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Vol. 1 No. 1 緒言

森野 禎浩 氏岩手医科大学内科学講座循環器内科分野本邦における急性冠症候群(acute coronarysyndrome: ACS)の治療実態を客観視する機会が訪れた。冠動脈インターベンション(percutaneous coronaryintervention:PCI)は国内で急速に普及したが、大都市にとどまらず、比較的中小の都市に点在する基幹病院でもprimary PCI(ACSの再潅流療法)を行うことができるのが日本の最大の特徴だ。欧米と異なり、年間PCI症例数300例に満たない小規模施設が散在するため、人的リソースが分散しがちで、スタッフ1人にかかる負担が増すばかりか、教育効率低下の恐れもある。一方、各地域に治療可能施設が分散することは、時間との闘いであるACS治療には潜在的なメリットも多い。ACS患者が来院すれば、主に若い専門医が昼夜を問わず集まり、心臓カテーテルで診断・血行再建を行うことが日本型診療の通例となっている。その代償として、現場スタッフはオンコール体制に縛られ街から外に出ることすら制約を受け、朝まで緊急カテをしてもそのまま午前の定時仕事に就くというのが通常で、それに見合う十分な報酬体制も整っていない。要するに、PCI 施行医やコメディカルの自己犠牲のもとに日本の急性期循環器医療は成り立ってきた。 日本のACSの治療実態を把握するため、約100施設で、連続症例登録を基本とした前向きレジストリー(PACIFIC試験)が行われ、その結果が最近公表された。同様の大規模国際レジストリー(GRACE試験:施行時期が異なるが大勢に大きな差はないはずである)と比較し、諸外国に比べて日本のACS治療体制がいかに特殊なのか、いかに好成績を収めているのか容易に理解できる。日本の代表的施設では94%ものACS患者が緊急PCIを受けているのに対し、欧米を含む諸外国においてはカテーテル検査ですら56%、PCIとなると全体の33%にしか行われていない。この著しい治療スタイルの違いが、ACS患者の院内死亡率に大差をつけた最大の誘因と考察されている。こうした事実を実感していないであろう日本の多くの現場スタッフに、日本型ACS医療の素晴らしさをできるだけ速く伝達しなければならないと考えていた。幸いなことに、新しく発刊されるCardioVascular Contemporary誌にこの分野の特集をしていただけることになり、さらに同試験を企画・指導した宮内先生ご自身に、PACIFIC試験に見る日本のACS治療の実態について詳説いただけることとなった。 ACSの急性期治療の大原則は、一刻も早い再潅流療法である。それに付随して、アスピリンとクロピドグレルのローディング投与のように、万国共通の確立された薬物療法が基礎を占める。しかしながら、ACS治療の具体的工夫となると、日本が牽引する分野が少なくない。primary PCIは大量の血栓を末梢に飛ばさないよう処理する必要があるが、血栓吸引や末梢塞栓防止の保護フィルターの臨床応用は、日本で盛んに進められてきた。また、ニコランジルやhANPといった薬剤の心筋保護作用を証明するために臨床試験も精力的に仕掛けられてきた。恐らく、生命予後のみならず、「心筋壊死量を少しでも少なくする」ことを目的に、これだけ精緻に、かつ二重・三重の追加療法を具体的に実践してきた国もないだろう。日本の良好なACS治療成績は、PCIの施行体制のみならず、このようなさまざまな集学的アプローチの複合結果だと思われる。こうしたACS治療の最新コンセンサスについては石井先生に明快にまとめていただいた。 救命し得たACS発症患者の外来管理のゴールは、血管イベントの2次予防であり、本質的にはそこまでACS治療と呼ぶべきである。彼らは安定狭心症の血行再建後の患者に比べても、血管イベントの再発率が高いことが知られ、より積極的な薬物治療介入が求められる。日本の動脈硬化性疾患の特徴として、脳血管障害の比率が高いことがREACHレジストリーで指摘されたが、薬物溶出性ステントによるPCI後の患者においても、脳血管障害の発生頻度が冠動脈イベントより高いことがj-Cypherレジストリーで明らかとなった。アテローム血栓症(ATIS)という疾患概念が提唱され随分経つが、脳血管合併症をかなり意識した薬物療法が日本の循環器内科医には必要である。ACS発症後の2次予防治療として、抗血小板薬やスタチンを中心とした積極的薬物介入の必要性やその他動脈硬化因子の改善が必要であることは周知の事実だが、この分野を画像診断に造詣の深い大倉先生にまとめていただけることとなった。 ACS、特にST上昇型心筋梗塞(STEMI)の場合、発症から閉塞血管の疎通にかかる時間が予後を左右する。そのため、「door-to-balloon時間(来院からバルーンなどによって血行の再疎通を果たせるまでの時間)を90分以内にしよう」ということが国際的スローガンとなってきた。筆者は最近岩手県に転勤したが、STEMI患者のpeak CPK値が、今まで経験した患者群より明らかに高いと実感している。これは広い医療圏ゆえの搬送問題、我慢強い患者さんの気質など、種々の時間的ハンディキャップに基づいていると考察できる。管轄地域のACSの医療体制構築が自身の最大のテーマであり、実現のためには1人でも多くのPCI施行医を育成するとともに、primary PCI施設の効率的再配置、患者啓蒙活動、初診医との連携強化など、時間短縮を目指したトータルな医療設計が不可欠である。地方の内科医数の減少に歯止めがかからないなか、過酷な診療実態から特に循環器内科医になることが敬遠される傾向にある昨今だ。今回の特集で、日本型ACS治療体制がどうやら世界に誇れる素晴らしいものであることがわかってきたが、現場スタッフの献身的努力に極度に依存する体質など、課題も山積みである。本来、循環器医療は非常にやり甲斐があり、おもしろく、若い医師の人気が集まる分野のはずである。今こそ、急性期循環器診療体制のグランドデザインを、行政も交えて皆で熟考していく必要があるのではないか?そんなことばかり考えて、初めての北国の冬を過ごしている。

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統合失調症、双極性障害の急性期治療に期待!アリピプラゾール筋注製剤

