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プライマリ・ケアでのがん兆候症状と非がん診断

英国King’s College London School of Medicine一般診療/プライマリ・ケア部門のRoger Jones氏らは、プライマリ・ケアでのがん兆候症状と非がん診断に関するコホート研究を行った。兆候症状を呈している患者の大半が臨床的に意味ある診断を下されていると報告している。BMJ誌2009年8月29日号(オンライン版2009年8月13日号)掲載より。15歳以上の762,325例が参加Jones氏らは、プライマリ・ケアで定められている非がん・がん診断のための兆候症状の適中率を評価した。一般診療(GP)調査データベース(1994~2000年、GP128人から提供)を用いて行われたコホート研究は、15歳以上の762,325例が参加し行われた。主要転帰尺度は、事前に15の兆候症状を定めたうえで、非がん診断と4つの兆候症状(血尿、喀血、嚥下障害、直腸出血)との関連について、90日時点、最初の兆候症状が記録されてから3年後時点で調査した。各転帰の解析は、time to eventで別々に行われた。データは、患者が死亡・診療から外れた・試験期間終了に達したいずれかの時点で検閲された。血尿、喀血、嚥下障害、直腸出血のファーストエピソード例について解析血尿(11,108例)、喀血(4,812例)、嚥下障害(5,999例)、直腸出血(15,289例)のファーストエピソード例のデータについて解析が行われた。結果、兆候症状を呈した患者での非がん診断は、ごく普通に見られた。また、がんあるいは非がんいずれの診断率は、一般に年齢とともに増加していた。血尿症状がある患者の90日以内での、がん・非がん診断率は、女性で17.5%(95%信頼区間:16.4%~18.6%)、男性で18.3%(17.4%~19.3%)だった。その他の症状については、喀血例では、同25.7%(23.8%~27.8%)、24%(22.5%~25.6%)。嚥下障害例では、同17.2%(16%~18.5%)、22.6%(21%~24.3%)。直腸出血例では、同14.5%(13.7%~15.3%)、16.7%(15.8%~17.5%)だった。Jones氏は、「兆候症状を呈している患者では、高い割合で臨床的に意味ある診断を下されている。血尿、喀血、嚥下障害または直腸出血の症状を呈している患者群での合同診断評価には患者4~7人が必要である。また90日以内に1人の患者は、臨床的に意味ある診断が下されているようである」と結論している。

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インターフェロンγ1bは特発性肺線維症に無効

特発性肺線維症に対するインターフェロンγ1b治療は生存率を改善しないことが、アメリカCalifornia大学San Francisco校のTalmadge E King Jr氏らが実施した無作為化試験(INSPIRE試験)で示された。特発性肺線維症は、呼吸困難の増悪、肺容量の減少、ガス交換障害を特徴とする原因不明のびまん性実質性肺疾患で、診断後の生存率は2~5年と予後不良である。390例のメタ解析では、インターフェロンγ1bが重症例の死亡率を低減することが示唆されているという。Lancet誌2009年7月18日号(オンライン版2009年6月30日号)掲載の報告。9ヵ国から826例を登録、中間解析時の全生存率を評価INSPIRE試験の研究グループは、軽度~中等度の肺機能障害がみられる特発性肺線維症患者に対するインターフェロンγ1bの効果を評価する無作為化対照比較試験を行った。対象は、40~79歳、直近の48ヵ月以内に診断を受け、努力性肺活量予測値が55~90%、ヘモグロビン値で補正した一酸化炭素拡散能予測値が35~90%の患者とした。ヨーロッパ7ヵ国とアメリカ、カナダの81施設から特発性肺線維症患者826例が登録され、インターフェロンγ1b 200μgを週3回皮下投与する群(551例)あるいはプラセボ群(275例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、死亡率が予測の75%に達した時点で実施される第2回目の中間解析で算出された割り付け時からの全生存率とした。以前の試験のサブグループ解析に反する結果第2回中間解析におけるインターフェロンγ1b群のプラセボ群に対する死亡率のハザード比は1.15(p=0.497)で、最低限のベネフィットが達成されなかったため試験は中止すべきとされた。治療期間中央値は64週であり、インターフェロンγ1b群の80例(15%)、プラセボ群の35例(13%)が64週以降に死亡した。ほぼ全例が1回以上の有害事象を報告し、インターフェロンγ1b群では全身性の徴候や症状(インフルエンザ様疾患、疲労感、発熱、悪寒)がプラセボ群に比べ高頻度にみられた。重篤な有害事象(肺炎、呼吸不全など)の頻度は両群で同等であった。アドヒアランスは良好で、両群とも早期の治療中止例はほとんどなかった。著者は、「軽度~中等度の生理学的な肺機能障害を有する特発性肺線維症の治療では、インターフェロンγ1bは生存率を改善しないため推奨されない」と結論し、「以前に実施された試験のサブグループ解析では、インターフェロンγ1bは生存率を改善するとの知見が得られているが、本試験の結果はこれに反するものである。サブグループ解析や探索的検討の結果を検証する作業の重要性が改めて確認された」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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段階的弾性ストッキングは脳卒中後の深部静脈血栓を予防しない

