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心不全への経カテーテル三尖弁修復術は有用か/NEJM

 重症三尖弁閉鎖不全症の患者に対する経カテーテル三尖弁修復術+薬物療法は薬物療法単独よりも、1年時点の全死因死亡、心不全入院、QOLの階層的複合評価項目に関して優れることが示され、また、3年時点の全死因死亡または心不全入院の複合リスクも低下させたことが示された。ドイツ・Ludwig-Maximilians-Universitat MunchenのJorg Hausleiter氏らTRIC-I-HF-DZHK24 Investigatorsが、同国29施設で行った非盲検無作為化試験の結果を報告した。重症三尖弁閉鎖不全症患者に対する経カテーテル三尖弁修復術の、臨床アウトカム(死亡および心不全入院など)への影響は依然として明らかになっていない。これまでに行われた2件の無作為化試験(経カテーテル三尖弁修復術vs.薬物療法)では、修復術群の1年時点のQOL改善は示されたが心不全入院や死亡の減少は示されなかった。また、2年時点の解析で心不全入院の減少が示唆されたが、修復術群の有用性を判断するにはデータが不十分であった。NEJM誌オンライン版2026年8月30日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。severe以上重症患者対象、経カテーテル三尖弁修復術群vs.薬物療法単独 本試験では、少なくとも30日間の薬物療法(利尿薬を含む個別化至適用量による)を受けたが、重症三尖弁閉鎖不全症(5段階評価分類でsevere以上)を有し、将来的な心不全イベントリスクが高い患者(過去12ヵ月間の非代償性心不全の既往、または心腎症候群もしくは心肝症候群のいずれかに該当と定義)を対象とした。患者の選定および登録は各試験施設のハートチームの判断に委ねられ、ベースライン薬物療法に関する中央適格委員会の承認またはスクリーニングは不要とされた。なお、将来的な心不全イベントリスクの基準は、試験途中(2023年7月)にプロトコールに追加されたものである。 適格患者は、経カテーテル三尖弁修復術+薬物療法(三尖弁修復術群)または薬物療法単独(薬物療法群)に2対1の割合で無作為に割り付けられ、追跡評価を受けた。追跡評価は1ヵ月、12ヵ月、2年、3年の時点で行われた。 主要評価項目は、1つ目が1年時点の全死因死亡、心不全入院、QOLの複合で、win ratioに基づき階層的に評価が行われた。そして、有意な群間差が認められた場合に2つ目として、3年時点の全死因死亡もしくは心不全入院の複合について検証された。3年時点の全死因死亡または心不全入院のハザード比0.40 2022年3月~2025年6月に360例が無作為化された(三尖弁修復術群237例、薬物療法群123例)。被験者の平均年齢は80.3±6.4歳、女性が56.4%であった。 ベースラインにおける三尖弁閉鎖不全症の重症度は、severeが50.8%、massiveが34.2%、torrentialが10.3%で、平均左室駆出率は54.3±8.6%であった。また、NYHA心機能分類III/IV心不全が75.0%、過去1年間の心不全入院歴ありが55.0%で、81.7%が心腎症候群を、46.2%が心肝症候群を有していた。 1つ目の主要評価項目のwin ratioは2.42(95%信頼区間[CI]:1.76~3.33)で三尖弁修復術群が優れることが示された(p<0.001)。 3年時点での全死因死亡または心不全入院の回避率(Kaplan-Meier推定値)は、三尖弁修復術群52.4%(95%CI:43.2~63.6)、薬物療法群21.0%(95%CI:12.7~34.6)であった(全死因死亡または心不全入院のハザード比:0.40、95%CI:0.29~0.55、p<0.001)。 なお、安全性に関して、三尖弁修復術群では術後30日以内の重大有害事象の発現は14例(5.9%)であった。

2.

70歳以上の1次予防、スタチンは有益か?/NEJM

 地域で暮らす70歳以上の高齢者を対象としたプラセボ対照無作為化試験で、アトルバスタチンは主要心血管イベントリスクを抑制したが(追跡期間中央値5.9年時点)、障害のない生存期間の延長には寄与しなかったことが示された。オーストラリア・モナシュ大学のSophia Zoungas氏らSTAREE Investigatorsが、同国の一般診療所(general medical practice)で行った「STAREE試験」の結果を報告した。高リスク成人において、スタチンが心筋梗塞や虚血性脳卒中のリスクを低減させることは十分に確立されているが、臨床ガイドラインにおいて、70歳以上の高齢者へのスタチン処方を強く推奨する記述はなく、とくに75歳以上の高齢者への処方を推奨するエビデンスは乏しい。また、認知症や障害への影響に対するエビデンスも不足していることから、研究グループは、主要心血管イベントおよび障害のない生存へのアトルバスタチンの影響を評価した。NEJM誌オンライン版2026年8月29日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。アトルバスタチン40mgを1日1回vs.プラセボ STAREE試験では、心血管疾患、糖尿病、認知症の既往がない、地域で暮らす70歳以上の高齢者を対象とした。 研究グループは被験者を、アトルバスタチン40mgを1日1回またはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、追跡評価した。 主要評価項目は2つで、心血管死、非致死的心筋梗塞または脳卒中、冠動脈血行再建術の複合(主要心血管イベントへの影響を評価)と、全死因死亡、認知症、持続的な身体機能障害の複合(障害のない生存への影響を評価)で、階層的に評価された。主要心血管イベントは有意に減少、障害のない生存期間は延長せず 2015年7月~2023年3月に9,971例が無作為化された(アトルバスタチン群4,984例、プラセボ群4,987例)。被験者の平均年齢(SD)は74.7±4.5歳で、女性は51.9%であった。 ベースラインで、被験者の大半は現在飲酒の習慣があり、喫煙歴なしと申告した。服用薬数中央値は2(四分位範囲:1~4)で、最も多かった薬剤は降圧薬(46.3%)、胃酸関連疾患の治療薬(27.1%)などであった。過去にスタチン服用歴ありと報告した被験者は5.2%。既往歴として多かったのはがん、うつ病であった。また、認知機能スコアは良好であることが示され、88.7%の被験者が日常生活動作(ADL)の自立度を評価する修正Katz Indexの6項目について、いずれも困難はないと報告した。 追跡期間中央値5.9年後において、主要心血管イベントの発生はアトルバスタチン群297例(1,000人年当たり10.9イベント)、プラセボ群412例(1,000人年当たり15.5イベント)であった(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.61~0.82、p<0.001)。 障害のない生存への影響を評価した、全死因死亡、認知症、持続的な身体機能障害の複合の発生は、アトルバスタチン群637例(1,000人年当たり21.6イベント)、プラセボ群676例(1,000人年当たり23.0イベント)であった(HR:0.94、95%CI:0.84~1.05、p=0.25)。 重篤な有害事象の発現は、アトルバスタチン群で131例(2.7%)、プラセボ群で129例(2.7%)に認められた。筋骨格系、肝胆道系、および糖尿病関連の有害事象はアトルバスタチン群でより多く認められた。

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ミュンヘンの熱気とアスピリンの行方~PREMIUM試験が語る学会と雑誌の歴史学~【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第100回

Congratulations!!2026年8月29日、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州心臓病学会(ESC)のHot Line Sessionにおいて、近畿大学の中澤 学先生より「PREMIUM試験」の結果が発表され1)、同時に高橋 邦彰先生を筆頭著者としてThe New England Journal of Medicine(NEJM)誌に掲載されました2)。本試験は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者のPrimary PCIにおいて「PCI直後からアスピリンを抜いても大丈夫なのか?」というきわめて実践的な問いを検証したものです。国内69施設・約2,300例が登録され、プラスグレル単剤群と標準的なDAPT(アスピリン+プラスグレル)12ヵ月群に1:1で割り付けられました。1年後の複合エンドポイント(全死亡・心筋梗塞・脳卒中)の発生率は、プラスグレル単剤群11.0%に対し、DAPT群8.5%。結果として単剤療法の非劣性は証明されませんでした(HR 1.34、95%信頼区間:1.02~1.75、非劣性p=0.40)。昨今トレンドとなっている「アスピリン早期中止」や「P2Y12阻害薬単剤化」ですが、少なくともSTEMIの超急性期においてはPCI直後からのアスピリン省略戦略は支持できないという明確なメッセージを残した点に、本試験の大きな意義があります。「単なるNegative Trial」で終わらせない臨床的視点本試験を「非劣性が示せなかったからNegative」と切り捨てるのは早計でしょう。興味深いのは、単剤群で増加した血栓性イベントがステント血栓症ではなく、主に非責任病変によるものであったという点です。つまり、STEMI患者における急性期DAPTは「ステント閉塞の予防」にとどまらず、「全冠動脈のプラーク安定化」という重要な役割を担っていることを示唆しています。今後のサブ解析やさらなる知見の広がりに期待が膨らみます。「村祭り」から「ディズニーランド」、そして欧州の逆襲堅苦しい学術的解釈はこのあたりにして。3,000人超を収容する大ホールが超満員となり、立ち見客の熱気に包まれたHot Line Sessionの現場に立ち会いながら、小生はふと別の感慨に耽っていました。いまや循環器領域で世界で最も勢いのある学会といえば、間違いなくESCでしょう。小生が初めて参加した国際学会は、1990年11月に米国ダラスで開催されたAHA(American Heart Association)でした。当時のAHAはまさに「世界の中心」。規模、参加者数、演題の質、華やかな企業展示……そのすべてが規格外でした。日本の「村祭り」しか知らなかった若手医師が、いきなり本場の「ディズニーランド」に放り出されたような衝撃を受けたことを覚えています。当時のESCといえば、大変失礼ながら地味な存在でした。「世界を動かす重要な臨床試験はまず米国(AHA/ACC)で発表される」というのが当時の暗黙の了解だったのです。しかし、この30年で景色は一変しました。欧州の研究者たちは「素晴らしい研究を米国に持っていかれるのを指をくわえて見てなるものか」とばかりに、Late-Breaking Clinical TrialsやHot Line Sessionの改革を断行。世界中の重要試験を誘致する文化を育て上げました。今回のESC 2026でも、実に59本ものHot Line Trialが発表されています。学会の規模と熱量においては、もはやAHAに並ぶどころか、凌駕したと言っても過言ではありません。学会と雑誌が織りなす「主導権のねじれ」ただ、現地で観察していて実に興味深い現象がありました。学会の主役がESCへとシフトした一方で、その成果を世界へ拡散する「発信拠点」としては、依然として米国のNEJM誌が圧倒的なプレゼンスを誇っているという点です。今回のESCでも、重要試験の多くがNEJM誌へ同時掲載されました。欧州主導の学会で発表された成果が、アメリカの医学雑誌の手によって世界基準へと昇華されていく。一見すると不思議なねじれ現象ですが、これは「発表の場」として発展してきたESCの歴史と、200年以上にわたり臨床的信頼を蓄積してきた「知識の集積場所」としてのNEJMの歴史の違いを表しているのかもしれません。学会のイニシアチブと、論文メディアのイニシアチブは必ずしも一致しないのです。日本発のエビデンスが世界標準になる瞬間そう考えると、今回のPREMIUM試験の成功には二重の喜びがあります。第1に、日本発の大型臨床試験が世界最高峰のステージで満場の注目を浴びたこと。そして第2に、それがNEJM誌に掲載されることで、真の意味で「世界共有のエビデンス」として歴史に刻まれたことです。かつてダラスのAHA会場でただただ圧倒されていた1人の循環器医として、ESCの目覚ましい躍進をリアルタイムで体験できたことは感慨深いものがあります。そしてその歴史的舞台の真ん中に、日本から発信されたPREMIUM試験が存在したことを誇らしく思います。中澤先生、高橋先生をはじめとする研究グループの皆さまに心より敬意を表するとともに、本研究がひらく新たな臨床の扉に期待を寄せて筆を置きたいと思います。ESC 2026 Hot Line Session、中澤 学先生の発表1)ESC. Hot Line 3: PREMIUM trial. What were the results? :中澤先生インタビュー動画(YouTube)2)Takahashi K, et al. N Engl J Med. 2026 Aug 29. [Epub ahead of print]

