-TKI(標準用量のエルロチニブ、アファチニブまたはゲフィチニブ)群またはEGFR-TKI単独群に無作為に割り付け、忍容できない毒性発現または同意撤回まで投与した。 主要評価項目はintent-to-treat集団におけるPFS。副次評価項目は客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)および安全性であった。 肺腺がんのPFSをEGFR-TKI単独療法とメトホルミン併用療法で比較した主な結果は以下のとおり。・2016年3月31日~2017年12月31日に、計139例のEGFR変異陽性StageIIIB/IV肺腺がん患者(平均年齢59.4歳、女性65.5%)が、EGFR-TKI群(n=70)またはメトホルミン+EGFR-TKI群(n=69)に無作為に割り付けられた。・PFS中央値は、EGFR-TKI群9.9ヵ月に対し、メトホルミン+EGFR-TKI群13.1ヵ月とメトホルミン+EGFR-TKI群で有意に延長した(HR:0.60、95%CI:0.40~0.94、p=0.03)。・OS中央値も、メトホルミン併用群で有意に延長した(31.7ヵ月vs.17.5ヵ月、p=0.02)。 著者は「今回の結果は、第III相プラセボ対照試験の実施を支持するものと考えてよいだろう」とまとめている。

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ダパグリフロジン、HFrEF患者でCV死・心不全悪化リスク26%低下(DAPA-HF)/ESC2019

 2型糖尿病合併の有無を問わず、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者における心血管死と心不全悪化の発現率を有意に低下させた。フランス・パリで開催された欧州心臓病学会(ESC2019)で、グラスゴー大学循環器リサーチセンターのJohn McMurray氏が、第III相DAPA-HF試験の結果を発表した。 DAPA-HF試験は、2型糖尿病合併および非合併の成人HFrEF患者を対象に、心不全の標準治療(アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬[MRA]およびネプライシン阻害薬を含む薬剤)への追加療法としてのダパグリフロジンの有効性を検討した、国際多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験。 HFrEF患者(NYHA心機能分類IIからIV、LVEF;40%以下、NT-proBNP≧ 600pg/mL)に対し、標準治療への追加療法としてダパグリフロジン10mgを1日1回投与し、その有効性をプラセボとの比較で評価した。主要複合評価項目は、心不全イベント発生(入院または心不全による緊急受診)までの期間、または心血管死であった。 主な結果は以下のとおり。・ダパグリフロジン群に2,373例、プラセボ群に2,371例が無作為に割り付けられた。・ベースライン特性は、両群ともに平均LVEF:31%、平均eGFR:66mL/分/1.73m2、2型糖尿病罹患率:45%でバランスがとれていた。・心不全治療薬の使用状況は、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬:ダパグリフロジン群94% vs.プラセボ群93%、β遮断薬:両群ともに96%、MRA:両群ともに71%。・心血管死または心不全悪化の主要複合評価項目は、ダパグリフロジン群において有意に低下した(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.65~0.85、p=0.00001)。各項目の解析をみると、心不全悪化の初回発現リスク(HR:0.70、95%CI:0.59~0.83、p=0.00003)、心血管死のリスク(HR:0.82、95%CI:0.69~0.98、p=0.029)ともにダパグリフロジン群で低下した。主要複合評価項目におけるダパグリフロジンの影響は、2型糖尿病の有無を含む、検討された主要サブグループ全体でおおむね一貫していた。・全死亡率においても、100患者・年当たり1イベント換算で患者7.9例 vs.9.5例とダパグリフロジンで名目上有意な低下を示した(HR:0.83、95%CI:0.71~0.97、p=0.022)。・Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire (カンザスシティ心筋症質問票:KCCQ)の総合症状スコアに基づいた、患者報告アウトカムの有意な改善が確認された。・安全性プロファイルについて、心不全治療において一般的な懸念事項である体液減少の発現率は7.5% vs.6.8%、腎有害事象の発現率は6.5% vs.7.2%、重症低血糖の発現率はともに0.2%であった。

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添付文書改訂:ベージニオ錠に安全性速報発出/抗コリン薬の禁忌が閉塞隅角緑内障に限定/トリプタンに薬物乱用頭痛に関する注意追加 ほか【下平博士のDIノート】第32回

ベージニオ錠に間質性肺疾患に関する安全性速報が発出画像を拡大する<Shimo's eyes>本剤は、これまでも重大な副作用として間質性肺疾患が報告されていましたが、市販直後調査中の2018年11月~2019年5月に本剤を使用した患者において、間質性肺疾患の重篤な症例が14例報告され、このうち3例が死亡に至ったことから、安全性速報(ブルーレター)1)が発出されました。今回、「警告」に下記の注意喚起が追加され、それに伴い「慎重投与」、「重要な基本的注意」、「重大な副作用」が改訂されました。【警告】間質性肺疾患があらわれ、死亡に至った症例も報告されているので、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び胸部X線検査の実施等、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、必要に応じて、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施するとともに、適切な処置を行うこと。本剤を服用する患者さんやご家族に対して、もし間質性肺疾患の初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱など)が発現した場合には、速やかに医師・薬剤師に連絡するようしっかりと伝える必要があります。抗コリン薬の禁忌が閉塞隅角緑内障に限定画像を拡大する<Shimo's eyes>これまで、多くの抗コリン作用を有する薬剤(抗コリン薬)は「緑内障」が禁忌であったため、本来安全性に懸念のある閉塞隅角緑内障患者のみならず、緑内障の95%を占める開放隅角緑内障患者にも使用できませんでした。そのため、開放隅角緑内障患者では、大きな影響がなくても使用できないという不利益や、疑義照会によって医療者の時間がとられることなどが問題となっていました。今回、薬事・食品衛生審議会で、抗コリン薬の添付文書の「禁忌」に記載されている緑内障にかかわる記載の変更が了承され、閉塞隅角緑内障のみが禁忌となりました2)。しかし、実際には患者自身が自身の緑内障のタイプを正確に把握していない場合も多く、今後の疑義照会の是非については、薬剤師側が難しい判断を迫られることになるかもしれません。今回の改訂の対象薬剤は、感冒薬、鎮痙薬、抗アレルギー薬、向精神薬、抗不整脈薬、パーキンソン病治療薬、AD/HD治療薬など多岐にわたりますが、眼科用製剤は含まれないことに留意しましょう。トリプタン系薬剤に薬物乱用頭痛に関する注意追加画像を拡大する<重要な基本的注意>トリプタン系薬剤により、頭痛が悪化することがあるので、頭痛の改善を認めない場合には、「薬剤の使用過多による頭痛」の可能性を考慮し、投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。<Shimo's eyes>薬剤を過剰に使用することで起こる薬物乱用頭痛(MOH)は、緊張型頭痛、片頭痛に次いで3番目に多い頭痛といわれています。MOHの原因となる薬物には、トリプタン系薬剤以外にも、NSAIDsやエルゴタミン製剤などがありますが、トリプタン系薬剤は少ない服薬回数でMOHを発症する傾向があるとの報告があるため、今回の改訂3)に至ったと考えられます。片頭痛治療中の患者さんがMOHに陥らないために、頭痛治療薬の正しい服用タイミングや生活指導を含めた適切な服薬指導を心掛けましょう。メトホルミン含有製剤、重度の腎機能障害患者のみを禁忌へ画像を拡大する<Shimo's eyes>これまで、メトホルミン含有製剤について、乳酸アシドーシスに対するリスク回避の観点などから、1日最高投与量が2,250mgの製剤では「中等度以上」、1日最高投与量が750mgの製剤では「軽度~重度」の腎機能障害の患者に対して禁忌となっていました。今回の改訂4)では、海外の最新の科学的知見に基づいて使用制限が見直され、禁忌がeGFR30mL/min/1.73m2未満の重度腎機能障害の患者に限定されることとなりました。軽度~中等度の腎機能障害患者は「慎重投与」となり、eGFR値に応じた1日最高投与量の目安が添付文書に記載されています。製剤ごとに内容が異なるため、それぞれの薬剤の添付文書をしっかり確認しましょう。参考1)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 ベージニオ錠50mg/100mg/150mgによる重篤な間質性肺疾患について(安全性速報)2)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 抗コリン作用を有する薬剤における禁忌「緑内障」等に係る添付文書の「使用上の注意」改訂について(薬生安発0618)3)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 トリプタン系薬剤の「使用上の注意」の改訂について4)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 使用上の注意改訂情報(令和元年6月18日指示分)

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ラムシルマブ適応拡大、肝細胞がんは薬を使い切る戦略が鍵に