大腿部までの長さの段階的弾性ストッキング(GCS)の着用は、脳卒中後の深部静脈血栓(DVT)のリスクを低減しないことが、イギリスEdinburgh大学臨床神経科学部のMartin Dennis氏らが実施した無作為化試験(CLOTS 1)によって明らかとなった。脳卒中後は一般にDVTや肺塞栓症が見られるが、手術を受けた患者を対象とした小規模な試験においてGCSによるDVTリスクの低減効果が確認されている。エビデンスとしては十分でないにもかかわらず、脳卒中ガイドラインはこれらの知見を外挿して脳卒中患者に対するGCSの使用を推奨している。Lancet誌2009年6月6日号(オンライン版2009年5月27日号)掲載の報告。GCSのDVT低減効果を検証する無作為化対照比較試験CLOTS(Clots in Legs Or sTockings after Stroke)1の研究グループは、大腿部までの長さのGCSによる脳卒中後のDVTの低減効果について評価するための無作為化対照比較試験を行った。2001年3月~2008年11月までに、イギリス、イタリア、オーストラリアの64施設から急性脳卒中発症後1週間以内に入院し、活動不能な状態の患者2,518例が登録された。これらの患者は、中央無作為化システムによってルーチン治療と大腿部までのGCSを着用する群(1,256例)あるいはルーチン治療のみを施行しGCSは使用しない群(1,262例)に割り付けられた。登録後7~10日および25~30日に、治療の割り付けを知らされていない技師によって両足の圧迫Doppler超音波検査が施行された。主要評価項目は、膝窩静脈あるいは大腿静脈の症候性、無症候性のDVTの発現とした。DVT予防効果はなく、皮膚有害事象が有意に多いすべての患者が解析の対象となった。主要評価項目の発現率は、GCS使用群が10.0%(126/1,256例)、GCS非使用群は10.5%(133/1,262例)であり、絶対リスク低減率は0.5%と有意な差は認めなかった。皮膚の裂傷、潰瘍、水疱や皮膚壊死の頻度は、GCS非使用群の1.3%(16/1,256例)に対しGCS使用群は5.1%(64/1,262例)と有意に高かった(オッズ比:4.18、95%信頼区間:2.40~7.27)。これらの結果により、著者は「急性脳卒中による入院患者に対して、DVTの予防を目的とした大腿部までの長さのGCSの着用は支持されない」と結論し、「脳卒中ガイドラインは、本試験の知見に基づいて改訂を検討すべきであろう」としている。(菅野守:医学ライター)

384.

貧困層を対象としたメキシコの国民皆保険制度の初期評価

メキシコで貧困層を対象に進められている国民皆保険制度「Seguro Popular」の初期評価において、本プログラムは開始当初は成功したとみなし得ることがわかった。医療システムを再編しても、貧困層には質の高い医療を提供できないことが多いという。メキシコでは、この欠点を回避すべく、巨額な医療費の低減を主目的とする再編計画として、2003年にSeguro Popularが導入された。アメリカHarvard 大学定量的社会科学研究所(IQSS)のGary King氏が、Lancet誌2009年4月25日号(オンライン版2009年4月8日号)で報告した。100クラスターを対象としたmatched-pair法による無作為化試験Seguro Popularは未加入者5,000万人に健康保険を提供し、定期的な予防医療や投薬などが受けられるようにすることを目的としている。研究グループは、その初期的な有効性について評価するために、matched-pair法によるクラスター無作為化試験を実施した。メキシコの7州に居住する11万8,569世帯から成る148のクラスター(医療施設の担当地区など)から100クラスター(3万2,515世帯)を選択し、50クラスターずつのペアを無作為に対照群あるいは介入群に割り付けた。2005年8~9月にベースライン調査を行い、10ヵ月後(2006年7~8月)にフォローアップ調査を実施した。介入群のクラスターでは、Seguro Popularへの加入を奨励するキャンペーンを実施し、プログラムが効果的に実行されるよう医療施設の改善や医療従事者、薬剤供給の拡充を図った。intention-to-treat(ITT)解析および介入による平均因果効果(CACE)の解析を行った。より長期のフォローアップ試験が必要ITT解析では、破局的出費(健康関連の支出が、最低限の食費を差し引いた支払い能力を30%以上超過した場合)が10ヵ月後にはベースラインに比べ23%低減し、より貧困な世帯では30%の低減効果が得られた。自己負担費用については、ITT解析およびCACEとも、より貧困な世帯で効果が高かった。しかし、以前の観察研究や当初の予想に反して、薬剤費、転帰、利用状況の改善効果は認められなかった。著者は、「プログラムのリソースは貧困層の元に届いていた。しかし、おそらく10ヵ月という短い介入期間ゆえに、プログラムのそれ以外の効果は示せなかった」と結論し、「Seguro Popularは開始当初は成功したとみなし得るが、プログラムの長期的効果を確定するには、より長期にわたる評価期間を設けたフォローアップ研究を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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総合周産期センター等の医療機関における労働環境に関して、全国医師連盟が見解を発表

