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イングレスからイングリッシュへ【Dr. 中島の 新・徒然草】(091)

九十一の段 イングレスからイングリッシュへ今年の夏、頑張っていた陣取りスマホゲームのイングレスですが、なかなか続けられなくなってきました。時間がなくなったり肌寒い季節になったりしたからです。「だんだん飽きてきた」というのも少しはあるのかもしれません。最近はイングレスではなく、イングリッシュのほうにシフトしてきました。行き帰りの通勤電車で英語のポッドキャストやBBCのニュースを聞いています。3年間アメリカに住んでいたとはいえ、英語のほうはまだまだ修行中。実際のところ、字幕なしで洋画を理解することは難しく、アメリカ人同士の会話にはまったくついていけません。ということで、少しでもリスニング能力を向上すべく、ひたすら英語を聞いております。ずっと聞いていると、多少は理解ができるようになってきました。とくに固有名詞については、アクセントの位置が日本語と違ったり、はなはだしきは音からして違ったりすることがあります。たとえばアクセントの違いとして国名のアフガニスタンがあります。日本語ではフラットに発音しますが、英語ニュースを聞いていると「アフガーニスタン」と「ガー」にアクセントがくることがわかります。音そのものが違っている例としては、中国の習近平国家主席が良い例です。日本語読みではシュウキンペイですが、英語ニュースでは「シージンピン」となっています。この読み方ばかり聞いていると、ついつい普段の日本語会話でも「シージンピン」と言ってしまいそうになります。日本人にとっては聞き取りにくい音でも、パターンを覚えてしまえばそれなりに対応できるのかもしれません。「仮名魔神」としか聞こえない音がしばしばニュースに出てくるのですが、実は「you can imagine」の「can imagine」が「仮名魔神」と聞こえていたということが、後になってわかりました。同じように「『トゥーリ・ライオン』というのはどんなライオンじゃ」と思っていたら「to rely on」でした。情けないっす。しかしだんだん英語が聞き取れるようになると、英語ニュースならではの情報も入手できるようになってきました。ある日の出勤時、BBCニュースを聞いていると「TalkTalk」というIT企業がハッカー被害にあったということで大騒ぎになっていました。なんでも400万人もの顧客情報が流出したとやらで、キャスターもインタビューされている一般人も興奮しています。TalkTalk の女性 Chief Executive に至っては「何でこんなに発表が遅くなったんだ!」とか「お客さんが最大の被害者だ。どうするつもりなんだ」などとキャスターに責められており、いずこの国でも同じような光景が繰り広げられていました。イギリスでは大騒ぎになっているのに、日本語ニュースではまったくそのニュースを見つけることができません。どういうわけか、NHKでは英語ニュースでだけ言及されていました。不思議ですね。ともあれ、いろいろ工夫し甲斐のある通勤電車。また新たな進展がありましたら報告いたします。最後に1句イングレス 寒くなったら さようなら

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坐骨神経痛のリスク、喫煙で増大:メタ解析結果

 坐骨神経痛における喫煙の役割は明確ではない。フィンランド・Finnish Institute of Occupational HealthのRahman Shiri氏らは、腰部神経根痛および坐骨神経痛に対する喫煙の影響を評価する目的でメタ解析を行った。その結果、喫煙は腰部神経根痛および臨床的な坐骨神経痛のリスクを高めることが明らかとなった。また、禁煙によりそのリスクが低下することが示唆されたが、「禁煙してもリスクがゼロになることはない」と著者は指摘している。American Journal of Medicine誌オンライン版2015年9月21日号の掲載報告。 研究グループは、PubMed、Embase、Web of Science、Scopus、Google ScholarおよびResearchGateで1964年~2015年3月までの論文を検索し、ランダム効果メタ解析を行った。不均一性と出版バイアスを評価するとともに、研究デザイン、方法論的質および出版バイアスに関して感度分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・計28件(断面的研究7件・2万111例、症例対照研究8件・1万815例、コホート研究13件・44万3,199例)の研究が、メタ解析に組み込まれた。・現在喫煙者では、腰部神経根痛または臨床的な坐骨神経痛のリスクが増加した(統合調整オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.30~1.64、n=45万9,023例)。・元喫煙者では、非喫煙者と比較してわずかにリスクが増加した(統合調整OR:1.15、95%CI:1.02~1.30、n=38万7,196例)。・現在喫煙者に関して、腰部神経根痛の統合調整オッズ比は1.64(95%CI:1.24~2.16、n=1万853例)、臨床的な坐骨神経痛1.35(95%CI:1.09~1.68、n=11万374例)、腰椎椎間板ヘルニアまたは坐骨神経痛による入院または手術1.45(95%CI:1.16~1.80、n=33万7,796例)であった。・同様に元喫煙者では、それぞれ1.57(95%CI:0.98~2.52)、1.09(95%CI:1.00~1.19)および1.10(95%CI:0.96~1.26)であった。・これらの関連は、男女間で差はなく、研究デザインから独立していた。・出版バイアスのエビデンスはなく、観察された関連は選択バイアス、検出バイアスまたは交絡因子に起因しなかった。

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がん疑い患者、緊急紹介制度活用で死亡率低下/BMJ

 英国で、がんの疑いがある患者を緊急に専門医に紹介する制度「緊急紹介制度」(urgent referral pathway)を活用する一般診療所の患者は、あまり活用しない一般診療所の患者に比べ、がんの初診断・治療開始から4年以内の死亡率が低いことが明らかにされた。英国・ロンドン大学のHenrik Moller氏らが、コホート試験の結果、報告した。同緊急紹介制度は2000年代初めから始まったが、制度ががん患者の生存率に与えた影響については、これまで検討されていなかった。BMJ誌オンライン版2015年10月13日号掲載の報告。英国の3つのデータベースを用い、がん患者約22万人について検討 研究グループは、英国の「Cancer Waiting Times」「NHS Exeter」「National Cancer Register」の3つのデータベースを用いて、2009~13年にがんの診断を受けた人、または初回治療を開始した人21万5,284例を対象にコホート試験を行った。試験対象となった一般診療所は8,049ヵ所だった。 診察を受けた診療所が、緊急紹介制度を活用する傾向と、死亡率との関連を分析した。制度を活用しない診療所の患者、死亡のハザード比は1.07 4年間の追跡期間中に死亡した人は、9万1,620例だった。そのうち、診断を受けて1年以内の死亡は5万1,606例(56%)だった。 緊急紹介制度を利用する傾向を示す、標準化紹介率と検出率ともに、その傾向が強い診療所の患者は、傾向が強くない診療所の患者に比べ死亡率が低かった。標準化紹介率・検出率ともにそれぞれ、低率、中程度、高率と3群に分けた場合、両割合ともに高率だった診療所の患者数は全体の16%(3万4,758例)を占め、両率ともに中程度の群を基にした患者の死亡に関するハザード比は、0.96(95%信頼区間:0.94~0.99)だった。 一方、紹介制度の標準化紹介率・検出率どちらかが低率で、もう一方が高率ではない診療所の患者数は、全体の37%(7万9,416例)で、死亡に関するハザード比は1.07(同:1.05~1.08)だった。