 非定型抗精神病薬であるアリピプラゾール(商品名:エビリファイ)は、統合失調症患者や双極性障害患者に対し広く用いられている。海外では筋注製剤も承認されており、急性期治療における有用な選択肢として期待されている。イタリア・サピエンツァ大学のSergio De Filippis氏らは、統合失調症または双極性障害の急性期治療として、アリピプラゾール筋注の有用性をオープランラベル試験により検証した。Pharmacotherapy誌オンライン版2013年3月15日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症または双極性障害で急性の興奮状態にある患者について、非定型抗精神病薬アリピプラゾール9.75mgの筋肉注射の有効性と安全性を評価した。試験は、一大学の精神科病棟で行われ、筋注後の治療反応を評価した。評価は、初回筋注後30、60、90、120分および24時間後にPANSS陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale)の興奮項目(PANSS-EC)と興奮/鎮静評価尺度(Agitation/Calmness Evaluation Scale:ACES)にて、また2、4、6、24時間後に臨床全般印象度(Clinical Global Impressions scale:CGI)にて行われた。また、サブサンプルにおいて血中アリピプラゾール値とデヒドロアリピプラゾール値を測定した。 主な結果は以下のとおり。・201例(統合失調症79例、双極性障害122例)を対象とした。・PANSS-ECのスコアは、40%以上減少した。・アリピプラゾール筋注は、臨床指標を有意に改善した。・PANSS-ECの改善は、30分後から始まり進行していった。・ACESの改善は90分後で、その後は維持された。・CGIスコアの減少は絶え間なく着実に24時間後まで続いた。・治療反応率は2時間後時点で83.6%であった。再投与後は、統合失調症群、双極性障害群とも90%超まで上昇した。・PANSS-ECの個別指標別にみた場合に、治療反応に性差が認められる項目もあったが、全体的には同程度であった。・臨床モニタリングにおいて、副作用の報告をした患者は皆無であった。ただし、あらゆる副作用が報告されなかったのは、観察期間が短かったことと関連している可能性がある。・治療領域は特定されなかった。また、治療レベルはいずれの臨床指標とも関連していなかった。・本研究結果は、二重盲検試験に十分に匹敵するもので、おそらくプラセボを対照と していない試験においてより高値が期待できる。関連医療ニュース ・アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国) ・抗精神病薬投与前に予後予測は可能か? ・アリピプラゾールvsその他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー

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小児双極I型障害に対するアリピプラゾールの効果は?

 米国・ジョンズ・ホプキンス大学のRobert L. Findling氏らは、小児の双極I型障害に対するアリピプラゾール長期投与の有効性と安全性を検討する、30週間の無作為化プラセボ対照試験を行った。その結果、アリピプラゾール10mg/日群、30mg/日群ともプラセボ群に比べ優れた有効性を示し、忍容性も良好であることを報告した。Bipolar Disorders誌2013年3月15日号の掲載報告。 試験は、10~17歳の双極I型障害(躁症状または混合型症状)患者296例(精神障害の有無は問わない)を対象とした。4週間の急性期治療完了後、二重盲検期に移行し、26週間の治療を行った。主要アウトカムは、ヤング躁病評価尺度(Young Mania Rating Scale:YMRS)による総スコアの変化とした。 主な結果は以下のとおり。 ・26週間の延長試験に登録された210例のうち、試験を完了した者は32.4%であった(アリピプラゾール10mg/日群:45.3%、アリピプラゾール30mg/日群:31.0%、プラセボ群:18.8%)。試験完了率はいずれの群も低かった。・プロトコールで規定されていた最終観察日を評価に繰り込んだ解析において、アリピプラゾール10mg/日群、30mg/日群とも、プラセボ群に比べてYMRS総スコアの有意な改善が認められた(p<0.001)。しかし、30週時点におけるObserved case (OC)解析や混合モデル反復測定 (MMRM) 法による解析では同様の結果は得られなかった。・あらゆる原因による試験中止までの期間は、アリピプラゾール10mg/日群15.6週、アリピプラゾール30mg/日群9.5週、プラセボ群5.3週であった(アリピプラゾール両群のプラセボに対するp値はいずれもp<0.05)。・すべての解析で、アリピプラゾール10mg/日群、30mg/日群はプラセボ群に比べ、エンドポイントにおける奏効率、小児用包括的評価尺度(Global Assessment of Functioning)および臨床的全般改善度-双極性障害用(Clinical Global Impressions-Bipolar)による重症度、躁症状スコアにおいて有意に優れていた。・報告の多かった有害事象は、頭痛、眠気、錐体外路障害であった。・本検討では試験完了率がいずれの群も低かった点に留意が必要である。関連医療ニュース ・アリピプラゾールvsその他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー ・難治性双極性障害患者への併用療法は? ・アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは?

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アリピプラゾール vs.その他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー

 英国・East Midlands Workforce DeaneryのPriya Khanna氏らは、統合失調症に対するアリピプラゾールの有効性および忍容性について、他の非定型抗精神病薬と比較した試験結果を評価するシステマティックレビューを行った。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2013年2月28日号の掲載報告。 レビューは、Cochrane Schizophrenia Group Trials Registerによる文献検索(2011年11月時点)とともに、製薬会社や医薬品承認省庁、論文執筆者から追加の情報などを得て行われた。統合失調症または統合失調症様精神障害を有する患者を対象とした、アリピプラゾール(経口薬)とその他の抗精神病薬(経口・非経口含む:アミスルプリド、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、セルチンドール、ジプラシドン、ゾテピン)を比較したすべての無作為化試験(RCT)を適格試験とした。ランダムエフェクトモデルに基づきintention-to-treat分析法にてリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出し、可能な限り主要アウトカムの比較リスクを算出した。また平均差(MD)の算出や、バイアスリスクについての評価も行われた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、12試験、被験者6,389例のデータが組み込まれた。・アリピプラゾールとの比較試験は、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドンについて行われており、すべての試験が利害関係のある製薬会社がスポンサーとなり行われていた。・全被験者のうち30~40%が試験を早期に中止しており、妥当性(群間差なし)は限定的なものであった。[対オランザピン試験]・全体的な状態(global state)には差がみられなかった(703例・1試験、短期RR:1.00、95%CI:0.81~1.22/317例・1試験、中期RR:1.08、95%CI:0.95~1.22)。・精神状態についてはオランザピンでやや良い傾向がみられた[1,360例・3試験、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総合スコアのMD:4.68、95%CI:2.21~7.16]。・錐体外路症状には有意な差はみられなかったが(529例・2試験、RR:0.99、9%CI:0.62~1.59)、コレステロール値の上昇(223例・1試験、RR:0.32、95%CI:0.19~0.54)、全重量の7%以上の体重増加(1,095例・3試験、RR:0.39、95%CI:0.28~0.54)はアリピプラゾール群のほうが少なかった。[対リスペリドン試験]・全体的な状態(384例・2試験、重大改善なしに関するRR:1.14、95%CI:0.81~1.60)、精神状態(372例・2試験、PANSS総合スコアのMD:1.50、95%CI:-2.96~5.96)に関して、アリピプラゾールの優位性は示されなかった。[対ジプラシドン試験]・アリピプラゾールとの比較は1試験(247例)であり、全体的な状態[臨床全般印象・重症度尺度CGI-S)スコアのMDの平均変化:-0.03、95%CI:-0.28~0.22]、精神状態[PANSS総合スコアのMD:-3.00、95%CI:-7.29~1.29]の変化はともに同程度であった。・いずれか1つの非定型抗精神病薬と比較した際、アリピプラゾールは、活力(523例・1試験、RR:0.69、95%CI:0.56~0.84)、気分(523例・1試験、RR:0.77、95%CI:0.65~0.92)、陰性症状(523例・1試験、RR:0.82、95%CI:0.68~0.99)、傾眠(523例・1試験、RR:0.80、95%CI:0.69~0.93)、体重増加(523例・1試験、RR:0.84、95%CI:0.76~0.94)にて全体的な状態の改善を示した。・アリピプラゾール群の被験者では、嘔気(2,881例・3試験、RR:3.13、95%CI:2.12~4.61)の報告が有意に多かったが、体重増加(全重量の7%以上の増加)は有意に少なかった(330例・1試験、RR:0.35、95%CI:0.19~0.64)。・アリピプラゾールは、攻撃性への有望な作用がある見込みがあたが、データが限定的であった。これは別の機会のレビューの焦点となるであろう。・著者は「すべての比較に関する情報には限界があり、必ずしも臨床に適用するとは限らない」とした上で、「アリピプラゾールは明らかな副作用プロファイルのない抗精神病薬である」と結論した。また、長期データが十分でないことを考慮すべきであり、今後は中国で行われている複数の試験や、進行中の大規模な独立したプラグマティックな試験のデータなどを組み込み、レビューのアップデートを行うことで新たなデータが得られると述べている。関連医療ニュース ・10年後の予後を見据えた抗精神病薬選択のポイント ・バイポーラの躁症状に対するアリピプラゾールの位置付けは? ・統合失調症、双極性障害の急性期興奮状態に対する治療:   アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国)