先週、愛育病院が労働基準監督署が求める夜勤体制の確保が困難であることを理由に、東京都に総合周産期母子医療センターの返上を申し出ていた問題が報じられたが、これに関連して全国医師連盟は以下の見解を発表した。「総合周産期センター等の医療機関における労働環境」についての見解平成21年3月25日、恩賜財団母子愛育会・愛育病院(中林正雄院長)が、・時間外労働に関する労使協定(労働基準法第36条に基づく、いわゆる36協定)を結ばずに医師に時間外労働をさせた・必要な休息時間や休日を与えなかった・時間外労働に対して割増賃金を与えていなかったとして、労働基準法違反で是正勧告を受けていたことが報じられました。また、同日、日本赤十字社医療センター(幕内雅敏院長)に対しても、・36協定を締結していなかった・職員の休憩時間が短かった・昨年10月に研修医の宿直業務について時間外労働時間に対する割増賃金を払っていなかったとして、労働基準監督署から指摘を受けていたことが報じられました。両医療機関においては、違法な労働環境が日常的に放置され、医療従事者の労働安全が損なわれていました。これは、妊産婦・新生児・患者に対しても大きなリスクになっており、看過することは出来ません。医師の長時間労働が患者の安全を脅かすことは、江原朗の論文によって示されており(Ehara A. Are long physician working hours harmful to patient safety? Pediatr Int2008;50:175-178)、労働法規上の規制だけでなく、医療安全上の観点からも許容されるものではありません。厚生労働省労働基準局は、平成15年に医師の宿日直実態を問題視し、約600の医療機関に対して監督を実施しました。しかし、今なお多くの医療機関において、労働基準法および労働安全衛生法に違反する状態が続いており、今回の是正勧告も決して一部の病院だけのことではなく、氷山の一角にすぎないことを認識すべきだと思われます。さらに、今回、総合周産期母子医療センターにおける夜間の勤務時間が、労働基準法第41条にいう「宿直勤務」(労働時間には算定されない)に該当せず、法律上は賃金支払い義務のある通常の「労働時間」に他ならないと指摘された事実は重要です。全国医師連盟執行部は、全国の医療機関管理者に対し、今回の是正勧告を真摯に受け止めて、労働法令を遵守した勤務体制を確立するよう、強く求めます。現在、過酷な労働環境にある基幹病院において、医師の退職が相次いでいることは、各種報道により明らかになりつつあります。しかし、より重要な事実として、医療現場での違法な労働環境が長年放置されている事は、世間一般に報じられないことはもとより、医療界内部ですら問題として取り上げられてきませんでした。それ故に、医療機関における違法な労働環境の指摘と是正指導に着手した所轄労働基準監督署と、それを報道したメディアを強く支持します。全国医師連盟執行部では、今回の出来事の背景には、地域での充実した周産期医療や救急医療を期待されても、それに対応出来る充分な助成補助や診療報酬の配分を受けられるしくみが整えられていないため、医療機関の採算性が悪化し、慢性的な赤字に追い込まれている現実があると認識しています。時間外診療やより安全な診療を提供するには、お金も人手もかかるものなのです。 そこで、違法かつ過重な労働時間を解消するために、次の2点が速やかに改善されるよう希望します。・医療従事者の待遇改善と必要数の確保・周産期、救急医療などに関わる医療機関に対する財政的支援の強化また、法に定められた最低限の労働環境すら確保しようとしない医療機関に対しては、厚生労働省労働基準局ならびに地方労働局と所轄の労働基準監督署が、厳正な法令解釈で是正指導に臨むことを支持し、悪質事例については刑事立件化も含めて積極的に対処することにより、医療機関における労働環境が真に適正化されることを期待しています。 平成21年3月30日 全国医師連盟執行部

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クレストールが心血管イベント発症リスクを大幅に減少する ~JUPITER試験結果より~

塩野義製薬とアストラゼネカは11月10日、アメリカ・ニューオーリンズで開催されている2008年米国心臓協会(American Heart Association)学術集会でJUPITER(ジュピター)試験が9日、Late Breaking Clinical Trials Sessionにて発表されたことを伝えた。JUPITER試験は、LDL-Cは正常か低値であるものの炎症マーカーとして知られている高感度CRPが高値の、心血管疾患リスクを有する男女を対象にクレストール(ロスバスタチン)の1次予防効果を検討したもの。クレストール20mg/日投与群ではプラセボ投与群に比べて、わずか1.9年(中央値)という短い試験期間で、一次エンドポイントの心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、血行再建術施行、入院を要する不安定狭心症および心血管死の複合リスク)の発症が44%(p

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患者や治療の違いがP4Pの格付けに関連

米国で医療に導入されたインセンティブ「治療成績に応じた医療費の支払い」(pay-for-performance:P4P)について、病院プロセス・パフォーマンスランキング(hospital process performance rankings:病院ランキング)との関連を調べていたデューク大学病院(ノースカロライナ州)のRajendra H. Mehta氏らは「各医療機関の患者の特徴や治療の違いが、P4Pの格付けと病院ランキングに関連することが示された」と報告した。JAMA誌2008年10月22日号より。はじめに病院ランキングを分析2000年1月2日~2008年3月28日まで、米国心臓病協会(AHA)ガイドラインデータを用いて、メディケア・メディケイド・サービスセンターが定義した急性心筋梗塞の基準に基づく病院プロセス・パフォーマンスを分析した。各病院はまず、複合プロセス・パフォーマンスに基づいてランク付けされ、さらに階層モデルを用いた患者の人口統計学的実態と臨床的特徴の評価によって再び順位付けられた。その後、病院ランキングと、P4Pの経済的インセンティブ区分(上位20%、中位60%、下位20%)の違いを比較した。主要評価項目は、病院ランキングとP4Pのインセンティブ区分とした。449施設の急性心筋梗塞患者14万8,473例を検証最終的に449施設の急性心筋梗塞患者計14万8,472例について検証された。急性心筋梗塞に対する複合パフォーマンスが五分位数で最下位だった病院(n=89)は、小規模な非学術的施設であり、少数民族・人種の患者の比率が高く、五分位数で最上位の病院(n=90)に比べ複数の疾患を併せ持つ患者が多かった。観察と複合スコア補正(加重:0.74)に基づく病院ランキングは全体的に合意されたが、個々の病院ランキングは補正(中央値:22位、範囲:0~214、四分位領域:9~40)によって変化した。全施設のうち16.5%(n=74)は、患者と治療機会を考慮した後、P4Pの区分を変えていた。Mehta氏は「医療機関ごとに患者の特徴や治療機会の違いなどを考慮することが、心筋梗塞治療のP4Pプログラムにおける経済的利益の格付けと、病院ランキングの適度な変化に関連することが示唆された」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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同級生に影響力をもつ生徒の教室外での働きかけが、青少年の喫煙を抑制する