 ラムシルマブの登場で、肝細胞がんの薬物治療は4剤が使用可能となったが、治療アルゴリズムはどう変化するのか。2019年6月、化学療法後に増悪した血清AFP値400ng/mL以上の切除不能な肝細胞がんに対して、ラムシルマブが適応拡大された。これを受けて8月1日、都内でメディアセミナー(主催:日本イーライリリー)が開催され、工藤 正俊氏(近畿大学医学部消化器内科 教授)が講演した。肝細胞がん薬物治療は、2次治療の選択肢が課題 本邦における肝がんの年間罹患数は約4万人、年間死亡数は約2万7,000人となっている。性別ごとの年間死亡数では、男性では肺、胃、大腸に次ぐ4番目、女性では大腸、肺、膵臓、胃、乳房に次ぐ6番目と、今もって死亡の多いがんといえる1)。肝がんの主要な背景疾患であるC型肝炎の新たな感染が減ったことで、死亡数は漸減の傾向にあるが、食事の欧米化などの影響から、B型/C型ウイルス由来ではない肝細胞がんが増加傾向にある。 肝細胞がんの治療アルゴリズムは、肝予備能(Child-Pugh分類)、肝外転移や脈管侵襲の有無、腫瘍数や腫瘍径から判断される。早期~中間期肝がんでは切除やラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)が検討され、進行期(肝外転移もしくは脈管侵襲あり)あるいは腫瘍数4個以上でTACE不応の場合は、分子標的薬による治療が行われる2)。 2009年、肝細胞がんで初めて生存延長を示した分子標的薬として、マルチチロシンキナーゼ阻害薬(mTKI)ソラフェニブが承認された。以降、2017年にソラフェニブ後の2次治療薬としてレゴラフェニブ、2018年にソラフェニブに対する非劣性を証明したレンバチニブが1次治療薬として承認されている。 しかし、ソラフェニブによる治療を受けた患者のうち、レゴラフェニブに適格となる症例は約3割に限られる。そのため、臨床試験は存在しないが、実臨床ではソラフェニブ後のレンバチニブもよく用いられている。また、1次治療でレンバチニブを投与した場合の2次治療薬についても、臨床試験が行われておらず、忍容性の高い2次治療の選択肢が求められている。ラムシルマブの臨床成績(REACH試験/ REACH-2試験) 抗VEGFR-2抗体ラムシルマブは、これまでに胃がん、結腸・直腸がん、非小細胞肺がんで承認されている血管新生阻害薬。投与方法は2週間に1回、60分の点滴静注となっている。肝細胞がんに対するラムシルマブの有効性を検討した最初の第III相試験であるREACH試験は、1次治療でソラフェニブ投与を受けた、BCLC Stage B/C、Child-Pugh分類A、PS 0~1の進行肝細胞がん患者を対象としている。主要評価項目の1つ、全体集団でのOS中央値は、ラムシルマブ群9.2ヵ月 vs.プラセボ群7.6ヵ月と有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.72~1.05、p=0.14)。しかし、事前規定されたサブグループであるAFP(α-フェトプロテイン)≧400ng/mL以上の患者では、7.8ヵ月 vs.4.2ヵ月とラムシルマブ群でOS中央値を有意に延長した(HR:0.674、95%CI:0.508~0.895、p=0.0059)3)。 AFPは肝細胞がんの早期発見に有用とされる腫瘍マーカーの1つで、基準値は10.0ng/mL以下。AFP高値は強力な予後不良因子とされており、肝細胞がんの肝切除例についてみたデータでは、AFP値が高くなればなるほど、生存期間が短くなっている4)。これらのことから、REACH-2試験ではAFP≧400ng/mLの患者に対象を絞って、ラムシルマブの有効性が検討された。その結果、ベースライン時のAFP値が3,920ng/mL vs.2,741ng/mLとラムシルマブ群で高かったにもかかわらず、OS中央値は8.5ヵ月 vs.7.3ヵ月とラムシルマブ群で有意に延長した(HR:0.710、95%CI:0.531~0.949、p=0.0199)。 ラムシルマブ群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、高血圧(12.2% vs.5.3%)、腹水(4.1% vs.2.1%)、肝性脳症(3.0% vs.0%)など5)。工藤氏は、高血圧については薬でコントロール可能とし、腹水や肝性脳症に注意が必要と話した。また、同氏はラムシルマブによる治療の大きな特徴として、dose-intensityの高さを挙げた。REACH-2試験では、ラムシルマブの投与期間中央値は12.0週間、投与サイクル数中央値は6.0サイクルで、相対dose-intensity中央値は97.9%と非常に高かった。他のTKI3剤で8~9割弱なことと比較して高いほか、日本人サブセットでも同等の高い数値が得られている。ラムシルマブ含めた分子標的薬をTACEを行うことなく選択 レンバチニブ後のラムシルマブ投与については、臨床試験で確認されたものではない。しかし、レンバチニブと比較してVEGFR-2に対する同薬の50%阻害濃度(IC50)が数倍高いこと、抗体薬であることなどから期待できるとし、工藤氏はAFP≧400ng/mL以上の患者に対して実臨床でその有用性を確認していく必要があると話した。 ラムシルマブを含め、肝細胞がん治療に使える4剤は、すべて適応がChild-Pugh分類Aの患者に限られる。つまり、肝予備能を維持しながら次の治療につなげて、薬剤を使い切ることが予後延長の鍵になる、と同氏は説明。これまでは、TACE不応となるのを待って分子標的薬を導入してきたが、今後はより早い段階から、場合によってはTACEを行うことなく薬物療法を選択していくようなケースも出てくるのではないかと話し、薬物療法開始の機会を逃さない戦略が必要になると指摘して締めくくった。 なお、肝癌治療ガイドラインは2021年改訂予定で作業が進められており、ラムシルマブの適応拡大については、日本肝臓学会のホームページ上での追加が予定されている。

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強化降圧治療、脳白質病変容積の増加が少ない/JAMA

 成人高血圧患者では、収縮期血圧(SBP)の降圧目標値を120mmHg未満とする強化降圧治療は140mmHg未満とする標準降圧治療に比べ、脳白質病変の容積の増加が少ないものの、その差は大きくないことが、米国・ペンシルベニア大学のIlya M. Nasrallah氏らが行ったSPRINT MIND試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年8月13日号に掲載された。強化降圧治療は、心血管疾患による合併症や死亡を抑制することが証明されているが、脳の健康への影響は明確でないという。疫学データでは、高血圧は脳白質病変の主要なリスク因子とされる。SPRINT試験のMRIサブスタディ 本研究は、米国の27施設が参加した多施設共同無作為化試験であるSPRINT試験のサブスタディであり、強化降圧治療は脳白質病変容積の増加を抑制するかを評価する目的で行われた(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 SPRINT試験の対象は、年齢50歳以上、SBPが130~180mmHgで、心血管リスクが高い患者(心血管疾患、慢性腎臓病[CKD、eGFR<60mL/分/1.73m2]、10年フラミンガム心血管疾患リスク≧15%、年齢75歳以上)であり、糖尿病や脳卒中の既往歴のある患者や認知症の患者は除外された。被験者は、SBPの目標値を120mmHg未満とする強化治療群または140mmHg未満とする標準治療群に無作為に割り付けられた。 SPRINT試験は2010年11月8日に開始され、2015年8月20日、主解析の主要アウトカム(複合心血管イベント)と全死因死亡が強化治療群で明らかに優れたことから、早期有効中止となった。 今回の解析には、ベースライン時に脳MRIを受けた670例が含まれ、このうち449例がフォローアップのMRIを完遂した。最終フォローアップ日は2016年7月1日だった。主要アウトカムは脳白質病変容積、副次アウトカムは全脳容積とした。全脳容積の減少は強化治療で大きく、その解剖学的原理は不明 ベースラインでMRIを受けた670例は、平均年齢67.3[SD 8.2]歳、女性40.4%であった。このうちフォローアップのMRIを完遂した449例(67.0%)の無作為化から最終MRIまでの期間中央値は3.97年であり、治療介入期間中央値は3.40年であった。 線形混合モデルに基づく解析を行ったところ、脳白質病変容積の平均値は、強化治療群では4.57から5.49cm3(差:0.92cm3、95%信頼区間[CI]:0.69~1.14)へ、標準治療群では4.40から5.85cm3(1.45cm3、1.21~1.70)へとそれぞれ増加し、変化の群間差は-0.54cm3(-0.87~-0.20)と、強化治療群で有意に増加の程度が小さかった。 また、全脳容積の平均値は、強化治療群では1,134.5から1,104.0cm3(差:-30.6cm3、95%CI:-32.3~-28.8)へ、標準治療群では1,134.0から1,107.1cm3(-26.9cm3、-28.8~-24.9)へとそれぞれ低下し、変化の群間差は-3.7cm3(-6.3~-1.1)と、強化治療群で有意に低下の程度が大きかった。 全脳容積のサブグループ解析では、女性は治療群によって全脳容積の変化の差(差:-0.2cm3、95%CI:-4.5~4.0)に有意差はなかったが、男性は強化治療群が標準治療群に比べ減少の程度が有意に大きかった(-6.0cm3、-9.3~-2.7)(交互作用のp=0.04)。 著者は、「脳における高血圧の主たる構造的な関連要因は、異常な脳白質病変容積であることを考慮すると、今回の結果は、高血圧に対しより強い降圧治療を行えば、この構造的異常の発現を遅延させる可能性があることを示唆する。一方、強化治療群で脳容積の減少が大きかったことの解剖学的原理と機能的意義は不明である」と指摘している。

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Stage IV NSCLC 1次治療のデュルバルマブ+tremelimumab、NEPTUNE試験の最終結果/AstraZeneca

 AstraZenecaは2019年8月21日、未治療のStageIV非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療におけるデュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)と抗CTLA4抗体tremelimumabの併用を評価した第III相NEPTUNE試験の最終の全生存(OS)結果を発表した。 NEPTUNE試験は、Stag IV NSCLC患者の1次治療において、デュルバルマブとtremelimumabの併用と化学療法を比較した国際無作為化非盲検試験。対象はEGFRまたはALK変異のないPD-L1発現NSCLC患者(非扁平上皮および扁平上皮)。主要評価項目は、20 mut/Mb以上と定義された高腫瘍変異負荷(TMB)患者のOSである。 主要評価集団であるTMB20mut/Mb以上の患者において、デュルバルマブとtremelimumabの併用は、化学療法と比較して主要評価項目のOSを達成しなかった。併用群の安全性と忍容性プロファイルは、過去の試験と一致していた。 AstraZenecaは、今後の医学学会で発表するため、全データを提出するとしている。

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情報を発信し、世界にキャッチアップせよ【Doctors' Picksインタビュー】第1回

