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医学ジャーナルのプレスリリースは、新聞報道に影響するか?

医学ジャーナルが特定の論文について発表したプレスリリースの質が高い場合は、それを報じる新聞記事の質も高くなるが、プレスリリースの質が低ければ関連新聞記事の質も低下することが、米在郷軍人局医療センターのLisa M Schwartz氏らの調査で明らかとなった。医学ジャーナルが発行するプレスリリースには質のばらつきがみられ、重要な要素が除外されたり、試験の重大な限界を伝えていないことが多いという。これらのプレスリリースが、新聞報道の質に及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。プレスリリースが新聞記事の質に及ぼす影響を後ろ向きに評価研究グループは、医学ジャーナルによるプレスリリースの質が、新聞の関連記事の質に及ぼす影響を評価するために、レトロスペクティブなコホート試験を実施した。医学ジャーナル主要5誌(Annals of Internal Medicine、BMJ、Journal of the National Cancer Institute、JAMA、New England Journal of Medicine)を2009年1月号から順に古い号へとレビューし、アウトカムの定量化が可能で、新聞で報道(100語以上の独自記事)された最新の原著論文100編を抽出した。オンラインデータベース(Lexis Nexis、Factiva)を検索して759本の新聞記事を同定し、Eurekalertと当該ジャーナルのウェブサイトを検索して68本のプレスリリースを抽出した。2名の研究者が別個に、論文、プレスリリース、関連新聞記事のサンプル(343本)の質の評価を行った。プレスリリース発表論文の新聞掲載率は71%1編の論文に関する新聞記事数の中央値は3本(1~72)であった。解析の対象となった新聞記事343本のうち、71%は医学ジャーナルがプレスリリースを発表した論文に関するものだった。絶対リスクを明示した主要結果を掲載した記事は、プレスリリースにその情報がない場合は9%、それがある場合は53%で(相対リスク:6.0、95%信頼区間:2.3~15.4)、プレスリリースそのものがない場合は20%であった(同:2.2、0.83~6.1)。記事の39%(133本)は有益な介入に関する研究を報じるものだった。プレスリリースが有害性に触れていない場合でもそれを報じた記事は24%で、プレスリリースが触れている場合は68%が有害性を報じており(相対リスク:2.8、95%信頼区間:1.1~7.4)、プレスリリースがない場合は36%であった(同:1.5、0.49~4.4)。研究に重大な限界がある場合にそれを報じた記事は75%(256本)であった。プレスリリースがそれに触れていなくても限界について報じた記事は16%、プレスリリースが触れていれば48%が報じていて(相対リスク:3.0、95%信頼区間:1.5~6.2)、プレスリリースが発表されていなくても限界を記載したのは21%だった(同:1.3、0.50~3.6)。これらの結果から、著者は「医学ジャーナルが発表した質の高いプレスリリースは関連新聞記事の質を高め、プレスリリースの質が低ければ新聞記事の質も低下すると考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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がん化学療法中の患者へのsemuloparin、血栓塞栓症イベントを低下

がん化学療法を受けている患者に対するsemuloparinの投与は、重大出血の顕著な増加なく、血栓塞栓症イベント発生率を低下することが明らかにされた。イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らが、47ヵ国395施設から3,212例を対象とした多施設共同無作為化二重盲検試験の結果による。がん化学療法を受けている患者は、静脈血栓塞栓症のリスクが高いことが知られる。これまで、抗血栓薬の予防処置の臨床上の有益性が支持された試験データは限定的なものだった。NEJM誌2012年2月16日号掲載報告より。静脈血栓塞栓症予防と出血を判定研究グループは、がん化学療法を受けている患者の静脈血栓塞栓症予防について、超低分子量ヘパリンsemuloparinの有効性と安全性を評価することを目的に試験を行った。転移性または局所進行性の固形腫瘍に対する化学療法を受ける患者を、semuloparinを1日1回20mg皮下投与群またはプラセボ投与群に無作為に割り付け、化学療法のレジメン変更となるまで投与が行われた。主要有効性アウトカムは、あらゆる症候性深部静脈血栓症、あらゆる非致死性肺塞栓症、静脈血栓塞栓症に関連した死亡の複合とした。主要安全性アウトカムは、臨床的意義のある出血(重大および重大でない)とした。血栓塞栓症イベントの発生率を抑え得る治療期間の中央値は3.5ヵ月だった。静脈血栓塞栓症は、プラセボ投与群1,604例のうち55例(3.4%)で発生(リスク比:0.36、95%信頼区間:0.21~0.60、P<0.001)したのと比較して、semuloparin投与群では1,608例のうち20例(1.2%)だった。がんの原発部位、ステージ、ベースラインの静脈血栓塞栓症リスクで定義されたサブグループにおいても、一貫した有効性が認められた。臨床的意義のある出血の発生率は、semuloparin群2.8%、プラセボ群2.0%だった(リスク比:1.40、95%信頼区間:0.89~2.21)。大出血は、semuloparin投与群1,589例中19例(1.2%)、プラセボ投与群は1,583例中18例(1.1%)だった(同:1.05、0.55~1.99)。その他の有害事象の発生率はすべて両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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小児・青年期の身体活動時間が長いと、心血管代謝リスク因子は良好に

小児・青年期の身体活動時間が長いほど、座位時間の総量にかかわらず、心血管代謝に関するリスク因子は良好であることが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学アデンブルックス病院代謝科学研究所のUlf Ekelund氏らが、2万人超の4~18歳に対して行ったメタ解析の結果、報告したもので、JAMA誌2012年2月15日号で発表した。これまで、健康児における身体活動時間と座位時間との複合でみた心血管代謝リスクとの関連についてはあまり検討されていなかった。被験者の中等度~強度の身体活動時間の平均値は1日30分研究グループは、1998~2009年にかけて行われた14試験に参加した4~18歳のデータベース「Children’s Accelerometry Database」から、計2万871人のデータについてメタ解析を行った。中等度~強度の身体活動(moderate- to vigorous-intensity physical activity:MVPA)時間、座位時間と、ウエスト周囲、収縮期血圧、空腹時トリグリセリド値、HDLコレステロール値、インスリン値の関連を分析した。被験者の、MVPA時間の平均値は1日30分(SD:21)、座位時間は1日354分(同:96)だった。MVPA時間が長いと心血管代謝アウトカムは良好、座位時間が長い群で格差が顕著MVPA時間は、すべての心血管代謝アウトカムと有意に関連しており、性別や年齢、日中活動時間、座位時間、ウエスト周囲とは独立していた。一方で座位時間は、いずれの心血管代謝アウトカムとも関連しておらず、MVPA時間と関連していなかった。被験者データは、MVPA時間と座位時間をそれぞれ三分位範囲(短・中・長時間)に層別化して検討された。層別化に基づく複合解析の結果、MVPA時間は長いほど心血管代謝リスク因子は良好であることが認められた。その関連は、座位時間、三分位範囲いずれの群においても認められた。MVPA時間の長短によるアウトカムの格差は、座位時間がより短いほど大きかった。具体的には、MVPA時間の長時間群と短時間群とのウエスト周囲格差の平均値は、座位時間長時間群では5.6cmだったのに対し、短時間群では3.6cmだった。また、MVPA長時間の群と短時間群との収縮期血圧格差の平均値は、座位時間長時間群で0.7mmHg、短時間群では2.5 mmHgだった。HDLコレステロール値の同格差平均値も、それぞれ-2.6mg/dLと-4.5mg/dLだった。トリグリセリド値とインスリン値の格差も同様だった。これらのアウトカム格差をもたらしたMVPA長時間群の同時間は35分/日以上であり、一方短時間群の同時間は18分/日未満だった。被験者のうち6,413人を2.1年間前向きに追跡した解析結果では、MVPA時間と座位時間の複合はフォローアップ時において、ウエスト周囲とは関連していなかったが、基線でウエスト周囲が大きかった群は座位時間が長時間であることとの関連が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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早期乳がんの術後化学療法、どのレジメンが最も有効か?:約10万例のメタ解析