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どのタイミングで使用するのが効果的?統合失調症患者への持効性注射剤投与

 統合失調症患者に対し、長時間作用型リスペリドンのような薬学的介入は、とくに直近に診断を受けた患者において意義があることが明らかにされた。ベルギー・Cliniques Universitaires St LucのVincent Dubois氏らが、2つの観察試験(e-STAR、TIMORES)データの解析を行い報告した。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2013年1月24日号の掲載報告。 本研究は統合失調症を、最近診断された患者と診断から長期間経っている患者について、長時間作用型リスペリドンによる治療開始前後の、精神医学的臨床アウトカムおよび入院率の格差について検討することを目的とした。2つの観察研究「electronic Schizophrenia Treatment Adherence Registry(e-STAR)」「Trial for the Initiation and Maintenance Of REmission in Schizophrenia with risperidone(TIMORES)」のデータについて、診断時期について階層化し、事後解析にて比較した。評価項目は、臨床全般印象・重症度スコア(Clinical Global Impression of illness Severity :CGI-S)、機能の全般的評価スコア(Global Assessment of Functioning:GAF)、および臨床症状の増悪(入院など)で、ベースライン、12ヵ月時点(TIMORESとe-STAR)、24ヵ月時点(e-STAR)で解析した。その他、投与中止の割合、就業状況、寛解達成などのアウトカムも評価した。 主な結果は以下のとおり。・追跡12ヵ月および24ヵ月時点で、最近診断群と診断後長期群では、統計的有意差が、CGI-Sスコア(p<0.01、p≦0.001)、GAFスコア(p<0.05)について認められた。・また1年時点での、臨床症状の増悪、就業状況、完全な症候性の寛解達成についても両群間の格差が認められた。・入院指標については最近診断群と診断後長期群で一貫した差はみられなかったが、e-STAR試験の'Early'群と'Late'群で入院期間の統計的な有意差が、12、24ヵ月の両エンドポイントでみられた。ベースラインからの変化の平均値は、12ヵ月時点では'Early'群が有意に大きかった。しかし24ヵ月時点では'Late'群が有意に大きかった。関連医療ニュース 長時間作用型注射製剤は、統合失調症患者の入院減少と入院期間短縮に寄与 統合失調症患者における持効性注射剤:80文献レビュー 第一世代 vs 第二世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症患者に対するメタ解析

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スパイロメトリーの活用状況などに関するアンケート

対象ケアネット会員の医師 呼吸器科162名、内科738名方法インターネット調査実施期間2013年1月24日~1月31日Q1呼吸機能を測定するスパイロメーターをお持ちですか?Q2(Q1.で「はい」と回答した先生にお聞きします)COPDスクリーニングの目的でスパイロメーターはどのくらいの頻度で使用されていますか?Q3COPDの診断・治療を行う際に、日本呼吸器学会による「COPD診断と治療のためのガイドライン」を参考にしていますか?Q4COPDの診断・治療を行う際に「GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)」を参考にしていますか?2013年1月ケアネット調べ

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(47)〕 FREEDOM試験がもたらした「開放」とは?

複雑な冠動脈疾患患者にバイパス(CABG)か?PCIか?という問題は90年代のBARI試験から最近のSYNTAX試験まで、いろいろな側面から検討がなされ、さながら不整脈のreentry回路のように外科医と内科医の頭を悩ませてきた。だが、このFREEDOM試験はその回路(circuit)に楔を打ち込んだ研究といえるのではないか。【これまでに行われてきた研究との比較】糖尿病患者の再灌流療法に関しては、10年ほど前にBARI試験で単純なバルーン拡張術(Plain Old Balloon Angioplasty; POBA)が初めてCABGと比較された。さらに、5年ほど前にBARI-2D試験で非薬剤性のステント(Bare Metal Stent; BMS)がCABGと比較されている。周知のとおり、いずれの試験でも長期的にはCABGが予後改善効果に優れたという結果が得られている。FREEDOMは、PCIが薬剤溶出性ステント(Drug Eluting Stent; DES)の時代を迎え、三度その長期的な予後の比較が糖尿病患者で行われたものであるが、端的に言うとこれまでの結果を覆すものではない。これは、POBAからBMS、そしてDESに至るまで、いずれも再狭窄の抑制のためのデバイスの進歩であり、明確なイベントの抑制(急性心筋梗塞や心臓突然死)がもたらされていないことを踏まえると、驚くにはあたらない。【SYNTAXによるスコア化について】また、糖尿病患者限定ではなかったが、最近行われたSYNTAX試験サブ解析の結果、リスク層別の有力なツールとしてSYNTAX スコアが提唱されている。三枝病変もしくは左主幹部病変患者で、その病変複雑性がSYNTAXスコアにして0~22の間であればおそらくはPCIとCABGは同程度に有効であり、22以上であれば、その点数の上昇にしたがって、CABGのほうがPCIよりも予後改善に有用となる。FREEDOMの平均のSYNTAX スコアは26であり、病変の複雑性というところからもCABGが有利な患者群を扱っている。しかも、標準偏差は8と枠は狭い。したがってFREEDOMでは、このSYNTAXスコア26±8というCABGに有利な枠内で、やはり予想通りの結果が得られたということになる。しかし、このように予想通りの結果であったからといってFREEDOMの価値が減じられるわけではない。BARIやSYNTAXとはまったく別のグループが組んだ臨床試験でその結果が検証された意義は大きい。しかも、個々の患者にとって大きな価値を持つ「長期的予後」という観点から、である。このことだけでも、やはりFREEDOMの結果は特筆に値する。言うまでもなく、糖尿病患者、あるいはそれに類する複雑な患者へのアプローチで推奨されているのは、外科医と内科医を含めたHeart Teamによる総合的な検討である。わが国でこの試験の結果を適用するためには注意点がいくつか存在するが(文末の三点)、FREEDOMは間違いなく患者サイドへのインフォームドコンセントに有用であり、医療者側からより強く自信をもった提言を行うことを可能とした。現場でこの試験の結果を公平な判断へとつなげて初めて、「無知から開放(FREEEDOM from ignorance)」は達成される。FREEDOM試験の注意点1.わが国の糖尿病患者の予後は、おそらくは欧米のそれよりも良好である可能性があり(Kohsaka S,et al.Diabetes Care. 2012 ;35:654-659.)、CABGによる予後改善効果が「薄まる」可能性も捨てきれない。2.さらにこの試験は二度にわたりプロトコールの変更を行い、かなり患者の登録に難渋した形跡がみられる。その影響か、最後まで(7年間)追跡することができた症例は200例強にすぎない。今後、他のデータで長期的な検証が必要である。3.さらに、MIとStrokeのイベントの「重さ」がこの試験では同等に扱われているが、これは現実のケースでは必ずしもイーブンではない。心筋梗塞エンドポイント定義(30日以内)myocardial infarction was defined as the presence of new Q waves in 2 or more contiguous leads on electrocardiography, as compared with baseline.脳梗塞エンドポイント定義Stroke was defined as the presence of at least one of the following factors: a focal neurologic deficit of central origin lasting more than 72 hours or lasting more than 24 hours with imaging evidence of cerebral infarction or intracerebral hemorrhage.(執筆協力:循環器内科CRC 植田育子)