肺がんを専門とし、治療法の急速な進化を最前線で経験してきた光冨 徹哉氏。関連学会のトップを歴任した際には、臨床と研究をつなぎ、各方面に情報を発信する取り組みを行ってきた。そして、2019年からは世界肺癌学会のプレジデント(理事長)を務める。米国に留学し、世界の研究者と交流してきた経験から、日本の研究の現状に対して強い危機感を持っているという。――肺がん治療における、大きなトレンドを教えていただけますか?肺がん治療はここ20年でダイナミックに変化しました。かつて、進行・転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)は、患者さんの半数が約1年の間に亡くなるという予後不良のがんでした。それが、90年代後半から遺伝子変異を標的にした分子標的薬が登場し、目覚ましい効果を上げました。とくに、2002年に国内承認されたEGFRの分子標的薬ゲフィチニブの登場は衝撃的でした。それまで長年肺がん治療に関わってきましたが、一部の患者とはいえ、初めて“効く薬”に出会えた、と感じたものです。もっとも当初は遺伝子変異が効果予測因子となることはわかっておらず、変異検査が一般臨床に組み込まれるのにはだいぶ時間を要しましたが…。現在ではEGFRやALKなど特定の遺伝子変異のあるNSCLC患者の生存期間は3年以上に延びました。さらに、2018年にノーベル賞を受賞された本庶 佑先生によって腫瘍免疫におけるPD-1の役割が解明されたことにより、ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬も臨床で使われるようになっています。こちらの治療ではまだ一部ではありますが、5年以上の長期にわたってがんがコントロールされている症例があることが特徴的です。現在では、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を適切に選び、ある場合には組み合わせて患者さん個々人に合わせたかたちで使うという、治療の個別化が研究の大きなテーマとなっています。――2014年からの4年間は日本肺癌学会の理事長を務められ、2019年の年末からは世界肺癌学会(International Association for the Study of Lung Cancer:IASLC)のプレジデントに就任のご予定です。トップとして、どのようなことに取り組もうとお考えですか。治療方法が急速に進化、変化している状況ですので、しっかりと情報収集・発信を行っていきたいですね。日本肺癌学会では専任の広報担当者を置き、医師や患者に対する発信力を高めてきました。2019年12月に開催する日本肺癌学会学術集会でも、患者や家族向けのプログラムを作るなど、積極的な啓発活動を行おうとしています。IASLCでは、まだ欧米の研究者の発言力が強い面があるので、中国・韓国などと連携しながら、アジアの研究や研究者に光を当てる機会を増やしたいと考えています。また、近年は薬物治療の発展が目覚ましく、そこに目が行きがちですが、予防、診断、外科、放射線、緩和、さらに看護など、あらゆる職種の人がメンバーとしてのメリットを感じられるような学会にしていきたいですね。――情報を発信する立場になられて、普段していることや気を付けていることをお聞かせください。Twitterで海外の著名な医師や海外ジャーナルのアカウントをフォローしています。フォロー先には留学時代や学会でのリアルの知り合いもいますが、がん関連組織のトップなど、直接には知らない人もいますよ。興味がある標的療法や免疫療法の分野は、とくに重点的に研究者をフォローしています。プロフィールのリンクをたどればその人が発表した論文を読めますし、Twitter内の会話を見れば、新しい論文の意味を深く理解できます。話題に付随した関係者も一緒に見つかるので、気になった人を都度、追加でフォローしています。学会の直後や発表中に、聴講者が発表スライドをTwitterに投稿していることもあります。これは日本ではあまり見ない光景ですよね。現地の温度感を共有しつつ最新情報を得られるのでありがたいと思います。Twitterの情報で価値があると感じたものは、Facebookで知り合いに紹介する、医師がニュースに関するコメントを寄せ合うサイトDoctors’Picksに投稿するなど、二次的な活用もしています。私は立場上、学会や製薬会社からの情報が手に入りやすい立場にありますが、若手や中堅の方は実務に忙しく、それどころではない方もおられるでしょう。研究も論文数も増加の一途で、自分の専門分野ですら、すべての情報に目を通すことは難しい。一方で、新たな治療法や新薬が続々登場し、臨床の常識が数年で一変する時代でもあります。だからこそ、信用できる「情報の目利き」を確保し、彼ら彼女らのフィルターを通ったものを確実にチェックする、という方法で情報収集を効率化できると思います。そして、有益な情報源と出会うためには、自分も情報を発信していたほうがいい。情報は出せば入ってくるものですから。欧米の研究者・医師は総じて日本人より発信に積極的です。私も今のところ、Twitterは情報収集メインなので大きなことは言えませんが、もっと積極的に発信する人が増えるとよいと思います。日本の医師は概して炎上リスクに敏感で、それも大事なことだとは思いますが、中傷などに気を付ければ、そう大きな問題となることはないと思います。それよりも、医師仲間やそれを超えた社会に対し、自分の考えや研究・実践をアピールすることは、これまで以上に重要な意味を持つようになってきていると感じています。――教育者として医学生や若手研究者と接して、お感じになることは?やはり国際学会で大事なのは英語です。昔に比べれば、インターネットもあるし、航空券も安くなって海外との距離は格段に近くなったと思うのですが、それにしては英語力がそう伸びているわけでもないような気もします。概して、積極的に留学を希望する学生も少ない印象です。ずっと国内で日本人だけを診療して生きていく、というのであればよいのかもしれませんが、そんな時代でもないでしょう。先日、私たちの大学に中東・オマーンから短期留学生が来ましたが、非常に積極的で優秀でした。母国でも医学教育は英語で受けているので、コミュニケーションもまったく問題ありません。医学の世界の公用語は英語であり、隣国の中国、韓国の人とコミュニケーションをとるためにも必須です。このままでは日本は世界とさらに差がついてしまう、と危機感を覚えます。“医学のガラパゴス化”を危惧すると言ったら言い過ぎでしょうか。世界との差は、研究の面でも顕著です。たとえば、米国のTCGA(The Cancer Genome Atlas:がんゲノムアトラス)プロジェクト※1。NCI(米国国立がん研究所)が主導し、あらゆるがんにおけるゲノム解析を行っています。先進的な分野に目をつけ、10年以上にわたって数百億円規模の予算を掛けた国家プロジェクトとして実行する、そのスケール感には圧倒されます。そして何より、研究成果であるデータの大半を一般に公開し、世界中の誰もが使えるようにしている点が素晴らしい。米国もいろいろ問題があるとは思いますが、こうした寛容さは素晴らしいですね。翻って、日本では予算規模も少なく、さまざまなことに対する規制が多過ぎます。たとえば、一般社団法人NCD(National Clinical Database)では手術数やリスクなどの外科系データを収集しています。ですが、私たちがこのデータを研究で利用しようとすると用途やデータの出し方を細かく指定し、解析済みデータを提供してもらう必要があるのです。研究では生データを探索的に解析することで新たな視点や気付きが生まれるものですが、その自由度はありません。科研費においても、設定される研究スパンは3~5年程度が多く、短期で成果を出さねばならないという意識が働くので、研究自体が小粒かつ近視眼的になる側面が否めません。実際、2000年代半ばから、日本の論文は質量ともに急速に低下しています※2。――日本が再び世界でプレゼンスを高めるためには、何が必要でしょうか?即効性のある処方箋はありませんが、まずは医師が危機感を共有し、世界の情報を集め、キャッチアップしていくことからではと思います。語学力を高め、国際的な共同研究に参加することも重要でしょう。ここ10年で急速に力を付けてきた隣国の中国の研究者から学ぶことも多いと思います。※12006年に開始された大型がんゲノムプロジェクト。2018年までに33種のがん種について10,000を超える腫瘍の分子および臨床情報のデータセットについて、網羅的なゲノム解析を完了させた。※2文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)「科学研究のベンチマーキング」このインタビューに登場する医師は医師専用のニュース・SNSサイトDoctors’ PicksのExpertPickerです。Doctors’ Picksとは?著名医師が目利きした医療ニュースをチェックできる自分が薦めたい記事をPICK&コメントできる今すぐこの先生のPICKした記事をチェック!

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アファチニブ→オシメルチニブのシ―クエンス、T790M変異NSCLCでOS45ヵ月(GioTag)/ベーリンガーインゲルハイム

 ベーリンガーインゲルハイムは、2019年8月2日、GioTag研究の中間解析結果を発表した。同研究では、初回治療のアファチニブに続きオシメルチニブを投与することにより、Del19変異陽性患者において、約4年間(45.7ヵ月間)の全生存期間(OS)を示した。 GioTag研究は、第1および第2世代のEGFR-TKIに対する耐性メカニズムであるT790M獲得遺伝子変異を有するEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、アファチニブに続いてオシメルチニブを投与する治療法を評価したリアルワールドの後ろ向き観察研究。 前回のGioTag研究結果では、2年および2.5年間のOS率が示された。今回その後の解析として、最新データの評価が行われた。リアルワールドの臨床環境で、アファチニブ40mgで投与を開始したEGFR T790M獲得遺伝子変異陽性のNSCLC患者において、OS中央値は45.3ヵ月間、アップデート解析での2年OS率は82%となった。 Del19変異陽性患者の全生存期間(OS)中央値はより長く、45.7カ月であった。アファチニブとオシメルチニブを用いたシークエンシャル治療について、更新された治療期間中央値は、全体で28.1ヵ月、Del19変異陽性患者では30.6ヵ月であった。

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T790M陽性肺がんのオシメルチニブ治療、日本の実臨床データ/日本臨床腫瘍学会