早期乳がんの術後化学療法では、アントラサイクリン系薬剤+タキサン系薬剤ベースのレジメンおよび高用量アントラサイクリン系薬剤ベースレジメンによって乳がん死が約3分の1低下することが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で明らかとなった。乳がんの術後化学療法の効果には差があり、治療法の選択に影響を及ぼす可能性があるという。EBCTCGは、すでに1995年までに開始された試験のメタ解析の結果を報告しているが、用量は考慮されず、タキサン系薬剤は含まれていなかった。Lancet誌2012年2月4日号(オンライン版2011年12月6日号)掲載の報告。1973~2003年に開始された123件、約10万例のメタ解析研究グループは、早期乳がんに対する個々の化学療法レジメンの有用性を比較するために、無作為化試験の患者データを用いたメタ解析を実施した。1973~2003年に開始された全無作為化試験123件の2005~2010年の個々の患者データ(約10万例)を収集した。試験の内訳は、1)タキサン系薬剤(TAX)ベースレジメンと非TAX系薬剤ベースレジメンを比較した33試験(1994~2003年に開始)、2)アントラサイクリン系薬剤(Anth)ベースレジメンとCMF(シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル)を比較した20試験(1978~1997年に開始)、3)高用量と低用量のAnthベースレジメンを比較した6試験(1985~1994年に開始)、4)多剤併用化学療法と非化学療法を比較した64試験(1973~1996年に開始、種々のAnthベースレジメンに関する22試験およびCMFに関する12試験を含む)。年齢や腫瘍の性状などの背景因子は影響しない用量を固定したAnthベースの対照群に比べ、これにTAXを4コース追加して治療期間を延長した群では、乳がん死が有意に低下した(率比[RR]:0.86、両側検定:2p=0.0005)。同様にTAX 4コースを追加し、対照群も他の薬剤をほぼ2倍の用量を追加してバランスを調整した試験では、有意な差は認めなかった(RR:0.94、2p=0.33)。CMFを対照とした試験では、標準4AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド、3週ごと、4コース)と標準CMF(4週ごと、6コース)の乳がん死抑制効果はほぼ同等(RR:0.98、2p=0.67)だったが、標準4ACよりも高用量である3剤併用Anthベースレジメン(CAF[シクロホスファミド+ドキソルビシン+フルオロウラシル、4週ごと、6コース]、CEF[シクロホスファミド+エピルビシン+フルオロウラシル、4週ごと、6コース])は、標準CMFに比べ高い効果を示した(RR:0.78、2p=0.0004)。非化学療法群との比較試験では、CAF(RR:0.64、2p<0.0001)、標準4AC(RR:0.78、2p=0.01)、標準CMF(RR:0.76、2p<0.0001)のいずれのレジメンも、有意に乳がん死抑制効果を改善したが、標準4ACや標準CMFに比べCAFの有効性が優れることが示唆された。すべてのTAXベースまたはAnthベースレジメンに関するメタ解析では、年齢、リンパ節転移の有無、腫瘍径、腫瘍分化度、エストロゲン受容体の状態、タモキシフェンの使用歴による有効性の差はほとんどみられなかった。それゆえ、年齢や腫瘍の性状とは無関係に、TAX+Anthベースまたは高用量Anthベースレジメン(CAF、CEF)は乳がん死を平均で約3分の1低下させることが確認された。著者は、「非化学療法群と比べても、TAX+Anthベースまたは高用量Anthベースレジメンは10年間で乳がん死亡率を約3分の1低下させた。エストロゲン受容体陽性例に適切なホルモン療法を行ってもリスクは変わらなかった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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浸潤性乳がん部分切除患者の再切除率、断端部陰性では医師や施設により大幅格差

浸潤性乳がんで部分切除術を受けた人の再切除率は、切除断端部の状態によって異なり、また切除断端部陰性の人については、執刀外科医や医療機関によって大きなばらつきがあることが明らかにされた。米国・ミシガン州立大学のLaurence E. McCahill氏らが、2,000人超について行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月1日号で発表した。再切除率は全体では23%、断端部陽性では86%研究グループは、2003~2008年に、米国4ヵ所の医療機関で浸潤性乳がんで部分切除術を受けた2,206人について、その再切除率とリスク因子について調査を行った。結果、再切除を行ったのは、全体の22.9%にあたる509人で、そのうち再切除1回は454人、同2回は48人、同3回は7人だった。再切除率は、切除断端部が陽性の人で高く85.9%(陰性は84.4%)、また断端部マージン別では1.0mm未満だった人が最も高く47.9%、同1.0~1.9mmが20.2%、同2.0~2.9mmが6.3%だった。断端部陰性の再切除率、医師により0~70%と大きなばらつき切除断端部が陰性だった人について見てみたところ、再切除率は、執刀外科医(実施率範囲:0~70%、p=0.003)や、手術を行った医療機関(同:1.7~20.9%、p<0.001)によって、大きなばらつきが認められた。切除断端部陰性の再切除率が最も高率だった医療機関の、同低率だった医療機関に対する再切除実施に関するオッズ比は、6.16(同:2.26~16.78)だった(p<0.001)。執刀外科医の手術件数と再切除率との関連は、ケースミックスで補正後、認められなかった(p=0.92)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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米国病院救急部門の患者滞在時間、地域セーフティネット病院か否かで格差なし