同級生に影響力をもつ生徒が教室外で友人に喫煙しないよう働きかける喫煙予防プログラムの有効性が確認された。青少年期の喫煙が中高年期における喫煙関連疾患への罹患、死亡をもたらすが、ニコチン依存症は青少年期に急速に確立されることを示すエビデンスがある。多くの国では学校が喫煙予防プログラムを行っているが、友人の働きかけによるアプローチの多くが教室内に限定されており、厳密な評価は少ないという。英国Bristol大学社会医学科のR Campbell氏がLancet誌2008年5月10日号で報告した。influential studentの働きかけによる喫煙抑制効果を評価研究グループは、中学校における喫煙予防を目的とした友人の働きかけによる介入の効果を評価するためにクラスター無作為化対照比較試験を実施した。対象は、イングランド/ウェールズの59校に通学する12~13歳の生徒1万730人。29校(5,372人)が通常の禁煙教育を継続する対照群に、30校(5,358人)が介入群に無作為に割り付けられた。介入法はASSIST(A Stop Smoking In Schools Trial)プログラムと呼ばれ、教室外での形式張らない交流の際に、友人が喫煙しないよう働きかける支援者として行動する生徒(influential student)を養成するものである。フォローアップは介入直後、1年後、2年後に実施した。ASSISTプログラムにより、喫煙率が22%低下対照群の学校に比べ、介入群の学校の生徒が喫煙者となるオッズ比は、介入直後(9,349人)が0.75(95%信頼区間:0.55~1.01)、フォローアップ1年後(9,147人)が0.77(0.59~0.99)、2年後(8,756人)が0.85(0.72~1.01)であった。高リスク群(ベースライン時に非習慣的喫煙者、試行的喫煙者、元喫煙者とされた群)のオッズ比は、介入直後(3,561人)が0.79(0.55~1.13)、フォローアップ1年後(3,483人)が0.75 (0.56~0.99)、2年後(3,294人が)0.85(0.70~1.02)であった。3回のフォローアップの全データを用いたマルチレベルモデルによる解析では、対照群の生徒に比べ介入群の生徒が喫煙者となるオッズ比は0.78(0.64~0.96)であり、介入群で22%低かった。Campbell氏は、「ASSISTプログラムを地域住民ベースで実施した場合、公衆衛生学的に重要な青少年の喫煙を低減できることが示唆された」と結論し、「このプログラムを毎年継続的に繰り返せば、学校全体の喫煙行動を取り巻く文化的規範に影響を及ぼし、介入の効果を増強する可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

389.

PCI後のスタチン投与は、糖尿病例で、高い心血管イベント抑制率を示す

冠動脈インターベンション(PCI)後のスタチン投与が、心血管イベントの発症に与える影響を、糖尿病例と非糖尿病例のそれぞれに対し検討した試験の結果が、日本循環器学会総会・学術集会のLate Breakingにおいて発表された。発表者は、小島淳氏(熊本大学循環器病態学)。これまで、①糖尿病例に対するPCIは、非糖尿病例に比較し予後が悪いこと ②PCI施行後のスタチン投与は、フルバスタチンを用いたLIPSにより心血管イベントを抑制することが報告されていること ③糖尿病例へのスタチン投与は、アトルルバスタチンを用いたCARDSにより、心血管イベントの発症を抑制すること 等がわかっている。そこで、今回小島氏らは、PCI後のスタチン投与が、心血管イベントの発症に与える影響を、糖尿病例と非糖尿病例のそれぞれに対し検討した。試験で用いられたスタチンの用量は我が国の標準用量で、薬剤の内訳は、プラバスタチン約50%、アトルバスタチン約40%であった。試験終了時LDL-Cは100mg/dL未満に低下した。一次エンドポイントであった心血管イベント(MACCE)は、糖尿病例では、スタチン投与により相対リスクが66%減少し(p=0.002)、非糖尿病例では、24%減少したが、有意差は認められなかった。特に糖尿病例へのスタチン投与は、NNTが8となり、高い効果を示した。この試験により、正常なコレステロール値を持つ糖尿病患者に対し、PCI後に、我が国の標準用量のスタチンを処方することは、非糖尿病例に比較し、高い臨床的ベネフィットをもたらすことが示された。そして、小島氏は、糖尿病例と非糖尿病例の心血管イベント発症抑制作用の違いには、スタチンの糖尿病例へのPleiotropic effectがひとつの原因ではないか、と考察した。(ケアネット 鈴木 渉)

390.

アトルバスタチンとピタバスタチンに、日本人のACS例におけるプラーク退縮作用が確認される(日本循環器学会)

3月28日、注目を集めていたJAPAN-ACSの結果が、木村剛氏(京都大学循環器内科学)により日本循環器学会総会・学術集会Late Breakingにおいて、発表された。JAPAN-ACSは、急性冠症候群(ACS)307例を対象にアトルバスタチン20mg(154例)、または、ピタバスタチン4mg群(153例)に無作為割付し、8~12ヵ月間の投与後、プラーク容積の変化を比較検討した試験である。これまでにも、ストロングスタチンによる積極的な脂質低下療法が、冠動脈疾患既往例の心血管イベントを抑制することや、プラークを退縮させることは発表されていた。そして、アトルバスタチンでは、ESTABLISH試験により、日本人のACS例におけるプラーク退縮作用も既に確認されている。しかし、その規模が少人数を対象とした試験で、一施設のデータであったことなどから、医師主導の大規模な多施設試験が行われた。JAPAN-ACSでは、8~12ヵ月の投与後いずれの脂質プロファイルにおいても、ピタバスタチン群とアトルバスタチン群で有意な差は認められなかった。一次エンドポイントであるプラーク容積は、ピタバスタチン群で、-16.9(±13.9)、アトルバスタチン群で、-18.1(±14.2)と、両群ともに、プラーク退縮が認められた。また、ピタバスタチンのアトルバスタチンに対する非劣性が認められた。さらに、安全性の面でも、両群間に有意差が認められなかった。JAPAN-ACSで、新たに興味深いデータとなったのは、LDL-Cの減少率と、プラーク退縮の間に相関関係が認められなかった点である。この点に注目し、多変量解析した結果、糖尿病の有無、ベースラインのプラーク容積、ベースラインのRLP-C(レムナント様タンパク)値に相関が認められた。特に、糖尿病例では、非糖尿病例に比べプラーク退縮率が約65%と低かった。今後、JAPAN-ACSの詳細なデータ解析が実施され、様々な報告が行われる予定である。(ケアネット 鈴木 渉)

391.