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PCI施行STEMI患者、アスピリン投与は省略できるか/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、プライマリPCI施行前に開始した低用量プラスグレル単剤療法は、アスピリン+プラスグレルの抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)に対して、12ヵ月時点の全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合に関して非劣性を示さなかった。近畿大学の高橋 邦彰氏らPREMIUM Trial Investigatorsが、国内69病院で実施した多施設共同非盲検無作為化試験「PREMIUM試験」の結果を報告した。欧米のガイドラインでは、出血リスクが高くない急性冠症候群患者には、虚血性イベントの2次予防としてPCI後少なくとも12ヵ月のDAPTが標準治療として推奨されている。一方で、ステント技術が進展し、強力なP2Y12阻害薬が開発され、イベント予防と出血リスクのバランスを取ることがますます困難になっており、こうした流れの中で、DAPT期間の短縮や、P2Y12阻害薬単剤療法による戦略が検討されている。STEMI患者は通常、虚血性イベントおよび出血イベントがいずれもプライマリPCI後早期に発生する。しかしながら、12ヵ月のDAPT標準治療とアスピリンを用いないアップフロント治療を直接比較した無作為化試験のデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2026年8月29日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。12ヵ月時点の全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合を評価 PREMIUM試験は、18歳以上、発症から12時間以内のSTEMIで、エベロリムス溶出プラチナクロムステントを用いたプライマリPCIが予定された、12ヵ月のDAPTに適応があった患者を適格とした。 研究グループは書面にて同意を得た後、患者を低用量プラスグレル単剤療法またはDAPT群に1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月治療を行った。 プラスグレル単剤療法群では、PCI前にアスピリン投与なしでプラスグレル(20mg)の負荷投与を行い、術後は1日1回のプラスグレル(3.75mg)を12ヵ月間継続投与した。DAPT群では、PCI前にアスピリン(162~200mg)+プラスグレル(20mg)の負荷投与を行い、術後は1日1回のアスピリン(81~100mg)+プラスグレル(3.75mg)を12ヵ月間継続投与した。 主要評価項目は、12ヵ月時点の全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合で、プラスグレル単剤療法群の非劣性について評価した。事前に規定した非劣性マージンはハザード比(HR)の片側95%信頼区間(CI)上限が1.50と定義された。 重要な副次評価項目は、12ヵ月時点の大出血(BARC出血基準のタイプ3[非致死的大出血]またはタイプ5[致死的出血])であり、主要評価項目の非劣性が示された場合に優越性を評価した。Kaplan-Meier推定発生率、プラスグレル単剤11.0%vs.DAPT 8.5% 2023年4月~2024年12月に2,268例が無作為化され、解析集団には2,216例が含まれた(プラスグレル単剤療法群1,109例、DAPT群1,107例)。両群の患者背景はバランスが取れており、平均年齢は69.4±12.5歳、男性は76.6%で、糖尿病併存者は38.5%、出血リスクが高い患者は35.9%であった。無作為化前に5.6%がアスピリン、3.1%がP2Y12阻害薬の投与を受けていた。病院到着から無作為化までの時間中央値は43.3分であった。 12ヵ月時点で全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞の発生は、プラスグレル単剤療法群124例(Kaplan-Meier推定11.0%)、DAPT群94例(Kaplan-Meier推定8.5%)であった(HR:1.34、95%CI:1.02~1.75、非劣性のp=0.40)。 大出血は、プラスグレル単剤療法群61例(Kaplan-Meier推定5.6%)、DAPT群92例(Kaplan-Meier推定8.4%)で認められた(HR:0.66、95%CI:0.47~0.91)。definiteもしくはprobableのステント血栓症(プラスグレル単剤療法群1.4%、DAPT群1.5%)および重篤な有害事象(それぞれ17.2%、16.5%)が報告された患者の割合は、両群で同程度であった。

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たこつぼ症候群とACSの早期鑑別、新診断スコアBioTAKが高い鑑別能

たこつぼ症候群(TTS)は胸痛、心電図異常、心筋バイオマーカー上昇を呈し、急性冠症候群(ACS)と臨床像が重なる。現行の診断では、臨床評価や精神・神経疾患歴、反復心画像検査、責任冠動脈病変の除外のための侵襲的冠動脈造影(ICA)が中心となり、早期鑑別が課題となっている。今回、スイス・チューリッヒ大学のVictor Schweiger氏らがICA前のTTSとACSの早期鑑別を支援するバイオマーカーに基づく診断スコア(BioTAK)を開発・外部検証した結果を、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表し、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月31日号に同時掲載された。本研究では、ACSまたはTTSの患者3,615例を対象に、ICA前に採取した血液で既存および新規の心血管バイオマーカーを測定した。BioTAKは、開発コホート1,823例(ACS 1,754例、TTS 69例)で、機械学習による特徴量選択とロジスティック回帰を用いて作成され、独立した外部検証コホート1,792例(ACS 1,715例、TTS 77例)で検証された。主要な診断アウトカムは最終診断としてのTTSで、AUC、キャリブレーション、事前設定したrule-in/rule-out閾値による診断性能を評価した。主な結果は以下のとおり。・開発コホートは1,823例(ACS 1,754例、TTS 69例)、検証コホートは1,792例(ACS 1,715例、TTS 77例)であった。・TTSはACSと比較して女性の割合が高く(開発:91.3%vs.19.3%、検証:85.7%vs.21.2%、いずれもp<0.001)、年齢も高かった(開発:70.5±13.8歳vs.64.0±12.5歳、検証:70.0±14.0歳vs.63.5±12.5歳、いずれもp<0.001)。・左室駆出率中央値もTTSで低かった(開発:44%vs.51%、検証:41%vs.50%、いずれもp<0.001)。・NT-proBNP中央値はTTSで高く、開発コホートでは2,369ng/L(四分位範囲[IQR]:384~5,748)vs.281ng/L(98~1,077)、検証コホートでは1,553ng/L(536~5,103)vs.352ng/L(100~1,242)であった。一方、hsTnTは両疾患で大きな差はなく、CKはACSで高かった。・新規バイオマーカーでは、sLOX-1中央値がTTSで低く(開発:4pg/mL vs.38pg/mL、検証:3pg/mL vs.33pg/mL、いずれもp<0.001)、PAM中央値はTTSで高かった(開発:87ng/mL vs.72ng/mL、検証:83ng/mL vs.73ng/mL、いずれもp<0.001)。・LDL-C中央値はTTSで低かった(開発:101mg/dL vs.118mg/dL、p<0.001、検証:104mg/dL vs.120mg/dL、p=0.007)。・機械学習による変数重要度解析では、sLOX-1とPAMがTTS診断の予測因子として高く評価された。最終的なBioTAKスコアは、NT-proBNP、PAM、sLOX-1、LDL-C、性別の5項目で構成され、0~60点で評価された。・BioTAKの鑑別能は、開発コホートでAUC 0.97(95%信頼区間[CI]:0.95~0.98)、外部検証コホートでAUC 0.93(95%CI:0.90~0.96)であった。キャリブレーションは良好であった。・BioTAKは、精神・神経疾患歴などを含む既存のInterTAK診断スコアに対して非劣性を示した(delta AUC:0.00、95%CI:-0.01~0.02、p<0.001)。また、Dagrenatらのスコア(delta AUC:0.04、95%CI:0.02~0.06、p<0.001)、NT-proBNP/hsTnT比、hsTnT/CK比、NT-proBNP/CK比に対しても非劣性を示した。・開発コホートでは、BioTAKにより1,583例(86.8%)がTTS低確率(27点未満)、196例(10.8%)が中間確率(27~32点)、44例(2.4%)が高確率(33点以上)に分類され、1,627/1,823例(89.2%)が低確率または高確率群に層別化された。33点以上によるTTS rule-inの特異度は99.0%(95%CI:98.4~99.3)、陽性的中率は59.1%(44.4~72.3)であった。36点以上では特異度99.9%(99.7~100)、陽性的中率88.9%(56.5~98.0)であった。著者らは、「TTSはACSと異なる病態生理を反映する疾患特異的なバイオマーカープロファイルで特徴付けられ、客観的なBioTAKスコアは、ACS疑いで受診した患者におけるTTSの早期同定、診断経路の効率化、回避可能な侵襲的検査の低減に寄与しうる」とまとめた。

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第335回 リポタンパク質(a)抑制薬が注目のPh3試験で心血管転帰抑制ならず