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セクシュアルマイノリティーにおける皮膚がんと日焼けマシーン使用

 「セクシュアルマイノリティー(同性愛者や両性愛者)の男性は、異性愛者の男性に比べて日焼けマシーンをよく使用しており、また皮膚がんになる確率が高い」というデータが発表された。JAMA Dermatology誌オンライン版2015年10月7日号での報告。 本研究で、セクシュアルマイノリティーの男性は日焼けマシーンを使うことが多いことが明らかになった。研究者らは、「彼らに対して優先的に皮膚がんリスクを伝えることが予防につながるのではないか」とまとめている。 これまでに、日焼けと皮膚がんの関係については強く示唆されていたが、性的指向によって皮膚がんリスクが変わるかどうかは不明であった。本検討は、セクシュアルマイノリティーの男女が、異性愛者(ヘテロセクシュアル)の男女に比べて、皮膚がんリスクが高いかどうかを明らかにするために行われた。 カリフォルニア州と米国の特定組織に属さない市民集団から集められた18歳以上の男女19万人強のデータを対象に解析は実施された。 対象となったデータは2001年、2003年、2005年、2009年のCalifornia Health Interview Surveys(CHISs)と2013年のNational Health Interview Survey (NHIS)である。 研究対象には7万8,487人の異性愛者の男性と、3,083人のセクシュアルマイノリティーの男性、10万7,976人の異性愛者の女性、3,029人のセクシュアルマイノリティーの女性が含まれていた。著者らは、自己報告による皮膚がんの既往歴と12ヵ月間の日焼けマシーン使用歴を調査した。  主な結果は以下のとおり。・セクシュアルマイノリティーの男性は、異性愛者の男性に比べ皮膚がんリスクが高かった。(2001~05年のCHISsでの調整OR:1.56、95%CI:1.18~2.06、p<0.001)。(2013年のNHISでの調整OR:2.13、95%CI:1.14~3.96、p=0.02)。・セクシュアルマイノリティーの男性は、異性愛者の男性に比べ日焼けマシーンを使うことが多かった。(2009年のCHISsでの調整OR:5.80、95%CI:2.90~11.60、p<0.001)。(2013年のNHISでの調整OR:3.16、95%CI:1.77~5.64、p<0.001)。・セクシュアルマイノリティーの女性は、異性愛者の女性に比べ非黒色腫皮膚がんの報告は少なかった。(2001~05年のCHISsでの調整OR:0.56、95%CI:0.37~0.86、p=0.008)。・セクシュアルマイノリティーの女性は、異性愛者の女性に比べ日焼けマシーンを使うことが少なかった。(2009年のCHISsでの調整OR:0.43、95%CI:0.20~0.92、p=0.03)。(2013年のNHISでの調整OR:0.46、95%CI:0.26~0.81、p=0.007)。

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アルツハイマー病への薬物治療、開始時期による予後の差なし

 世界中で何百万人もの高齢者がアルツハイマー病(AD)で苦しんでいる。治療薬にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンがあるが、その臨床効果は限られており、早期に薬物療法を開始することが長期的に良好な予後につながるかどうかも不明である。そこで、中国・香港中文大学のKelvin K.F. Tsoi氏らは、AD患者に対する早期治療の有効性について、前向き無作為化比較試験のメタ解析を行った。その結果、約6ヵ月早くAD治療薬の投与を開始しても投与開始が遅れた場合と比較して、認知機能、身体機能、行動問題および臨床症状に有意差は認められなかった。この結果について著者らは、「追跡期間が2年未満の早期AD患者の割合が比較的高かったためと考えられる」と指摘したうえで、「長期に追跡した場合の有効性について、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2015年9月18日号の掲載報告。 研究グループは、OVIDデータベースを用いて2000年から2010年の間に発表された前向き無作為化比較試験を検索し、ADと診断された患者を早期投与開始群と投与開始遅延群(約6ヵ月間はプラセボを投与)に無作為化した試験を適格とした。主要評価項目は、認知機能(Alzheimer's Disease Assessment Scale-Cognitive Subscale:ADAS-cog)、身体機能(Alzheimer's Disease Cooperative Study Activities of Daily Living Inventory:ADCS-ADL)、問題行動(Neuropsychiatric Inventory:NPI)、および全般的な臨床症状(Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input:CIBIC plus)、副次評価項目はあらゆる有害事象とした。 主な結果は以下のとおり。・10件の無作為化試験がメタ解析に組み込まれた(計3,092例、平均年齢75.8歳)。・主要評価項目に関して、早期投与開始群が投与開始遅延群と比較して、有意な効果が認められた項目はなかった。 認知機能;ADAS-cogの平均差(MD)=-0.49、95%信頼区間(CI):-1.67~0.69 身体機能;ADCS-ADLのMD=0.47、95% CI:-1.44~2.39 行動問題;NPIのMD=-0.26、95% CI:-2.70~2.18 臨床症状;CIBIC plusのMD=0.02、95% CI:-0.23~0.27・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬で、最も頻度の高い有害事象は悪心であった。・メマンチンではプラセボと比べ、発現頻度の高い副作用はなかった。・両薬とも、早期投与開始群と投与開始遅延群の有害事象は同等であった。関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 認知症患者の精神症状に対し、抗不安薬の使用は有用か 早期アルツハイマー病診断に有用な方法は  担当者へのご意見箱はこちら

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生体吸収性マグネシウムスキャフォールドの有用性をヒトで確認/Lancet