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人工膝関節形成術へのドクターフィー年5%減で起きた総医療費の劇的上昇

 米国では1997年8月に財政赤字への懸念から連邦均衡予算法(Balanced Budget Act of 1997)が可決され、メディケアプログラム下の医師への診療報酬(ドクターフィー)の引き下げが命じられた。個々のドクターフィー引き下げそのものによる節減効果と、加えて報酬引き下げは労働インセンティブを低下させ、結果としてアウトプットが減り節減効果がもたらされる、という2つの支出コスト抑制効果があると考えられたためであったという。その一方で、「症例数を増やして個々の減額分の穴埋めをするようになるから、かえって支出コストの増大につながる可能性がある」との指摘もあった。米国・ペンシルベニア大学整形外科のJoseph Bernstein氏らは、個々の症例に対する報酬の引き下げは総量の増大に結びつくとの仮説を整形外科領域で検証するため、1995~2006年の間の人工膝関節形成術(TKA)数などを調べた。Orthopedics誌2012年12月号の掲載報告。 整形外科治療の総コストは一般に、ドクターフィーの何倍も大きく、大部分はインプラントのコストが占めている。そのため、労働アウトプットの増大は、とくに整形外科手術のような分野でかなりの経済的影響がみられることから、研究グループはTKAを対象に調査を行った。 手術件数は、Healthcare Cost and Utilization Project(HCUP)の全国入院患者サンプルから入手し、メディケア・メディケイドサービスセンターから65歳以上患者の数を入手し分析した。 主な結果は以下のとおり。・1996~2005年の10年間で、TKAに対するドクターフィーは年率でおよそ5%ずつ引き下げられ、2,847ドルから1,685ドルへと減額していた。・一方で同期間に、手術件数は25万3,841件から49万8,169件へと増加(年間のメディケア受給者1,000人当たりTKA件数は7.6から13.9へと増加)していたこと、また病院に対する支払いが医師への支払いを大きく上回っているため、TKAに関する総コストは劇的に増大した。・1996年のドクターフィー総計は7億2,300万ドルであったが、その後の9年間は平均6億5,400万ドルであった。10年間の総計は66億800万ドルであった。・一方、ホスピタルフィー総計は、10年間で推定71億ドル以上増えていた。10年間の総計は360億ドルであった。・以上の結果を踏まえて著者は、「ドクターフィーを引き下げ続けると、医療費コストは増大し続ける結果が示された。、全体的な医療費コストをコントロールするための最良の戦略としては、外科の報酬は低くするよりも、高くするほうがよい可能性がある」と述べている。

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世界中で起きている障害を有する人の高齢化/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の障害生存年(years lived with disability:YLD)について、オーストラリア・School of Population HealthのTheo Vos氏らがGlobal Burden of Diseases Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。その結果、10万人当たりのYLD有病率は20年間でほぼ一定であったが、年齢に伴う着実な上昇が認められたという。背景には人口増加と平均年齢の上昇があった。またYLDの最も頻度の高い原因(メンタル問題、行動障害、筋骨格系障害など)の有病率は減少しておらず、著者は「各国のヘルスシステムは死亡率ではなく障害を有する人の増加について対処する必要があり、その上昇する負荷に対する効果的かつ可能な戦略が、世界中のヘルスシステムにとって優先すべきことだ」と提言した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。世界の289の疾患・外傷の1,160の後遺症について系統的な解析を実施 研究グループは、GBD2010のデータを基に、その291の疾患・外傷リストのうち、障害をもたらす289の疾患・外傷の1,160の後遺症について、有病率、発生率、軽快した割合、障害持続期間、超過死亡率について系統的解析を行った。データは、公表されている研究、報告症例、住民ベースがんレジストリ、その他疾患レジストリ、マタニティクリニック血清サーベイランス、退院データ、外来ケアデータ、世帯調査、その他サーベイおよびコホート研究から構成された。 YLDを、シミュレーション手法により共存症について補正し、年齢、性、国、年度レベルで算出した。主因は、メンタル問題、行動障害、筋骨格系障害、糖尿病や内分泌系疾患 解析の結果、2010年の全年齢統合の1,160の後遺症の世界的な有病率は、100万人当たり1例未満から35万例まで広範囲にわたった。有病率と健康損失をもたらす重症度との関連はわずかであった(相関係数:-0.37)。 2010年のあらゆるYLDの有病者は7億7,700万人で、1990年の5億8,300万人から増加していた。 YLDをもたらした主要な要因は、メンタル問題と行動障害、筋骨格系障害と糖尿病や内分泌系疾患であった。 YLDの主要な特異的要因は、1990年と2010年でほぼ同様であり、腰痛、大うつ病、鉄欠乏性貧血、頸痛、COPD、不安障害、偏頭痛、糖尿病、転倒であった。 年齢別YLD有病率は、全地域で年齢に伴う上昇がみられたが、1990年から2010年にかけてわずかだが減少していた。 10万人当たりのYLD有病率は20年間でほぼ一定であった。 YLDの主要な要因の地域別パターンは、早期死亡による生命損失年(YLL)とよく似ていた。サハラ以南のアフリカでは、熱帯病、HIV/AIDS、結核、マラリア、貧血がYLDの重大な要因であった。