Novartisの新しい機序の心血管薬pelacarsenが注目の第III相試験で主要評価項目を達成せず1)、心血管疾患を専門とする医師に衝撃を与えているようです2)。pelacarsenは1963年にノルウェーの医師Kare Berg氏が初めて記した3)血漿成分のリポタンパク質(a)[Lp(a)]の生成を阻害します。Lp(a)はLDLに似ており、LDL様のアポリポタンパク質B-100[apoB-100]と糖タンパク質のアポリポタンパク質(a)[apo(a)]が共有結合して作られます4)。Lp(a)のapoB-100の動脈硬化誘発作用、apo(a)のプラスミノーゲン様プロテアーゼ領域を介する血栓形成促進作用、Lp(a)が運ぶ酸化リン脂質の炎症促進作用がどうやら心血管疾患を生じやすくするようです。実際、血漿のLp(a)が多いことと心血管疾患や大動脈弁狭窄症を生じやすくなることの関連を支持する結果が、疫学や遺伝情報解析などの20年に及ぶ研究で得られています。恐らく逆もまた真なりで、遺伝配列のおかげで血漿のLp(a)が少ないことと心血管疾患を生じ難いことの関連が示されてもいます5)。そのような経緯を背景にして、血漿のほぼすべて(約99%)のLp(a)を構成する肝臓起源のapo(a)の生成を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の開発が始まります。pelacarsenはapo(a)の遺伝子LPAのmRNAを妨げる第2世代のASOと、肝細胞表面のアシアロ糖タンパク質(ASGP)受容体に結合する成分のGalNAc3をつなげて作られ、肝細胞に限って取り込まれるようにできています。Lp(a)濃度が高い患者が参加した第IIa相試験で、pelacarsenは22日時点までの6回の皮下注射から2週間後(36日時点)のLp(a)濃度を用量依存的に多ければ92%下げました6)。pelacarsenの半減期は長くおよそ1ヵ月とわかり、次の第II相試験では主に1ヵ月に1回(4週間ごと)の投与が検討されました。やはり用量依存的な効果があり、高用量の60mgが4週間ごとに投与された群のLp(a)濃度は72%低下しました7)。それらの結果を踏まえて2019年に始まった8)Lp(a)HORIZONと銘打つ第III相試験は、Lp(a)濃度が高い心血管疾患(心臓発作、脳卒中、末梢動脈疾患)患者1万例弱(8,323例)が参加し、1対1の割合で4週間ごとのpelacarsenかプラセボの皮下注射に割り振られました。pelacarsenの用量は第II相での最高用量より多い80mgでした。具体的な数値は今回の発表に記されていませんが、pelacarsenでLp(a)レベルはやはり下がったものの、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、急な冠血行再建での入院をプラセボに比べてより減らすという肝心の目標を達成できませんでした。詳しい結果は学会での発表を待たねばなりませんが、心血管リスクの低減がみられなかったのはLp(a)低下がもしかしたら不十分だったのかもしれません9)。Lp(a)HORIZON試験でのLp(a)低下は、先立つ試験における72%低下と同程度だったとIonisは言っているとアナリストが報告しています。NovartisはIonisからpelacarsenの権利を手に入れています。pelacarsenと同様にapo(a)のmRNAを狙うAmgenやLillyのRNA干渉薬のolpasiranやlepodisiranのこれまでの成績はより目を引くもので、Lp(a)濃度を実に90%超下げています。olpasiranとlepodisiranはどちらも第III相試験が進行中で、ClinicalTrials.govによると前者の結果は2028年3月10)、後者はその1年後の2029年3月11)に判明する見込みです。中国のSino Biopharmaceutical Limitedが手掛けるapo(a)標的RNA干渉薬Kylo-11も有望そうです12)。Cleveland Clinicの心臓医のAshish Sarraju氏が指揮した第I相試験で、単回のKylo-11が投与された被験者のおよそ1年時点(48週時点)のLp(a)濃度がベースライン時に比べて97%低下していました。第I相試験の結果はつい先月末にLancet誌オンライン版に発表され、今月9月5日の刊に掲載されました13)。Sinoの子会社とCleveland Clinicの協力の下でKylo-11の第II相試験が進行中です14)。参考1)Novartis announces Lp(a)HORIZON Phase III topline results for pelacarsen in patients with elevated Lp(a) and established cardiovascular disease (CVD) / GlobeNewswire2)Another Heart Drug Fails, Shocking Cardiologists / The New York Times3)Berc K. Acta Pathol Microbiol Scand. 1963;59:369-382.4)Schmidt K, et al. J Lipid Res. 2016;57:1339-1359.5)Emdin CA, et al. J Am Coll Cardiol. 2016;68:2761-2772.6)Viney NJV, et al. Lancet. 2016;388:2239-2253.7)Tsimikas S, et al. N Engl J Med. 2020;382:244-255.8)Lp(a)HORIZON試験(ClinicalTrials.gov)9)Novartis Lp(a) drug fails to lower cardiovascular risk in closely watched ph. 3 trial / FierceBiotech10)OCEAN(a)試験(ClinicalTrials.gov)11)ACCLAIM-Lp(a)試験(ClinicalTrials.gov)12)ESC Oral Presentation and Publication in The Lancet! First Disclosure of Kylo-11 Phase I Clinical Study Data with Up to 48 Weeks of Follow-Up / Sino Biopharmaceutical Limited13)Sarraju A, et al. Lancet. 2026;408:899-909.14)First in Human Long-Acting Gene Silencing Therapy Significantly Lowers Heart Disease Risk Marker with One Injection / Cleveland Clinic

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ESC心不全GL改訂、HFmrEF廃止・「急性心不全」は「非代償性心不全」へ/ESC2026

 欧州心臓病学会(ESC)による新たな心不全診療ガイドライン「2026 ESC Guidelines for the management of heart failure」がEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年8月28日号でオンライン公開され1)、8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)において改訂の要点が解説された2)。今回の改訂では、疾患の予防と早期治療の徹底、左室駆出率(LVEF)に基づく分類の簡素化、「急性心不全」から「非代償性心不全」へ名称変更、新たな治療分類(FMT・AMT・GDIT)の導入など、時代に即した大幅な再定義が行われている。 本ガイドラインにおける主な改訂のポイントは以下のとおり。【心不全の分類・定義の刷新】LVEFに基づく分類の簡素化(HFmrEFの廃止) 従来、LVEF 41~49%の病態は「軽度低下した心不全(HFmrEF)」と定義されていたが、今回の改訂でこの分類が廃止された。HFmrEF患者は、LVEF低下例(HFrEF)と同様の病態生理を共有し、同様の治療から恩恵を受けることが明らかになったためである。これにより、心不全のフェノタイプは以下の2つにシンプル化された。新LVEF分類・LVEFが低下した心不全(HFrEF):LVEF 50%未満で、心不全の症状・徴候を有する病態。・LVEFが保たれた心不全(HFpEF):LVEF 50%以上で、心不全の症状・徴候に加え、構造的・機能的異常やナトリウム利尿ペプチドの上昇を認める病態。予防・早期介入のためのステージ分類導入 発症予防と早期治療の徹底を目的として、心不全リスク段階(ステージA)から、前心不全(ステージB)、症候性心不全(ステージC)、重症/進行性心不全(ステージD)に至る段階的なステージ分類が採用された。また、高血圧またはステージBの心不全患者において、心不全発症リスクを低減するため、収縮期血圧130mmHg未満を目指す厳格な血圧管理がクラスI(エビデンスレベルA)で推奨された。「急性心不全」から「非代償性心不全」への名称変更 従来「急性心不全(Acute HF)」と呼ばれていた病態は、心機能の徐々の低下に伴い代償機構が破綻した状態を正確に表現するため、「非代償性心不全(Decompensated HF:DHF)」へ名称が変更された。DHFの初期管理においては、尿中ナトリウムモニタリングに基づく利尿薬調整(クラスIIb)や、初期安定化後のSGLT2阻害薬の院内早期導入(クラスI)が盛り込まれている。【治療分類の刷新と薬物治療のアップデート】「GDMT」から動的な3分類(FMT・AMT・GDIT)への移行 長年使用されてきた「ガイドラインに基づく薬物治療(GDMT)」という用語が見直された。新規薬剤や医療デバイスの承認に合わせて動的(dynamic)に対応し、常に最新の管理を行えるよう、治療法が以下の3クラスに再定義された。治療クラスの新たな3分類・基礎的薬物治療(FMT:Foundational medical therapy):対象を限定しない心不全患者全体に対して、罹患率や死亡率の低減に関する最も強いエビデンスを持つクラスI推奨の薬物治療。 ―HFrEFのFMT:β遮断薬、ACE阻害薬/ARNI/ARB、MRA、SGLT2阻害薬の4薬剤。  ―HFpEFのFMT:MRA、SGLT2阻害薬の2薬剤。・追加的薬物治療(AMT:Additional medical therapy):特定サブ集団における転帰改善、または症状・QOL改善に特化したエビデンスを持つ薬物治療(クラスIIa/IIb推奨、または特定の症状改善目的のクラスI推奨)。・ガイドラインに基づく介入治療(GDIT:Guideline-directed interventional therapy):推奨されるすべての心臓植え込み型電子デバイス(CIED)や経カテーテル治療などのインターベンション治療。FMTの主な推奨事項・全LVEF領域におけるSGLT2阻害薬とMRAの推奨 SGLT2阻害薬およびミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、LVEFを問わずすべての有症候性心不全患者に対し、心不全入院または心血管死のリスク低減を目的としてクラスI(エビデンスレベルA)で推奨された。具体的な対象薬剤は以下のとおり。・SGLT2阻害薬:ダパグリフロジン、エンパグリフロジン・MRA ―HFrEF:ステロイド性MRA(スピロノラクトン、エプレレノン) ―HFpEF:ステロイド性MRA(スピロノラクトン)、非ステロイド性MRA(フィネレノン) なお、慢性心不全の管理において、FMTは症状やバイタルサイン、血液検査を参考に少なくとも1~2週間ごとに漸増し、目標用量に達することがクラスIで推奨された。また、無症状化やLVEF改善が得られた場合であっても、原則として最高耐容用量でのFMT継続がクラスIで推奨されている。AMTの主な推奨事項・肥満を伴うLVEF 45%以上の心不全に対するGLP-1受容体作動薬 BMI 30kg/m2以上かつLVEF 45%以上の肥満を伴う有症候性心不全患者(糖尿病の有無を問わない)に対し、体重減少、運動耐容能・QOLの改善を目的としてセマグルチドまたはチルゼパチドの投与がクラスIIa(エビデンスレベルB1)で推奨された。・慢性心不全へのAMT 最適なFMTを実施しても有症候性のHFrEF(LVEF 40%以下)患者に対し、心不全入院リスク低減目的で強心配糖体(ジゴキシンまたはジギトキシン)の追加がクラスIIaで推奨された。また同様に、FMT 治療後のHFrEF(LVEF 45%未満)患者に対してはベリシグアトの追加もクラスIIbで考慮される。GDITの主な推奨事項・経カテーテル的Edge-to-Edge修復術(TEER) 最適なFMTや適応のある心臓再同期療法(CRT)を実施しても持続する、血行動態が安定した重症二次性僧帽弁閉鎖不全症を伴う有症候性HFrEF患者に対し、心不全入院リスク低減およびQOL改善を目的としたTEERがクラスI(エビデンスレベルB1)で推奨された。【早期介入の重要性と患者参加型医療への展望】 ガイドライン作成タスクフォースの共同委員長を務めたLars Kober氏(デンマーク・コペンハーゲン大学病院)は、「高齢化や肥満などのリスク因子の増加に伴い、心不全の全体的な疾病負担は高まると予想される。今回のガイドラインで特に強調したかったのは、予防と可能な限り早期からの治療開始の重要性である」とプレスリリースで述べている。さらに新たな治療用語の導入について、「10年以上前に導入された『GDMT』という用語は治療の進歩に伴い、今日において何を指すのか曖昧になっていた。新用語(FMT・AMT・GDIT)は、今後新たな薬剤やデバイスが承認された際にも柔軟に対応し、常に時代に即した概念であり続けられるよう設計されている」と解説している。 同じく共同委員長を務めたMarianna Adamo氏(イタリア・ブレシア大学)は、LVEF分類の簡素化について「軽度低下(HFmrEF)という分類は、従来臨床試験に含まれにくかった患者に光を当てるため導入されたが、これらの患者がHFrEFと同様の病態生理を共有し、同様の治療恩恵を受けることが判明したためシンプル化した」と説明している。また、「急性」から「非代償性」への変更点については「突然悪化するのではなく、心臓が欠陥を補いきれなくなるまで徐々に機能低下していく病態を明確にするための改訂である」と付言した。 本ガイドラインには患者教育とセルフケアに関するセクションが含まれている。Adamo氏は「患者教育とライフスタイルのアドバイスは、患者自身が心不全を管理し、医療者と意思決定を共有する力を与える。患者が自身のケアのパートナーとなることを目指し、患者向けバージョンのガイドラインも公開されている3)」と結んでおり、医療者と患者が一体となった包括的な心不全管理の重要性がさらに高まると期待される。