 第2世代の薬剤溶出生体吸収性金属スキャフォールド(DREAMS 2G)は、冠動脈デノボ病変の治療デバイスとして施行可能であり、良好な安全性と性能を有することが、ドイツLukaskrankenhaus GmbHのMichael Haude氏らが実施したBIOSOLVE-II試験で示された。生体吸収性スキャフォールドは、従来の非吸収性の金属ベース薬剤溶出ステントの限界の克服を目的にデザインされ、現時点で市販されているのはポリマースキャフォールドのみである。これに代わるデバイスとして、金属スキャフォールドの開発が進められており、第1世代のマグネシウムスキャフォールドは、安全性は良好であるものの、性能が従来の薬剤溶出ステントに及ばないことが報告されている。Lancet誌オンライン版2015年10月12日号掲載の報告。狭心症、無症候性虚血に対する有用性をヒトで初めて検証 BIOSOLVE-II試験は、症候性の冠動脈デノボ病変における第2世代のシロリムス溶出生体吸収性マグネシウムスキャフォールドであるDREAMS 2Gの安全性と性能をヒトで初めて検証する多施設共同非無作為化試験(Biotronik AG社の助成による)。 対象は、年齢19~79歳の安定狭心症、不安定狭心症、無症候性虚血で、対照血管径が2.2~3.7mm、最大2個のデノボ病変(病変長21mm以下、狭窄率50~99%)を有する患者であった。 フォローアップは、デバイス留置後1、6、12、24、36ヵ月に行われ、6ヵ月時には冠動脈造影が実施された。一部の患者では、血管内超音波、光干渉断層法、血管運動(vasomotion)の評価も行われた。全例に、6ヵ月以上の抗血小板薬の2剤併用治療が推奨された。 主要評価項目は、6ヵ月時のセグメント内の晩期損失内腔径とした。副次評価項目は、標的病変不全(心臓死、標的血管の心筋梗塞、CABG、標的病変の血行再建術)およびスキャフォールド血栓症であった。 2013年10月8日~2015年5月22日までに、8ヵ国(ベルギー、ブラジル、デンマーク、ドイツ、シンガポール、スペイン、スイス、オランダ)の13のPCI施設に123例(冠動脈標的病変123個)が登録された。晩期損失内腔径が改善、スキャフォールド血栓症は認めず ベースラインの背景因子は、平均年齢65.2±10.3歳、男性が63%で、対照血管径は2.68±0.40mm、病変長は12.61±4.53mmであった。標的血管は、左前下行枝が38%、左回旋枝が24%、右冠動脈が37%だった。 3例がフォローアップできず、そのうち2例はデバイスの留置が不能であった。 6ヵ月時の平均セグメント内晩期損失内腔径は0.27±0.37mmであり、スキャフォールド内晩期損失内腔径は0.44±0.36mmであった。血管運動の評価が行われた25例中20例(80%)で、有意な血管の収縮(p=0.014)および拡張(p<0.001)が確認された。 血管内超音波では、スキャフォールド領域は留置直後が6.24±1.15mm2で、6ヵ月時も6.21±1.22mm2に保持されており(平均差:-0.03mm2、95%信頼区間[CI]:-0.29~0.23、p=0.803)、新生内皮過形成領域は小さかった(0.08±0.09mm2)。また、光干渉断層法では、冠動脈内に腫瘤性病変は認めなかった。 6ヵ月時に標的病変不全が4例(3%)に認められ、心臓死が1例、標的血管の心筋梗塞が1例、標的病変の血行再建術が2例であった。スキャフォールド血栓症はみられなかった。 著者は、「先行デバイス(DREAMS 1G)に比べ晩期損失内腔径が改善し、良好な安全性プロファイルは保持されていた」とまとめ、「閉塞性冠動脈疾患の治療において、DREAMS 2Gは現行の生体吸収性ポリマースキャフォールドに代わる選択肢となる可能性がある」と指摘している。