医療サービス開発への患者の参画は、質の改善をもたらすか

医療サービスの開発に患者や地域社会が参画すれば、よりよいサービスがもたらされアウトカムが改善すると考えられているが、サービスの質や有効性に対する患者参画の効果を示すエビデンスは少ないという。今回、ロンドン市で実施された脳卒中医療サービスの近代化プログラムにおける検討で、医療サービスの開発に患者が参画しただけではサービスの質は改善しないことが示された。英国King’s College LondonのNina Fudge氏がBMJ誌2008年2月9日号(オンライン版1月29日号)で報告した。日常診療への患者の参画に影響を及ぼす因子を同定する本試験は、患者参画の施策が医療サービス機関にどう受け止められるかを把握し、日常診療への患者の参画に影響を及ぼす因子の同定を目的とした民族誌的研究である。対象は、ロンドン市の2つの特別区における脳卒中医療サービスの改善を目的とした近代化プログラムに参画した医療サービスの利用者(患者)、国民保険サービス(NHS)のマネージャーおよび医師であった。調査は、参加者との協議、インタビュー、記録文書に基づいて行われた。医療従事者と患者は異なる方法で患者参画を理解し、実践している患者のプログラムへの参画は医療従事者が先導しており、患者が参画するサービス改善の領域も医療従事者が決めていた。患者同士が提供し合うサポートに関する満足度調査では、広範な活動領域で「患者の参画」が期待されていた。参画が最も活発であったのは、技術的な要素が少ない領域および医師からの指示がほとんどない領域という傾向がみられた。これを説明しうる因子として以下が確認された。1)組織構成、2)患者参画という概念のあいまいさ、3)患者の経験的知識に対する高い評価、4)参画に対する医療従事者と患者の理解および意欲のばらつき。参画の利益を医療サービスに及ぼす影響の観点から確認するのは困難であったが、参画によって得られる個人的な利益は明確だった。すなわち、医療従事者に話を聞いてもらうことで得られる満足感、同様の境遇にいる他者と会う機会、脳卒中および利用可能なサービスに関する知識の増加などである。以上の結果をふまえ、Fudge氏は「患者の参画によって自動的に医療サービスの質が改善されるわけではない。医療従事者と患者は、個人的なイデオロギー、生活環境、必要性に従い異なる方法で患者参画を理解し、実践している」と結論する。また、「医療サービス開発への患者参画の取り組みにおける開発の手がかり(resource implications)を考慮すれば、それを求めるに足るベネフィットに関するより優れたエビデンスだけでなく、参画の目的に関しても批判的な議論を行う必要がある」と考察している。(菅野守:医学ライター)

392.

救急外来受診例の約半数に深部静脈血栓リスク。予防は不十分

救急外来を受診後入院例で、外科的治療の適応となった患者の6割以上、内科的治療適応例の4割以上が、深部静脈血栓(DVT)のリスクを有しているが、それらのうち深部静脈塞栓(DVE)の予防措置を受けていたのは50.2%だった──とする国際的横断研究の結果がLancet誌2008年2月2日号に掲載された。研究の名称はENDORSE(Epidemiologic International Day for the Evaluation of Patients at Risk for Venous Thromboembolism in the Acute Hospital Care Setting)。King’s College Hospital(英国)のAlexander T Cohen氏らによる論文である。32ヵ国7万例弱で検討本研究には世界32ヵ国の358施設(50床以上)で救急外来を受診し入院した68,183例が登録された。内訳は、内科的治療を受けた40歳以上の37,356例と外科的治療の適応となった18歳以上の30,827例である。入院後、DVTリスクが調べられた。リスク評価には、米国胸部疾患学会(ACCP)が2004年刊行した「静脈血栓塞栓予防」ガイドラインを用いた。予防が行われていたのは外科的治療例58.5%、内科的治療例39.5%その結果、外科的治療例の64.4%、内科的治療例の41.5%にDVTリスクが認められた。東南アジアから唯一参加していたタイのリスクも世界平均と同様で、DVTリスクを認めた患者は、外科62%、内科49%だった。次に、これらのDVTリスクを認める患者において、上記ACCPガイドラインが推奨する深部静脈塞栓(DVE)の予防が行われていた割合を見ると、外科的治療58.5%、内科的治療39.5%だった。これらよりCohen氏らは、DVTリスクを持つ入院患者は多いにもかかわらず、適切な予防措置がとられていないと結論している。なお、上記ACCPガイドラインでは手術後「DVT低リスク」群に対しては、「早期からの“積極的”歩行」を推奨するが特にDVE予防措置をとる必要はないとしているが、本研究では術後「低リスク群」の34%が何らかの「予防措置」を受けていた。(宇津貴史:医学レポーター)

393.