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世界の死因は過去20年で大きく変化、心疾患やCOPD、肺がんなどが主因に/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の死因別死亡率の動向について、米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのRafael Lozano氏らがGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。世界の死因で感染症などは大幅に減少 GBD2010において研究グループは、世界187ヵ国から入手可能な死因に関わるあらゆるデータ(人口動態、言語剖検、死亡率サーベイランス、国勢調査、各種サーベイ、病院統計、事件・事故統計、遺体安置・埋葬記録)を集め、1980~2010年の年間死亡率を235の死因に基づき、年齢・性別に不確定区間(UI)値とともに算出し、世界の死因別死亡率の推移を評価した。 その結果、2010年に世界で死亡した人は5,280万人であった。そのうち最大の統合死因別死亡率(感染症・母体性・新生児期・栄養的)は24.9%であったが、同値は1990年の34.1%(1,590万/4,650万人)と比べると大幅に減少していた。その減少に大きく寄与したのが、下痢性疾患(250万人→140万人)、下気道感染症(340万人→280万人)、新生児障害(310万人→220万人)、麻疹(63万人→13万人)、破傷風(27万人→6万人)の死亡率の低下であった。 HIV/AIDSによる死亡は、1990年の30万人から2010年は150万人に増加していた。ピークは2006年の170万人であった。 マラリアの死亡率も1990年から推定19.9%上昇し、2010年は117万人であった。 結核による2010年の死亡は120万人であった。2010年の世界の主要死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDS 非感染症による死亡は、1990年と比べて2010年は800万人弱増加した。2010年の非感染症死者は3,450万人で、死亡3例のうち2例を占めるまでになっていた。 また2010年のがん死亡者は、20年前と比べて38%増加し、800万人であった。このうち150万人(19%)は気管、気管支および肺のがんであった。 虚血性心疾患と脳卒中の2010年の死亡は1,290万人で、1990年は世界の死亡5例に1例の割合であったが、4例に1例を占めるようになっていた。なお、糖尿病による死亡は130万人で、1990年のほぼ2倍になっていた。 外傷による世界の死亡率は、2010年は9.6%(510万人)で、20年前の8.8%と比べてわずかだが増加していた。その要因は、交通事故による死亡(2010年世界で130万人)が46%増加したことと、転倒からの死亡が増加したことが大きかった。 2010年の世界の主要な死因は、虚血性心疾患、脳卒中、COPD、下気道感染症、肺がん、HIV/AIDSであった。そして2010年の世界の早期死亡による生命損失年(years of life lost:YLL)に影響した主要な死因は、虚血性心疾患、下気道感染症、脳卒中、下痢性疾患、マラリア、HIV/AIDSであった。これは、HIV/AIDSと早期分娩合併症を除き1990年とほぼ同様であった。下気道感染症と下痢性疾患のYLLは1990年から45~54%減少していた一方で、虚血性心疾患、脳卒中は17~28%増加していた。 また、主要な死因の地域における格差がかなり大きかった。サハラ以南のアフリカでは2010年においても統合死因別死亡(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が早期死亡要因の76%を占めていた。 標準年齢の死亡率は一部の鍵となる疾患(とくにHIV/AIDS、アルツハイマー病、糖尿病、CKD)で上昇したが、大半の疾患(重大血管系疾患、COPD、大半のがん、肝硬変、母体の障害など)は20年前より減少していた。その他の疾患、とくにマラリア、前立腺がん、外傷はほとんど変化がなかった。 著者は、「世界人口の増加、世界的な平均年齢の上昇、そして年齢特異的・性特異的・死因特異的死亡率の減少が組み合わさって、世界の死因が非感染症のものへとシフトしたことが認められた。一方で、サハラ以南のアフリカでは依然として従来死亡主因(感染症・母体性・新生児期・栄養的)が優位を占めている。このような疫学的な変化の陰で、多くの局地的な変化(たとえば、個人間の暴力事件、自殺、肝がん、糖尿病、肝硬変、シャーガス病、アフリカトリパノソーマ、メラノーマなど)が起きており、定期的な世界の疫学的な死因調査の重要性が強調される」とまとめている。

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世界の疾病負担、死亡率は低下するも健康寿命は国によって大きな差:GBD2010/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の疾病負担の状況は、死亡率の抑制には実質的な進展がみられたものの、非致死的疾患や傷病の発生はほとんど低下しておらず、健康寿命(healthy life expectancy:HALE)は国によって大きな差があることが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のJoshua A Salomon氏らの検討で示された。疾病負担については、1)医学的介入によって疾患による致死率は低下するが発生率は抑制されないため有病率が上昇するとの説[有病状態の拡大(expansion of morbidity)]と、2)死亡率が低下すると予防により慢性疾患の発症年齢が上昇し身体機能障害をともなう罹病期間が短縮するとの説[有病状態の圧縮(compression of morbidity)]があるが、これらの仮説は将来の保健医療計画や医療コストに大きな影響を及ぼすとされる。そのため適切な評価が重要な課題とされ、HALEは有用な指標となる可能性があるという。Lancet誌2012年12月15・22・29日合併号掲載の報告。1990年、2010年のHELAおよび20年間の変動を評価 研究グループは、Global Burden of Disease Study 2010(GBD2010)のデータを用いて、世界187ヵ国の1990年および2010年のHALEと、20年間の変動を明らかにすることを目的に系統的な解析を行った。 HALEは、1971年にDaniel Sullivanが提唱した概念を発展的に継承した集団の健康状態に関する集約的な単一指標で、年齢階層別の死亡率、罹患率、身体機能障害を考慮した良好な健康状態での生存年数である。 GDB2010のデータには、年齢階層別の死亡率や1,160の非致死的疾患の有病率、これらの疾患に関連する220の健康状態について重み付けされた身体機能障害などに関する情報が含まれる。モンテカルロ・シミュレーション法で重複疾患を調整した年齢階層別の健康状態の平均値を算出し、Sullivan法による生命表を用いて性別、国別、年別のHALEの推定値を算定した。男女とも日本が最上位、「有病状態の拡大」仮説と一致する結果 2010年の世界の男性の出生時HALEは58.3歳、女性は61.8歳であった。1990~2010年の20年間において、平均余命に比べてHALEの延長は短く、出生時平均余命の1年の延長で予測されるHALEの延長は男性が0.84年、女性は0.81年だった。 2010年の国別の出生時HALEは、男性ではハイチの27.9歳が最も低く、最高は日本の68.8歳で、女性では同じくハイチが37.1歳と最低で、日本の71.7歳が最も高かった。1990~2010年までに出生時HALEが5歳以上延長した国は男性が42ヵ国、女性は37ヵ国で、逆にHALEが短縮した国は男性21ヵ国、女性11ヵ国だった。 国別および経時的な平均余命は、障害で失われた健康な生存年数と強い正の相関を示した。この関連性は、男性および女性、横断的解析、縦断的解析、出生時、50歳時にも一貫して認められた。身体機能の障害は、死亡に比べればHALEに及ぼす影響が小さかった。 著者は、「HALEには国によって大きな差がみられた。ほとんどの国では、平均余命の延長に伴い障害で失われた健康な生存年数も延長しており、『有病状態の拡大』仮説との一致が確認された。20年間で死亡率の抑制には実質的な進展がみられたものの、非致死的疾患や傷病の発生はほとんど低下していなかった」とまとめ、「HALEは、2015年以降の世界の健康状態のモニタリングにおいても興味深い指標である」としている。

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2010年の世界的な平均余命、男性67.5年、女性73.3年:GBD2010/Lancet