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常染色体優性多発性嚢胞腎〔ADPKD : autosomal dominant polycystic kidney disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義PKD1またはPKD2遺伝子の変異により、両側の腎臓に多数の嚢胞が発生・増大する疾患。■ 診断基準ADPKD診断基準(厚生労働省進行性腎障害調査研究班「常染色体優性多発性嚢胞腎ガイドライン(第2版)」)1)家族内発生が確認されている場合(1)超音波断層像で両腎に各々3個以上確認されているもの(2)CT、MRIでは、両腎に嚢胞が各々5個以上確認されているもの2)家族内発生が確認されていない場合(1)15歳以下では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合(2)16歳以上では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々5個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合※除外すべき疾患多発性単純性腎嚢胞(multiple simple renal cyst)腎尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis)多嚢胞腎(multicystic kidney 〔多嚢胞性異形成腎 multicystic dysplastic kidney〕)多房性腎嚢胞(multilocular cysts of the kidney)髄質嚢胞性疾患(medullary cystic disease of the kidney〔若年性ネフロン癆 juvenile nephronophthisis〕)多嚢胞化萎縮腎(後天性嚢胞性腎疾患)(acquired cystic disease of the kidney)常染色体劣性多発性嚢胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease)【Ravineの診断基準】(表)(家族歴がある場合の画像診断基準)画像を拡大する■ 疫学一般人口中に占める多発性嚢胞腎患者数(有病率)は、病院受診者数を基に調査した結果では一般人口3,000~7,000人に1人である。病院患者数に占める多発性嚢胞腎患者数は3,500~5,000人に1人、病院での剖検結果では被剖検患者約400人に1人である。メイヨー病院があるオルムステッド郡(米国)で1年間に新たに診断された患者数(発症率)は、一般人口1,000~1,250人あたり1人である。調査方法、調査年代、調査場所などにより、結果に差異が認められる。今後、治療薬が利用可能になると受療する患者数が増加し、有病率も増える可能性がある。■ 病因(図を参照)画像を拡大するPKD1またはPKD2遺伝子の変異による。PKD1は16p13.3、PKD2は4q21-23に位置する。PKD1とPKD2の遺伝子産物 polycystin 1(PC 1)とPC2はtransient receptor potential channel for polycystin(TRPP)subfamilyで、Caチャネルである。PC1とPC2は腎臓、肝臓、膵臓、乳腺の管上皮細胞、平滑筋と血管内皮細胞、脳の星状細胞に存在する。PCは腎臓上皮細胞、血管内皮細胞、胆管細胞などの繊毛に存在する。尿細管腔の内側に存在する繊毛は、尿細管液の流れに反応して屈曲する。屈曲によるshear stressはPCや繊毛機能に関係する蛋白を活性化し、細胞外と小胞体からCaイオンを細胞質内へ流入させ、細胞質内Ca濃度を高める。繊毛機能に関係する蛋白をコードする遺伝子異常が嚢胞性腎疾患をもたらすことが明らかとなり、繊毛疾患(ciliopathy)として概括されている。PKD細胞ではPC機能異常により、尿細管上皮細胞のCa濃度は低値である。細胞内Ca濃度が低下すると、cyclicAMP(cAMP)分解酵素(PDE)活性が低下し、またcAMPを産生するadenyl cyclase(AC)活性が高まり、細胞内cAMP濃度が高まる。その結果、cAMP依存性protein kinase A(PKA)機能が高まり、種々のシグナル経路(EGF/EGFR、Wnt、Raf/MEK/ERK、JAK/STAT、mTORなど)が活性化され細胞増殖が起きる。繊毛は細胞極性(尿細管構造形成)に関与しており、細胞極性機能を失った細胞増殖が起きる結果、嚢胞が形成される。また、PKAはcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)を刺激し、嚢胞内へのCl分泌を高める。腎尿細管(集合管)に存在するバソプレシン(AVP)V2受容体は、AVPの作用を受け、ACおよびcAMP、PKAを介して水透過性を高める。この過程でcAMPは嚢胞を増大させる。ソマトスタチンはACを抑制するので、治療薬として期待される。■ 症状多くの患者は30~40代までは無症状で経過する。1)腎機能低下腎機能の低下と総腎容積は相関し、総腎容積が3,000mLを超えると腎不全になる確率が高い。しかし、3,000mLを超えない場合でも腎不全になる場合もある。腎不全による症状(疲労、貧血、食欲低下、皮膚搔痒など)は、他疾患による腎不全症状と同じである。透析導入平均年齢は55歳位であったが、最近では60歳近くになっている。患者全体では70歳で約50%が終末期腎不全になる。2)高血圧血管内皮機能の異常により高血圧を来すと考えられ、腎機能が低下する以前から発症する。60~80%の患者が高血圧に罹患している。高血圧になっている患者では腎臓腫大と腎機能低下の進行が速い。3)圧迫症状腎臓や肝臓の嚢胞(60~80%の患者に嚢胞肝が併存)が腫大するにつれて、腹部膨満感、少し食べるとお腹が張る、前屈が困難になる、背腰部痛、腹部痛などの圧迫症状が出現する。腎嚢胞は平均年5~6%の割合で増大するので、加齢とともに症状は進行する。4)脳血管障害脳出血、くも膜下出血、脳梗塞の発症頻度が高い。脳出血の原因として高血圧がある。脳動脈瘤の発生頻度(約8%)は一般より高い。5)血尿・尿路感染症血管の構築異常により血管が裂け、嚢胞内に出血し、疼痛を引き起こす。出血巣と尿路が交通すると血尿になる。また、変形した尿路のために尿路感染症を起こしやすい。嚢胞感染が起きると抗菌薬が嚢胞内に移行しにくいので難治性になることがある。6)その他尿路結石、鼠径ヘルニア、大腸憩室、心臓弁膜機能異常などの頻度が高い。■ 分類遺伝子の変異部位に応じて、PKD1とPKD2に分かれる。約85%はPKD1である。PKD1の方が症状は強く、腎不全になる平均年齢も若い。■ 予後生命予後に関するデータはない。腎機能に関しては症状の項参照。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断基準に準ずる。家族歴と画像検査(超音波、CT、MRIなど)で比較的正確に診断できるが、中には診断に迷う症例もあり、遺伝子診断が有用な場合もある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)トルバプタン(商品名: サムスカ)による治療AVP V2受容体拮抗薬トルバプタンは、ナトリウム利尿をあまり伴わない水利尿作用があり、低ナトリウム血症、体液貯留の治療薬として開発され、わが国では、2010年に心不全による体液貯留、2013年に肝硬変による体液貯留への治療薬として承認を受けている。2003年にモザバプタン(トルバプタンの前段階の薬)が、多発性嚢胞腎モデル動物に有効であると発表され、2007年から多発性嚢胞腎患者1,445名を対象として、トルバプタンの有効性と安全性を検討する国際共同治験が行われた。腎臓容積増大速度を約50%、腎機能低下速度を約30%緩和する結果が2012年秋に発表され、わが国において2014年3月に多発性嚢胞腎治療薬として承認され、臨床使用が始まっている。わが国での投薬適応基準は、総腎容積≧750mL、総腎容積増大速度≧年5%、eGFR≧15 mL/min/1.73m2などである。服用開始時には入院が必要で、その後月1回の血液検査で肝機能(5%程度に肝機能障害が発生する)、血清Na値(飲水不足で高Na血症になる)、尿酸値(上昇する)などのモニターが必要である。また、トルバプタンの処方医はWeb講習を受講し、登録する必要がある。2)高血圧の治療ARBが第1選択薬として推奨される。標準的降圧目標(120/70~130/80)とより低い降圧目標(95/60~110/75)との2群を5年間追跡したところ、より低い降圧群での総腎容積増大速度が低かったことが報告されているので、可能なら収縮期血圧を110未満にコントロールすることが望ましい。3)Na摂取制限Na摂取と腎嚢胞増大速度は相関するので、Na摂取は制限したほうがよい。4)飲水動物実験では飲水によって嚢胞の増大抑制効果が認められているが、人で飲水を奨励した結果では、逆に嚢胞増大速度とeGFR低下速度が増大したことが報告されている。水道水では、消毒用塩素の副産物ジクロロ酢酸に嚢胞増大作用があることが報告されている。多発性嚢胞腎患者では、腎機能が低下するにしたがい血清浸透圧とAVPが高くなることが報告されている。人における飲水効果には疑問があるが、脱水によるAVP上昇は避けるべきである。5)カフェインや抗うつ薬カフェインはPDEを抑制しcAMP濃度を上昇させ、嚢胞増大を促進する可能性がある。SSRI、三環系抗うつ薬などはAVPの放出を促進するため、多発性嚢胞腎では嚢胞増大を促進することが考えられる。6)開発中の薬剤(1)トルバプタン〔AVP V2受容体阻害薬〕は、大規模な臨床試験で腎嚢胞増大と腎機能悪化を抑制する効果が示され1)、わが国では2014年3月、カナダ、ヨーロッパでは2015年3月に認可が下りている。(2)ソマトスタチンアナログは小規模な臨床試験で肝臓と腎臓の嚢胞増大に有効と報告されているが、当局への申請を目的とする大規模な臨床試験は行われていない。(3)mTOR阻害薬であるシロリムスとエベロリムスの臨床試験が行われたが、副作用が強く臨床効果が認められなかった。7)腎動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)腎動脈を塞栓し、腎臓を縮小させることで症状の緩和をもたらす。すでに透析が導入され、尿量が1日500mL以下の患者が対象となる。8)腹腔鏡下腎嚢胞開創術、腎摘除術抗菌薬抵抗性または反復感染の原因になっている嚢胞が特定される場合、あるいは数個の嚢胞が特別に大きくなり圧迫症状が強い場合、腹腔鏡下に特定の嚢胞を開窓する手術が適応となる。出血が強い場合や、反復する嚢胞感染がある場合、患者に腎機能の予後をよく説明したうえで同意を前提として腎摘除術(腹腔鏡下腎摘除術も行われる)が選択肢となる。4 今後の展望1)最近の研究では、総腎容積増大速度が5%/年以下でも、腎不全に進行することが示されている。トルバプタン適応基準となった総腎容積増大速度≧5%/年の基準では、これら腎不全に進行する患者を除外することになる。2)トルバプタンの作用として利尿作用があるが、利尿作用を少なくする薬剤が望まれる。3)多発性嚢胞腎の進展機序は、cAMP-PKAを介する経路のみではないので、cAMP-PKA非依存性経路を抑制する薬剤開発が望まれる。4)肝臓嚢胞に有効なソマトスタチンアナログの臨床開発が望まれる。5 主たる診療科腎臓内科、泌尿器科、脳動脈瘤があれば脳外科(多発性嚢胞腎に関心の高い医師の存在)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報多発性嚢胞腎啓発ウエブサイト(杏林大学多発性嚢胞腎研究講座)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 多発性嚢胞腎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)常染色体多発性嚢胞腎(順天堂大学医学部泌尿器科)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ADPKD.JP (~多発性嚢胞腎についてよくわかるサイト~/大塚製薬株式会社)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報PKDの会(患者と患者家族の会)1)Torres VE,et al.N Engl J Med.2012;367:2407-2418.2)東原英二 編著.多発性嚢胞腎~進化する治療最前線~.医薬ジャーナル;2015.3)Irazabal MV, et al. J Am Soc Nephrol.2015;26:160-172.公開履歴初回2013年04月18日更新2015年10月27日