COPDの予後に対する医師の悲観的な予測が、必要な入院治療を損なう

イギリスでは毎年約3万人がCOPDで死亡している。COPDの増悪には人工呼吸器が有用だが、挿管にはICUへの入院を要する。一方、医師はICUに入院したCOPD患者の予後を必要以上に悲観的に予測する傾向にあることが示されている。入院は医師の予後診断によって決まるため、入院すべき患者が挿管のためのICU入院を否認されている可能性がある。 Northern General Hospital(イギリス、シェフィールド)のMartin J. Wildman氏らは、COPDの重篤な急性増悪に対する医師の予後診断と、実際の生存アウトカムを比較するプロスペクティブなコホート研究を行った。BMJ誌11月1日付オンライン版、12月1日付本誌掲載の報告。ICU退室時、退院時、180日後の生存を予測対象はCOPD、喘息、COPD/喘息併存の増悪による息切れ、呼吸不全、精神状態の変化がみられる45歳以上の患者とした。2002年3月~2003年9月の間に92のICUおよび3つの呼吸器高度治療室(RHDU)に入院した832例が試験に登録された。医師は入院時に、当該患者のICU/RHDU退室時、病院退院時、入院から180日後の生存について尋ねられた。180日後の生存はGPを通じて確認し、国立統計局を通じて確定した。予測180日生存率は49%、実際は62.1%実際の退室時生存率は80.9%、退院時生存率は70.2%であった。入院から180日後に517例が生存しており、生存率は62.1%であったのに対し、医師による平均予測180日生存率は49%であった。予後の良好度を5段階に分けた場合に、最も不良な予後が予測された患者群の予測180日生存率は10%であったが、実際の生存率は40%であった。10段階に分けた場合に最も予後が不良とされた患者群では、医師の予測生存率は3%にすぎなかったが、実際の生存率は36%であった。試験に参加したICU/RHDUと参加しなかったICU/RHDUの設備は同等であり、同一施設で試験に登録された患者と登録されなかった患者の背景に差はなかった。イギリスの悲観主義的な文化的背景が影響かWildman氏は、「COPD患者、喘息患者の挿管のためのICU入院は、医師の予後診断によって決まるため、入院していれば生存が可能であった症例が根拠のない悲観的な予後予測が原因で入院を否認されている可能性がある」と結論している。また、同氏は「イギリスの悲観主義的な文化が、COPD患者のトリアージにおける医師の意思決定(decision making)をゆがめている可能性がある」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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「スパイ事件だから私は大丈夫」リトビネンコ事件後の健康リスク意識

2006年11月にロンドン中心部で発生したポロニウム-210(210Po)によるリトビネンコ氏毒殺事件後、ロンドン市民の毒物曝露リスクへの関心は低かったという。この事実は、公衆衛生にかかわる事故発生の最中に、一般市民にそのリスクの詳細を包括的かつ効果的に伝えることの重要性を改めて浮き彫りにした。 King’s College London(ロンドン大学)精神科のG. James Rubin氏らは、当該事件後に健康リスクに関する一般市民の意識調査を実施、公衆衛生学的な情報伝達(public health communications)の評価を行った。BMJ誌11月1日付オンライン版、12月1日付本誌掲載の報告から。健康リスクを意識した市民は11.7%にすぎないロンドン市民1,000人を対象に横断的調査を行い、毒物曝露の可能性があった86人に質的インタビュー(qualitative interview)を実施した。210Po事件後、個々人が自らの健康リスクをどう認識したかを調査し、質的インタビューでは情報ニーズをどの程度重視しているかを解析した。横断的調査で、「自分の健康が危険にさらされている」と認識していたのは117人(11.7%)であった。健康リスクを意識した主な予測因子は、「これはスパイ事件ではなくテロリズムだ」という思いこみであった(オッズ比:2.7)。これは、テロリズムのターゲットが一個人ではなく広く公衆一般だからであり(オッズ比:5.9)、汚染地区にいなかった人々の認識に影響を及ぼしていた(オッズ比:3.2)。包括的で詳細な曝露リスク情報へのアクセスが重要質的インタビューを受けた者は全般に、得られた情報には満足していたが、個人的な曝露のリスク、尿検査の結果、事件が健康に及ぼす影響についてもっと多くの情報を望んでいた。Rubin氏は、「2006年、ロンドンで起きた210Po事件後のロンドン市民の健康リスクへの関心は低かったが、これは汚染がスパイ活動に関連したものでターゲットは公衆一般ではなく、曝露されなかった市民にリスクはないと認識したためだ」と結論している。また、「将来、起きるであろう事故の際は、曝露のリスクに関する包括的で詳細な情報への自在なアクセスを保障することが重要だ」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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ワクチン接種は疾患発現減少に功を奏したか?

アメリカにおける全国的なワクチン接種プログラムの勧告は、対象疾患発現の減少、排除または根絶を目標に行われている。その目標は果たされているのか。CDC(疾病予防管理センター)のSandra W. Roush氏らワクチン予防接種専門調査委員会(Vaccine-Preventable Disease Table Working Group)は、2005年までに行われてきた13疾患対象の予防的なワクチン接種について、勧告・実行前後の罹患率および死亡率の比較を行った。JAMA誌11月14日号掲載の報告から。ワクチン対象13疾患の死亡率、罹患率を過去と現在で比較検証された13ワクチン対象疾患は、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、はしか、耳下腺炎、風疹(先天性風疹症候群を含む)、侵襲性のインフルエンザ桿菌b型(Hib)、急性B型肝炎、A型肝炎、水痘、肺炎球菌性肺炎と天然痘。ワクチン勧告前の基線データは、主要なデータソースからの代表的・歴史的に有名なデータとし、それらと直近の罹患率(2006年)、死亡率(2004年)とを比較した。主要評価項目は、疾患発現の症例数、死亡数と疾患による入院数。症例数は最低を記録するに至っているジフテリア、耳下腺炎、百日咳、破傷風は、1980年以前の状況よりも、ワクチン接種の勧告・実行によって、症例数は92%以上減少、死亡数は99%以上減少していた。地域流行性のポリオウイルス、はしか、風疹の伝染は、米国内では排除された。天然痘は、世界的に根絶に至っている。A型肝炎、急性B型肝炎、インフルエンザ桿菌b型、水痘を含む1980年以降にターゲットとされてきた大半のワクチン接種対象疾患については、症例数、死因数とも80%以上減少していた。侵襲性の肺炎球菌性肺炎は症例数は34%、死因数は25%減少していた。委員会は、「大部分のワクチン接種で予防可能とされる疾患の症例数は、最低を記録するに至っている。入院および死亡についても、減少は著しい」と述べ、ワクチンはバイオメディカルおよび公衆衛生の最も偉大な業績の1つであり、今後もワクチン開発・資金調達・調査・評価・配布に努力していくべきと結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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Dr.齋藤のハワイ大学式スーパートレーニング