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心筋梗塞の定義、3分類へ刷新/ESC2026

心筋梗塞の診断は、高感度心筋トロポニン検査や冠動脈・心臓イメージングの普及により精緻化してきた一方、従来のタイプ分類は日常診療で一貫して適用しにくい場面があった。そこで今回、英国のNicholas L. Mills氏を筆頭とするESC/ACC/AHA/WHF合同タスクフォースは、心筋梗塞のユニバーサル定義第5版(The Fifth Universal Definition of Myocardial Infarction:UDMI)を策定し、心筋梗塞を病態生理と臨床状況に基づき3分類へ再編、急性・慢性心筋障害との区別や診断基準などを更新した。本声明は、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)での発表とともにEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年8月28日号にも掲載された。本声明は、欧州心臓病学会(ESC)、米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)、世界心臓連合(WHF)による共同コンセンサス文書である。12ヵ国5大陸から選出された多職種の専門家タスクフォースが、既存の科学的知見とエビデンステーブルに基づいて作成し、18人の査読委員、患者パネル、欧州心臓胸部外科学会(EACTS)、米国胸部外科学会(STS)などによる独立査読を経て承認された。主な検討項目は、心筋梗塞の臨床定義、急性・慢性心筋障害、心筋梗塞分類、心筋トロポニンと心電図の解釈、冠動脈・心臓イメージング、特殊状況、ICD-11コードとの整合性であった。主な改訂内容は以下のとおり。1. 分類体系の再編 数値分類(1~5型)から病態生理・臨床状況に基づく3分類へ。従来の1型~5型という数値分類は廃止され、臨床評価および病態生理に沿った以下の3つの分類に整理された。(1)原発性心筋梗塞(Primary Myocardial Infarction) 定義・特徴:急性冠動脈疾患(急性冠病変)により自然発生的に生じる心筋梗塞である。病態にはアテローム血栓症のほか、自然冠動脈解離(SCAD)、冠動脈塞栓、冠攣縮(スパズム)、および血行再建から30日超を経過して発生した再狭窄・ステント血栓症・バイパスグラフト不全が含まれる。【実臨床への影響】 従来の2型に含まれていたSCAD、冠塞栓、冠攣縮などが「原発性」に統合された。これにより、急性冠病変を評価・同定するための冠動脈造影(CAG)や血管内イメージング(OCT/IVUS)、機能的評価の実施がより強力に推奨される。また、30日を超える遅発性のステント血栓症やグラフト不全は、手技合併症ではなく「de novoの原発性疾患」として扱われる。(2)2次性心筋梗塞(Secondary Myocardial Infarction) 定義・特徴:急性冠病変以外の「別の急性疾患」に伴う酸素需給ミスマッチ(頻脈性不整脈、重症高血圧、低酸素血症、貧血、ショックなど)によって生じる急性心筋虚血・障害である。【実臨床への影響】 単に「トロポニン上昇+虚血症状/心電図変化」のみでは確定診断とせず、可能な限りイメージングなどによる客観的エビデンスを求めることで過剰診断を防ぐ。診断の確定には、「急性冠病変を伴わない閉塞性冠動脈疾患(CAGで70%以上の狭窄/生理学評価FFR/iFRなどで血流制限を伴う50%以上の狭窄)の確認」や「画像検査(心エコー/心臓MRI[CMR]など)での虚血パターンに一致する新規の局所壁運動異常(RWMA)もしくは心筋viability消失」の証明が必要である。これらが証明されない、あるいは画像評価で正常な場合は「急性心筋障害」などにとどめ、不要な心筋梗塞診断や不適切な2次予防治療の介入を回避する。(3)手技関連心筋梗塞(Procedure-related Myocardial Infarction) 定義・特徴:経皮的(PCI、TAVIなど)または外科的心臓手技(CABG、弁手術など)の合併症として「30日以内」に生じる心筋梗塞である。【実臨床への影響】 第4版で設けられていた「99パーセンタイル上限基準値の5倍(PCI)/10倍(CABG)」といった統一カットオフ値は廃止された。術後のトロポニン上昇はほぼ全例でみられるため、バイオマーカーのみで機械的に診断することは取り止める。そして、カテーテル治療か外科手術かによらず共通の基準が適用される。確定診断条件として、「冠動脈合併症(枝閉塞、解離、no-reflow現象、ステント血栓症、グラフト閉塞など)の造影所見」または「心筋画像検査での新規RWMA/viability消失の証明」が必要である。ただし、手技中の発生、あるいは急性心筋梗塞に対する治療手技中に生じた場合は、上記両方を満たすことが求められる。2. 急性・慢性心筋障害の定義更新と性別基準値・急性心筋障害:心筋トロポニン(hs-cTn)IまたはTの「上昇および/または低下(変動)」を認め、少なくとも1つの値が性別ごとの99パーセンタイル上限値を超える場合と定義される。・慢性心筋障害:安定した臨床状況下で、2回以上のhs-cTnが性別ごとの99パーセンタイル上限値を持続的に超える場合と定義される。【実臨床への影響】 高感度hs-cTn I/T検査において、性別ごとの99パーセンタイル上限値(Sex-specific thresholds)を厳格に適用することが強調された。女性の基準値は男性より低く設定されているため、従来の共通基準値で生じていた女性の急性心筋障害・心筋梗塞の過小診断や治療遅延を防ぐ効果が期待される。3. MINOCA(非閉塞性冠動脈を伴う心筋障害)の位置付け変更 MINOCAの再定義:従来「Myocardial Infarction with Non-obstructive Coronary Arteries(非閉塞性冠動脈を伴う心筋梗塞)」とされていた名称が、「Myocardial Injury with Non-obstructive Coronary Arteries(非閉塞性冠動脈を伴う心筋障害)」へ更新された。【実臨床への影響】 CAGで50%以上の有意狭窄を認めない患者に適用される暫定的な「作業診断」であり、最終診断ではないことが明確化された。さらに、発症後2週間以内にCMRを実施することが推奨される。CMR施行後、実際に「心筋梗塞」と確定診断される割合は22~27%程度にとどまり、多くは急性心筋炎やタコツボ症候群などの非虚血性心疾患と同定されるため、早期CMRによる正確な病因鑑別と適切な治療選択が求められる。 上記以外にも、心電図基準およびそのほかの変更点として、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の心電図基準(V2~V3誘導:40歳未満男性≧2.5mm、40歳以上男性≧2mm、女性[全年齢]≧1.5mm、その他の誘導:男女問わず≧1mm)、急性冠閉塞(ACO)を示唆する等価心電図の変化、ICD-11コードとの完全整合などが示された。

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キシリトールが心血管イベント増加と関連/ESC2026

 人工甘味料のキシリトールは食品や口腔ケア製品などに広く使用されているが、一般集団における長期的な心血管安全性に関するエビデンスは限定的である。今回、カナダ・マギル大学のThomas M. Zheng氏らの研究グループが、北米と欧州の2つの大規模前向き観察コホートのデータを用いて解析した。その結果、血中キシリトール濃度が高い一般集団において、主要心血管イベント(MACE)リスクが有意に上昇することが示された。本研究結果は、ドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)において8月29日に発表された。 研究グループは、カナダの「Canadian Longitudinal Study on Aging(CLSA)」から7,651例(追跡期間6年)、および欧州の「European Prospective Investigation into Cancer(EPIC)-Norfolk研究」から1万59例(追跡期間30年)の計1万7,710例の非標的メタボロミクス(untargeted metabolomics)データを解析した。血中キシリトール濃度により四分位群(Q1~Q4)に分類し、初回MACE(心筋梗塞、脳卒中、死亡の複合)発症リスクとの関連を評価した。解析にはCox比例ハザードモデルを用い、年齢、性別、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙状況などの従来の心血管リスク因子を補正した調整ハザード比(aHR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者1万7,710例(平均年齢60.9歳)において、追跡期間中にCLSAコホートで2,950例、EPIC-Norfolkコホートで5,670例のMACEが発生した。・従来の心血管リスク因子を調整後、血中キシリトール濃度最高四分位群(Q4)は最低四分位群(Q1)と比較して、MACEリスクが有意に高かった。-CLSAコホートにおけるaHR:1.47(95%CI:1.15~1.86、p=0.002)。-EPIC-NorfolkコホートにおけるaHR:1.18(95%CI:1.09~1.27、p<0.0001)。・中間四分位群(Q2・Q3)を含めた解析においても、両コホートで血中キシリトール濃度が高くなるほどMACE発生率が高まる用量依存的な関連が示唆された。・サブグループ解析においても、ベースライン時の患者背景や既存の心血管メタボリック因子にかかわらず、一貫したMACEリスクの増加が認められた。 著者らは、過去の研究で示されたキシリトールの血小板凝集・血栓形成促進作用に触れ1)、明白な心血管リスク因子を持たない1次予防対象者においてもキシリトールが残留リスクを及ぼす可能性があると指摘している。発表者であるMarco Witkowski氏は、「人工甘味料は砂糖より健康に良いと考え消費されており、規制当局からも一般に安全と見なされている。しかし、一般集団における今回の長期的な知見は、われわれがキシリトールの心血管系の安全性についていかに知見が不足しているかを浮き彫りにしている」と、ESCのリリースの中で述べている。そのうえで、製品中のキシリトール含有量が増加し続ける現状を踏まえ、さらなる検証が必要であると結論付けている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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低用量リバーロキサバン、LAAO後の無症候性脳塞栓の減少や認知機能維持に効果/ESC2026