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TG値1,000mg/dL以上を示す患者の臨床的特徴

 金沢大学附属病院で過去10年間に1,000mg/dL以上の高トリグリセリド(TG)値を示した215例の調査によると、全体の7.9%に冠動脈疾患の既往、5.6%に膵炎の既往があり、55.3%に脂肪肝が認められたことがわかった。また、多くが何らかの2次的要因によるTG上昇であることがわかった。深刻な高TG血症は、さまざまな状況により引き起こされる可能性があるため、潜在的な2次的要因を探ることの重要性が示唆された。Journal of clinical lipidology誌7・8月号掲載、金沢大学附属病院 多田 隼人氏らの報告。 日本人において1,000mg/dL以上の高TG値を示す患者の臨床的特徴についてのデータは少ない。 そこで著者らは、2004年4月~2014年3月までに金沢大学附属病院において、何らかの理由で血清TG値を測定された日本人7万368例のうち、空腹時血清TG値が1,000mg/dL以上を示した例の冠動脈疾患の存在、膵炎の既往、脂肪肝の存在、高TG値の潜在的要因について調査した。 主な結果は以下のとおり。・空腹時血清TG値が1,000mg/dL以上を示したのは215例(0.31%)であった(平均年齢46歳、男性170例、平均BMI 25kg/m2)。・WHOの表現型分類(フレドリクソン分類)では、I型4例(1.9%)、IV型97例(45.1%)、V型114例(53.0%)であった。・116例(54.0%)がアルコールを摂取しており、58例(27.0%)がエタノール換算60g/日以上の大量摂取をしていた。・糖尿病は64例(29.8%)に認められた。・一過性の重症高TG血症を59例(27.4%)に認めた。原因は副腎皮質ホルモン投与(19例)、抗うつ薬投与(18例)、急性リンパ性白血病の治療としてL-アスパラギナーゼおよびステロイド投与(15例)、乳がんのホルモン補充療法(9例)、βブロッカー投与(5例)、甲状腺機能低下症(4例)、妊娠(4例)、汎下垂体機能低下症(2例)であった。・脂肪肝は119例(55.3%)に認められた。・膵炎の既往は12例(5.6%)、冠動脈疾患の既往は17例(7.9%)に認められた。

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生体吸収性スキャフォールド、ABSORB IIIの結果/NEJM

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)の有用性を検討した大規模な多施設共同無作為化試験の結果が報告された。非複雑性閉塞性冠動脈疾患(CAD)患者2,008例を対象に、エベロリムス溶出コバルトクロム合金ステントと比較した試験ABSORB IIIの結果、1年時点の標的病変不全の発生に関する非劣性が確認された。米国・クリーブランドクリニックのStephen G. Ellis氏らが報告した。金属製の薬剤溶出ステント埋設したCAD患者においては、有害事象として遅発性の標的病変不全が報告されている。金属製のステントフレームが血管壁に存在し続けることが関連している可能性があり、長期転帰を改善するためBVSが開発された。NEJM誌オンライン版2015年10月12日号掲載の報告。薬剤溶出金属ステントと安全性、有効性を比較 ABSORB III試験は、多施設共同単盲検実治療対照試験で、CAD患者に対するBVS(Absorb)の安全性と有効性を、薬剤溶出ステント(Xience)との比較において検討した。2013年3月19日~14年4月3日に、米国とオーストラリア202施設で1万3,789例について適格性の評価を行い、193施設2,008例の安定または不安定狭心症患者を、2対1の割合で無作為に2群に割り付けた(Absorb群1,322例、Xience群686例)。 主要エンドポイントは、1年時点の標的病変不全(心臓死、標的血管領域の心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建)で、非劣性と優越性の両者を評価した。1年時点の標的病変不全発生について非劣性を確認 1年時点の評価対象者は、1,989例(99.1%)であった。両群の入院中または30日時点での抗血小板薬2剤併用療法の使用について有意な差はなかった。1年時点では、Xience群と比べてAbsorb群は、クロピドグレルの使用頻度は低く、プラスグレルの使用頻度が高かった。 結果、主要エンドポイントの発生は、Absorb群7.8%、Xience群6.1%であった(両群差:1.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.5~3.9、非劣性p=0.007、優越性p=0.16)。 項目別にみると、心臓死Absorb群0.6%、Xience群0.1%(それぞれp=0.29)、標的血管心筋梗塞6.0%、4.6%(それぞれp=0.18)、虚血による標的病変血行再建3.0%、2.5%(それぞれp=0.50)であった。 1年間のデバイス血栓症の発生は、Absorb群1.5%、Xience群0.7%であった(p=0.13)。

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113)寝不足が続くと肥満になる!?【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者仕事が忙しくて、なかなか食事療法に取り組めなくて……。 医師確かに。仕事が忙しいと、健康的な食事を摂るのは難しいですよね(共感)。 患者そうなんです。何かいい方法はありませんか? 医師そうですね。睡眠不足になると、満腹ホルモンであるレプチンが減少し、摂食ホルモンであるグレリンが増えて、太りやすいホルモン環境になります。それに……。 患者えっ、そうなんですか!? それに?(少し驚いた顔) 医師それに、お菓子など甘い物、ポテトチップスやナッツなど塩辛いもの、パンやパスタなど炭水化物を好む嗜好になるそうです。 患者なるほど。まずは、睡眠不足を解消することが大切なんですね。 医師そうですね。どうやったら睡眠不足を解消できるかを、一緒に考えていきましょう。 患者よろしくお願いします。●ポイント睡眠不足になるとホルモン環境が変わり、太りやすい食品を嗜好するようになることをわかりやすく説明します 1) Taheri S, et al. PLoS Med.2004;1:e62. 2) Crispim CA, et al. Nutr Res Rev.2007;20:195-212.