1.Essentials of Clinical Problem Solving2.Tips for History Taking & Physical Examination3.Nuts & Bolts of Case Presentation & Discussion4.Disclosure of Case, Strategic Inquiry & Reasoning Case#1 第1回「Essentials of Clinical Problem Solving」第1回は入門編として、臨床問題を発見、検討、そして解決するための手順とルールに焦点を当てます。また、アメリカ人と日本人の思考方法の違いを文化的側面から捉え直すことで、日本的思考の長所をさらに伸ばし、短所を長所に変える逆転発想法も指南します。あらゆる可能性を洗い出して、いかに分析し適切な診療の実践につなげるか。少人数グループによる臨場感溢れるセミナーを丸ごとお届けします!第2回「Tips for History Taking & Physical Examination患者さんの病歴と身体所見(History Taking & Physical Examination)を取るために必要な、手順と知識を分析していきます。その上で、参加者自らの経験や実際に出会った患者さんの具体例をお互いにシェアして、臨床問題の解決に必要なアプローチとその基本的構造を一緒に検討します。第3回「Nuts & Bolts of Case Presentation & Discussion症例を検討するにあたって、その症例をいかに提示するか(Case Presentation)。そして、提示された症例をどのように構造化して議論を進めるか(Case Discussion)。今回は、その技術と方法を具体的に学びます。また、番組後半では「Evaluation & Feedback」として、セミナー初日の内容を参加者全員で評価し、問題点を討論します。文化的背景から、多くの日本人が苦手とするこれらのアプローチを身につけることで、さらなるステップアップを図りましょう。第4回「Disclosure of Case,Strategic Inquiry & Reasoni今回から実践編として、3つの救急症例を具体的に検討していきます。最初のケースは、深夜に救命救急室を訪れ、強い頭痛を訴える33才男性の症例です。患者さんの病歴と身体所見を論理的に分析しながら有効なアプローチについてディスカッションを展開します。また、同様の症状を66歳男性が訴えている場合、鑑別診断にどのような違いが生じるかも考えていきます。

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救急医療隊員による病院到着前の治療介入が軽症高齢患者のアウトカムを改善

救急医療隊員は、訓練によって病院外で創傷、低血糖、転倒、鼻出血など広範な病態をトリアージして、治療あるいは照会できるようになる。また、地域社会において広範な保健医療やプライマリケアによるアウトリーチの役割を実現するには、特に地方などでは病院前救護活動(pre-hospital practitioner working)が有益なことが指摘されている。一方、救急部受診者の12~21%を高齢者が占め、そのほとんどが偶発事故や転倒である。 そこで、Suzanne Mason氏(イギリス・シェフィールド大学保健サービス研究科)らは、軽症疾患の高齢患者の評価および治療における、訓練を受けて技術が向上した救急医療隊員の役割を評価するための検討を行った。BMJ誌10月4日付オンライン版、11月3日付本誌掲載の報告。救急医療隊員による治療群と非治療群を比較するクラスター無作為化試験本研究は56週をクラスターとする無作為化対照比較試験である。試験開始前に、訓練を受けた救急医療隊員が救急サービスを要請した患者に治療を行う週(介入群、30週)と治療を行わない週(対照群、26週)を無作為に決定した。対象は、2003年9月~2004年9月の間に電話で救急サービスを要請した60歳以上の高齢患者3,018例(介入群:1,549例、対照群:1,469例)。主要評価項目は、day 0(発症日)~28の期間における救急部受診者数および入院患者数、電話要請から治療終了までの期間(疾患継続期間)、サービスに対する患者の満足度とした。介入群ですべての主要評価項目が有意に改善救急部受診者数は、対照群の87.5%に比し介入群は62.6%と有意に減少し(相対リスク:0.72、p<0.001)、入院患者数も対照群46.5%、介入群40.4%と有意に減少した(相対リスク:0.87、p<0.001)。ケアに対する患者満足度は、「たいへん満足」と答えた患者の割合が対照群の73.8%に比べ介入群は85.5%と有意に上昇した(p<0.001)。平均疾患継続期間は対照群の278分に対し介入群235分と約42分短縮した(p<0.001)。技術が向上した救急医療隊員による治療は、臨床的に有効な新たな選択肢Mason氏は、「技術が向上した救急医療隊員は、軽度疾患の急性期にある高齢患者に対して、標準的な救急車搬送や救急部での治療に代わる臨床的に有効な新たな選択肢をもたらす」と結論している。また、同氏は「この新たな救急サービスは、28日後のアウトカムおよび死亡率が対照群と同等であり、安全性にも問題はないと考えられる」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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米国心臓学会において「HIJ-CREATE」の成績が発表

 11月7日(米国時間)、フロリダ州・オーランドで開催されている第80回米国心臓学会 (AHA: the American Heart Association's Scientific Sessions 2007) のlate-breaking clinical trials sessionにおいて、高血圧症治療薬ブロプレス(一般名:カンデサルタン シレキセチル)の大規模臨床試験「HIJ-CREATE」の成績が発表された。HIJ-CREATE試験は2001年6月から実施されたもので、日本の14施設が参加、高血圧症を有する日本人の冠動脈疾患患者2,049例を対象に、アンジオテンシン・受容体拮抗薬(ARB)ブロプレスを基礎治療にした薬剤群(ブロプレス群)とARBを使用しない標準治療薬剤群(標準治療群)について、心血管系イベントの発症を指標として比較。 今回の発表では、以下の点が明らかになった。1.ブロプレス群は標準治療群と比較して、心血管系イベントの発症リスクを11%抑制したものの統計的な有意差は得られなかった(p=0.194)。<主要評価項目> 2.糖尿病の新規発症率は、ブロプレス群1.1%、標準治療群2.9%であり、ブロプレス群は糖尿病の発症を抑制した(p=0.027)。<副次評価項目>3.腎機能の低下した患者においてブロプレス群は標準治療群と比較して、心血管系イベントの発症リスクを21%抑制した(p=0.039)。