米国の病院救急部門における患者の滞在時間は、地域のセーフティネットを担う病院と、そうでない病院とで有意な差はないことが報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のChristopher Fee氏らが、全米約400の病院について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月1日号で発表した。Fee氏らは、セーフティネット病院がメディケイドや無保険患者を多く受け入れることで医療パフォーマンス、特にP4Pに重大な影響が及んでいる可能性を考慮し本研究を行った。被験者の4割がセーフティネット病院で治療研究グループは、全米の病院救急部門に関する調査「National Hospital Ambulatory Medical Care Survey 」(NHAMCS)の2008年のデータを元に、米国疾病予防管理センター(CDC)の基準で、セーフティネットを担う病院とそうでない病院に分類し、救急部門滞在時間を比較した。なおセーフティネットのための滞在時間の推奨基準は、入院(8時間か480分)、退院、転院、経過観察は4時間か240分と規定されていた。回答を寄せた病院は396ヵ所、3万4,134人分の患者のデータが入手できた。そのうち、18歳未満の患者や、滞在時間データなどが欠けている患者データは、除外した。分析対象とした2万4,719件の患者データのうち、セーフティネットを担う病院の救急部門で治療を受けた分は42.3%、非セーフティネット病院分は57.7%だった。入院、退院、経過観察、転院のいずれも、有意な差はみられずセーフティネット病院救急部門の、入院患者の滞在時間中央値は269分(四分位範囲:178~397)だった。これに対し、非セーフティネット病院では281分(同:178~401)で、両者に有意差はなかった。その他、退院患者、経過観察患者、転院患者のそれぞれの救急部門滞在時間の中央値のいずれも、セーフティネット病院と非セーフティネット病院では同等だった。セーフティネットであることは、規定された滞在時間の遵守に関する独立因子ではなかった。セーフティネット病院の非セーフティネット病院に対する遵守の各オッズ比は、入院0.83、退院1.03、経過観察1.05、転院1.30で、精神病患者の退院についてのみ1.67(同:1.02~2.74)と有意な差が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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聖路加GENERAL 【Dr.香坂の循環器内科】

第1回「階段がつらいのは歳のせい ? 」第2回「夜間の呼吸困難は花粉症のせい ? 」第3回「心雑音と言われたのですが元気なんです」第4回「ためらってはいけないCAB」 第1回「階段がつらいのは歳のせい ? 」地下鉄階段昇降時などに胸部圧迫感を感じるようになった50歳男性。他の領域の胸痛疾患に比べてリスクの高い場合が多い循環器疾患。まずは、この患者が循環器疾患かどうかを確かめることが重要です。胸痛の鑑別において大切なのは、1にも、2にも問診です。問診は、3つのポイントをおさえればOK。このような典型的な狭心症患者の他、顎が痛い、歯が痛いと訴えてくる患者さんも放散痛によるもので、実は心筋梗塞や狭心症だった、という非典型的な例もOPQRST3Aを使って解説していきます。また、胸痛においては、ACS(急性冠動脈症候群)という概念が重要になってきます。その診断方法についても詳しくお伝えします。第2回「夜間の呼吸困難は花粉症のせい ? 」数年前から動悸を自覚していた44歳の男性。夜間に呼吸困難が出るようになり、起き上がってもすぐには改善しなくなってしまいました。呼吸困難の原因はさまざまですが、起き上がっても改善しないなど心疾患が疑われます。特に、発作性夜間呼吸困難や起座呼吸は、心不全である確からしさが高い症状です。頚静脈、心音などの身体所見、X線、心エコーなどの画像診断、血液検査として有用性の高いBNPによって心不全であるかどうかを確認した結果、この男性は心不全であることがわかりました。そして、その原因については驚くべき事実が・・・。III音の聞き分け方、薬剤の使い方については「北風と太陽」を引用するなど、香坂先生ならではのユニークな講義が展開されます。第3回「心雑音と言われたのですが元気なんです」長い間微熱が続いたため、病院を訪れた62歳の男性。健診で「心雑音がある」と言われましたが、スポーツもこなし元気に過ごしていました。心雑音をみたときには、まず経過観察でよいものか、それともすぐに処置が必要なものかを見分ける必要があります。最強点がどこにあるのか、収縮期か拡張期か、収縮期であれば駆出性か逆流性かという鑑別が重要になります。この患者は2年後に症状が出始め、重症のMRと診断され、手術を受けることになりました。重症のMRは、10年以内に死亡、または手術を実施する確率が90%と高く、フォローが重要となります。ポイントは、重症度によってスパンを短くして、心不全症状やEFの低下がないかなどを慎重に観察することです。また、僧帽弁、大動脈弁治療に関して、最新の弁膜症手術も紹介していきます。第4回「ためらってはいけないCAB」最近動悸がするということで診療所を訪れた32歳男性。待合室で診察を待っている時、突然倒れて心肺停止状態になってしまいました。今まで心肺停止というと、まずA(気道確保)、続いてB(人工呼吸)の後、C(心臓マッサージ)という手順が常識でしたが、ACLSのプロトコル改訂により、ABCからCABと変わってきました。すなわち、なにはなくとも即座に心臓マッサージを!ということです。そこで、本来求められる心肺蘇生法に対し、病院外で行われるCPRの現状や、心臓マッサージの基本原理をしっかりと見直していきます。また、改訂で変更された薬剤、その効果や投与のタイミングについても具体的に紹介します。心肺蘇生後は患者の状態をよくみて判断していくことが重要となりますが、具体的に何をすべきか、また、突然死を防ぐための方法、心電図から突然死の確率が高い疾患の読み方についてもご紹介します。

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経口抗凝固療法の自己モニタリング、血栓塞栓イベントを低減