 世界的な出生時平均余命の延長は1990年代にいったん停滞したが、1970~2010年の40年間で持続的かつ実質的に延長し、2010年には男性が67.5年、女性は73.3年に達したことが、米国・ワシントン大学のHaidong Wang氏らの調査で明らかとなった。集団における原因別死亡率を抑制し、早期死亡率を適切に評価するには疾病負担の算定を要するが、その初期段階として年齢階層別、男女別の死亡数や死亡率の予測が重要とされる。ミレニアム開発目標4(乳幼児死亡率の削減)の期限(2015年末)が迫る中、乳幼児死亡率の正確な評価への関心が世界的に高まっているという。Lancet誌2012年12月15・22・29日合併号掲載の報告。世界的な死亡率の年齢階層別のパターンを検討 研究グループは、Global Burden of Disease Study 2010 (GBD2010)のデータを用いて、187ヵ国における1970~2010年の年齢階層別の年間死亡率を評価し、世界的な死亡率の年齢階層別のパターンを明らかにすることを目的に系統的な解析を行った。 各国の5歳未満(0~4歳)死亡率および成人(15~59歳)死亡率を推算した。100ヵ国以上の死亡登録データを用い、自然災害や戦争による死亡とは分けて解析した。 5歳未満死亡率と成人死亡率の最終的な推定値はガウス過程回帰で解析したデータから算定し、これをモデル生命表の入力パラメータとして用いた。全死亡率や死亡数の算定には95%不確定区間(95%UI)を用いた。ミレニアム開発目標4の達成予測は過小評価されている可能性も 世界的な男性の出生時平均余命は1970年の56.4年から2010年には67.5年に、女性では61.2年から73.3年にまで延長した。1990年代を除き、1970年から10年ごとに出生時平均余命が3~4年ずつ延長した(90年代の延長は男性1.4年、女性1.6年)。  2004年以降、東アフリカおよびサハラ砂漠以南のアフリカで死亡率が実質的に低下しており、これは抗レトロウイルス療法やマラリア予防対策の普及と時期が一致する。1970~2010年までに、男女の平均余命はそれぞれ23~29年の延長(モルディブ、ブータン)から、1~7年の短縮(ベラルーシ、レソト、ウクライナ、ジンバブエ)までの幅が認められた。 2010年に世界全体で5,280万人が死亡したが、これは1990年の4,650万人に比し13.5%、1970年の4,330万人に比べ21.9%の増加であった。2010年の死亡者に占める70歳以上の割合は42.8%(1990年は33.1%)、80歳以上の割合は22.9%だった。 5歳未満児の死亡数は1970年が1,640万人、2010年が680万人で、死亡率は約60%低下しており、特に生後1~59ヵ月児の死亡数は1,080万人から400万人へと著明に低下していた。HIV/AIDSの影響が最も大きい地域を含むすべての地域で、平均死亡時年齢の上昇が確認された。 著者は、「世界的、地域的な健康危機がみられるにもかかわらず、過去40年間で平均余命は持続的かつ実質的に延長していた。平均余命の延長は1990年代にいったん停滞したが、その後187国中179国で良好な伸展が認められた」とまとめ、「低~中所得国における死亡率の抑制に力を注ぐ必要がある。ミレニアム開発目標4の達成予測は過小評価されている可能性が示唆されるが、これは直近の小児死亡率に関するデータが不十分なためと考えられる」と指摘している。

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少量、安全接種が可能な貼付パッチ式のロタウイルスワクチンの可能性

 米国疾病予防管理センター(CDC)のSungsil Moon氏らは、極微針パッチ(microneedle patch)を用いた皮下注射による、ロタウイルスワクチン予防接種の可能性についてマウスを用いた試験で検討を行った。皮下注予防接種(skin immunization)は天然痘や結核など多数の感染症で効果が認められているが、接種が難しい。一方、極微針パッチは、貼付式で接種が容易であり、その点で有望視されている。Vaccine誌オンライン版2012年11月19日号の掲載報告。 研究グループは、不活化ロタウイルス・ワクチン(IRV)の皮下ワクチン接種において、接種容易な極微針(MN)パッチの活用についてマウス試験で評価(接種効果と投与量)を行った。 6グループのメスの純系BALB/cマウスを対象に、5μgまたは0.5μgのIRVをコーティングしたMNパッチ、または各量IRVを筋肉内注射によりそれぞれ1回接種を行った。その後、0日、10日、28日時点で採血を行った。 主な結果は以下のとおり。・ロタウイルス特異的IgGは、MNパッチ群、筋肉内注射群いずれも、時間の経過とともに血清内レベルが上昇した。・IgG値と中和活性は、筋肉内注射群よりもMNパッチ群で概してより高かった。0.5μg MNパッチ群は、5μg筋肉内注射群とIgG上昇についてはほぼ匹敵、またはより高く、投与量が節約できることを示した。・陰性対照である無抗原のMNパッチを貼り付けたマウスでは、いかなるIgGをも有していなかった。・MNパッチによる予防接種は、筋肉内注射によるものと同程度以上の効果があり、脾臓由来樹状細胞の免疫誘導が示された。・試験によって、MNパッチでは筋肉内注射よりも少ない量のIRVで免疫を得られる可能性が示された。MNパッチは、世界中の子どもが、より安全で効果的なロタウイルスワクチンを受けるための開発戦略として有望視される。

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外傷性脳損傷に対するシチコリン、身体・認知機能改善に結びつかず/JAMA

 外傷性脳損傷(TBI)に対するシチコリン(商品名:シチコリン、ニコリンほか)の投与は、プラセボと比較し90日時点で、身体機能および認知機能の改善に結びつかなかったことが示された。米国・ハーバードメディカルスクールのRoss D. Zafonte氏らによる無作為化試験の結果、報告された。TBIについては今のところ転帰を改善する治療法がない。シチコリンには、損傷神経修復の促進と同様の潜在的な神経保護作用があり、世界59ヵ国で承認されていた。JAMA誌2012年11月21日号掲載報告より。1,213例の患者を対象に第3相二重盲検無作為化プラセボ対照試験 研究グループは、軽度、中程度、重度のTBIを受けた人に対し、シチコリンが身体機能および認知機能にポジティブな影響をもたらすかを検討する第3相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「Citicoline Brain Injury Treatment Trial(COBRIT)」を行った。2007年7月20日~2011年2月4日に、米国のレベル1外傷センター8施設で1,213例の患者を対象とした。 被験者は、TBIの軽度、中等度、重度に分類され、シチコリン群(腸注もしくは経口で2,000mg/日を90日間)かプラセボを受ける群に無作為化された。 主要評価項目は、身体機能・認知機能の状態で、90日時点でTBI Clinical Trials Network Core Batteryを用いて評価し、その9つのスケール(Glasgow Outcome Scale-Extendedなど)を解析に用いて全体の統計的検定を行った。 副次評価項目は、身体機能・認知機能の改善で、30日、90日、180日時点で評価し、治療効果の長期的維持を調べた。9つプラスαのスケールいずれでも、プラセボ群との有意差みられず Glasgow Outcome Scale-Extendedで良好な改善が認められたのは、シチコリン群35.4%、プラセボ群35.6%だった[オッズ比(OR):0.99]。他のスケール(California Verbal Learning Test、Processing Speed Indexなど8つ)もすべて、改善率はシチコリン群37.3~86.5%、プラセボ群42.7~84.0%だった。90日時点の評価は、両群で有意な差は認められなかった[全体オッズ比(OR):0.98、95%信頼区間(CI):0.83~1.15]。 さらに、Model stratified by GCS scoreで評価した各重症度群の治療効果も有意な差は認められなかった(中等度/重症OR:1.14、95%CI:0.88~1.49、complicated軽症OR:0.89、0.72~1.49)。 180日時点の評価でも、主要評価に関して両群で有意な差は認められなかった(全体OR:0.87、95%CI:0.72~1.04)。

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ICU患者へのHES使用、90日死亡率は有意差なし、腎代替療法リスクは2割増/NEJM