心房細動(AF)患者に対する左心耳閉鎖術(LAAO)後の抗血栓療法において、長期維持療法の最適なレジメンは確立されていない。今回、LAAO成功後のAF患者を対象に、低用量リバーロキサバン(10mg/日)が抗血小板療法と比較して無症候性脳塞栓(SCE)を減少させ、認知機能を維持しうるかを検討する「HALO-SCE試験」を実施。その結果、低用量リバーロキサバンは抗血小板療法と比較し、新規SCEの発生率を有意に低下させ、認知機能低下の抑制効果が認められることが明らかになった。本研究結果は、中国・南京医科大学第一附属病院のKexin Wang氏が8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表し、European Heart Journal誌オンライン版2026年8月31日号に同時掲載された。本研究は、研究者主導の前向き多施設共同無作為化比較試験である(アウトカム評価は盲検下)。中国本土の3施設において、2022年12月~2025年2月にWatchmanまたはWatchman FLXを用いた経皮的LAAOを受け、術後45日時点の心臓CTまたは経食道心エコー(TEE)でデバイス関連血栓(DRT)がなく、有意なデバイス周囲リーク(3mm以上)を認めないLAAO成功例164例を対象とした。対象患者は、低用量リバーロキサバン(10mg/日)群または抗血小板療法群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。全例でLAAO直後から45日評価まではリバーロキサバン15mg+アスピリン100mgが投与された。無作為化後、抗血小板療法群では180日までアスピリン100mg+クロピドグレル75mg/日(DAPT)を、その後365日までアスピリン単剤(SAPT)が投与された。拡散強調MRI(DW-MRI)および認知機能評価(MMSE、MoCA)は、LAAO後90日、180日、365日時点で実施した。主要評価項目は追跡期間中に新たに検出されたSCEの患者単位の発生率とし、副次評価項目は認知機能の推移、SCE病変負荷(SCE burden)、複合臨床アウトカム(全死亡・臨床的血栓塞栓イベント・大出血)などとした。主な結果は以下のとおり。・低用量リバーロキサバン群82例、抗血小板療法群82例に割り付けられた。評価可能な追跡MRIはリバーロキサバン群80例、抗血小板療法群78例で得られ、評価可能な認知機能評価は各群80例であった。・全体の平均年齢は69.2±7.1歳、女性36.6%、脳卒中既往77.4%であった。平均CHA2DS2-VAScスコアは4.2±1.3、平均HAS-BLEDスコアは2.4±0.7であった。・追跡期間中のMRI実施回数は、リバーロキサバン群2.4±0.7回、抗血小板療法群2.3±0.8回であり、有意差は認められなかった(p=0.328)。・新規SCEの患者単位の発生率は、リバーロキサバン群12.2%(10例)で、抗血小板療法群31.7%(26例)より有意に低かった。・新規SCEが2個以上検出された患者割合は、リバーロキサバン群11.0%(9例)、抗血小板療法群25.6%(21例)で、患者ごとの累積病変数の分布も両群間で有意に異なった。・累積病変径が10mm超の患者は、リバーロキサバン群では認められなかったのに対し、抗血小板療法群では20.7%に認められた。・認知機能低下(MoCAスコア2点以上の低下)は全体で20.0%(32例)に発生し、リバーロキサバン群5.0%(4例)、抗血小板療法群35.0%(28例)であった。・365日時点のモデル推定による群間差は、MMSEで2.56点(95%信頼区間[CI]:1.11~4.01、p<0.001)、MoCAで2.67点(95%CI:1.07~4.26、p=0.001)と、いずれもリバーロキサバン群で良好であった。・事前に規定した複合臨床アウトカムは、リバーロキサバン群2.4%(2例)、抗血小板療法群11.0%(9例)に発生した。臨床的血栓塞栓イベントはそれぞれ1.2%、7.3%、大出血は0%、3.7%であった。・12ヵ月時点の治療継続率は、リバーロキサバン群95.1%、抗血小板療法群85.4%であった。本研究結果について著者らは、「45日時点で成功が確認されたLAAO後の経口抗凝固療法適格患者において、低用量リバーロキサバン(10mg/日)は抗血小板療法と比較して新規SCEの患者単位の発生率を低下させ、12ヵ月までの認知機能の推移も良好で、複合臨床イベントも数値上少なかった」とまとめた。

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LDL-C<55mg/dLでもMACE再発、リスク因子は?/ESC2026

動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の2次予防では、超高リスク患者においてLDL-C<1.4mmol/L(55mg/dL)の達成が推奨されている。一方で、LDL-Cを良好に管理しても動脈硬化の進展や心血管イベントの再発は起こりうる。今回、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後にLDL-C<1.4mmol/Lを達成した冠動脈疾患(CAD)患者におけるASCVD再発の臨床的特徴を検討した結果、主要心血管イベント(MACE)は6.2%に発生し、動脈硬化性疾患(polyvascular disease:PVD)がMACEと強く関連する一方、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/L(40mg/dL)の達成はMACEリスク低下と関連していたことが明らかになった。本研究結果は、国立循環器病研究センター 循環器内科の片岡 有氏が8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)の2次予防のセッションで発表、Journal of Clinical Lipidology誌2026年8月号にも掲載された。本研究は、2017年1月1日~2022年8月31日にPCIを受けたCAD患者を対象とした多施設共同後ろ向き観察研究である。PCI後2ヵ月時点のLDL-Cデータがない患者、3年時点の臨床フォローアップがない患者、PCI後2ヵ月以内にMACEを発症した患者、非動脈硬化性のCAD患者などを除外。PCI後2ヵ月時点でLDL-C<1.4mmol/Lを達成した患者を解析対象とし、MACE発生例と非発生例の臨床背景、脂質低下療法、リスク因子管理を比較した。主要評価項目は、心臓死、非致死的心筋梗塞、非責任病変に対する臨床的適応による冠動脈血行再建からなるMACEとした。主な結果は以下のとおり。・解析対象は780例で、平均年齢70.1歳、男性81.7%であった。高血圧は73.7%、脂質異常症は65.2%、2型糖尿病は37.1%、慢性腎疾患は50.3%に認められ、心筋梗塞既往は11.9%、多枝病変は31.0%であった。・観察期間中央値1,632日(四分位範囲[IQR]:1,011~2,502)で、MACEは48例(6.2%)に発生した。内訳は、心臓死1.1%、非致死的心筋梗塞1.4%、非責任病変に対する臨床的適応による冠動脈血行再建4.7%であった。・LDL-C<1.4mmol/L達成後に発生したMACEの81.2%(39/48例)は、PCI後2年以内に発生した。また、心臓死9例はすべてPCI後6ヵ月以内に発生した。・MACE発生例では、非発生例と比較してPVDの割合が高かった(72.9%vs.17.3%、p<0.001)。下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)もMACE発生例で多く(54.2%vs.4.0%、p<0.001)、CAD+脳血管疾患(CVD)+LEADの併存も高頻度であった(12.5%vs.1.6%、p<0.001)。一方、従来の冠危険因子および多枝病変などの臨床的特徴に有意差はみられなかった。・PCI後2ヵ月時点で、全体の94.8%がスタチン、73.3%が高強度スタチンで治療されていた。エゼチミブの使用はMACE発生例で非発生例より少なかった(45.8%vs.63.2%、p=0.023)。PCSK9阻害薬の使用割合は、MACE発生例4.1%、非発生例5.1%であった(p=0.770)。・PCI後2ヵ月時点で治療中LDL-C<1.0mmol/Lを達成していた割合は、MACE発生例で非発生例より低かった(16.7%vs.33.2%、p=0.018)。治療中LDL-CはMACE発生例で数値的に高かった(44.1±10.5 vs.41.6±9.3mg/dL、p=0.074)。・多変量Cox解析では、PVDがMACE発生と独立して関連していた(ハザード比[HR]:10.74、95%信頼区間[CI]:5.65~20.39、p<0.001)。一方、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/Lの達成はMACEリスク低下と独立して関連していた(HR:0.37、95%CI:0.17~0.80、p=0.010)。・脂質低下療法の強度を追加調整したモデルでも、PVD(HR:11.02、95%CI:5.80~20.93、p<0.001)およびLDL-C<1.0mmol/L(HR:0.39、95%CI:0.18~0.85、p=0.019)の関連は一貫していた。・PVDの表現型別では、CAD単独を基準とした場合、CVD併存はMACEリスク上昇と有意に関連しなかった(HR:1.63、95%CI:0.46~5.75、p=0.447)。一方、LEAD併存はMACEリスク上昇と強く関連し(HR:21.03、95%CI:10.74~41.17、p<0.001)、CVD+LEAD併存でも同様であった(HR:23.75、95%CI:8.51~66.26、p<0.001)。・PVDを有する162例では、32.1%がLDL-C<1.0mmol/Lを達成していた。PVD患者において、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/Lの達成はMACE発生頻度の低下と関連し(Log-rank p=0.032)、多変量解析でもMACEリスク低下と独立して関連していた(HR:0.36、95%CI:0.14~0.87、p=0.024)。本研究結果について著者らは、LDL-C<1.4mmol/Lを達成したCAD患者においても心血管リスクは残存しており、とくにPVDはMACE発生と独立して関連していたとまとめた。また、PCI後2ヵ月時点の治療中LDL-C<1.0mmol/LがMACEリスク低下と関連していたことから、CAD患者におけるASCVD再発予防では、さらに低いLDL-C目標を考慮しうると結論付けた。

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同種iPS細胞由来の心筋細胞と間質細胞から成るパッチ型心筋移植片BioVATは心不全治療に有望かも(解説:原田和昌氏)

 BioVATは同種iPS細胞由来の心筋細胞と間質細胞から成るパッチ型心筋移植片で、LVEFが低下した心不全患者における心筋再筋肉化を目的とする。ドイツ・ゲッチンゲン大学のZimmermann氏らはBioVAT-HF研究において、ドイツの2施設で非盲検第I/II相研究を実施し、外科的なBioVAT移植が3ヵ月の時点で有意な標的壁厚の増加とLVEFの上昇、健康状態の改善をもたらしたと報告した。 対象はLVEF 35%以下の症候性の重症心不全で、少なくとも1つの左室セグメントに壁運動の低下または異常を認め、ガイドラインに基づく薬物療法に抵抗性である年齢18~80歳の患者であった。被験者は、5、10、20単位の人工心筋から成るBioVAT移植片による治療を受け、全例に免疫抑制療法を行った。26例(平均年齢59歳、男性23例、平均罹患期間4.6年)を登録し、20例がBioVAT移植による治療を受けた。 全患者で有害事象が発現し、196件の有害事象のうち57件が重篤な有害事象であった。3例(5件)で心室性頻拍を認めたが、BioVAT移植と関連がない可能性が高かった。また、心室細動が発生した患者はいなかった。研究期間中に3例が死亡し(血管麻痺を伴うSIRS、新型コロナウイルス感染症、大動脈解離)、BioVAT移植と関連がないと判定された。また、1例が心臓移植を受けた。4例で免疫抑制療法が中止された。中止理由は、植込み型左室補助人工心臓(LVAD)の装着が2例、腎不全が1例、尿路上皮がんが1例であった。BioVATの安全な最大用量による治療を受けた16例のうち、12例が事前に規定された中間解析のための3ヵ月間の追跡調査を完了した。3つの有効性の主要エンドポイントは3ヵ月の時点でいずれも有意に改善した。標的壁厚の最小二乗平均の値は4.5mm(90%信頼区間:3.7~5.4、p<0.001)増加し、LVEFは3.9%ポイント(0.9~6.8、p=0.04)上昇した。また、KCCQ-OSSは6.7点(1.0~12.5、p=0.06)上昇した。 心筋再生医療において、自己の骨格筋芽細胞シートを用いた「ハートシート」は10年を経て有効性の基準を満たさず販売中止となった。しかし、同種iPS細胞由来の心筋細胞をシート状に加工した心筋細胞シート「リハート」が最近、条件および期限付き製造販売承認を取得した。これには短期間の免疫抑制療法を併用する。一方、同種iPS細胞由来の心筋細胞を球状の微小組織にした心筋球を移植する「ハートシード」(免疫抑制療法の併用が必要)を用いた第I/II相試験であるLAPiS試験の結果がESC2026で発表された。BioVATは同種iPS細胞由来の心筋細胞と間質細胞から成るパッチ型心筋移植片(オルガノイド)を用いたという新味はあるものの、小規模な単群試験であり有効性もサロゲートエンドポイントであることから、本試験にて効果の持続性や長期的安全性を判断することは難しい。

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第74回 「若返り注射」は本物か?一流医学誌が警鐘を鳴らす、アンチエイジングの現在地