 EGFR T790M変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブの市販後調査の一環として行われた全例調査の最終結果を、神奈川県立がんセンター加藤晃史氏らが第17回日本臨床腫瘍学会学術集会で発表。3,000例を超えるわが国のT790M変異NSCLCに対するオシメルチニブ治療の実臨床データが示された。 対象は2次治療以降にオシメルチニブの治療を受けた切除不能・再発EGFR T790M変異NSCLC患者。予定のサンプルサイズは3,000例、追跡期間は12ヵ月であった。また、医薬品リスク管理計画による安全性検討事項として、間質性肺疾患(ILD)関連イベント、QT間隔延長、肝障害、血液毒性などが評価された。 主な結果は以下のとおり。・2016年3月28日~2018年8月31日に3,629例が登録された。・全Gradeの副作用現率は58.1%(安全性解析対象3,578例中2,079例)、頻度の高い項目は下痢(10.9%)、爪囲炎(10.3%)、皮疹(8.5%)などであった。・安全性検討事項では、ILDの発症は全Gradeで6.8%(Grade3以上2.9%)、QT延長は全Gradeで1.3%(Grade3以上0.1%)、肝疾患は全Gradeで5.9%(Grade3以上1.0%)、血液毒性は全Gradeで11.4%(Grade3以上2.9%)などであった。・奏効率69.9%、病勢コントロール率は86.7%であった(CR:119例、PR:2,373例、SD:598例)。・無増悪生存期間(PFS)中央値は12.3ヵ月、12ヵ月PFS率は53.2%であった。・年齢(75歳未満、75歳以上)、PS(1~2、3~4)、EGFR遺伝子変異(Exon19 del、L858R)、脳転移(無、無症候性、症候)、胸水の有無によらず有効性が確認された。 ILD発症後のオシメルチニブの投与実態※・ILDの発症は245例、そのうちオシメルチニブの再投与を受けた39例中37例が回復(初回ILDの転帰)。・上記39例中ILDの再発は7例、そのうちオシメルチニブの再々投与を受けた3例中3例とも回復(2回目のILD)。 加藤氏らは、この全例調査の結果は、EGFR T790M変異陽性NSCLC患者に対するオシメルチニブの確立した評価を支持するものであったと結論付けた。※間質性肺疾患の異常が認められた場合は投与を中止するよう、添付文書で定められている。

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オシメルチニブ、EGFR陽性肺がんのOS改善(FLAURA)/AstraZeneca

 AstraZenecaは2019年8月9日、局所進行または転移のあるEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の未治療患者を対象としたオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の第III相無作為化二重盲検多施設試験FLAURA試験において、全生存率(OS)が有意に改善したことを発表した。 第III相FLAURA試験の副次評価項目であるOSにおいて、オシメルチニブはエルロチニブまたはゲフィチニブと比較して、統計学的有意かつ臨床的に意味のある改善を示した。 FLAURA試験は2017年7月に無増悪生存期間(PFS)を統計的有意かつ臨床的に意味のある改善を示し、主要評価項目を達成した。オシメルチニブの安全性と忍容性は、従来のプロファイルと一致していた。 AstraZenecaは、プレスリリースの中で、FLAURA試験でのOSの結果は、今後の医学学会で発表する予定としている。

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第11回 高齢者でも!注射剤の活用法【高齢者糖尿病診療のコツ】

第11回 高齢者でも!注射剤の活用法高齢者は個人差が大きく、ひとくくりに高齢者といっても、認知機能が保たれており、予後が10年以上見込まれる75歳の方と、認知症など多くの並存疾患があり、予後不良が予想される65歳の方では治療方針が異なります。注射剤の使用で問題となるのは自己管理が困難な高齢者だと思いますので、そうした方々を念頭に、私が普段の診療で行っていることを中心に記述します。なお、インスリン依存状態や、注射製剤(とくにインスリン)の導入や中止の判断に迷う場合には専門医への紹介をぜひご検討ください。また、GLP-1受容体作動薬とインスリンは同じ注射薬ではありますが、効果や使用目的が根本的に異なるため、分けて考える必要があります。Q1 高齢者でのインスリン注射のはじめどきは?高齢者でも、インスリン注射の適応は非高齢者と同様です1)。(1) インスリン分泌能の低下、(2)抗GAD抗体陽性あるいは抗IA-2抗体陽性、(3) 経口血糖降下薬3剤でも血糖コントロール不良、(4) 重度の肝障害、腎症4期以降で使用できる経口血糖降下薬が少なく、血糖コントロール不良、(5) ステロイドの使用、(6)感染症などの急性期、(7)高血糖が持続し、積極的に糖毒性の解除を行うときなどの場合に、インスリン注射を検討します。インスリン療法では、超即効型製剤を各食前と持効型製剤による強化インスリン療法が血糖管理のうえでは理想的ですが、インスリン分泌能や本人・介護者の能力・実行力に応じて、注射回数を決定し、それに応じたインスリン製剤を選択します。頻回注射は難しいことが多く、持効型製剤を1回、介護者が可能な時間帯に打つか、本人の注射手技を確認してもらいます。インスリン グラルギン(商品名:ランタスXR)では±3時間、インスリン デグルデク(商品名:トレシーバ)では±8時間の注射時刻のずれは効果・安全性に影響しないことが示されており、日による注射時刻の変動は許容できます。Q2 高齢者でのGLP-1受容体作動薬のはじめどきは?(1)インスリン分泌は保たれているが、経口血糖降下薬3剤でも血糖コントロール不良、(2)高齢者でも減量のメリットが得られる場合、(3)腎症4期以降で使用できる経口血糖降下薬が少なく、血糖コントロール不良、(4)認知機能障害などで服薬アドヒアランス不良、かつサポート不足があるなどの場合に、GLP-1受容体作動薬を検討します。とくに(4)の場合はアドヒアランスを重視し、週1回製剤を選択することが多いです。週1回の注射を介護者あるいは訪問看護師、デイケアなどの施設看護師が打つようにすると打ち忘れることもなく、複数回の経口薬と比べ、アドヒアランスが上がる場合があり、独居で注射手技の獲得が困難な高齢者でも使用できます。Q3 インスリンの注射の減量・中止を考えるとき注射製剤の中止を考える場合は、良好なコントロールが持続し、かつ注射管理が困難となった場合や、患者あるいは家族の強い希望があった場合などです。インスリンを中止する場合には、たとえ少量のインスリン使用で良好なコントロールが得られている場合でも、インスリン分泌能や抗GAD抗体を測定したうえで、中止を検討します。インスリン分泌能が保持されている場合は、経口薬を調整しながらインスリンを漸減し、インスリンの中止を試みます。一方、インスリン分泌能が高度に低下している場合には、インスリンを中止することは難しいため、介護サービスなどを利用し、持効型製剤1回でもどうにか注射できる体制を構築する必要がありますが、実際には外来診療ではなかなか時間がとれず、入院していただき環境調整を行うことも多くあります。入院ではまず、強化インスリン療法で糖毒性を解除します。インスリン依存状態でなければインスリンの中止、あるいは持効型1回打ちへの変更を目標として、忍容性があれば入院早期からメトホルミンを投与し、経過に応じてDPP-4阻害薬あるいはGLP-1受容体作動薬を検討します。GLP-1受容体作動薬を追加しても食後血糖がコントロールできない場合はグリニド薬やαグルコシダーゼ阻害薬(α‐GI)を考慮します。外来でのインスリン治療の簡略化は米国糖尿病学会のposition statementが参考になります(図)2)。強化インスリン療法を行っている場合には基礎インスリン(持効型・中間型インスリン)は継続し、空腹時血糖値が目標内(90~150mg/dL、個々の症例に応じて要調整)に入るように調整。SMBGにおける空腹時血糖値の半数が150mg/dL以上の場合は基礎インスリンを2単位増加し、血糖が80mg/dL以下の場合は2単位減量。食前インスリン(速攻型・超速効型インスリン)については、経口薬を追加し、10単位以下であればそのまま中止、10単位より多い場合は半量とするとされています。画像を拡大する本邦では、3単位以下ぐらいが追加インスリン中止の目安であろうと思います。追加する経口薬は、eGFR≧45mL/minで忍容性があればメトホルミン500mg分2を、すでにメトホルミンが投与されているか使用できない場合にはDPP-4阻害薬などを使用し、追加インスリンの中止を検討。混合型インスリンを使用している場合には総インスリン投与量の7割の持効型製剤に変更し、インスリン量、経口薬を調整するようにしています。Q4 GLP-1受容体作動薬の中止を考えるときGLP-1受容体作動薬もインスリンと同様に良好なコントロールが持続し、かつ注射管理が困難となったときに、DPP-4阻害薬等に変更し、中止を検討します。週1回のGLP-1受容体作動薬を使用している場合にはかえってアドヒアランスが落ちる場合もありますので、経口薬の管理が可能かを介護者や、場合によってはケアマネージャーに確認して中止しています。本人が自己管理困難になってきた場合には、連日投与から週1回製剤への切り替えを行います。また、GLP-1受容体作動薬の作用である食欲低下作用が強く出過ぎてしまい、過度の体重減少をきたし、サルコペニアが懸念される場合にも中止します。1)日本糖尿病学会編著. 糖尿病治療ガイド2018-2019.文光堂;2018.2)American Diabetes Association.Diabetes Care.2019;42:S139-147.