患者自身が検査や用量の調整を行う自己モニタリングによる経口抗凝固療法は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢であることが、英国・オックスフォード大学のCarl Heneghan氏らの検討で示された。ビタミンK拮抗薬による経口抗凝固療法を受ける患者は増加し続けているが、治療域が狭いため目標とする国際標準化比(INR)を維持するには頻回の検査や適切な用量の調整などを要するという問題がある。自己モニタリングは、その有効性を示す優れたエビデンスがあるものの、臨床導入には相反する見解がみられるという。Lancet誌2012年1月28日号(オンライン版2011年12月1日号)掲載の報告。自己モニタリングの意義を検証するメタ解析研究グループは、経口抗凝固薬の患者自身による自己モニタリング(自己検査[検査は患者が行い用量は医師が決める]または自己管理[検査、用量調整とも患者が行う])の意義を検証するために、自己モニタリングと医師によるモニタリングの有効性を比較した無作為化試験のメタ解析を行った。Ovid versions of Embase(1980~2009年)とMedline(1966~2009年)を検索し、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどで検索結果を調整した。UK National Research Register and Trials Centralなどで未出版の試験も検索した。抽出された全試験の著者と連絡を取り、死亡までの期間、初回大出血、初回血栓塞栓イベントに関する個々の患者データの提供を求めた。機械弁置換や心房細動の患者についても解析した。年齢別、対照群のケアのタイプ(抗凝固療法専門施設とプライマリ・ケア施設)、自己検査と自己管理、性別について、事前に規定されたサブグループ解析を行った。変量効果モデルで統合ハザード比(HR)を算出した。 血栓塞栓イベントが半減、特に55歳未満と機械弁置換患者で高い効果1992~2006年に患者登録がなされ、2000~2010年に発表された11試験(6,417例、1万2,800人・年)が解析の対象となった。全体の平均年齢は65.0歳(17~94歳)、女性が22%、心房細動患者は53%、機械弁置換患者は35.0%であった。血栓塞栓イベントは、医師によるモニタリング群に比べ自己モニタリング群で有意に減少した(HR:0.51、95%信頼区間[CI]:0.31~0.85)が、大出血(同:0.88、0.74~1.06)と死亡率(同:0.82、0.62~1.09)は両群間に差はみられなかった。特に、55歳未満の患者(HR:0.33、95%CI:0.17~0.66)と機械弁置換患者(同:0.52、0.35~0.77)で血栓塞栓イベントの抑制効果が高かった。85歳以上の患者(99例)では、自己モニタリングによる合併症の増加はみられず、死亡率は有意に低下した(同:0.44、0.20~0.98)。著者は、「経口抗凝固療法の自己検査および自己管理は、本療法が適応となる全年齢層の患者において安全な治療選択肢である」と結論し、「自己管理の選択肢は、適切な医療支援による保護の元で患者に提供すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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心血管疾患の生涯リスクの差は、リスク因子の違いによる

心血管疾患の生涯リスクについて、黒人および白人の全年齢階層にわたって幅広く検討した結果、そのリスクの顕著な差は、個々人のリスク因子プロファイルの違いによるもので、人種や出生コホート群を問わず一貫したものであることが明らかにされた。米国・テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターのJarett D. Berry氏らが、18の試験に参加した25万7,000人余のデータについて行ったメタ解析の結果、報告したもので、NEJM誌2012年1月26日号で発表された。黒人・白人の男女計25万7,384例のデータを基にメタ解析Berry氏らが解析対象としたのは、米国で過去50年間に行われた長期疫学コホートの被験者データを収集した「Cardiovascular Lifetime Risk Pooling Project」に組み込まれた参加者の個人データで、18試験の黒人・白人の男女計25万7,384例のデータであった。被験者は心血管疾患のリスク因子に関して、45、55、65、75歳時に測定を受けていた。それらデータから血圧値、コレステロール値、喫煙状況、糖尿病状態を用いて、参加者を5つのリスク因子プロファイルカテゴリー(全リスクが至適、至適でないリスク因子が1つ以上、上昇したリスク因子が1つ以上ある、重大リスク因子が1つある、重大リスク因子が2つ以上ある)に分類し、残る余生に推定される心血管イベントの生涯リスクを、45、55、65、75歳の各年齢カテゴリー群別に算出した。心血管疾患生存例は競合イベントとして処理された。人種や出生コホート群を問わず傾向は同じ結果、リスク因子プロファイルの全カテゴリーにわたり、心血管疾患生涯リスクについて顕著な差が認められた。55歳群において、リスク因子プロファイルが至適であった群(総コレステロール<180mg/dL、血圧:収縮期<120/拡張期<80、非喫煙、非糖尿病)は、重大リスク因子が2つ以上ある群と比べて、心血管疾患死のリスクが80歳まで大幅に低かった(男性間:4.7% vs. 29.6%、女性間:6.4% vs. 20.5%)。至適リスク因子プロファイルを有する群は、致死性冠動脈心疾患または非致死的心筋梗塞の生涯リスク(男性間:3.6% vs. 37.5%、女性間:<1% vs. 18.3%)、また致死的・非致死的脳卒中の生涯リスク(男性間:2.3% vs. 8.3%、女性間:5.3% vs. 10.7%)も低かった。同様の傾向は、黒人コホートおよび白人コホート、また多様な出生コホートを問わず認められた。

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白内障・網膜硝子体の二役を担う「ステラリスPC」発売:ボシュロム・ジャパンに単独インタビュー

Vision Careから眼科サージカル分野への進出ボシュロム・ジャパンの売上はコンタクトレンズおよびコンタクトレンズケア用品、即ちVision Careが大部分を占める。一方、ボシュロムは眼科に特化したサージカル領域、医薬品領域という柱を持ち、Vision Careと合わせた3本でグローバルに展開している。ボシュロム・ジャパンとしてもVision Care以外の2本の柱の増強が中・長期目標だという。「なかでも、今年大きく躍進したいと思っているのがサージカル領域」と代表取締役社長 足利英幸氏は語る。多彩な特徴を持つ「ステラリスPC」の発売ボシュロム・ジャパンには「ステラリス」という製品があり、白内障手術の装置として2009年から日本で発売している。今回の「ステラリスPC」は網膜硝子体手術の承認を受け、白内障・網膜硝子体の両手術に適応できる装置として発売することとなった(1月23日発表)。「ステラリスPC」は白内障・網膜硝子体両手術の適応だけでなく、その切り替えが簡便だという。そのほかにも、毎分5,000サイクルの高速硝子体カッター、底面積457×457mmという省スペース設計、ワイヤレスフットペダルによる複数パラメーターの同時コントロールが可能など、日本の眼科手術事情に適した特徴を有する。網膜硝子体手術は白内障手術と併せて行われることが多い。「ステラリスPC」は一つの機械、一回の手術で双方行えるため、患者さんの侵襲をより少なく済ませることが可能である。提携で市場導入と保守をカバーボシュロム・ジャパンは「ステラリスPC」発売にあたり、眼科医療総合メーカー 株式会社トプコンメディカルジャパンと共同販促・販売提携契約を締結した。ボシュロム・ジャパンが製品を輸入し、トプコンメディカルジャパンが販売・保守を担当、プロモーションは両社で行う。そこには、眼科領域に実績のあるトプコンとの連携で早期の市場導入を図り、保守体制を整えるという狙いがある。「新発売時から保守にも万全の体制を整えます。外科に注力するという具体的な構想が、この提携に表れているといえます」と足利氏。今後とも網膜・硝子体手術は益々重要に白内障手術は毎年3%程度増えているが、網膜硝子体手術もすでに年間10万例と推定されている。網膜疾病は、日本の視覚障害原因の第二位であるが(第一位は緑内障)、なかでも糖尿病性網膜症が最も多い。それ以外にも強度近視由来の網膜剥離や高齢者の黄斑円孔など、いずれも失明につながるものの承認された有効な薬物療法がなく、網膜・硝子体手術が第一適応である。高齢化の加速、糖尿病の増加などに伴い、今後も網膜・硝子体手術の重要性は増していくといえる。医療機器分野の参入に積極的ボシュロムには、「ステラリスPC」以外にもフェムトセカンドレーザーをはじめ高品質の製品パイプラインがあり、日本においても医療機器分野のラインアップを増やしていく方針だという。「眼は生まれてから死ぬまでお付き合いするもの。今回のサージカル領域への参入により、Vision Careから疾病治療まで、眼に関して一生のお付き合いができる会社になっていきたいと思っています」と足利氏は目標を語った。ボシュロムは創業160年、日本でも40周年になる。今回の「ステラリスPC」導入は、日本での同社の歴史の中で一歩、その目標に近づいた節目といえるかもしれない。ボシュロム・ジャパン プレスリリースhttp://www.bausch.co.jp/company/news/20120123.html(ケアネット 細田 雅之)