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青年期からの適切な対策で精神疾患の発症予防は可能か

 青年から成人への移行期には、身体的、感情的および社会的な変化が大きいが、この発達期における慢性症状と精神疾患との関連について調べた研究はほとんどない。カナダ・マックマスター大学のM. A. Ferro氏は、青年から成人への移行期(emerging adulthood)に該当する15~30歳成人の疫学的サンプル調査により、慢性症状の有無別に性特異的な生涯精神疾患の有病率を調べた。結果、同年代では、身体的症状と精神的症状の併存は一般的であり、それらが相乗的に増大するという関連はみられなかったが、障害や痛みのレベルによっては関連する可能性があることを明らかにした。そのうえで、慢性症状を有するこの年代の成人の精神疾患の予防・減少を促進するために、行政は健康、教育、社会的サービスを統合・調整していくことが重要であると報告した。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌オンライン版2015年9月8日号の掲載報告。 研究グループは、慢性症状の有無を問わず15~30歳成人の疫学的サンプルを用いて、生涯精神障害の性特異的有病率を調べた。社会人口統計学的因子、健康因子で補正後、慢性症状と精神障害の関連を定量化し、また、性別、障害および痛みのレベルによる調節・媒介の可能性を調べた。Canadian Community Health Survey-Mental Healthの回答者で、慢性症状について自己報告していた15~30歳5,947例のデータを用いて分析を行った。慢性症状は、呼吸器系、筋骨格/関節組織、心血管、神経学的、内分泌/消化器系で分類。WHOの統合国際診断面談(Composite International Diagnostic Interview ; CIDI)3.0版を用いて、精神疾患(うつ病、自殺行為、双極性障害、全般性不安症)の有無を評価した。 主な結果は以下のとおり。・生涯精神疾患有病率は、慢性症状あり群が健康対照と比べて有意に高率だった。・精神疾患の有病率は、女性では認められなかったが男性では、かなりの不均一性が認められた。・社会人口統計学的および健康因子で補正後のロジスティック回帰モデルにおいて、慢性症状がある人は、精神疾患リスクが高いことが示された。・障害や痛みのレベルが、慢性症状と精神疾患との関連を調整するというエビデンスは認められなかった。・性別は、筋骨格/関節組織症状と双極性障害の関連を調整することが認められた(β=1.71、p=0.002)。・探索的分析においては、障害と痛みのレベルが慢性症状と精神疾患との関連を媒介することが示唆された。関連医療ニュース 青年期うつは自助予防可能か 若年男性のうつ病予防、抗酸化物質が豊富な食事を取るべき 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき  担当者へのご意見箱はこちら

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食事回数と肥満の関係

 食物摂取頻度と肥満との関連の研究結果は一貫していない。滋賀県立大学の村上 健太郎氏らは、米国National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)2003-2012のデータを用いた横断研究から、米国成人の1日の全食事回数・食事(間食を除く)回数・間食回数の多さが、過体重/肥満と中心性肥満のリスク増加に関連することが示唆される、と報告した。the Journal of Nutrition誌オンライン版2015年10月14日号に掲載。 米国の20歳以上の成人1万8,696人において、食物摂取量を2回の24時間食事思い出し法を用いて評価した。50kcal以上の食物摂取すべてを、エネルギー摂取量(15%以上または15%未満)、自己申告、摂取時刻(6~10時、12~15時、18~21時、その他)のそれぞれに基づいて、食事または間食に分類した。オッズ比(OR)および95%CIの算出には多変量ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・推定エネルギー必要量に対する推定エネルギー摂取量の比率(EI:EER)を調整せずに解析した場合、全食事頻度、食事(間食を除く)頻度、間食頻度のすべてにおいて、過体重/肥満(BMI:25以上)および中心性肥満(腹囲:男性102cm以上、女性88cm以上)と逆相関の関連または関連なしと示された。しかし、EI:EERの調整後、全食事頻度と過体重/肥満および中心性肥満との間には正の相関があった。・全食事頻度が最も高い(1日5回以上)カテゴリーにおける過体重/肥満のOR(95%CI)は、最も低いカテゴリー(1日3回以下)に比べて、男性で1.54(1.23~1.93、傾向のp=0.003)、女性で1.45(1.17~1.81、傾向のp=0.001)であった。中心性肥満のORは、男性で1.42(1.15~1.75、傾向のp=0.002)、女性で1.29(1.05~1.59、傾向のp=0.03)であった。・食事(間食を除く)頻度については、「自己申告に基づく食事頻度」と「摂取時刻に基づく食事頻度」が、過体重/肥満、中心性肥満、またはその両方と相関していたが、「エネルギー摂取量に基づく食事頻度」は関連がみられなかった。間食頻度との関連については、男性ではすべての間食頻度との正の相関がみられ、女性では「エネルギー摂取量に基づく間食頻度」との正相関がみられた。

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カルシウム製剤について

【治療薬】カルシウム製剤について、教えてください【骨粗鬆症】牛乳が苦手、小魚が食べられないというカルシウムが不足しがちな人向けのお薬です。骨をつくるカルシウムを、お薬のかたちで補充します。監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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外傷性脳損傷への低体温療法、有益性なし/NEJM

 外傷性脳損傷で頭蓋内圧亢進の認められる成人患者に対する低体温療法は、臨床転帰を悪化させる可能性があることが報告された。英国・ウェスタン総合病院のPeter J.D. Andrews氏らが、400例弱を対象に行った無作為化比較対照試験の結果、明らかにした。これまで、外傷性脳損傷における低体温療法は、頭蓋内圧亢進を低下することは知られていたが、機能的アウトカムへの有益性は不明であった。NEJM誌オンライン版2015年10月7日号掲載の報告。6ヵ月後のGOS-Eスコアを比較 研究グループは2009年11月~14年10月にかけて、18ヵ国47ヵ所の医療機関を通じ、外傷性脳損傷の成人患者で、人工呼吸などの第1段階治療を行っても20mmHg超の頭蓋内圧亢進が認められた患者387例を対象とした。無作為に2群に割り付け、一方には低体温療法(32~35℃)と標準的治療を、もう一方の対照には標準的治療のみを行った。 対照群には、頭蓋内圧コントロールを目的に、必要に応じて高張液注射療法などの第2段階治療を行った。低体温療法群にも、低体温療法で頭蓋内圧コントロールが不能な場合に第2段階治療を行った。また、両群ともに第2段階治療によっても頭蓋内圧コントロールが不能の場合は、第3段階治療(バルビツレート療法、減圧開頭術)を実施した。 主要アウトカムは、6ヵ月後の拡張グラスゴー転帰尺度(Glasgow Outcome Scale:GOS-E、スコア範囲:1~8で低いほど機能的アウトカム悪化を示す)だった。GOS-Eスコア良好の割合は対照群37%、低体温療法群26% その結果、第3段階治療を要した人の割合は、対照群が54%に対し、低体温療法群が44%だった。 GOS-Eスコアのオッズ比は1.53(95%信頼区間:1.02~2.03、p=0.04)と、対照群に比べ低体温療法群のアウトカムのほうが悪いことが示された。 GOS-Eスコアが、5~8とアウトカムが良好だった人の割合も、対照群37%に対し、低体温療法群は26%と有意に低率だった(p=0.03)。