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ダコミチニブの用量調整と日本人肺がん患者の治療期間(ARCHER1050)/日本臨床腫瘍学会

 第2世代EGFR-TKIダコミチニブは、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療を評価する第III相ARCHER1050試験において、有意な無増悪生存期間(PFS)改善を示した。この改善効果は日本人サブセットでも一貫して確認されている。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会では、神奈川県立がんセンターの加藤 晃史氏が、ARCHER1050試験の日本人サブセットにおけるダコミチニブの投与量調整の状況とその影響について発表した。ARCHER1050 試験概要・対象患者:EGFR変異陽性のStage IIIB/IVまたは再発NSCLC患者(CNS転移患者は除外)・試験薬:ダコミチニブ 45mg/日・対照薬:ゲフィチニブ250mg/日・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、治験担当医師によるPFS、奏効率、奏効期間、治療成功期間、安全性、患者報告アウトカム。 今回の発表の主な結果は以下のとおり。・ARCHER1050 全集団452例のうち日本人集団は81例で、ダコミチニブ群は40例であった(ゲフィチニブ群は41例)。・ダコミチニブ群で減量を行った日本人症例の割合は85%(40例中34例)であり、試験全集団の66.1%(227例中150例)に比べ高かった。・ダコミチニブ減量症例34例のうち11例(27.5%)は1段階減量(45→30mg/日)、23例(57.5%)は2段階減量(45→30→15mg/日)であった。・ダコミチニブの減量状況と治療期間をみると、非減量グループが最も短く、2段階減量グループが最も長かった。 ダコミチニブは日本人患者においても一貫したPFSとDCRの改善を示している。日本人サブセットでは減量例が多いが、忍容性に合わせた用量調整はダコミチニブ継続使用の鍵である、と加藤氏は述べた。

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フレイルな非小細胞肺がんに対する低用量エルロチニブの有効性/日本臨床腫瘍学会

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対しては分子標的薬がスタンダードだが、フレイル患者への実臨床での至適投与量は明らかではない。そのような中、EGFR変異陽性NSCLCのフレイル患者に対する低用量エルロチニブの効果と安全性を評価する多施設第II相TORG1425試験が行われた。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会では、その最終結果が三井記念病院の青野ひろみ氏により発表された。・対象:化学療法未治療のEGFR変異陽性進行NSCLCのフレイル患者・介入:初回投与エルロチニブ50mg/日、4週後奏効率により変更(PD例は中止、SD例は100または150mg/日に増量、PR/CR例は50mg/日を継続)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(RR)[副次評価項目]増量後のRRおよび疾患制御率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性フレイルの定義・グループ1:年齢20~74歳でPS2以上、Charlson Comorbidity Index(CCI)6以上・グループ2:年齢75~80歳でPS1以上、CCI6以上・グループ3:年齢81歳以上でPS全グレード、CCI全グレード 主な結果は以下のとおり。・2015年1月~2017年4月に21施設から80例が登録され、80例すべてが効果と安全性の評価対象となった。・患者の年齢中央値は80歳、StageIVが63.8%、フレイルグループは3が最も多く46.3%、2が35.0%、1が18.8%であった。・初回投与(50mg/日)のRRは60.0%、増量例を含んだRRは62.5%であった。・初回投与のDCRは90.0%、増量例を含んだDCRは86.3%であった。・PFS中央値は9.29ヵ月、1年PFS率は35.6%であった。・OS中央値は26.15ヵ月、1年OS率は69.5%であった。・エルロチニブの有害事象については新たなものはみられず、治療関連死はなかった。 青野氏は、低用量エルロチニブはフレイルのEGFR陽性NSCLCの治療選択肢になりうると結論付けた。

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EGFR陽性NSCLCへのエルロチニブ+ラムシルマブ、東アジア人集団でも有用性示す(RELAY)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で、日本人を含む東アジア人症例においても、EGFR-TKIエルロチニブと抗VEGF-R2抗体ラムシルマブの併用療法がエルロチニブ単剤と比較してPFSを延長した。第III相RELAY試験における、東アジア人サブセットの中間解析結果を、がん研究会有明病院の西尾 誠人氏が第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。 RELAY試験は、活性型EGFR変異(Exon19delまたはExon21 L858R)を有し、CNS転移のない、未治療の進行NSCLC患者を対象とした第III相国際共同二重盲検無作為化試験。登録患者はラムシルマブ(10mg/kg2週ごと投与)+エルロチニブ(150mg/日)群と、プラセボ+エルロチニブ(150mg/日)群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。また、患者は性別、地域(東アジア vs.その他)、EGFR変異ステータス(Ex19del vs.L858R)、EGFR変異検査法(Therascreen/Cobas vs.その他)で層別化された。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、奏効持続期間(DoR)、全生存期間(OS)、安全性など。その他探索的な評価項目として、PFS2(無作為化から2度目の病勢進行あるいは全死因死亡のいずれかの発生までの期間)、バイオマーカー分析が設定された。 主な結果は以下のとおり。・全体で449例が登録され、うち東アジア人は336例(75%)。日本人は41施設から211例が登録された。ラムシルマブ併用群に166例、プラセボ群に170例が割り付けられた。女性は両群で64%、年齢中央値は65歳/64歳、Ex19delは51%/49%であった。・PFS中央値は、全体集団で併用群19.4ヵ月 vs.プラセボ群12.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.591、95%信頼区間[CI]:0.461~0.760、p<0.0001)、東アジア集団で19.4ヵ月 vs.12.5ヵ月(HR:0.636、95%CI:0.485~0.833、p=0.0009)と併用群で有意に延長した。・EGFR変異のステータスによる差はなく、全体集団と同様に東アジア集団でも併用群でPFS中央値を延長した:Ex19delを有する患者で19.2ヵ月 vs. 12.4ヵ月(HR:0.629、95%CI:0.430~0.921)、L858Rを有する患者で19.4ヵ月 vs. 12.5ヵ月(HR:0.644、95%CI:0.439~0.945)。・ORRは77% vs.74%と全体集団同様に差がみられなかったが、DoR中央値は16.2ヵ月 vs. 11.1ヵ月と、併用群で延長した(HR:0.646、95%CI:0.481~0.868)。・中間解析時点でのPFS2中央値は33.1ヵ月 vs. 未到達、全体集団同様に併用群で良好な傾向がみられている(HR:0.771、95%CI:0.529~1.124)。・中間解析時点でのOS中央値は両群ともに未到達、全体集団同様に併用群で良好な傾向がみられている(HR:0.824、95%CI:0.491~1.383)。・ベースライン時にT790M変異陽性の患者はいなかったが、病勢進行30日後の測定では、併用群43%、プラセボ群50%で発現しており、両群に差はみられなかった(p=0.530)。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現率は全体集団で72% vs.54%、東アジア集団で71% vs.49%であった。・東アジア集団において、併用群で多くみられたGrade3以上のTRAEは、高血圧(21% vs. 5%)、ざ瘡様発疹(18% vs. 9%)であった。出血性イベント(55% vs.27%)も併用群で多い傾向がみられたが、Grade3以上は2% vs.1%であった。ILDの発現は少なく、Grade3以上は1% vs.2%で、Grade4の症例は報告されていない。

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腎機能を考慮したファモチジンの変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第1回

 千葉県柏市にある在宅医療特化型薬局「つなぐ薬局」の鈴木です。私は現在、施設往診同行や在宅訪問などで積極的に医師とコミュニケーションを取り、処方提案を行っています。これまの学びを処方提案という形でアウトプットすることで、薬剤師の立場と視点による薬物治療の適正化を推進し、患者さんがより良い状態になっていくことを実感しています。このコラムでは、薬学的管理の質を向上させる処方提案の重要性とともに、薬局薬剤師の視点での提案のコツをお伝えしたいと思います。処方提案する際には、ご家族からの訴えが重要な手掛かりとなることがあります。認知症様の症状が生じていると聞き取り、検査値や処方薬を見直したところ、高齢者では注意が必要な薬剤がありました。今回は腎機能を起点に処方提案した症例についてご紹介します。患者情報75歳、女性、身長:140cm、体重:45kg現病歴:脳梗塞、認知症同居の家族から、最近話が通じにくいことが多いと訴えあり。処方内容アスピリン腸溶錠100mg 1錠 分1 朝食後マニジピン錠10mg 1錠 分1 朝食後プラバスタチン錠10mg 1錠 分1 朝食後ファモチジン錠20mg 2錠 分2 朝夕食後酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後メマンチン錠20mg 1錠 分1 夕食後前月の検査値(L/D)Scr:1.02mg/dL、eGFR:40.63mL/min/1.73m2、Mg:2.0mg/dLHDL:45mg/dL、LDL:118mg/dL本症例の着眼点この患者さんは、脳梗塞の2次予防のために低用量アスピリンを服用継続していて、その消化性潰瘍予防のためファモチジンを服用していました。処方箋の受付時に家族から聴取した「会話のつじつまが合わないことが多い」という訴えは、認知症に伴う周辺症状の可能性もありますが、ファモチジンによるせん妄や意識障害の可能性も示唆されます。腎機能が低下している場合、腎排泄型のH2受容体拮抗薬であるファモチジンの血中濃度が持続して過量投与となることがあります。『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』において、「すべてのH2受容体拮抗薬は可能な限り投与を控える。とくに入院患者や腎機能低下患者では、必要最小限の使用にとどめる」ということが記載されています。腎機能を正しく評価して薬剤投与設計を行うために、下記の評価を行いました。腎機能の評価Cockcroft-Gaultの式を用いて推算CCrを算出することができます。計算するために必要なパラメータはScr(血清クレアチニン)、年齢、体重、性別で、女性は筋肉量が少ないため、係数の0.85を乗じます。<Cockcroft-Gaultの式>男性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)女性:CCr(mL/min)=(140-年齢)×体重(kg)/(72×Scr)×0.85通常は上記の簡易式が用いられるが、身長が考慮されていないので、肥満患者では腎機能を過大評価してしまう可能性がある。そのため、実体重ではなく標準体重や理想体重を用いて計算することもある。<標準体重(男女共通)>身長(m)×身長(m)×22(係数)<理想体重>男性=50+{2.3×(身長-152.4)}/2.54女性=45+{2.3×(身長-152.4)}/2.54今回の患者さんの場合、CCr(Cockcroft-Gaultの式にて推算):33.9mL/min、体重未補正eGFR:30.5mL/minであり、60mL/min>CCr>30mL/minの場合のファモチジンの推奨投与量は、20mg 1日1回あるいは10mg 1日2回となります。本症例において、ファモチジンは過量投与です。なお、腎機能が低下している場合、マグネシウムの蓄積に伴う高Mg血症を評価することも重要ですが、検査結果は基準値内であり、自覚症状の面からも高Mg血症は否定的です。処方提案と経過腎機能を評価したところ、ファモチジンが過量投与となっており、減量が望ましいと判断しました。また、せん妄のような症状も現れており、H2受容体拮抗薬が影響していることも考えられます。そこで、処方医に電話で、ファモチジンを1日1回に減量あるいは肝代謝型のPPI(プロトンポンプ阻害薬)に変更してみるのはどうか提案しました。その結果、ファモチジンは中止となり、ランソプラゾールOD錠15mgが開始となりました。後日家族に確認したところ、会話のつじつまが合わないということは減ったと聴取しました。本症例のポイント・定期的に血液検査の結果と身長・体重を聴取する。・薬物投与設計のための腎機能評価を正しく理解する。・H2受容体拮抗薬は腎排泄型薬剤が主であり、高齢者においてはせん妄や意識障害のリスク因子となる。「透析患者に対する投薬ガイドライン」, 白鷺病院,(参照:2019年6月24日)日本老年医学会ほか 編. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015. メジカルレビュー社;2015.