「老化は治療できる」「10歳若返る」。そんな言葉を目にする機会が、この数年で急激に増えました。実際、老化研究は科学的に大きく進歩しています。しかし、それが「今すぐ買える若返り治療」の存在を意味するわけではありません。2026年8月にNature Medicine誌が発表した論説は、老化研究者自身に向けて「根拠のない主張に警戒せよ」と呼びかける、異例のメッセージを出しているので、ご紹介します1)。老化研究の考え方と、NAD+に突きつけられた疑問現代の老化研究には、心臓病、認知症、がんなど年齢とともに増える病気の背景に「老化の共通メカニズム」があるという前提があります。慢性的な炎症、細胞の老化、細胞内の「ごみ処理」機能の低下などがその代表で、ここに介入すれば多くの病気をまとめて予防できるのではないか、というのが期待の根拠です。ただし論説では、「介入の候補は数多くあるが、ヒトで臨床的な有益性を示したデータは依然として乏しい」と明言されています1)。その象徴が、サプリメントとして広く販売されているNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)です。動物実験では健康寿命を延ばす効果が報告され、「加齢で減るから補う」という理屈で宣伝されてきました。しかしヒトを対象とした臨床試験では、病気の進行を変えるような効果はまだ示されていません。さらに2026年の研究では、血中NAD+濃度は加齢によって低下せず安定していたと報告され、「減るから補う」という前提そのものに疑問符がついた形です2)。「若返りペプチド」をめぐる米国の混乱論説がもう一つ大きく取り上げているのが、「ペプチド注射」をめぐる議論です。ペプチドとは、アミノ酸がつながった小さなタンパク質の断片で、「若返り」「回復促進」などの名目でSNSのインフルエンサーが宣伝しています3)。たとえばTB-500という製品は、体内にあるサイモシンβ4という物質に関連し、炎症を抑える作用があると考えられています。重要なのは、こうしたペプチドは米国食品医薬品局(FDA)に承認されていないという点です。「研究用」という名目で流通するグレーマーケットの製品で、製造元も品質管理も不明確です。2026年7月、FDAの諮問委員会は、7種類のペプチドを薬局での調剤として認めるべきかを審議しました。FDAの科学者は「安全性と有効性の十分な証拠があるとは言えない」と慎重論を唱えましたが、委員会は拘束力のない投票で7種類のうち6種類を認めるよう勧告しました4)。論説が問題視しているのは、委員会の「中立性」です。報道によれば、委員のうち6人はペプチドを販売しており、1人は調剤薬局の薬剤師でした4,5)。利害関係者が自らの商品を審議した構図で、その客観性は広く疑問視されています。「専門家が推奨した」という情報の裏に誰の利益があるのかを見る視点は、日本にいる皆様にとっても重要になるでしょう。本当に必要なのは「老化を測るものさし」では、なぜアンチエイジング治療の証明はこれほど難しいのでしょうか。病気に対する薬なら1~2年の臨床試験で効果を確かめられますが、「健康寿命や寿命が延びたか」を確かめるには数十年かかり、現実的に不可能だからです。そこで必要になるのが、老化の進み具合を客観的に測る「代理指標」です。注目されているのが「老化時計(エイジングクロック)」で、血液中のタンパク質や代謝物、画像検査などから臓器や細胞の「生物学的年齢」を推定します。握力や運動能力といった身体機能テストも、同じ目的で使えると考えられています。ただし注意点があります。老化時計が示す「老化の速さ」が将来の病気のリスクと関連することはわかっていますが、「治療で老化時計が若返れば本当に病気が減るのか」を検証した研究はまだ初期段階です。また、検査によって、その再現性もまちまちです。論説は「どの時計が信頼できるのかを見極めることが、この分野の緊急の研究課題だ」と位置づけています1)。その一歩として紹介されているのが、総額1億100万ドル、7年間にわたる「XPrize Healthspan」という国際コンペです1)。筋力、認知機能、免疫機能を厳密に測る枠組みをまず作り、そのうえで50~80歳の人のこれらの機能を「最低10年分」回復させる治療法を探す挑戦です。裏を返せば、「ものさし」自体がまだ完成していないのが現在地だといえます。私たちが今、知っておくべきこと論説は最後に、「不老長寿の薬を求める話は古代からあり、今のウェルネス文化にもその幻想の気配がある」と指摘しています1)。SNSで流れる「若返り」情報の多くは、動物実験の結果や理屈の段階の話を、人間で証明済みであるかのように語っているのが実情です。現時点で確かめられているのは、老化を測る信頼できる指標も、老化そのものを治す承認された治療も、まだ存在しないということです。一方で、運動、睡眠、禁煙、適切な食事といった地味な習慣が病気を減らし寿命を延ばすことは、何十年分ものデータで裏付けられています。派手な注射やサプリに飛びつく前に、「誰が、どんなデータで、どこまで証明したのか」を一度立ち止まって問うこと。それが、アンチエイジングの現在地において、もっとも大切なことかもしれません。1)Anti-aging interventions need less hype and more clinical evidence. Nat Med. 2026;32:2693.2)Tretowicz MM, et al. Human whole-blood NAD+ levels do not vary with age or lifestyle interventions. Nat Metab. 2026;8:1282-1290.3)Cox L, et al. Influencers are promoting dangerous peptides on social media - and regulators are struggling to keep up. The Conversation. 2026 May 27.4)Jewett C, et al. F.D.A. panel's vote on peptides raises concerns about a prescribing boom. The New York Times. 2026 Jul 27.5)Lawrence L, et al. Longevity, wellness physicians named to panel advising FDA on peptides. STAT+. 2026 Jun 29.

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日本人片頭痛患者の特徴と治療パターンが判明~OVERCOME研究

 片頭痛が個人の生活に及ぼす負担は、その人の背景と関連している。しかし、日本においては、年齢、性別、就労状況、収入、家族の介護といった要因と患者報告アウトカム(PRO)や片頭痛の治療パターンとの関連に関するエビデンスは限られている。大分・おおば脳神経外科・頭痛クリニックの大場 さとみ氏らは、日本における片頭痛の疫学・治療・ケアに関する観察研究であるOVERCOME(Japan)第2回研究のデータを用い、人口統計学的サブグループごとの片頭痛による負担および治療薬の使用状況について解析を行った。Pain and Therapy誌オンライン版2026年7月14日号の報告。 研究参加者は、自身の人口統計学的・臨床的特性に加え、Headache Impact Test-6(HIT-6)、片頭痛障害評価尺度(MIDAS)、Migraine-Specific Quality of Life Questionnaire version 2.1(MSQ v2.1)、片頭痛発作間欠期負担スケール(MIBS-4)、Impact of Migraine on Partners and Adolescent Children ScaleといったPRO尺度への自己報告を行った。また、片頭痛に対するOTC薬および処方薬の使用状況、頭痛に関連する費用についても報告した。性別、就労状況、月経関連片頭痛の有無および頻度、個人および世帯の年間収入、年齢、高齢者の介護状況の各項目について、記述統計を報告した。 主な結果は以下のとおり。・女性、無職、月経関連片頭痛、個人または世帯収入の低さ、高齢者の介護を行っていることは、片頭痛による負担を増大させ、処方薬の使用に影響を及ぼす傾向がみられた。・具体的には、男性は女性と比較し、トリプタン製剤(11.7%vs.8.7%)、予防薬(18.3%vs.11.2%)の使用率が高い傾向が認められた。・また、無職の女性ではMIDASグレードIVの割合が最も高く(14.1%)、月経関連片頭痛を有する女性は、そうでない女性と比較し、MIBS-4で重度の負担と判定される割合が高い傾向が認められた(36.3%vs.27.8%)。・さらに、家族の介護を行っている患者は、行っていない患者と比較し、MIBS-4で重度の負担と判定される割合(39.2%vs.26.0%)や処方薬の使用率が高い傾向が認められた。・性別は、就労状況や収入のサブグループ内においても、片頭痛による負担や治療パターンに影響を及ぼしていることが示唆された。 著者らは「これらのデータは、特定の社会人口統計学的グループにおいて、片頭痛による負担がより大きく、効果的な治療やケアへのアクセスが制限されている可能性があることを示唆している。本研究の結果が、医療従事者や社会全体での片頭痛患者の特定、臨床ケアにおける潜在的な格差の解消に役立つことが期待される」と結論付けている。

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5人に1人はLp(a)高値、CVD死を見落とさないために~Lp(a)の今をインタビュー(前編)