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東海大学医学部、米国式医学教育の実践へ ハワイ大学と教育連携

 東海大学医学部(神奈川県伊勢原市下糟屋143、学長 山田 清志、学部長 今井 裕)は2015年10月19日、ハワイ大学医学部(米国ハワイ州、学部長 Jerris R. Hedges)と「ハワイ医学教育プログラム」(HMEF:Hawaii Medical Educational Program)導入の覚書を締結したと発表。 同プログラムの導入により東海大学は日本で初めて本格的な米国式医学教育を実践する医学教育機関となる。これに伴い、東海大学は米国ECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)の認定要件を満たすロールモデルとなり、世界の医学教育や医療のリーダーとして国際的に活躍し得る医師の育成を行うことで、日本の医学教育や国際標準化に貢献することが可能になるという。HMEPプログラム1.ハワイ大学医学部が、米国で臨床研修経験がある医師を東海大学医学部に講師として派遣、1~3年生を対象にしたカンファレンスと講義を実施(日英両語)2.1を受講した学生の中で10~20人を選抜し、ハワイ大学医学部の臨床実習準備教育プログラムを1~2カ月間受講する(東海大学内で実施する基礎臨床実習として認定)3.2の修了者は、ハワイ大学医学部が準備・提携する日本国内の臨床実習病院において米国式臨床実習を履修する(東海大学医学部5年生の臨床実習として認定)

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EMPA-REG OUTCOME試験:糖尿病治療薬久々の朗報~治療学的位置付けは今後の課題~(解説:景山 茂 氏)-438

 慢性疾患の治療において、短期間の薬効を示す指標(surrogate endpoint)と長期間の治療による予後を示す指標(true endpoint)が乖離することが最初に示されたのは、1970年のUGDP研究である。この研究では、スルホニル尿素類のトルブタミド(商品名:ラスチノン)はプラセボおよびインスリンに比較して死亡率、とくに心血管死が有意に高いことが示された。その後、同研究により、現在は用いられていないビグアナイド類のフェンホルミンについてもトルブタミドと類似の結果が示された。その後も、チアゾリジンジオン類のロシグリタゾンについて、心筋梗塞を増やす可能性が示唆されている。 糖尿病特有の合併症である細小血管障害は、血糖コントロールと密接な関係があることが示されている。一方、大血管障害については、DCCT/EDICおよびUKPDSでは、良好な血糖コントロールが大血管障害を改善することを示したが、VADT、ACCORD、ADVANCEの数年間の臨床試験では大血管障害の予後改善を示せなかった。 このような状況の中で、米国FDAは2008年に企業向けのガイダンスで、糖尿病治療薬については治験段階から心血管イベントの収集をしてメタ解析ができるよう求めている。 さて、今回のEMPA-REG OUTCOME試験は予想外の良い結果が示された。本試験では、心血管疾患のハイリスク患者に対して、標準治療にエンパグリフロジンの上乗せは、プラセボよりprimary outcome(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中から成る複合エンドポイント)を有意に減少させることを示した。この臨床試験は、薬効のメカニズムを検討するものではないが、なぜこのような結果が得られたかは考察する必要があろう。primary outcomeについては、グラフからは試験開始3ヵ月後から群間の乖離が認められる。primary outcomeの構成要素にはなっていないが、心不全による入院は試験開始後間もなく群間に差が認められる。 これらの成績からは、エンパグリフロジンの利尿作用が心不全の予防と改善に効果を及ぼしたことが推測される。そして、これが心血管死の減少に寄与した可能性が考えられる。HbA1c、体重、腹囲、収縮期・拡張期血圧、HDLC、尿酸にエンパグリフロジンの効果が認められているが、少なくとも短期間の心血管イベントの発症には、これらの因子の改善よりも水およびNaの利尿効果が予後改善には有効であったと考えるのが妥当ではないだろうか。 さて、本試験のprimary outcomeは複合エンドポイントであり、その構成要素の組み合わせは妥当なものである。複合エンドポイントは、当該治療の全般的な治療効果がみられるという利点がある一方、その構成要素となっている事象への作用の方向性が異なる場合は、解釈が難しくなるという欠点がある。単一エンドポイントではサンプルサイズが大きくなり、追跡期間が長くなるので、試験の実施可能性の観点から複合エンドポイントが採用されることも多い。 EMPA-REG OUTCOME試験では、これらの構成要素に同様な効果がもたらされたわけではなく、エンパグリフロジンは心血管死と非致死性心筋梗塞を減少させる方向に働いているが、脳卒中についてはむしろ増やす方向に作用しているようにみえる。これについては、今後の研究を待たねばならない。 今回の試験成績は、予想を超えた素晴らしい結果であるが、ぜひSGLT2阻害薬について、同様の成績を示す臨床試験がもう1つ欲しいところである。その折には、EMPA-REG OUTCOME試験により示されたSGLT2阻害薬の心血管疾患抑制効果はより確かなものとなり、効果がclass effectか否かも明らかになるであろう。 また、SGLT2阻害薬の治療学的位置付けを検討する研究が望まれる。今回はあくまで心血管疾患のハイリスク患者に標準治療に上乗せした場合、エンパグリフロジンはプラセボより心血管疾患の予防効果が優れていたという成績である。今後は、SGLT2阻害薬をより早い段階から用いた場合の、より一般的な糖尿病患者における効果の検討が望まれる。また、大血管障害のみならず細小血管障害に関する検証も必要であろう。 ともすればsurrogate endpointとtrue endpointが乖離するというparadoxicalな結果が懸念される糖尿病治療薬において、EMPA-REG OUTCOME試験は久々の朗報である。今後の検討に期待したい。関連コメントEMPA-REG OUTCOME試験の概要とその結果が投げかけるもの(解説:吉岡 成人 氏)リンゴのもたらした福音~EMPA-REG OUTCOME試験~(解説:住谷 哲 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:SGLT2阻害薬はこれまでの糖尿病治療薬と何が違うのか?(解説:小川 大輔 氏)EMPA-REG OUTCOME試験:それでも安易な処方は禁物(解説:桑島 巌 氏)