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ダパグリフロジン、糖尿病患者の腎保護示す-DECLARE‐TIMI 58サブ解析

 近年、SGLT2阻害剤はアテローム性動脈硬化症患者の腎アウトカムに対し、有益な効果を示すことが明らかになりつつある。今回、イスラエル・Hadassah Hebrew University Hospital のOfri Mosenzon氏らがDECLARE-TIMI 58のサブ解析を実施。ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が、腎機能を保持している2型糖尿病患者において、アテローム性動脈硬化症の有無にかかわらず、プラセボと比較して腎疾患の予防および進展抑制を示す結果が得られた。Lancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版2019年6月10日号に掲載された。 研究者らは、複合アウトカムの構成要素、サブグループ解析、さまざまな時点でのeGFRの変化を調査する目的でサブ解析を実施。HbA1cが6.5〜12.0%(47.5〜113.1mmol/mol)の2型糖尿病で、アテローム性動脈硬化症または複数の危険因子を有し、クレアチニンクリアランス60mL/分以上の患者を、1日1回ダパグリフロジン10mg服用群またはプラセボ服用群に1対1に無作為に割り付けた。事前に規定した副次評価項目としての心腎複合アウトカムは、eGFR(推定糸球体濾過量)60mL/分/1.73m2未満かつ40%以上の持続的低下、末期腎不全(90日以上の透析、腎移植、またはeGFRが15mL/分/1.73m2未満を持続)、あるいは腎・心血管系による死亡であった。また、腎特異的複合アウトカムからは、心血管死を除外した。 主な結果は以下のとおり。・試験は2013年4月25日~2018年9月18日に実施された。・追跡期間中央値は4.2年(四分位範囲3.9~4.4)だった。・参加者1万7,160例が無作為に割り付けられた。・各参加者のベースライン時のeGFRは、90mL/分/1.73m2以上が8,162例(47.6%)、60〜90mL/分/1.73m2未満が7,732例(45.1%)、60mL/分/1.73m2未満が1,265例(7.4%)であった(eGFRのデータ消失が1例)。・6,974例(40.6%)はアテローム性動脈硬化症を発症し、1万186例(59.4%)は複数の危険因子を有していた。・副次評価項目としての心腎複合アウトカムは、プラセボと比較してダパグリフロジンで有意に減少した(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.67~0.87、p

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FoundationOne CDx、エヌトレクチニブのコンパニオン診断として承認/中外

 中外製薬は、2019年6月27日、遺伝子変異解析プログラムFoundationOne CDx がんゲノムプロファイルに関し、ROS1/TRK阻害剤エヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)のNTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対するコンパニオン診断としての使用目的の追加について、6月26日に厚生労働省より承認を取得したと発表。FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルは、NTRK融合遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3遺伝子と他の遺伝子の融合遺伝子)を検出することにより、エヌトレクチニブの適応判定補助を行う。エヌトレクチニブは、成人および小児の NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんに対する治療薬として本年6月18日に承認を取得している。 本プログラムは、米国のファウンデーション・メディシン社 により開発された、次世代シークエンサーを用いた包括的ながん関連遺伝子解析システムである。患者の固形がん組織から得られたDNAを用いて、324の遺伝子における置換、挿入、欠失、コピー数異常および再編成などの変異等の検出および解析、ならびにバイオマーカーとして、マイクロサテライト不安定性の判定や腫瘍の遺伝子変異量の算出を行う。また、国内既承認の複数の分子標的薬のコンパニオン診断として、適応判定の補助に用いることが可能である。FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル、コンパニオン診断の適応 [EGFRエクソン19 欠失変異及びエクソン21 L858R変異]  がん種:非小細胞肺がん  関連する医薬品:アファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ [EGFRエクソン 20 T790M変異]  がん種:非小細胞肺がん  関連する医薬品:オシメルチニブ [ALK融合遺伝子]  がん種:非小細胞肺がん  関連する医薬品:アレクチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ [BRAF V600Eおよび V600K変異]  がん種:悪性黒色腫  関連する医薬品:ダブラフェニブ、トラメチニブ、ベムラフェニブ [ERBB2コピー数異常(HER2遺伝子増幅陽性)  がん種:乳がん トラスツズマブ [KRAS/NRAS野生型]  がん種:直腸・結腸がん  関連する医薬品:セツキシマブ(遺伝子組換え)、パニツムマブ(遺伝子組換え) [NTRK1/2/3融合遺伝子]  がん種:固形がん  関連する医薬品:エヌトレクチニブ

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GLP-1受容体作動薬、デュラグルチドは2型糖尿病患者の腎イベントを抑制するか?:REWIND試験の腎に関する予備解析結果(解説:栗山哲氏)-1069

