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たこつぼ症候群(TTS)は胸痛、心電図異常、心筋バイオマーカー上昇を呈し、急性冠症候群(ACS)と臨床像が重なる。現行の診断では、臨床評価や精神・神経疾患歴、反復心画像検査、責任冠動脈病変の除外のための侵襲的冠動脈造影(ICA)が中心となり、早期鑑別が課題となっている。今回、スイス・チューリッヒ大学のVictor Schweiger氏らがICA前のTTSとACSの早期鑑別を支援するバイオマーカーに基づく診断スコア(BioTAK)を開発・外部検証した結果を、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表し、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月31日号に同時掲載された。本研究では、ACSまたはTTSの患者3,615例を対象に、ICA前に採取した血液で既存および新規の心血管バイオマーカーを測定した。BioTAKは、開発コホート1,823例(ACS 1,754例、TTS 69例)で、機械学習による特徴量選択とロジスティック回帰を用いて作成され、独立した外部検証コホート1,792例(ACS 1,715例、TTS 77例)で検証された。主要な診断アウトカムは最終診断としてのTTSで、AUC、キャリブレーション、事前設定したrule-in/rule-out閾値による診断性能を評価した。主な結果は以下のとおり。・開発コホートは1,823例(ACS 1,754例、TTS 69例)、検証コホートは1,792例(ACS 1,715例、TTS 77例)であった。・TTSはACSと比較して女性の割合が高く(開発:91.3%vs.19.3%、検証:85.7%vs.21.2%、いずれもp<0.001)、年齢も高かった(開発:70.5±13.8歳vs.64.0±12.5歳、検証:70.0±14.0歳vs.63.5±12.5歳、いずれもp<0.001)。・左室駆出率中央値もTTSで低かった(開発:44%vs.51%、検証:41%vs.50%、いずれもp<0.001)。・NT-proBNP中央値はTTSで高く、開発コホートでは2,369ng/L(四分位範囲[IQR]:384~5,748)vs.281ng/L(98~1,077)、検証コホートでは1,553ng/L(536~5,103)vs.352ng/L(100~1,242)であった。一方、hsTnTは両疾患で大きな差はなく、CKはACSで高かった。・新規バイオマーカーでは、sLOX-1中央値がTTSで低く(開発:4pg/mL vs.38pg/mL、検証:3pg/mL vs.33pg/mL、いずれもp<0.001)、PAM中央値はTTSで高かった(開発:87ng/mL vs.72ng/mL、検証:83ng/mL vs.73ng/mL、いずれもp<0.001)。・LDL-C中央値はTTSで低かった(開発:101mg/dL vs.118mg/dL、p<0.001、検証:104mg/dL vs.120mg/dL、p=0.007)。・機械学習による変数重要度解析では、sLOX-1とPAMがTTS診断の予測因子として高く評価された。最終的なBioTAKスコアは、NT-proBNP、PAM、sLOX-1、LDL-C、性別の5項目で構成され、0~60点で評価された。・BioTAKの鑑別能は、開発コホートでAUC 0.97(95%信頼区間[CI]:0.95~0.98)、外部検証コホートでAUC 0.93(95%CI:0.90~0.96)であった。キャリブレーションは良好であった。・BioTAKは、精神・神経疾患歴などを含む既存のInterTAK診断スコアに対して非劣性を示した(delta AUC:0.00、95%CI:-0.01~0.02、p<0.001)。また、Dagrenatらのスコア(delta AUC:0.04、95%CI:0.02~0.06、p<0.001)、NT-proBNP/hsTnT比、hsTnT/CK比、NT-proBNP/CK比に対しても非劣性を示した。・開発コホートでは、BioTAKにより1,583例(86.8%)がTTS低確率(27点未満)、196例(10.8%)が中間確率(27~32点)、44例(2.4%)が高確率(33点以上)に分類され、1,627/1,823例(89.2%)が低確率または高確率群に層別化された。33点以上によるTTS rule-inの特異度は99.0%(95%CI:98.4~99.3)、陽性的中率は59.1%(44.4~72.3)であった。36点以上では特異度99.9%(99.7~100)、陽性的中率88.9%(56.5~98.0)であった。著者らは、「TTSはACSと異なる病態生理を反映する疾患特異的なバイオマーカープロファイルで特徴付けられ、客観的なBioTAKスコアは、ACS疑いで受診した患者におけるTTSの早期同定、診断経路の効率化、回避可能な侵襲的検査の低減に寄与しうる」とまとめた。