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認知機能の低下は45歳からすでに始まっている

認知機能の低下は中年期(45~49歳)にはすでに始まっていることが、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のArchana Singh-Manoux氏らが行ったWhitehall II試験で示された。認知機能は加齢に伴って低下し、認知状態の障害は認知症に顕著な特徴とされる。認知機能低下の開始年齢は知られていないが、最近の文献レビューでは60歳以前に低下が始まることを示すエビデンスはほとんどないという。BMJ誌2012年1月21日号(オンライン2012年1月5日号版)掲載の報告。年齢が認知機能低下に及ぼす影響を評価する前向きコホート試験Whitehall II試験は、年齢が認知機能の低下に及ぼす影響を評価するために、中年層の縦断的データから10年間の認知機能の低下を推察し、さらに横断的データを用いて各年齢層の比較を行うプロスペクティブなコホート試験である。対象はロンドン市の公務員(事務職)で、試験開始時の1985~1988年に試験参加への招聘に応じたのは1万308人(73%)であった。認知機能の検討は1997~1999年に開始され、この時点で45~70歳であった男性5,198人と女性2,192人が解析の対象となった。解析は、5つの年齢層(45~49歳、50~54歳、55~59歳、60~64歳、65~70歳)に分けて行った。主要評価項目は、以下の5つの認知機能の指標とし、10年間に3回の評価を行った。1)記憶力(memory):単語短期記憶テスト、2)論理的思考力(reasoning):Alice Heim 4-I(AH 4-I)思考力テスト、3)語彙力(vocabulary):Mill Hill語彙力テスト、4)音素流暢性(phonemic fluency):1分間に“S”で始まる単語をできるだけ多く書き留めるテスト、5)意味流暢性(semantic fluency):1分間にできるだけ多くの動物の名前を書き留めるテスト。45~49歳の論理的思考力が10年間で3.6%低下語彙力を除き、認知スコアは5つの年齢層のすべてで低下し、高齢になるほど低下速度が速かった。ベースライン時に45~49歳の男性は、10年間で論理的思考力が3.6%低下し、65~70歳の男性は9.6%低下した。女性にも同様の傾向がみられ、45~49歳の年齢層は10年間で3.6%の低下、65~70歳は7.4%の低下を示した。女性では、横断的解析が、認知機能に及ぼす年齢の影響を過大評価していることが示唆された。例えば、45~49歳の女性の論理的思考力は、縦断的解析では3.6%の低下であったが、横断的解析では11.4%低下していた。教育歴で調整すると、縦断的解析では年齢の影響はほとんどなくなったが、横断的解析では実質的な認知機能の低下が認められた。男性ではこのような傾向はなかったことから、女性では教育の差を考慮する必要がある。著者は、「認知機能の低下は中年(45~49歳)ですでに始まっていることが確かめられた」と結論づけ、「年齢に関連する認知機能の低下は、横断的解析では正確に評価できない可能性がある」としている。(菅野守:医学ライター)

9492.

前立腺生検、有害事象が再生検への消極性を招く

前立腺生検の忍容性は全般に良好だが、一部では疼痛や感染などの有害事象による重大な症状をもたらし、再生検に対する消極性や、プライマリ・ケアにおける医療資源の使用を促進することが、英国Sheffield大学のDerek J Rosario氏らが行ったProBE試験で明らかとなった。前立腺がんの診断では前立腺生検が重要だが、被験者の受容性(acceptability)や有害事象の影響、その結果としての医療資源の使用状況をプロスペクティブに検討した試験はほとんどないという。BMJ誌2012年1月21日号(オンライン版2012年1月9日号)掲載の報告。無作為化試験に組み込まれた前向きコホート研究ProBE(Prostate Biopsy Effects)試験は、進行中の多施設共同無作為化対照比較試験であるProtecT(Prostate Testing for Cancer and Treatment)試験の登録患者を対象に行われたプロスペクティブなコホート研究。経直腸的超音波ガイド下生検(TRUS-Bx)から35日以内に発現した有害事象の影響の評価を目的とした。ProtecT試験では、50~69歳の地域住民男性22万7,000人が前立腺特異抗原(PSA)検査のカウンセリングを受けるよう招聘された。そのうち11万1,148人がPSA検査を受け、PSA値 3~20ng/mLの1万297人がTRUS-Bxを推奨された。このうち、2006年2月~2008年5月までに8施設で抗菌薬併用下にTRUS-Bxを受けた1,753人(平均年齢:62.1歳、平均PSA値:5.4ng/mL)がProBE試験の適格例とされ、試験参加に同意した1,147人(65%、平均年齢:62.1歳、平均PSA値:4.2ng/mL)が登録された。生検時、7日目、35日目に、質問票を用いて疼痛、感染、出血の頻度と関連症状の影響を評価した。生検直後と7日目に再生検に対する患者の受容性を調査し、35日までの医療資源の使用状況を評価した。有害事象関連症状が大きな問題になることは少ない生検後35日までに疼痛を訴えたのは43.6%、発熱の訴えは17.5%、血尿が65.8%、血便が36.8%、血性精液は92.6%であった。これらの症状が中等度~重度の問題となったと答えた患者は少なく、疼痛が7.3%、発熱は5.5%、血尿は6.2%、血便は2.5%、血性精液は26.6%であった。生検直後に、中等度~重度の問題が生じた場合は再生検を考慮すると答えた患者は10.9%で、7日後には19.6%に増加した。再生検に対する消極的な姿勢は、初回生検時の好ましくない経験、特に生検時疼痛(p<0.001)、感染関連症状(p<0.001)、出血(p<0.001)と有意な関連がみられ、明らかな施設間差が認められた(p<0.001)。10.4%が医療施設(通常は担当GP)を受診しており、最も頻度が高かったのは感染関連症状であった。有害事象の重症度は再生検に対する消極的な姿勢と有意な関連を示した(p<0.001)。著者は、「前立腺生検は全般に良好な忍容性を示したが、一部では有害事象による重大な症状をもたらし、再生検への受容性やプライマリ・ケアにおける医療資源の使用に影響を及ぼした」と結論し、「有害事象プロフィールの施設間差は、局所麻酔薬や抗菌薬をより効果的に使用すれば患者のアウトカムが改善され、医療資源の使用が抑制される可能性を示唆する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

9493.