REWIND研究の結論 2型糖尿病においてGLP-1受容体作動薬、デュラグルチドのadd-on療法は、新規アルブミン尿発症を抑制する。REWIND研究の概要 インクレチン薬であるGLP-1受容体作動薬の腎作用が解明されつつある。現在までにGLP-1受容体作動薬に関する大規模研究は、セマグルチドのSUSTAIN-6研究、リラグルチドのLEADER研究、リキシセナチドのELIXA研究の3つ報告がある。この中で、前二者において腎複合イベントに改善作用が示唆された(ELIXA研究では腎イベントは事前設定されていない)。 REWIND研究(Researching Cardiovascular Events with a Weekly Incretin in Diabetes)は、GLP-1受容体作動薬に関する4つ目の大規模研究である。研究結果は、第79回米国糖尿病学会(ADA 2019、6月7日~11日)においてDr. Gerstein氏により報告され、6月10日のLancet誌に2つの論文として発表された。1つは心血管アウトカム(便宜上、第1報)、もう1報は腎アウトカムの予備解析(第2報)である。 REWINDの主要評価項目として心血管死、非致死性心筋梗塞と脳卒中(MACE)初発(第1報)、副次的評価項目として腎複合イベントを観察した(第2報)。本研究は、世界24ヵ国の371施設における国際的規模で、50歳以上の2型糖尿病患者9,901例(平均年齢66.2歳、白人76%、女性46.3%、心血管疾患の既往歴31.5%、ベースラインHbA1c中央値7.2%、BMI 32%、糖尿病罹病歴9.5年、eGFR 77mL/min/1.73m2)を登録した大規模研究である。併用薬は、BG薬(プラセボ群81.3% vs.デュラグルチド群81.1%)、SU薬(45.9% vs.46.1%)、ARBあるいはACE阻害薬(81.0% vs.82.0%)などである。これらの糖尿病治療薬に追加して、週1回の長時間作用型の注射製剤であるデュラグルチド1.5mgを投与する群(4,949例)とプラセボを投与する群(4,952例)に1:1でランダム化割り付けをし、中央値で5.4年間追跡した。REWIND研究の結果 第1報において、主要評価項目とした追跡期間中のMACE初発は、プラセボ群の663例(13.4%、100人・年当たり2.7例)に比べてデュラグルチド群では594例(12.0%、同2.4例)と有意に低値であった(ハザード比[HR]:0.88、95%CI:0.79~0.99、p=0.026)。このデュラグルチドによるMACE抑制効果は、心血管疾患の既往歴の有無、ベースラインのHbA1c値、年齢、性、糖尿病の罹病期間、心血管疾患既往、BMI、地域差を問わず認められた。ただし、全死亡に関してはプラセボ群(12.0%、100人・年当たり2.3例)とデュラグルチド群(10.8%、同2.1例)で有意差はなかった(HR:0.90、95%CI:0.80~1.01、p=0.067)。 第2報ではexploratory analysis(予備解析)が発表され、副次的評価項目とした腎疾患の発症に関して解析が行われた。腎評価項目は、「微量アルブミン尿(UACR>33.9mg/mmol)の発症」、「基礎値から30%以上のeGFRの持続性低下」、「腎代替療法開始」、である。その結果、腎複合イベント発症数は、プラセボ群の970例(19.6%、100人・年当たり4.1例)に比べてデュラグルチド群では848例(17.1%、同3.5例)と有意に低値を呈した(HR:0.85、95%CI:0.77~0.93、p=0.0004)。その腎アウトカムの最も明らかな原因は、「新規の微量アルブミン尿発症抑制」(HR:0.77、95%CI:0.68~0.87、p<0.0001)であり、「30%以上の持続性eGFR低下」(HR:0.89、95%CI:0.78~1.01、p=0.066)と「腎代替療法開始」(HR:0.75、95%CI:0.39~1.44、p=0.39)には有意差を認めなかった。以上から、従来の糖尿病治療に加えて、デュラグルチドの長期追加投与は、腎複合イベントを抑制することが示唆された。この主因は、新規の微量アルブミン尿発症抑制であった。さらに、デュラグルチド群においては軽度の体重減少、HbA1cの低下、LDLコレステロール値の低下、収縮期血圧の低下効果なども認められた。一方、心拍数は軽度の上昇がみられた。 なお、事前設定した、投薬中止率、有害事象である重篤な低血糖、膵がんや甲状腺がん、急性膵炎、不整脈などの点でデュラグルチド群とプラセボ群で差はなかった。ただし、消化管有害事象として、便秘および下痢を含む消化管有害事象の発現率は、プラセボ群(34.1%)に比べてデュラグルチド群(47.4%)で高かった(p<0.0001)。REWIND研究の腎予備解析:新知見は? 問題点は? 本研究の第2報である腎複合イベント解析は、副次的評価項目を予備解析したもので、REWINDの主要評価項目ではない。この解析結果を一言で要約すれば、「デュラグルチドのadd-on療法は新規の微量アルブミン尿発症を抑制する」ことである。腎複合イベント改善に、「腎機能低下抑制」や「腎代替療法開始抑制」は関与しなかった。本研究の対象が、腎機能良好群であること(eGFR 60mL/min/1.73m2以上でアルブミン尿なしが47%)を考慮すると、後二者が有意差に至らないのは自明でもある。なぜなら、一般的に糖尿病発症後の自然経過は、尿蛋白陽性例は5年間で30%、その後の経過観察25年間で30%が血清クレアチニン(Cr)値1.5mg/dL以上の慢性腎不全に至るとされる。つまり、糖尿病の自然経過を30年間追跡すると30%が慢性腎不全に至る。このことから、「30%以上のeGFR低下」と「腎代替療法開始」を腎アウトカムとした場合には相当な長期間観察を設定しなければ(仮にありうるにしても)有意差には至らない。インクレチン薬のアルブミン尿発症抑制の想定機序 現在、明確な腎保護作用のエビデンスが知られる薬剤は唯一RAS抑制薬(ACE阻害薬とARBの二者)であった。しかし、最近の新知見としてSGLT2阻害薬が心血管イベントを減少させるだけではなく、Class effectとして腎保護作用があることが、EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Program、DECLARE-TIMI 58、CREDENCEにおいて明らかにされ、第3の腎保護薬として認識されつつある。 薬剤が腎保護を惹起する病態生理学的機序は複雑だ。腎の解剖学的見地からは、Glomerulopathy(糸球体障害)、Tubulopathy(尿細管障害)そしてVasculopathy(血管障害)の3系統を念頭に論じる必要がある。RAS阻害薬やSGLT2阻害薬は、糸球体高血圧を是正しGlomerulopathyを改善することが、主たる腎保護機序である(Tubulo-glomerular feedback:TGF)。また、これらの薬剤は、腎間質の低酸素環境改善や線維化抑制を介しTubulopathyやVasculopathyを改善する報告もある。 さて、GLP-1受容体が腎糸球体や尿細管に発現しているか否かには、いまだ議論がある。一方、腎血管系に発現している事実にはまったく異論はない。基礎実験でのインクレチン薬の主たる腎作用は、血圧低下作用、腎尿細管NHE3を介したNa利尿作用、ANP増加作用を介したNa利尿、そして、血圧低下作用と連関し、TGFを介した輸入細動脈収縮と腎内アンジオテンシンII低下による輸出細動脈拡張による糸球体内圧低下を惹起する(Tsimihodimos V, et al. Eur J Pharmacol. 2018;818:103-109.)。糸球体内圧低下は、アルブミン尿低下を惹起し腎保護的に働く。これらの作用はあたかもSGLT2阻害薬に類似するが、インクレチン薬の主たる薬理作用であるNa利尿作用は、利尿薬としてのpharmacological potencyは強くないためTGFを介した腎保護機序の関与度は、SGLT2阻害薬に比較して低いと想像される。実臨床における道のり REWIND研究の患者背景は、平均年齢60代、白人中心(76%)、肥満者(BMI 32)、腎機能はeGFRが77mL/min/1.73m2と保たれている患者での成績であり、本邦の糖尿病患者とは一致しない面がある。GLP-1受容体作動薬は、初期治療から用いられることは推奨されておらず、既存の糖尿病薬にステップ3ないし4でadd-onされる位置付けの薬剤である。 冒頭のDr. Gerstein氏はADA 2019での発表を、「幅広い中年の2型糖尿病患者において、デュラグルチドは血糖・血圧・脂質そして体重などに改善をもたらし心血管イベントならびに腎イベントを安全に低減されることが示された」、として締めくくったと取材班は伝えている。しかし、著者を含め腎臓・高血圧専門医の大多数は、同剤が腎イベントに対して有効との発言には、いささか抵抗感がある。現時点ではREWIND研究の結果から、「2型糖尿病の腎イベントを改善する」、との推論はいかにも時期早尚であり、正確には、「2型糖尿病の新規のアルブミン尿発症抑制に関連する」にとどめるべきである。今後、多くの研究と議論の集積が必要である。

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オンコマインは4つのドライバー遺伝子を同時測定するコンパニオン診断システム

 肺がん治療においては、現在、4つのドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF)に対して分子標的薬が承認されている。6月1日、これら4つのドライバー遺伝子を少量の検体で同時に測定できるコンパニオン診断システム「オンコマイン Dx Target Test マルチCDxシステム」(以下オンコマイン)が保険収載された。6月10日に開催されたメディアセミナー(サーモフィッシャーサイエンティフィック/ノバルティス ファーマ共催)で、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院呼吸器内科長/サポーティブケアセンター長)が有効な治療薬を患者さんに届けることの重要性を強調した。ゲノム医療=遺伝子解析ではない! オンコマインの保険収載と同じ日に、がん遺伝子パネル検査であるFoundationOne CDxがんゲノムプロファイル(中外製薬)およびOncoGuide NCCオンコパネルシステム(シスメックス)も保険収載された。後藤氏は、一部のマスメディアがこれらの保険収載を報道する際に、遺伝子解析をすることがゲノム医療であるように報道していることについて、「ゲノム医療(「個別化医療」「Precision Medicine」とほぼ同義)とは、遺伝子解析に基づいて有効な治療薬を患者に届けることであり、遺伝子解析=ゲノム医療ではない。遺伝子検査ができても有効な治療薬が届かなければ、ゲノム医療とは言えない」と指摘した。オンコマインはコンパニオン検査、プロファイリング検査との違いは? 次に、遺伝子検査を理解するうえで知っておくべき重要なキーワードとして、後藤氏はコンパニオン検査とプロファイリング検査の2つを説明した。 コンパニオン検査は、治療薬と1対1対応になっており、陽性になれば承認された有効な治療薬が投与可能になる検査である。一方、プロファイリング検査とは、標準治療の完了後にさらなる治療の可能性を求めて行う検査で、治療は主に未承認薬である(臨床試験)。オンコマインは前者であり、がん遺伝子パネル検査であるFoundationOne CDxがんゲノムプロファイルおよびOncoGuide NCCオンコパネルシステムは後者である。後藤氏は「後者がゲノム医療の主体であるかのような報道があるがそうではなく、主体はコンパニオン検査であることを認識してほしい」と訴えた。 なお、オンコマインはがん遺伝子パネル検査とは異なり、がん診療を実施しているすべての医療施設で使用できる。 検査費用は、オンコマインは11万7,000円、がん遺伝子パネル検査はいずれも56万円(検査実施料8000点、検査判断・説明料4万8000点)である。後藤氏は、がん遺伝子パネル検査で遺伝子変異が判明しても、臨床試験に登録されていて治療が可能になるのは約5%しかないことを指摘し、「5%しか治療に結び付かない検査を国民皆保険制度の中で保険収載して、税金で賄っていくことについて、もっと検討すべきではないか」と見解を述べた。オンコマインは46種類の遺伝子検査が可能だが、4つのドライバー遺伝子のコンパニオン検査として承認 オンコマインは次世代シーケンスを用いた遺伝子パネル検査で、46種類の遺伝子検査が可能である。そのうち4つのドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF)の薬剤適応判定補助の目的で承認された。原則、この4種類の遺伝子の測定結果のみがレポートされ、残りの42種類については、医師から申し出があった場合に限り、例外的に参考情報として返却されるという。 現在、進行肺がんの治療開始前には、これらの4つのドライバー遺伝子を診断することが必須となっている。従来は別々に検査しなければならなかったが、オンコマインにより1回でまとめて検査できるようになり、短期間で検査できる。また、個々に遺伝子検査をすると最大33枚の標本スライドが必要であるが、オンコマインでは2~9枚で解析できる。後藤氏らの施設では、標本スライドをわずか2枚用いるだけでも約50%が解析可能であったという。 講演中、後藤氏はたびたび、患者さんに有効な治療薬を届けることの重要性を強調した。現在、治療薬が承認されている遺伝子変化を、少ない検体量と短い期間で、どの医療施設でも検査できるオンコマインによって、より早く、有効な治療薬が届くことが期待される。