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J-WIND、待望の論文化

わが国で実施され、2006年には米国心臓協会にて報告された大規模試験J-WINDが、Lancet誌10月27日号に掲載された。心筋梗塞に対する再灌流療法にヒト心房性ナトリウムペプチド(カルペリチド)、あるいはニコランジルを加える有用性を検討した本試験、筆頭著者は国立循環器病センターの北風政史氏である。カルペリチドとニコランジルの有用性を別個に検討J-WINDは2つの別個の試験から成る。いずれも急性心筋梗塞例を対象としているが、J-WIND-ANP試験では再灌流療法時にカルペリチドを3日間持続静注、J-WIND-KATP試験ではニコランジルをボーラス静注し、いずれの試験も梗塞サイズと左室駆出率を対照群と比較した。ANP試験ではカルペリチド群に277例、対照群に292例が、KATP試験ではニコランジル群に276例、対照群に269例がそれぞれ無作為割り付けされ、単盲検にて平均2.7年(ANP試験)、2.5年(KATP試験)追跡された。  カルペリチド群では梗塞サイズが縮小し左室機能も保たれる569例が無作為化されたANP試験では、まず535例(カルペリチド群:255例、対照群:280例)で梗塞サイズが検討された。梗塞巣サイズの評価は、再灌流療法前と再灌流1時間~72時間後の間に少なくとも6回採取した血液サンプルから求めたクレアチニンキナーゼのAUCで行なった。その結果、対照群の77,878.9IU/L時に比べカルペリチド群では66,459.9IU/L時と有意(p=0.016)に低下していた。梗塞サイズに換算すると相対的に14.7%の減少になるという。ただし再灌流後12〜18時間に測定したトロポニンT濃度は減少傾向にとどまった。また398例(各群199例ずつ)で評価できた6~12カ月後の左室駆出率も、カルペリチド群では対照群に比べ相対的に1.05倍、有意(p=0.024)に高値だった。この結果よりJ-WIND研究者らは、「経皮的冠血行再建術を施行される心筋梗塞患者に対し、カルペリチド追加は安全かつ有効な治療だと信じている」と記している。 ニコランジルは用量の問題か対照的だったのがKATP試験である。ニコランジル群で梗塞サイズ、左室駆出率とも対照群と有意差を認めなかった。 しかしJ-WIND-KATP試験については本年度の日本循環器学会のセッション「Late Breaking Clinical Trials in Japan」において、以下が指摘されている。すなわち、これまでに報告された臨床試験で、ニコランジルによる梗塞巣縮小が認められた場合、用量は8~12mg程度が用いられている。特に、プラセボ群に比べ心筋梗塞患者の「心血管系死亡と心不全による予定外入院」を有意に抑制し,Circulation誌に掲載された臨床試験では12mgが用いられていた [Ishii H et al. Circulation 2005; 112: 1284]。しかし今回J-WINDで用いられた「0.067mg/kgボーラス+1.67μg/kg/分×24時間」というレジメンではおよそ4mg程度にしかならないため、「もう少し高用量ならば異なった結果になっていた可能性もある」(コメンテーター)とのことである。(宇津貴史:医学レポーター)

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くすぶり型多発性骨髄腫について3つのリスク層化モデルが報告

これまで、進行や転帰の因子が明らかにされていなかった「くすぶり型多発性骨髄腫」について、新たな知見が報告された。同疾患は形質細胞の増殖異常疾患で自覚症状に乏しく、症候性多発性骨髄腫やアミロイドーシスへの進行リスクが高いとされてきたが、その進行リスクの度合いと診断基準の指標である骨髄形質細胞の割合および血清Mタンパク量との関連が見出され、予後の異なる3つのリスク層化モデルが作成できたことを、Robert A. Kyle氏らメイヨークリニックの研究グループが報告した。詳細はNEJM誌6月21日号に掲載された。276例の全経過を追跡調査この研究は、骨髄腫の国際的な研究グループIMWG(International Myeloma Working Group)が策定した、くすぶり型多発性骨髄腫の診断基準を満たした患者の診療記録を検討したもの。対象は、メイヨークリニックで1970~1995年の26年間に多発性骨髄腫と診断された3,549例のうち、くすぶり型の診断指標である骨髄形質細胞≧10%あるいは血清Mタンパク量≧3g/dLを満たす276例(8%)。診断時の年齢中央値64歳(範囲:26~90歳)、40歳以下8例、男女比62%対38%。診断指標に基づき3つのグループ(下記参照)を作り、骨髄穿刺液と生検検体の調査、および死亡に至る疾患の全過程の経過が調べられた。・グループ1(骨髄形質細胞≧10%、血清Mタンパク量≧3g/dL)・グループ2(≧10%、<3g/dL)・グループ3(<10%、≧3g/dL)骨髄形質細胞割合と血清Mタンパク量が予後に関係追跡調査は累積2131人-年行われ(範囲:0~29、中央値6.1)、そのうち163例(59%)が、症候性多発性骨髄腫(57%)またはアミロイドーシス(2%)を発症していた。疾患の全体的な進行の危険度は、最初の5年が10%/年、次の5年が3%/年、最後の10年が1%/年。進行の累積確率は、5年時51%、10年時66%、15年時73%だった。進行に関与する重大なリスク因子は、血清Mタンパクの量とタイプ、尿中L鎖の存在、骨髄形質細胞の割合、免疫グロブリンの減少にあることが明らかとなった。そして、くすぶり型から症候性への疾患進行リスクの度合いは、グループ1(106例)の進行の累計確率が15年時87%、進行までの時間は2年(中央値)、グループ2(142例)は70%、8年、グループ3(27例)は39%、19年だった。(武藤まき:医療ライター)

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