P2Y12阻害薬cangrelor、待機的CABG患者の橋渡し使用の有効性と安全性

チエノピリジン系抗血小板薬を服用する待機的冠動脈バイパス術(CABG)患者について、術前に同薬服用を中止後、代わりにP2Y12阻害薬cangrelorを投与することで、何も服用しない場合に比べて治療期間中の血小板反応性は低く維持できることが報告された。また同薬投与群のCABG関連の有意な出血リスク増大が認められなかったことも報告された。米国・フロリダ大学のDominick J. Angiolillo氏らによる試験の結果、明らかにされたもので、JAMA誌2012年1月18日号で発表された。診療ガイドラインでは、出血リスク増大のため、CABG実施前5~7日のチエノピリジン系抗血小板薬の服用中止が勧告されている。CABG実施前、治療群にはcangrelorを48時間以上投与研究グループはP2Y12阻害薬cangrelorの橋渡し使用について検討するため、2009年1月~2011年4月にかけて、急性冠症候群または冠動脈ステント留置術を受け、CABG待機中の患者210人を対象とする、多施設共同前向き無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。被験者は、チエノピリジン系抗血小板薬を服用していた。研究グループは被験者を無作為に二群に分け、チエノピリジン系抗血小板薬を中止後、一方の群には可逆的P2Y12阻害薬cangrelorを0.75μg/kg/分静注投与し、もう一方の群にはプラセボを、それぞれ48時間以上、CABG実施の直前まで投与した。主要有効性エンドポイントは、血小板反応性(P2Y12反応単位PRUで測定)で連日評価した。また主要安全性エンドポイントはCABG関連の出血とした。PRU240未満、治療群でプラセボ群の約5倍結果、全治療期間中の血小板反応性について、PRUが240未満と低かったのは、プラセボ群19.0%(84人中16人)に対し、cangrelor群では98.8%(84人中83人)と有意に高率だった(相対リスク:5.2、95%信頼区間:3.3~8.1、p<0.001)。CABG関連の過度な出血の発生率は、プラセボ群10.4%に対し、cangrelor群11.8%であり、両群で有意差は認められなかった(p=0.763)。軽度の出血エピソードはcangrelorで数的には多かったが、CABG関連の重大出血に有意差は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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超早産児無呼吸へのカフェイン療法、長期5年での無障害生存に有意な改善を示さず

超早産児無呼吸に対するカフェイン投与は、生後18ヵ月における脳性麻痺や認知機能遅延リスクを低下する効果があるが、生後5年時点では、死亡と機能障害を合わせた発生率はプラセボ群と同等で、同療法が長期的には障害のない生存率の改善にはつながらないことが報告された。運動障害や認知障害などの個別の発症率についても、カフェイン投与による低下は認められなかった。米国・ペンシルベニア大学のBarbara Schmidt氏らが、約1,600例を対象とした無作為化プラセボ対照試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年1月18日号で発表した。出生児体重500~1,250gの1,640人について5歳まで追跡Schmidt氏らは、1999~2004年に行われた超早産児無呼吸へのカフェイン療法に関する無作為化プラセボ対照試験「Caffeine for Apnea of Prematurity」の被験者のうち1,640例について、2005~2011年にかけ、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパ、イスラエルの31ヵ所の教育病院を通じ追跡調査を行った。Caffeine for Apnea of Prematurityの被験児は、出生児体重500~1250gで、担当医がカフェイン投与の必要性があると判断した新生児で、同試験では、被験児を無作為に二群に分け、一方にはクエン酸カフェイン(当初20mg/kg/日、その後5mg/kg/日、無呼吸が持続した場合には10mg/kg/日まで増加)を投与し、もう一方の群にはプラセボが投与された。投与期間の中央値は、カフェイン群が37日、プラセボ群が36日だった。死亡・機能障害の統合発生率、カフェイン群が21%、プラセボ群が25%で有意差は見られず主要評価項目は、生後5年での死亡または障害が1つ以上伴う生存の複合アウトカムとした。障害の定義は、粗大運動機能分類システム(GMFCS)レベル3~5の運動障害、全検査IQで70未満の認知障害、行動障害、健康状態不良、聴覚消失、失明だった。その結果、複合アウトカムの発生率は、カフェイン群が21.1%、プラセボ群24.8%で、両群で有意差はなかった(p=0.09)。また、死亡率、運動障害、行動障害、健康状態不良、聴覚消失、失明のいずれの発生率についても、両群で有意差はなかった。認知障害の発生率は、18ヵ月時点よりも5歳時点のほうが低かったが、プラセボ群と有意差は認められなかった(4.9%対5.1%、オッズ比:0.97、95%信頼区間:0.61~1.55、p=0.89)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

9495.

転移性乳がんに対する第一選択治療としてpertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル併用療法

HER2陽性転移性乳がんに対する第一選択治療として、pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセルの併用療法は、トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、心毒性作用の増加を伴うことなく有意に無増悪生存期間を延長したことが、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのJose Baselga氏らによる第3相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CLEOPATRA」の結果、報告された。pertuzumabは、トラスツズマブと相補的な作用機序を持つ抗HER2ヒト化モノクローナル抗体で、第2相試験で、両剤での併用療法が有望な活性作用と忍容可能な安全性プロファイルを示すことが報告されていた。NEJM誌2012年1月12日号(オンライン版2011年12月7日号)掲載報告より。pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル対プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルCLEOPATRA(Clinical Evaluation of Pertuzumab and Trastuzumab)試験は、2008年2月~2010年7月にかけて25ヵ国204施設から登録されたHER2陽性転移性乳がん患者808例を対象に行われた。pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセル(pertuzumab群、402例)またはプラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセル(対照群、406例)のいずれかを第一選択治療となるよう被験者を無作為に割り付け、疾患増悪または有効的に管理できない毒性作用が発現するまで投与を継続した。主要エンドポイントは、独立に評価された無増悪生存期間とした。副次エンドポイントは、全生存期間、研究者が評価した無増悪生存、客観的奏効率、安全性とした。無増悪生存期間、プラセボ群12.4ヵ月に対しpertuzumab群18.5ヵ月に延長結果、無増悪生存期間の中央値は、対照群12.4ヵ月に対して、pertuzumab群は18.5ヵ月だった(増悪または死亡のハザード比:0.62、95%信頼区間:0.51~0.75、P<0.001)。全生存期間の中間解析の結果、pertuzumab+トラスツズマブ+ドセタキセルの優越性が強い傾向が示された。安全性プロファイルは全般的に両群で同程度であり、左室収縮期の機能障害の増加は認められなかった。また、グレード3以上の発熱性好中球減少症と下痢の発現率は、対照群よりpertuzumab群で高かった。(朝田哲明:医療ライター)

9496.