 ICUの患者に対する輸液蘇生における代用血漿剤のヒドロキシエチルデンプン(HES、商品名:サリンヘスなど)の使用について、生理食塩水を用いた場合と比較した90日死亡率は有意差は認められなかったことが示された。一方で、HESを用いた患者では生理食塩水を用いた場合と比べて腎代替療法を受けるリスクが2割ほど高かった。オーストラリア・George Institute for Global HealthのJohn A. Myburgh氏らが、ICU入室患者7,000人について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2012年11月15日号(オンライン版2012年10月17日号)で発表した。32のICUで無作為化試験、90日死亡率などを比較 Myburgh氏らは2009~2012年にかけて、オーストラリアとニュージーランドの32ヵ所のICUを通じ、試験を行った。ICUに入室した7,000人を無作為に2群に分け、一方は6%HESを0.9%食塩水に混ぜた輸液蘇生投与を行い、もう一方は0.9%食塩水のみの輸液蘇生投与を行った。同投与は、ICUからの退室、死亡または無作為化後90日まで継続した。 主要アウトカムは、90日死亡だった。副次アウトカムは、急性腎障害、急性腎不全、腎代替療法の発生率などとした。 被験者の平均年齢は、HES群63.1歳、生理食塩水群62.9歳で、男性はそれぞれ60.5%と60.3%だった。90日死亡率は両群とも17~18%、腎代替療法リスクはHES群が生理食塩水群の1.21倍 その結果、追跡期間中に死亡したのは、HES群3,315人中597人(18.0%)、生理食塩水群3,336人中566人(17.0%)で、両群間に有意差は認められなかった(相対リスク:1.06、95%信頼区間:0.96~1.18、p=0.26)。 また、副次アウトカムについて、腎代替療法の実施率は、HES群3,352人中235人(7.0%)で生理食塩水群3,375人中196人(5.8%)と、HES群で2割ほど高率だった(相対リスク:1.21、同:1.00~1.45、p=0.04)。急性腎障害の発生率は、HES群が34.6%に対し生理食塩水群が38.0%と生理食塩水群が高く(p=0.005)、急性腎不全の発生率はそれぞれ10.4%と9.2%だった(p=0.12)。 さらに、掻痒や皮膚の発疹などといった有害事象の発生について、HES群5.3%、生理食塩水群2.8%と、HES群で有意に高率だった(p<0.001)。

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検証!非定型抗精神病薬の神経保護作用

 Cedo Miljević氏らは、非定型抗精神病薬(アリピプラゾール、クロザピン、ジプラシドン、オランザピン、クエチアピン、セルチンドール、アミスルピリド)の神経保護に及ぼす影響を、in vitroにおけるヒト赤血球中の抗酸化防御酵素活性測定にて検討した。その結果、アリピプラゾールとクエチアピンは神経保護作用を有する可能性が示唆された。Human psychopharmacology誌オンライン版2012年11月5日号の報告。 23~39歳の非喫煙者健康男性15名の血液を使用した。採取された血液と薬剤は1時間、37℃にてインキュベーションした後、還元酵素であるCu/Zn-スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)、カタラーゼ(CAT)、セレン依存性グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン還元酵素活性を測定した。主な結果は以下のとおり。・SOD1活性は、対照群と比較し、アリピプラゾール群(p

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簡便かつ有効な8項目からなる乾癬重症度の自己評価PSI

 乾癬重症度の自己評価によるアウトカム尺度PSI(Psoriasis Symptom inventory)について検証した結果、簡便性、有効性、再現性があり、変化に対する感度も良好で、乾癬の臨床試験で有用なPRO尺度となり得ることが示された。米国・Health Research Associates社のBushnell DM氏らが、8項目からなる同尺度について検証した結果、報告した。The Journal of dermatological treatment誌オンライン版10月24日号の掲載報告。 中等症~重症の成人尋常性乾癬被験者のデータを用いて前向き無作為化試験を行った。被験者は、PSI、DLQI(Dermatology Life Quality Index)、SF-36v2 Acute、PtGA(Patient Global Assessment)の評価を受けた。 PSIの妥当性は、PSIとDLQIならびにSF-36との間のスピアマン順位相関係数を用いて評価した。試験-再試験信頼度、変化に対する感度は最後にPtGAを用いて評価を行った。 PSIの24時間版と1週間(7日間)版について評価した。 主な結果は以下のとおり。・米国内8ヵ所から143例が参加した。139例(97.2%)が試験を完了した。・すべての被験者に、全症状(かゆみ、発赤、スケーリング、熱感、ひびわれ、ヒリヒリ感、はがれ、疼痛)について、各選択肢(症状なし、軽症、中等症、重症、非常に重症)から該当する回答を選んでもらい、結果が得られた。・試験-再試験信頼度は、許容可能なものであった(クラス内相関係数範囲:0.70~0.80)。・収束的および識別的妥当性の演繹的仮説は、PSIとDLQIおよびSF-36との相関によって確認された。・PSIの項目構成の妥当性は良好であり、自覚変化に対する感度も良好であることが示された(P<0.0001)。

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【速報!AHA2012】心筋梗塞後慢性期に対するキレート療法、有用性を確立するには至らず

 米国では、理由は不明だが、冠動脈疾患に対するキレート療法の施行数が増加しているという。しかしながら、その有用性は確認されていない。驚いたことに、有用性を示唆する機序さえ未確定だという。そのため、心筋梗塞後慢性期を対象とする無作為化試験TACT(Trial to Assess Chelation Therapy)が、NIH(国立衛生研究所)の出資により行われた。その結果、有意差はついたものの、キレート療法がプラセボに勝る有用性を確立するには至らなかったようだ。3日のLate Breaking Clinical Trialsセッションにて、マウントサイナイ・メディカルセンター(米国)のGervasio A. Lamasが報告した。 TACTの対象は、心筋梗塞発症後6ヶ月以上経過した、50歳以上の1,708例である。およそ4分の3は、β遮断薬など心筋梗塞後に対する標準的薬物治療を受けていた。これらはキレート療法群(839例)とプラセボ群(869例)に無作為化され、二重盲検法で追跡された。キレート療法にはEDTA(エチレンジアミン四酢酸)とアスコルビン酸を中心に10剤を用いるレジメンが用いられた。  その結果、一次評価項目である「死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠血行再建術、狭心症による入院」はキレート療法群で相対的に18%の有意な減少が認められた(ハザード比:0.82、95%信頼区間:0.69~0.99)。加えて、上記イベントを個別に検討しても、一様にキレート療法群で減少傾向を示した。  試験中止につながる有害事象の発現は、両群で同等だった。  このような成績にもかかわらずLama氏は、この有用性を確認する別の研究が必要だと主張した。と言うのも、キレート療法群におけるイベントリスク・ハザード比の、95%信頼区間上限は0.99と「1」に近いうえ、本試験では17%が無作為化後に同意を撤回し試験から脱落している。これら17%が残っていた場合に有意差となる保証はない。 また、キレート療法群における一次評価項目減少数の半分弱を「冠血行再建術施行」が占めていた。二重盲検試験とは言え「主観的」な評価項目に結果が大きな影響を受けている点に、Lama氏は問題を感じたようだ。なお、「冠血行再建術施行」は「狭心症による入院」と並び、後から加えられた評価項目である。当初の一次評価項目は、「死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全入院」だった(心不全データは、今回報告されなかった)。  指定討論者であるアルバート大学(カナダ)のPaul W. Armstrong氏も、本試験は虚血性心疾患に対するキレート療法の有用性を確認したものではないと強調した。根拠として同氏は、まず、キレート療法により著明なイベント減少が認められたのは、全体の30%を占める糖尿病例のみだと指摘。非糖尿病例では、キレート療法群とプラセボ群の一次評価項目発生率に全く差はない。同氏はまた記者会見にて、キレート療法の有用性を評価するには、「腎毒性」に関するデータを見る必要があるとも述べた。取材協力:宇津貴史(医学レポーター)「他の演題はこちら」