『2022 EAS Lp(a) Consensus Statement』を皮切りに、2025年3月にはLp(a) Global Summitにて『Lp(a)検査と管理に関するブリュッセル国際宣言』が採択された。さらに同年8月の『2025 ESC/EAS Focused Update』、翌2026年3月の『ACC/AHA脂質異常症ガイドライン』改訂へと続き、国際的にLp(a)測定の推奨強化へ向けた大きな潮流が生まれている。では、日本における現在のLp(a)測定のあり方は、諸外国と比較してどのような状況にあるのだろうか。日本版コンセンサスステートメントの発出を目前に控え、国内でLp(a)測定を普及・啓発していくうえで留意すべきポイントとは――。今回、Lp(a)研究の第一人者であるFlorian Kronenberg氏(オーストリア・インスブルック医科大学 遺伝疫学研究所 教授/所長)が来日。ケアネットの単独インタビューに応じ、Lp(a)測定の臨床的意義や最新の知見について語った。※本編は2回にわたってお届けします。後編「Lp(a)測定での4つの重要プロセス、Lp(a)研究の第一人者がアドバイス」は8月27日公開予定です。INDEXLp(a)がこれほどまで注目される理由Lp(a)が心血管リスクを高めるメカニズムLp(a)高値の驚くべき頻度、Lp(a)の特性と啓発すべき対象者とはCVD死の多くは“予防可能”、Lp(a)測定を促す取り組み―Lp(a)がこれほどまで注目される理由欧州全体において、心血管疾患(CVD)が死因第1位であるという深刻な問題は広く認識されています。同時に、これらの死亡の多くは予防可能であることが分かっています。ところがCVD有病率の3分の1はコレステロールが原因である一方で、Lp(a)測定の理解、家族性高コレステロール血症(FH)への治療介入不足が原因で十分にコントロールできていないこと、一般市民における認知不足などが課題となっています。われわれは2025年3月24~25日にベルギー・ブリュッセルで開催された「Lp(a) Global Summit」において『Lp(a)検査と管理に関するブリュッセル国際宣言』を行いました1)。その宣言および複数のガイドライン推奨も踏まえて、欧州委員会(EU)は「EU Safe Hearts Plan(欧州心血管疾患対策計画)」において、加盟国に対してスクリーニング項目に何を含めるべきかなど、非常に明確な指針を打ち出し、そこにはLp(a)高値やFHのスクリーニングが盛り込まれました。それと同時に、上述の課題解決のためにもEUは国民自身が「リスクを知る」ことを非常に重要視しています。リスクを認識すれば、健康へのモチベーションやヘルスリテラシーが向上し、最終的には治療アドヒアランスの向上につながると捉えています。上記計画の中では何度もLp(a)やFHについて言及されており、加盟国がプログラムを実装できるよう委員会がサポートしています。具体的な認知向上への取り組みについては後述します(CVD死の多くは“予防可能”、Lp(a)測定を促す取り組み)。―Lp(a)が危険な理由、そのメカニズムと心血管リスクの過小評価Lp(a)濃度と心血管リスクには明確な相関関係があることが知られており、Lp(a)濃度が高くなればなるほど、心筋梗塞や脳卒中リスクが比例して高くなります。とくに125nmol/L(50mg/dL)を超えると、リスクが格段に跳ね上がります。その理由は、Lp(a)粒子1個あたりの動脈硬化惹起性が、通常のLDL粒子と比較して格段に高いためです。構造を見るとLDL粒子に似ていますが、Lp(a)には「アポリポ蛋白(a)」という特別なタンパク質が結びついており、さらに、多くの「酸化リン脂質(OxPL)」を搬送しているため、非常に動脈硬化を起こしやすい性質を持っているのです2,3)。(図1)注意すべきLDL様粒子の構造4)画像を拡大するただし、これまでの研究結果5)から、Lp(a)が高値であっても従来の一般的なリスク因子(高血圧、糖尿病、過体重、不健康な生活習慣など)に早期介入することで、CVDの絶対的生涯リスクが大きく低減することが示されています。たとえば、従来のリスク因子を多く持っている人でも、Lp(a)が低ければ、生涯の心血管イベントの絶対リスクは25%程度に留まります。一方で、同じように従来の一般的なリスク因子を多く持ち、Lp(a)が150mg/dLの高値である場合、生涯の絶対リスクは68%にまで跳ね上がってしまいます。もし、医師がその患者のLp(a)の数値を知らなければ、心血管リスクを劇的に「過小評価」してしまうことになります。しかし、従来の危険因子を持たずLp(a)濃度のみが高い人の場合、心血管イベントの生涯リスクは、欧州一般人口における心血管疾患死亡の平均リスクよりも低いんです。人々が過度に不安になるのを避けるためにも、また健康的なライフスタイルを継続し、可能な限り危険因子を増やさないよう心掛けてもらうためにも、この点は伝えるべきです。これに対し、従来の危険因子を有し、かつLp(a)が高い人に対しては、危険因子プロファイルの改善に徹底的に取り組むよう助言すべきです。(図2)Lp(a)濃度が高くても、心血管疾患リスク増加と必ずしも関連しない画像を拡大する(表1)UK Biobankデータ[図2参照]に基づく、Lp(a)と従来リスク因子の有無による介入方法画像を拡大する―Lp(a)高値の驚くべき頻度、特性や啓発すべき対象者とはLp(a)を啓発するにあたり、医療者(医師)側にも認識不足というギャップがあるため、医師と一般公衆の双方への啓発が必要です。現在、Lp(a)はさまざまなコンセンサスステートメントやガイドラインに織り込まれるようになり、「成人は生涯に少なくとも一度は必ずLp(a)を測定すべきだ」という方針が示されています。というのは、Lp(a)高値の頻度は“5人に1人”と言われており、決して“珍しい状態”ではないからです。たとえば、FHの発症頻度は地域によって異なりますが250~350人に1人と言われています。それに比べ、Lp(a)高値の人は周りを見渡せば必ず身近に該当者がいるレベルです。つまり、患者自身がLp(a)高値だと知ることは、適切な対処ができるという意味で「特権」とも言えるのです。次に、『生涯に1度の測定』が推奨される理由は、遺伝的にほぼ90%決定付けられ、生活習慣(食事や運動)によって数値を下げることはできないからであり、一般的には、信頼性が高く十分に標準化された測定法が用いられていることを前提とすれば、多くの場合、生涯に一度の測定で十分です。Lp(a)値には±20%程度の変動がみられますが、これは測定技術上の変動、検体採取方法(前分析条件)、および一部の生理学的変化に関連するものであるため、この変動を過大評価すべきではありません。ただし、以下の患者では、Lp(a)の再測定が推奨されます。◯腎機能障害の患者Lp(a)値が上昇。とくにネフローゼ症候群では、Lp(a)値が3~4倍に上昇することがある◯肝機能障害のある患者Lp(a)は肝臓で産生されるため、肝機能障害の場合にはLp(a)値が低下するこのほかにも、再測定の意義が問われることが多い対象者について、私見を交えながらお伝えしますと、以下のようになります。(表2)現時点での患者背景ごとの再測定の是非画像を拡大する―CVD死の多くは“予防可能”、Lp(a)測定を促す取り組みこれまでに説明してきたとおり、CVDとの戦いにおいて最も重要な柱となるのは、Lp(a)などのリスク因子のスクリーニングです。Lp(a)やコレステロール、血圧などの値は、心筋梗塞や脳卒中を発症するよりもかなり前の段階から、高値を示しているため、これらのリスク因子を早期に検出し、対処することがきわめて重要なのです。そのLp(a)測定に関する認知向上には多くの方法があります。Lp(a)に関する国内のコンセンサスステートメントを作成すること(日本でも数週間以内に利用可能になる予定)Lp(a)を、より幅広い医師を対象とした脂質異常症あるいは心血管疾患診療に関するガイドラインに組み込むこと(これは、脂質代謝および脂質管理・治療というより広い文脈の中にLp(a)を位置付けることを含む)さまざまな診療科・専門領域の学会・学術集会でLp(a)に関する講演の実施、また、Lp(a)測定を提供することLp(a)を説明するための、医師向けおよび患者向けの優れた情報資材を作成することLp(a)およびASCVDリスクに関する典型的な症例[Lp(a)の重要性を強く印象付けるもの]を紹介しながら、メディアでの注目を集めること患者団体と連携し、Lp(a)の重要性が伝わるような症例を紹介・発信することLp(a)アンバサダーグループを構築すること繰り返し、繰り返し、繰り返し…あらゆる機会を捉えて発信し続けることアンバサダーグループは、Lp(a)とともに生きる経験を持ち、Lp(a)について十分な教育を受けた人々です。私たちはFH EuropeおよびLp(a) International Task Forceにおいて、この取り組みを行っています。そして、世界中の人々に啓発を促すため、私自身は年間70回ほど、Lp(a)について講演を行っています。後編に続く―――。 参考 Kronenberg F, et al. Eur Heart J. 2022;43:3925-3946. Kronenberg F,et al. Atherosclerosis. 2023;374:107-120. 1) FH Europe Foundation:Say YES to better cardiovascular health across the world 2) Kronenberg F, et al. J Int Med. 2013;273:6-30. 3) Koschinsky ML, et al. Atherosclerosis. 2022;349:92-100. 4) Koschinsky ML, et al. Pharmacol Res. 2023;194:106843. 5) Kronenberg F, et al. Curr Atheroscler Rep. 2024;26:75-82.

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gBRCA病的バリアントを有する若年早期乳がん、周術期化学療法の種類と生存アウトカムの関係

 生殖細胞系列BRCA1/2病的バリアントを有する40歳以下のHER2陰性(HER2-)早期乳がん患者において、周術期化学療法のレジメン間で生存アウトカムに統計学的な有意差はみられないことが、国際多施設共同後ろ向きコホート研究(BRCA BCY Collaboration研究)の結果で示された。イスラエル・Sheba Medical CenterのRinat Bernstein-Molho氏らが、European Journal of Cancer誌オンライン版2026年8月11日号に報告した。 本研究では、2000~2020年にStageI~IIIのHER2-乳がんと診断された40歳以下のBRCA1/2病的バリアント保持者を対象に、アントラサイクリン+タキサン系、アントラサイクリン系(タキサンなし)、非アントラサイクリン系の各術前/術後化学療法による無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を評価した。また、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)においてはプラチナ製剤の使用とアウトカムとの関連も評価した。 主な結果は以下のとおり。・109施設から4,200例が解析対象となり、うち58.7%がTNBCであった。・追跡期間中央値は8.1年(四分位範囲:4.7~12.6年)であった。・使用された化学療法レジメンの割合は、アントラサイクリン+タキサン系が74.4%、アントラサイクリン系(タキサンなし)が19.3%、非アントラサイクリン系が6.3%であった。また、TNBCでは19.8%でプラチナ製剤が投与されていた。・多変量調整後、アントラサイクリン系(タキサンなし)とアントラサイクリン+タキサン系との間で、DFS(調整ハザード比[aHR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.73~1.05)およびOS(aHR:1.20、95%CI:0.87~1.67)に有意差は認められなかった。・同様に、アントラサイクリン系(タキサンなし)と非アントラサイクリン系の比較においても、DFS(aHR:1.07、95%CI:0.82~1.38)およびOS(aHR:1.16、95%CI:0.68~2.00)に有意差は認められなかった。・TNBC症例において、プラチナ製剤の使用とアウトカム改善の間に関連はみられなかった。 著者らは今回の結果について、同患者集団における化学療法のde-escalation戦略を評価する今後の前向き研究に有益な情報をもたらすものとしている。

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尿検査により前立腺がんの監視療法を正確にモニタリング

 低悪性度前立腺がんの非侵襲的モニタリングに尿中バイオマーカー検査を用いることで、生検および画像検査の必要性を減らせる可能性があるという研究結果が、「The Journal of Urology」に5月20日掲載された。 米ヴァンダービルト大学医療センターのJeffrey J. Tosoian氏らは、監視療法(AS)中の患者における生検の必要性を判定するため、直腸指診を行わない尿検査を開発し、検証した。ASの一環として生検が予定されているグレードグループ(GG)1の前立腺がん患者330人を対象に、生検の必要性を判定する尿検査の診断性能および臨床的影響を、マルチパラメトリックMRI(mpMRI)と比較した。 その結果、生検では、患者の9.4%でGG3以上へのグレード上昇が、37%でGG2以上へのグレード上昇が認められた。MyProstateScore 2.0-Active Surveillance(MPS2-AS)バイオマーカーモデルの曲線下面積は、mpMRIと比較して、GG3以上への上昇(0.82対0.73)とGG2以上への上昇(0.74対0.64)のいずれについても高かった。生検前にMPS2-ASを使用した場合には、不必要な生検の約3分の2(64%)が回避でき、GG3以上への上昇の見逃しは3.2%にとどまると推定された。一方、Prostate Imaging Reporting and Data System(PI-RADS)3以上を基準とした場合には、不必要な生検の回避は50%、GG3以上への上昇の見逃しは18%と推定された。MPS2-ASの性能は、確認生検および監視生検、黒人および非黒人患者など、臨床的に関連するサブグループ全体で一貫していた。 Tosoian氏は、「本研究結果は、低悪性度前立腺がんのモニタリングを受けている患者において、この尿検査を用いることで、治療を必要とする高悪性度がんの迅速な検出を損なうことなく、侵襲的な生検の必要性を減らせる可能性を示している」と述べている。 なお、複数の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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肺動脈性肺高血圧症、ralinepagが臨床的悪化リスクを半減/Lancet