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ASCO2019レポート 肺がん

レポーター紹介2019年のASCO、とくに肺がん領域は、このところ続いた免疫チェックポイント阻害薬による新境地の開拓の連続とは異なり、比較的おとなしいエビデンスの報告が主体であった。その中でも、RELAY試験の中川先生、JIPANG試験の劔持先生、COMPASS試験の瀬戸先生、そして大規模な外科切除データに基づく発表が注目された津谷先生といった日本人演者のOral presentationが多数報告され、活況を呈した。今回はその中から、とくに注目すべき演題について概観したい。RELAY試験EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの患者を対象に、試験治療としてのエルロチニブとラムシルマブの併用療法を標準治療としてのエルロチニブと比較したRELAY試験の結果が報告された。本試験には、Exon19欠失変異、Exon21 L858R変異があり、PS 0-1、血管新生阻害薬の一般的な適格規準を満たし、脳転移のない患者が合計449例登録された。主要評価項目はPFS、副次評価項目は安全性、OS、奏効割合などが設定されている。本試験はこれまでのEGFR-TKIと血管新生阻害薬の試験に比べ多数の症例が登録されており、また、アジア例が77%、そのうち日本人が多数を占めるという点も特徴的である。主要評価項目であるPFS中央値は、試験治療群で19.4ヵ月、標準治療群で12.4ヵ月、ハザード比は0.591(95%信頼区間0.461~0.760)であり、有意にエルロチニブ+ラムシルマブ併用群が良好な成績であった。探索的に実施されたPFS2の解析でも、ハザード比0.690(95%信頼区間0490~0.972)であった。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象が試験治療群で72%、標準治療群で54%報告されており、両者の違いは多くは高血圧であり、皮膚障害などの有害事象はCTCAE Gradeでは大きな違いを認めなかった。脳転移のない患者集団であることは考慮する必要があるものの、PFSの中央値でオシメルチニブのFLAURA試験と同等の結果が得られたことは、今後明らかになる全生存期間の解析に期待が持たれる結果であった。ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの患者を対象に、試験治療としてゲフィチニブとカルボプラチン+ペメトレキセド療法を併用する治療と、標準治療としてのゲフィチニブを比較するPhase III試験の結果が、インドから報告された。本試験には、Exon 19欠失変異、Exon 21 L858R変異があり、PS 0~2の患者が350例登録された。主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、安全性、奏効割合などであった。本試験に登録された患者の年齢中央値は50代半ばであり、PSに関しては2の患者が21~22%登録されており、わが国で実施されたNEJ009試験とは患者集団が異なる可能性が高い試験である。PFS中央値は試験治療群で16ヵ月、標準治療群で8ヵ月であり、ハザード比0.51(95%信頼区間0.39~0.66)と、良好な成績であった。OSについては試験治療群の中央値は到達しておらず、ハザード比は0.45(95%信頼区間0.31~0.65)であり、副次評価項目ながら併用療法群が良好な結果であった。NEJ009試験で話題となったゲフィチニブ、カルボプラチン+ペメトレキセド療法がPDとなった後のPSや腫瘍量などについての情報は開示されなかったものの、同様にOSを延長する結果が得られたことは評価に値する。ただ、FLAURA試験の結果でオシメルチニブが初回治療で注目されており、オシメルチニブを基本として今回と同様のデザインでどのような結果が得られるか、注目がさらに集まっている。JCOG1210/WJOG7813L試験75歳以上の高齢者を対象として、試験治療としてのカルボプラチン+ペメトレキセド療法と標準治療ドセタキセルと比較したPhase III試験である、JCOG1210/WJOG7813L試験の結果も報告されている。本試験には未治療、PS 0~1の75歳以上の非扁平上皮非小細胞肺がん患者433例が登録され、試験治療としてカルボプラチン+ペメトレキセド併用療法とその後の維持療法が、標準治療としてドセタキセル単剤療法が実施された。主要評価項目はOSの非劣性であり、非劣性マージンはハザード比で1.154に設定された。登録された患者の年齢中央値は78歳、試験治療群では最高87歳、標準治療群では最高88歳の高齢患者が登録されている。OSは中央値で試験治療群が18.7ヵ月、標準治療群が15.5ヵ月、ハザード比は0.850(95%信頼区間は0.684~1.056)であり、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法のドセタキセルに対する非劣性が証明された。安全性については、試験治療群で貧血が多い傾向にあり、標準治療群で白血球減少、好中球減少が多い傾向を認め、治療関連死はそれぞれ2例ずつ報告されている。FACT-LCを用いたQOL評価では、試験治療群が良いことが示されている。非劣性が証明され、かつ有害事象やQOLでも試験治療群が想定されたとおり良好な結果であったことを受け、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法とそれに続くペメトレキセド維持療法が、75歳以上の高齢者における標準治療と考えて問題ない結果であった。サブセット、フォローアップ今回、肺がん領域では、主たる結果が発表済みの試験においても盛んにサブセット解析、フォローアップ解析の結果が報告された。IMpower150試験は、進行期非小細胞肺がんにおいて、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブにアテゾリズマブを上乗せすることの優越性を示したPhase III試験である。本試験ではこれまでのベバシズマブを用いた試験の結果を受け、肝転移の有無が層別化因子に加えられていた。今回報告された肝転移の有無で分けられたサブセット解析では、肝転移を有する症例で、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法に対し、アテゾリズマブを加えることで、PFS、OSのハザード比がそれぞれ0.41(95%信頼区間0.26~0.62)、0.52(95%信頼区間0.33~0.82)と、いずれも明らかに改善していることが認められた。AACRでは、KEYNOTE189試験において、層別化因子には含まれていなかったものの肝転移の有無でのサブセット解析結果が報告されており、同様に肝転移症例でも有効であることが示されている。肝転移症例が予後不良であることはすでに報告されており、この患者集団においてもプラチナ併用療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の意義を示すエビデンスが積み重ねられている。一方、フォローアップデータとしては、KEYNOTE189試験のアップデート、PACIFIC試験のアップデート等が報告され、いずれも良好な傾向が維持されていることが示されている。なかでも注目を集めたのはLate breakingで報告されたKEYNOTE001試験の5年生存のデータである。KEYNOTE001試験は、ペムブロリズマブのPhase I試験であり、この中から同薬の安全性や至適投与量のデータだけでなく、PD-L1のTPSカットオフについての知見も得られている。今回報告された5年生存のデータでは、未治療患者、治療歴のある患者それぞれについて、PD-L1発現別のサブセットを含め長期生存のデータが評価された。5年生存割合は、未治療患者では23.2%、治療歴あるセカンドライン以降の患者では15.5%であった。すでにニボルマブの長期生存のデータが報告されており、既治療の患者集団での成績は大きく異ならない印象であった。一方、未治療の患者における23.2%の5年生存割合はこれまで報告されていなかった情報であり、初回治療から免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合の5年生存割合の新たな指標として受け止められる結果であった。PD-L1 TPS別の解析結果でも、PD-L1 50%以上の集団では、未治療、既治療問わず、5年生存割合が25%を超えるという驚くべき結果であった。ただし、Phase I試験のデータであるなど、対象となった患者集団は日常臨床の患者集団とは異なる、具体的にはより状態が良い可能性もあり、この結果が一般臨床でも再現されるかは、今後の追加情報を待つ必要がある。周術期治療NEOSTAR:術前のニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有効性と安全性を評価するPhase II試験である。本試験には、切除可能Stage I~IIIA(Single N2)症例44例が登録され、ニボルマブ単剤療法とニボルマブ+イピリムマブ併用療法にランダム化された。主要評価項目はMajor Pathologic Response(<10% viable tumor)とされた。両群併せて手術検体が得られた41例中10例(29%)、ニボルマブ単剤では20%、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法では43%でMPRが達成されていた。有害事象に関しては、ニボルマブ群1例でbronchopleural fistulaとそれに伴う肺臓炎による死亡例が報告されており、それ以外にも、肺臓炎、低酸素血症、低マグネシウム血症、下痢などがGrade 3の有害事象として報告されている。免疫チェックポイント阻害薬による術前導入療法については、本試験以外にも複数実施されており、注目が高まっている。評価手法として用いられたMPRについて、従来からあるpCRを含めた病理学的効果判定の意義や、長期生存のデータとの関連性等について今後さらなる解析が必要と考えられる。JIPANG:Stage II~IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がんの術後化学療法として、試験治療としてシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を、標準治療であるシスプラチン+ビノレルビン併用療法と比較したPhase III試験である。本試験には、完全切除後のpStage II-IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者804例が登録され、性別、年齢、pStage、EGFR遺伝子変異の有無、施設を層別化因子としてランダム化された。主要評価項目は無再発生存期間、副次評価項目はOS、安全性等とされ、優越性試験のデザインで実施された。無再発生存期間の中央値は、試験治療群で38.9ヵ月、標準治療群で37.3ヵ月、ハザード比は0.98(95%信頼区間0.81~1.20)であり、試験治療の優越性は証明されなかった。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象の発生頻度は、試験治療群で47.4%、標準治療群で89.4%であり、試験治療群がより良好な結果であった。確かに優越性は証明されなかったものの、有効性は大まかには同等といえ、かつ安全性においてもシスプラチン+ペメトレキセドが良好な傾向を示したことが、会場でも話題になっていた。分子標的薬今回のASCOではMET阻害薬のデータが複数報告された。capmatinibとtepotinibは従来からMET exon14 skipping変異に対する有効性が報告されており、今回もそのフォローアップならびに追加データが示された。capmatinibに関しては、MET amplificationに対しても開発が進められている。MET阻害薬の発表と同時に、クリゾチニブを中心としたMETに対するTKIの耐性機序についても小数例ながら報告が行われており、EGFR等と並んで耐性機序の克服についても将来的には課題となってくることが示唆された。EGFRについては、通常のEGFR-TKIでは効果が限定されるExon 20 insに対する治療薬である、TAK788のPhase I試験の有効性と安全性が報告された。一方、EGFR等Driver oncogeneに対する治療の耐性因子としてMETに対する治療開発も盛んであり、今回ADCであるTeliso-V、EGFRとc-METのbispecific抗体であるJNJ-61186372についても発表があった。EGFR遺伝子変異陽性患者におけるADCであるTeliso-Vとエルロチニブの併用療法、EGFRとc-METを標的とする抗体療法によって、EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける新たな治療戦略が開拓されることが期待されている。最初に記載したとおり、今回のASCO肺がん領域では、いくつかの重要なPhase III試験の結果発表とともに、免疫チェックポイント阻害薬による術前治療、新たな分子標的薬等、近い将来の標準治療の変革を示唆する情報が多数報告された。今後の各学会、来年のASCOに期待したい。

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