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抗結核薬耐性の最大リスク因子は「2次抗結核薬の投与歴」

 超多剤耐性結核(XDR-TB)を含む抗結核薬耐性の最大のリスク因子は、「2次抗結核薬の投与歴」であることが、米国疾病対策予防センター(CDC)のTracy Dalton氏らの調査(Global PETTS)で示された。多剤耐性結核(MDR-TB)は、Mycobacterium tuberculosisを原因菌とし、少なくともイソニアジドとリファンピシンに対する耐性を獲得した結核で、XDR-TBはこれら2つの1次抗結核薬に加え、2次抗結核薬であるフルオロキノロン系抗菌薬および注射薬の各1剤以上に耐性となった結核と定義される。XDR-TBの世界的発生は実質的に治療不能な結核の到来を告げるものとされ、MDR-TBに対する2次抗結核薬の使用拡大によりXDR-TBの有病率が増大しつつあるという。Lancet誌2012年10月20日号(オンライン版2012年8月30日号)掲載の報告。2次抗結核薬の耐性を前向きコホート試験で評価Global PETTS(Preserving Effective TB Treatment Study)の研究グループは、8ヵ国における2次抗結核薬に対する耐性の発現状況を評価するプロスペクティブなコホート試験を実施した。2005年1月1日~2008年12月31日までに、エストニア、ラトビア、ペルー、フィリピン、ロシア、南アフリカ、韓国、タイにおいて、MDR-TBが確認され、2次抗結核薬治療を開始した成人患者を登録した。CDCの中央検査室で、以下の11種の抗結核薬の薬剤感受性試験を行った。1次抗結核薬であるエタンブトール、ストレプトマイシン、イソニアジド、リファンピシン、2次抗結核薬としてのフルオロキノロン系経口薬(オフロキサシン、シプロフロキサシン)、注射薬(カナマイシン、カプレオマイシン、アミカシン)、その他の経口薬(アミノサリチル酸、エチオナミド)。2次抗結核薬に対する耐性のリスク因子およびXDR-TBを同定するために、得られた結果を臨床データや疫学データと比較した。2次抗結核薬耐性率43.7%、XDR-TB感染率6.7%解析の対象となった1,278例のうち、1つ以上の2次抗結核薬に耐性を示したのは43.7%(559例)であった。20.0%(255例)が1つ以上の注射薬に、12.9%(165例)は1つ以上のフルオロキノロン系経口抗結核薬に耐性を示した。XDR-TBの感染率は6.7%(86例)だった。これらの薬剤に対する耐性発現の最大のリスク因子は「2次抗結核薬の投与歴」で、XDR-TB感染のリスクが4倍以上に増大した(フルオロキノロン系経口薬:リスク比4.21、p<0.0001、注射薬:4.75、p<0.0001、その他の経口薬:4.05、p<0.0001)。フルオロキノロン系抗菌薬耐性(p<0.0072)およびXDR-TB感染(p<0.0002)は男性よりも女性で高頻度であった。2次抗結核注射薬に対する耐性は、失業、アルコール依存、喫煙との間に関連を認めた。その他のリスク因子については、各薬剤間、各国間でばらつきがみられた。著者は、「XDR-TBを含む抗結核薬耐性の一貫性のある最大のリスク因子は、2次抗結核薬の投与歴であった」と結論し、「今回の特定の国における調査結果は、検査体制に関する国内的な施策や、MDR-TBの効果的な治療に関する勧告の策定の参考として他国にも外挿が可能と考えられる」と考察している。

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過体重・肥満の青少年にノンカロリー飲料宅配、体重減少への効果は?

 過体重で肥満の青少年(学校に通う9~10年生、15歳前後)に、ノンカロリー飲料の宅配を行い砂糖入り飲料の摂取量を減らす介入を行ったところ、1年時点では介入群のほうがBMIの増加が低く効果がみられたが、主要転帰とした2年時点では有意差はみられなかったことが報告された。ただし、ヒスパニック系の被験者では、試験開始2年時点でも介入効果が認められたという。米国・New Balance Foundation Obesity Prevention CenterのCara B. Ebbeling氏らが、200人超について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2012年10月11日号(オンライン版2012年9月21日号)で発表した。砂糖入り飲料の摂取は過剰な体重増加の原因になっている可能性がある。本研究では、ノンカロリー飲料提供が体重増加にどのような影響をもたらすかを調べた。ノンカロリー飲料を隔週で宅配研究グループは、過体重で肥満の青少年で、普段砂糖入り飲料を摂取している224人を無作為に2群に分け、一方には、1年間、ノンカロリー飲料を隔週で各家庭に宅配することに加え、月1回親への電話でモチベーションの維持を試み、被験者とともに3回の面談を行った。もう一方の群は、コントロール群だった。被験者のうち、男子は124人で、BMIは年齢・性別カテゴリーの中で85パーセンタイル以上だった。全員が1日12オンス(1回量、約360mL)以上の砂糖入り飲料または100%ジュースを摂取していた。介入期間は1年間で、追跡期間は2年間だった。同介入による、BMIや体重増加幅の軽減効果の有無を分析した。介入1年時点で97%が、2年時点で93%が試験を継続していた。2年後の砂糖入り飲料摂取量は減少、体重・BMIの増加幅軽減効果はみられず試験開始時点での砂糖入り飲料平均摂取量は、両群ともに同程度で1日1.7回量だった。1年後、介入群では1日平均0.2回量まで減少し、2年後も1日平均0.4回量だった。一方でコントロール群では、1年後は1日平均0.9回量、2年後は1日平均0.8回量と、いずれも介入群より摂取量が多かった。主要アウトカムであるBMIの変化の平均値については、試験開始2年後の時点では、介入群0.71に対し、コントロール群1.00であり、両群で有意差はなかった(p=0.46)。ただし、1年後のBMIの変化については、介入群が0.06に対し、コントロール群が0.63と、介入群でその増加幅が有意に小さかった(増加幅格差:-0.57、p=0.045)。また体重増加も1年後は、介入群が1.6kgに対し、コントロール群が3.5kgと、介入群でその増加幅が有意に小さかった(同:-1.9、p=0.04)。また人種別にみると、ヒスパニック系の被験者で、介入によるBMI増加幅の減少が認められ、1年後は-1.79(p=0.007)、2年後は-2.35(p=0.01)だった。試験参加に関連する有害事象は認められなかった。

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