認知症高齢者、入院率は1.4倍に増大

高齢者において、認知症は入院を有意に増大するリスク因子であることが米国・ワシントン大学のElizabeth A. Phelan氏らによる調査の結果、報告された。認知症高齢者の入院率はそうでない高齢者の約1.4倍に上り、なかでも細菌性肺炎や尿路感染症のような外来治療可能な疾患での入院率が、約1.8倍多かったという。同氏らが3,000人超の高齢者について調べた結果で、JAMA誌2012年1月11日号で発表した。補正前入院率、非認知症は200件/1,000人・年、認知症は419件/1,000人・年研究グループは、65歳以上の3,019人の1994~2007年のデータについて、後ろ向き縦断コホート調査を行った。 主要評価項目は、認知症の有無による、全原因入院率や外来治療可能疾患(ambulatory care–sensitive conditions:ACSC)による入院率とした。結果、追跡期間中に認知症を発症したのは494人で、うち427人(86%)が1回以上入院した。認知症を発症しなかった2525人では、うち1478人(59%)が入院した。補正前入院率は、非認知症群が200件/1,000人・年だったのに対し、認知症群は419件/1,000人・年に上った。認知症群の全入院率比は1.41倍、ACSCによる入院率比は1.78倍年齢、性別やその他交絡因子を補正後、認知症群の非認知症群に対する入院率比は、1.41(95%信頼区間:1.23~1.61、p<0.001)だった。ACSCによる入院に関する同入院率比は、1.78(同:1.38~2.31、p<0.001)とさらに高かった。入院の原因器官系別に入院率をみたところ、大半で認知症群が非認知症群より有意に高率だった。また細菌性肺炎やうっ血性心不全、尿路感染症による入院は、ACSCでの入院の3分の2を占め、いずれの補正後入院率も、認知症群が非認知症群より有意に高率だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

9497.

NIH助成の臨床試験、終了後30ヵ月以内の発表は半数以下

米国国立衛生研究所(NIH)の助成を受けた臨床試験が、試験終了後の適切な時期(30ヵ月以内)に査読審査のある生物医学雑誌に発表される割合は46%に過ぎず、試験終了後の追跡期間中央値である51ヵ月が経過しても32%が未発表のままであることが、米国・エール大学のJoseph S Ross氏らの調査で明らかとなった。企業がスポンサーの研究に関する大規模な調査では、臨床試験終了後、数年が経過しても25~50%が未発表のままであることが報告されている。一方、公的基金の出資による試験の公表パターンについてはほとんど知られていないという。BMJ誌2012年1月7日号(オンライン版2012年1月3日号)掲載の報告。NIH助成臨床試験の公表パターンを調査研究グループは、NIHの助成を受けた臨床試験の、査読審査のある生物医学雑誌への公表パターンを調査するために横断的な解析を行った。NIHが資金を拠出し、2005年9月30日~2008年12月31までにClinicalTrials. gov(NIHが運営し、米国国立医学図書館[NLM]が支援する臨床試験の登録とその結果のデータベース)に登録された臨床試験を対象とした。2011年6月にMedlineの最終検索を行い、これらの試験の生物医学雑誌への掲載状況を調査した。30ヵ月以内公表率は改善しつつあるが……2008年12月31日までに終了した635の臨床試験のうち、終了後30ヵ月以内に生物医学雑誌に掲載されたのは294試験(46%)であった。全試験の終了後の追跡期間(中央値)は51ヵ月で、この間に公表された試験は432試験(68%)であった。公表された試験の、公表までの期間(中央値)は23ヵ月であった。30ヵ月以内公表率は、2007年以前に終了した試験が36%(98/269試験)であったのに対し、2007~2008年に終了した試験は54%(196/366試験)と有意に上昇していた(p<0.001)。著者は、「NIHの助成を受けた試験が、終了後の適切な時期に査読審査のある生物医学雑誌に発表される割合は改善されつつあるとはいえ、半数にも満たず、試験終了後の追跡期間中央値である51ヵ月(4年3ヵ月)が経過しても約3分の1が未発表のままだった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

9498.

治験報告、最も質が高いのは治験総括報告書

治験報告の質について、文書タイプ[治験レジストリ報告書(registry report)、治験総括報告書(clinical study report)、学術誌投稿論文]の違いを比較した結果、治験総括報告書が最も質が高いことが明らかにされた。ドイツ・Quality and Efficiency in Health Care研究所のBeate Wieseler氏らが後ろ向き解析の結果、報告した。レジストリ報告書と投稿論文については相互に弱い部分が異なり、レジストリ報告書は、アウトカムは十分報告されていたが方法論の報告は乏しく、学術誌はその反対であったという。BMJ誌2012年1月7日号(オンライン版2012年1月3日号)掲載報告より。治験報告内容の質を文書タイプの違いで比較Wieseler氏らは、治験報告の質について、実施された治験を評価するのに十分な情報が報告されているかを、文書タイプの違いで比較する検討を行った。ドイツ・Quality and Efficiency in Health Care研究所が行っている16の創薬医療技術評価から、2006年~2011年2月の間の主要研究と、関連している文書を収集した。それら各文書の研究報告と有効性報告の質について、方法論に関して6項目、アウトカムに関して6項目で評価を行い、「報告が完全である」と「報告が不十分」の2つに分けた。文書タイプごとに、方法論とアウトカムの報告が完全であった文書の割合を、項目ごとでおよび全体的に算出して、見いだされた所見を比較した。レジストリ報告書と投稿論文は、質の優劣項目が相互に逆転268の研究が検索され、解析に有効であったのは、投稿論文192(72%)、治験総括報告書101(38%)、レジストリ報告書78(29%)だった。結果、質が最も高かったのは治験総括報告書で、方法論およびアウトカムの全項目の約90%(1,086/1,212)について「情報が完全である」と評価された。レジストリ報告書は、アウトカム項目[全体の330/468(71%)]のほうが方法論項目[同147/468(31%)]より「情報が完全である」と評価された割合が高かった。投稿論文でも同様の傾向が認められた[594/1,152(52%)vs. 458/1,152(40%)]。マッチドペア分析の結果では、レジストリ報告書の質は、方法論およびアウトカムの項目全体で、治験総括報告書よりも劣っていた(各症例P<0.001)。一方でレジストリ報告書は、投稿論文と比べて、方法論項目全体では劣っていたが(P<0.001)、アウトカム項目全体では優れていた(P=0.005)。これら所見を踏まえてWieseler氏は最後に、「報告書を改善するには、結果登録の基準順守を世界的に義務化させる必要がある」とまとめている。

9499.