 現在の標準治療を受けている肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者において、ralinepagはプラセボと比較し、臨床的悪化の初回イベントリスクを有意に低下させたが、有害事象による治療中止の発現割合は高かった。米国・ミシガン大学のVallerie V. McLaughlin氏らADVANCE OUTCOMES Investigatorsが、30ヵ国の169施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「ADVANCE OUTCOMES」の結果を報告した。PAHは肺血管抵抗の上昇を特徴とする希少かつ進行性の疾患であり、右心不全や早期死亡に至る可能性がある。ralinepagは選択的プロスタサイクリン(IP)受容体作動薬で、1日1回経口投与のPAH治療薬として開発された。Lancet誌オンライン版2026年7月28日号掲載の報告。主要評価項目は臨床的悪化 研究グループは、2022欧州心臓病学会(ESC)/欧州呼吸器学会(ERS)ガイドラインに基づきPAHと診断され、平均肺動脈圧>20mmHg、肺動脈楔入圧≦15mmHg、肺血管抵抗>2Wood単位、WHO機能分類クラスII~IVの18歳以上の患者を、ralinepag群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 無作為化の層別因子は、ベースラインにおける6分間歩行距離(6MWD)、PAHの病因、およびPAHに対する経口併用療法であった。治験の依頼者、患者、および治験の実施に直接関与するすべての担当者は、試験薬およびすべての割り付けについて盲検化された。 投与は1日1回50μgから開始し、治験責任医師の判断により最大耐量に達するまで毎週50μg単位で増量調整した。 主要評価項目は、臨床的悪化の初回イベント発生であった。臨床的悪化は全死因死亡、PAHの悪化・右心不全・またはその両方による入院、非経口または吸入プロスタサイクリン製剤の投与開始、疾患進行または長期的な臨床反応不十分の複合と定義した。 有効性解析対象集団は、無作為化されたすべての患者(FAS)、安全性解析対象集団はFASのうち試験薬を少なくとも1回投与された患者とした。ralinepagはプラセボと比較して臨床的悪化のリスクを55%有意に低下 2019年1月24日~2025年6月20日に、スクリーニングを受けた1,037例中728例が登録され無作為化された。全例が試験薬の投与を1回以上受けたが、規制上の課題およびデータの完全性に関する懸念から中国の施設で無作為化され治療を受けた41例を除外し、687例が有効性および安全性の解析対象集団に包含された(ralinepag群350例、プラセボ群337例)。患者背景は、ベースラインの6MWD平均値は438.9m(SD 104.8)で、548例(80%)がPAHに対する2剤併用療法を受けていた。 追跡期間中央値は、ralinepag群85.0週(四分位範囲[IQR]:27.6~160.9)、プラセボ群78.4週(IQR:34.6~137.0)であった。 臨床的悪化の初回イベントは、ralinepag群で350例中64例(18%)、プラセボ群で337例中121例(36%)に認められ、ハザード比は0.45(95%信頼区間:0.33~0.62、p<0.0001)であった。 臨床的悪化の構成要素で群間差が数値的に最も大きかったのは、疾患進行、非経口または吸入プロスタサイクリン製剤の投与開始、長期的な臨床反応不十分であった。 治療中止の主な理由は有害事象で、有害事象による治療中止はralinepag群で65例(19%)、プラセボ群で10例(3%)に発現した。重篤な有害事象の発現は、ralinepag群で98例(28%)、プラセボ群で104例(31%)、死亡に至った有害事象はそれぞれ15例(4%)および14例(4%)に認められた。

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進行扁平上皮肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬+血管新生阻害薬の二重特異性抗体ivonescimabの効果(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 非小細胞肺がん(NSCLC)の約25~30%を占める扁平上皮がんは、腺がんと比較して治療選択肢が限定的であり、肺がん領域の大きな課題である。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)により予後は改善したものの、長期生存を期待できる症例は依然として限られている。 腺がんにおいて抗腫瘍効果を発揮してきたベバシズマブなど血管新生阻害薬の併用は、扁平上皮がんにおいては中枢型病変や空洞形成、大血管侵襲に伴う致死的な出血リスクとなっている。 このような背景の中、注目されているのがPD-1とVEGFの両方を標的とする二重特異性抗体(bispecific antibody)ivonescimabである。ivonescimabは、PD-1とVEGFの両方が存在する腫瘍微小環境において結合親和性が飛躍的に高まる協調的結合(cooperative binding)という特殊な構造特性を有する。全身性のVEGF阻害による毒性を抑えつつ、腫瘍局所で強力な免疫活性化と血管正常化を同時に引き起こす設計となっている。 本稿で取り上げるHARMONi-6試験は、未治療の進行扁平上皮NSCLCを対象にivonescimab+カルボプラチン+パクリタキセルの有効性と安全性を、対照群であるチスレリズマブ(PD-1阻害薬)+カルボプラチン+パクリタキセルと比較検討した第III相試験である。すでに無増悪生存期間(PFS)の延長が報告されているが、今回全生存期間(OS)の中間解析結果が公表された。結果として、中国における既存の標準治療を対照群として死亡リスクを34%低減させ、OS中央値27.9ヵ月という数字のインパクトはきわめて大きい。 さらに注目すべきは、PD-L1陰性例においてもハザード比(HR)0.64とOS延長効果が示された点である。PD-L1陰性群では従来のICI療法の効果を認めにくいが、VEGF阻害による抗腫瘍免疫の誘導・血管正常化とPD-1阻害が抵抗性を克服したものと考える。 扁平上皮がんに対するベバシズマブ投与は、致死的出血のリスクから実臨床では避けられていた。本試験において、ivonescimab群のGrade3以上の出血発生率は3%(対照群は1%)であった。適応基準では「明らかな腫瘍壊死・空洞形成があり大出血リスクが高いと判断された症例」や「大血管侵襲例」は除外されているが、ベースラインで空洞を認めた症例(ivonescimab群24例)においても、認められた気道出血はすべてGrade1~2の軽度なものであったと報告されている。筆者らは扁平上皮がんに対しても血管新生阻害薬を安心して届けられるといったメッセージを残しているが、その出血の頻度から日本の実臨床で投与するには一抹の不安が残る。 ivonescimabのメリットを考えると、サブグループ解析において、PD-L1 TPS<1%(HR:0.64)や転移部位数3ヵ所以上(HR:0.47)の患者群できわめて良好な傾向がみられた。PD-L1陰性で腫瘍量が多く、複数臓器に転移を認める扁平上皮がんに遭遇した際、従来治療では効果を期待できずに頭を悩ませていたことだろう。このような「ICI単独/併用では不十分な群」に対して、ivonescimab+化学療法は強力な第1選択となる可能性がある。 注意が必要なのは、本試験では登録患者の93%が男性であり、女性の割合がきわめて低い点や、75歳以上の高齢者やPSが2以上のフレイル症例は除外されている点などである。また中国の50施設で実施された地域限定の試験であり、日本の肺がん症例にそのまま当てはめることは難しく、現在進行中のグローバル第III相試験「HARMONi-3試験」の成果が待たれる。 もう1つ注意が必要なのは、対照群として選択されているチスレリズマブである。同薬は中国や欧州で承認されている抗PD-1抗体であるが、日本や米国で最も広く使われている標準治療はKEYNOTE-407に基づくペムブロリズマブである。チスレリズマブ+化学療法群のOS中央値23.7ヵ月は良好な成績ではあるが、本邦の標準治療に対する直接的な比較ではない点は差し引いて考えるべきである。

20.

敗血症性ショック早期蘇生における輸液量と昇圧薬のタイミング(解説:寺田教彦氏)

 2001年にRiversらがearly goal-directed therapy(EGDT)による死亡率低下を報告して以降1)、早期輸液を含むプロトコール化された蘇生が広く普及した。一方、その後の観察研究では、正の水分出納と死亡との関連が指摘され2)、輸液過剰への懸念が高まった。2023年のCLOVERS試験では、1~3Lの輸液を受けた敗血症性低血圧患者において、輸液を制限して昇圧薬を優先する方針と、輸液を優先する方針との間で主要転帰に有意差を認めなかった3)。また、本研究が公表される前の2026年3月に発表されたSurviving Sepsis Campaign(SSC)2026は、敗血症による低灌流または敗血症性ショックに対して、最初の3時間に少なくとも30mL/kgの晶質液を投与することを条件付きで推奨しているが、エビデンスの確実性は低いとしている4)。SSC 2026自身も、初期輸液量は患者背景に応じて調整し、過少蘇生と過剰蘇生の双方を避けるために頻回に再評価するよう求めている。その中で、本試験は、追加輸液を優先して昇圧薬を比較的遅く開始する方針(輸液群)と、輸液量を抑えて昇圧薬を早期に開始する方針(昇圧薬群)を直接比較した。 本試験では、無作為化前に少なくとも1,000mL(中央値1,500mL)の輸液を受けた患者において、昇圧薬群は輸液群と比較して90日までの生存かつ院外日数を改善せず、その優越性は示されなかった。安全性転帰において、肺水腫の発生率は昇圧薬群で0.6%、輸液群で5.0%であった。非盲検下で評価され、報告バイアスの可能性があるため慎重な解釈を要するが、追加輸液を優先する方針が一部の患者で肺水腫を増やす可能性は示唆された。 以上を踏まえると、感染に伴う低血圧が救急外来で早期に認識され、1~2L程度の初期輸液後も低血圧が持続する患者では、固定量の輸液を完遂することよりも、治療反応を再評価して追加輸液と昇圧薬を選択することが妥当と考えられる。ただし、本試験を「敗血症性ショックでは輸液が不要」と解釈することはできない。昇圧薬群でも無作為化後に追加輸液を受けており、本試験が比較したのは輸液の有無ではなく、一定量の初期輸液後に追加輸液を優先するか、昇圧薬を早期に開始するかという方針の違いである。また、早期昇圧薬の非劣性や両方針の同等性を証明した試験でもない。 日本では、「日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG2024)」が、循環血液量低下を伴う患者への初期輸液と、低血圧を伴う患者における輸液蘇生と並行した早期昇圧薬投与を提示しており5)、本試験結果はこの個別化の方向性と整合する。国内診療を大きく転換させるというより、30mL/kgを全患者が達成すべき一律の最低量として運用する根拠をさらに弱めたと位置付けることができるだろう。 今後の敗血症診療では、血管拡張が主体で低血圧が持続する場合には昇圧薬を使用し、低灌流が持続し動的指標から輸液反応性が認められる場合は、心不全などの患者背景や現在の臨床状態を踏まえて追加輸液を検討する。十分な体液量と動脈圧を確保しても、心機能障害に伴う低灌流が持続する場合にはドブタミンの追加やエピネフリンを検討する。など、循環表現型と治療反応に応じた個別化が、これまで以上に重視されるだろう。この方向性は、毛細血管再充満時間、輸液反応性、ベッドサイド心エコーなどに基づく個別化蘇生が階層的複合転帰を改善したANDROMEDA-SHOCK-2試験とも整合する6)。本試験は個別化蘇生そのものを検証した試験ではないが、固定された輸液量や治療順序の一方が優れていることを示さなかった点で、生理学的所見と治療反応に基づく意思決定の重要性を浮き彫りにした。■参考文献・参考サイトはこちら1)Rivers E, et al. N Engl J Med. 2001;345:1368-1377.2)Boyd JH, et al. Crit Care Med. 2011;39:259-265.3)National Heart, Lung, and Blood Institute Prevention and Early Treatment of Acute Lung Injury Clinical Trials Network. N Engl J Med. 2023;388:499-510.4)Prescott HC, et al. Crit Care Med. 2026;54:725-812.5)Shime N, et al. Acute Med Surg. 2025;12:e70037.6)ANDROMEDA-SHOCK-2 Investigators for the ANDROMEDA Research Network, Spanish Society of Anesthesiology, Reanimation and Pain Therapy (SEDAR), and Latin American Intensive Care Network (LIVEN). JAMA. 2025;334:1988-1999.

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