DVTに対するカテーテル血栓溶解療法、血栓後症候群を抑制

腸骨大腿静脈の急性深部静脈血栓症(DVT)の治療では、低分子量ヘパリンやワルファリンによる標準的な抗凝固療法に血栓溶解薬を用いたカテーテル血栓溶解療法(CDT)を併用すると、標準治療単独に比べ血栓後症候群(PTS)の発生率や開存率が有意に改善することが、ノルウェー・オスロ大学病院のTone Enden氏が行ったCaVenT試験で示された。DVTに対する従来の抗凝固療法は、血栓の拡大や再発の予防には有効だが、血栓そのものは溶解させず、多くの患者がPTSを発症するという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月13日号)掲載の報告。カテーテル血栓溶解療法の併用効果を評価する無作為化対照比較試験CaVenT(Catheter-directed Venous Thrombolysis)試験の研究グループは、血栓溶解薬t-PA(アルテプラーゼ)を用いたCDTのPTS抑制効果を評価する非盲検無作為化対照比較試験を実施した。ノルウェー南東部地域の20施設から、腸骨大腿静脈の初回DVTの症状発症後21日以内の18~75歳の患者が登録された。これらの患者が、標準治療のみを行う群あるいは標準治療+CDTを施行する群に無作為化に割り付けられた。両群とも、24ヵ月間の弾性ストッキング(クラスII)の着用が指導された。標準治療は、国際標準化比(INR)2.0~3.0を目標に、低分子量ヘパリン(ダルテパリン、エノキサパリン)とワルファリンを投与後にワルファリンを単独投与した。CDT群は、低分子量ヘパリンを単独投与し、CDTの8時間前までには投与を中止してCDTを行い、CDT終了1時間後からINR 2.0~3.0を目標に低分子量ヘパリンとワルファリンを投与した。CDTは超音波ガイド下に膝窩静脈からカテーテルを挿入し、血栓部位にアルテプラーゼを最長で96時間投与した(最大用量:20mg/24時間)。24ヵ月後のVillaltaスコアによるPTSの発生率および6ヵ月後の腸骨大腿静脈の開存率の評価を行った。24ヵ月PTS発生率:55.6% vs. 41.1%、6ヵ月開存率:47.4% vs. 65.9%2006年1月~2009年12月までに209例が登録され、標準治療単独群に108例が、CDT群には101例が割り付けられた。24ヵ月のフォローアップ終了時に、189例[90%、標準治療単独群99例(平均年齢50.0歳、女性38%)、CDT群90例(同:53.3歳、36%)]から臨床データが得られた。24ヵ月の時点におけるPTSの発生率は、標準治療単独群の55.6%(55例)に対しCDT群は41.1%(37例)と有意に低下した(p=0.047)。PTS発生の絶対リスク減少率は14.4%、PTSの発生を1例抑制するのに要する治療数(NNT)は7であった。6ヵ月後の腸骨大腿静脈の開存率は、標準治療単独群の47.4%(45例)に比べCDT群は65.9%(58例)と有意に改善した(p=0.012)。CDT関連の出血が20例でみられ、そのうち3例が大出血で、5例は臨床的に意義のある出血だった。著者は、「重度の近位DVTのうち出血リスクが低い患者にはCDTの追加を考慮すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

9500.

プライマリ・ケア保健師の導入が非伝染性疾患の管理に有効

訓練を受けた地域保健師が、確立されたガイドラインに基づいて行うイランのプライマリ・ケア・システム(「Behvarzシステム」と呼ばれる)は、非伝染性疾患の予防や管理に有効なことが、イラン・テヘラン医科大学のFarshad Farzadfar氏らの調査で示された。イランなどの中所得国では、非伝染性疾患やそのリスク因子が疾病負担の主な要因となっている。非伝染性疾患やそのリスク因子の地域住民レベルにおけるマネジメントが、プライマリ・ケア・システムによって可能か否かに関するエビデンスはほとんどないという。Lancet誌2012年1月7日号(オンライン版2011年12月9日号)掲載の報告。Behvarzシステムの効果と地域保健師の数との関連を検討する観察試験研究グループは、イラン農村部の糖尿病および高血圧の管理におけるプライマリ・ケア・システム(Behvarzシステム)の効果を評価し、地域保健師の数との関連について検討する観察試験を行った。2005年非伝染性疾患サーベイランス調査(NCDSS)から、空腹時血糖(FPG)、収縮期血圧(SBP)、BMI、薬物の使用、社会人口学的変数のデータを得た。Behvarzの保健師数のデータは、2006年Population and Housing Censusおよび2005年Outpatient Care Centre Mapping Surveyから収集した。FPG、SBP、FPGとSBPの関連、Behvarzの保健師数を2つの統計学的手法を用いて解析した。保健師プログラムの数や範囲を拡張すべきNCDSSから25歳以上の6万5,619人(農村部地域:1万1,686人)のデータが得られた。このうちSBPのデータが6万4,694人(同:1万1,521人)から、FPGのデータは5万202人(同:9,337人)から得られた。糖尿病患者の39.2%、高血圧患者の35.7%が治療を受け、男性よりも女性で、農村部よりも都市部で受療率が高かった。治療により、平均FPGは農村部で1.34mmol/L低下し、都市部では0.21mmol/L低下した。治療を受けた都市部の高血圧患者は、治療を受けなかった患者に比べSBPが3.8mmHg低下した。成人1,000人当たりのBehvarz保健師が1人増えるごとに、地区平均でFPGが0.09mmol/L低下し(p=0.02)、SBPは0.53mmHg低下した(p=0.28)。著者は、「訓練を受けた地域保健師が、確立されたガイドラインに基づいて行うプライマリ・ケア・システムは、非伝染性疾患の予防や管理に有効である」と結論し、「イランのプライマリ・ケア・システムは、人員の少ない地域の診療能を改善するために、保健師によるプログラムの数や対象とする範囲を拡張すべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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