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難治性そう痒にアザチオプリンが有効である可能性

 慢性かつ重症で治療抵抗性のそう痒は生活を変えるほどであり、臨床医と患者の両方にとって難題である。このようなそう痒は、免疫が関与している場合があり免疫抑制薬に反応することがあるが、これまで詳細な調査は行われていなかった。米国・エモリー大学のAlexander Maley氏らは、アザチオプリンで治療した全身性ステロイド反応性のそう痒患者について後ろ向きに再調査した。その結果、アザチオプリンが難治性そう痒の症状を、著明に改善する可能性があると報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌2015年9月号(オンライン版2015年6月12日号)の掲載報告。 研究グループは、難治性そう痒治療におけるアザチオプリンの有効性と忍容性を評価する目的で、全身性ステロイド反応性の慢性そう痒に対しアザチオプリンによる治療を行った96例を後ろ向きに再調査した。 主な結果は以下のとおり。・治療前の症状持続期間は、平均52.9ヵ月(範囲2~360ヵ月、標準偏[SD]:64.8)、そう痒スコア(視覚アナログスケールによる;最大スコア10)は、9.25(範囲3~10、SD:1.37)であった。・治療後のそう痒スコアは、1.625(範囲0~8、SD:1.67)(p<0.0001)であった。・副作用は62例(65%)にみられた。32例(33%)は治療中止を要した。

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高齢者の服薬、併存疾患の組み合わせの確認を/BMJ

 米国・イェール大学医学部のMary E Tinetti氏らは複数の慢性疾患を有する高齢者の、ガイドラインに基づく服薬と死亡の関連を調べた。その結果、とくに心血管薬の生存への影響は、無作為化試験の報告と類似していたが、β遮断薬とワルファリンについて併存疾患によりばらつきがみられたことを報告した。また、クロピドグレル、メトホルミン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)は、生存ベネフィットとの関連がみられなかったという。結果を踏まえて著者は、「併存疾患の組み合わせによる治療効果を明らかにすることが、複数慢性疾患を有する患者の処方せんガイドになるだろう」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年10月2日号掲載の報告より。頻度の高い4疾患併存の高齢者の服薬と死亡の関連を調査 研究グループは、65歳以上の代表的サンプルを全米から集約した住民ベースコホート研究Medicare Current Beneficiary Surveyで、複数慢性疾患を有する高齢者のガイドライン推奨による服薬と死亡を調べる検討を行った。 被験者は、2つ以上の慢性疾患(心房細動、冠動脈疾患、慢性腎臓病、うつ病、糖尿病、心不全、脂質異常症、高血圧症、血栓塞栓症)を有する高齢者8,578例で、2005~2009年に登録、2011年まで追跡した。 被験者は、β遮断薬、Ca拮抗薬、クロピドグレル、メトホルミン、RAS系阻害薬、SSRI、SNRI、スタチン薬、サイアザイド系利尿薬、ワルファリンを服用していた。 主要評価項目は、疾患を有しガイドライン推奨薬を服用していた患者の、非服用患者と比較した死亡に関する補正後ハザード比で、頻度の高い4疾患を有していた患者における死亡補正後ハザード比とした。単疾患では抑制効果が高くても4併存疾患では減弱があることを確認 全体で、各疾患を有する患者の50%以上が、併存疾患にかかわらずガイドライン推奨薬を服用していた。 3年間の追跡期間中の死亡例は、1,287/8,578例(15%)であった。 心血管薬では、β遮断薬、Ca拮抗薬、RAS系阻害薬、スタチンは、対象疾患に関する死亡を抑制することが認められた。たとえば、β遮断薬の補正後ハザード比は、心房細動を有する患者では0.59(95%信頼区間[CI]:0.48~0.72)、心不全患者では0.68(同0.57~0.81)であった。 これら心血管薬の補正後ハザード比は、4つの併存疾患を有する被験者でも類似した値がみられたが、β遮断薬は4併存疾患の組み合わせによりばらつきがみられた。0.48(心房細動/冠動脈疾患/脂質異常症/高血圧)から、0.88(うつ病/冠動脈疾患/脂質異常症/高血圧)にわたっていた。 一方、クロピドグレル、メトホルミン、SSRI、SNRIでは、死亡の抑制効果はみられなかった。 また、ワルファリンは、心房細動(補正ハザード比:0.69、95%CI:0.56~0.85)、血栓塞栓症(0.44、0.30~0.62)を有する患者で、死亡リスクの抑制が認められたが、頻度の高い4併存疾患患者では、その抑制効果が減弱することが確認された。0.85(心房細動/冠動脈疾患/脂質異常症/高血圧)から、0.98(心房細動/うつ病/脂質異常症/高血圧)の範囲にみられた。

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ダニ媒介性脳炎に気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第12回目となる今回は「ダニ媒介性脳炎」についてです。対岸の火事ではない! ダニ媒介性脳炎「ダニ媒介性脳炎」っていわれても、そんな病名聞いたことがないという方々も多いのではないでしょうか。ダニ媒介性脳炎はその名のとおり、マダニ属(Ixodes)のマダニに刺されることで脳炎症状を呈する感染症であり、原因となる微生物はデングウイルス、日本脳炎ウイルスなどと同じフラビウイルスに属する、ダニ媒介性脳炎ウイルスです。図はダニ媒介性脳炎の流行地図ですが、ロシアからヨーロッパにかけて広く流行しています。ダニ媒介性脳炎は、中部ヨーロッパ型とロシア春夏型に分かれ、それぞれ分布が異なります。この流行地図を見て「あっ、日本は流行してないのね…じゃあ読むのやめよう」と思ったあなたッ! そう思われるのはちょっと早いのではないでしょうか。何を隠そう、日本でもダニ媒介性脳炎の感染者が、1例だけ報告されているのですッ!2) この症例が診断されたのは1993年、そう今から20年以上も前のことです。北海道上磯町で酪農を営む女性が、突然の発熱、複視、けいれんを発症し、当初日本脳炎が疑われたのですが、精査の結果、ダニ媒介性脳炎であったことがわかりました。この患者さんの家の近くにいた犬10匹のうち5匹でダニ媒介性脳炎ウイルス抗体が上昇しており、この地域にウイルスが存在していることもわかっています。北海道ではヤマトマダニ(Ixodes ovatus)が媒介すると考えられています。もう一度言いましょう。日本でもダニ媒介性脳炎に感染する可能性があるのですッ!! しかし、その後20年間患者は1人も報告されていないことから、少なくとも感染するリスクは高くはないのだと思われます。また、日本脳炎のように不顕性感染も一定数いると考えられており、感染していても発症せずに診断に至らない事例もあるのではないかと推測されます。ダニ媒介性脳炎の特徴は2相性ダニ媒介性脳炎は、2相性の経過をたどるとされています。ダニ刺咬後7~14日の潜伏期を経て、発熱、頭痛、倦怠感、関節痛といった非特異的な症状で発症します(第1相)。これがだいたい1~8日くらい続いて、いったん症状が消失します。その後、第2相として発熱と神経学的症状が出現します。この神経学的症状は髄膜炎から脳炎までさまざまです。ヨーロッパでみられる中部ヨーロッパ型よりも、ロシア東部でみられるロシア春夏脳炎のほうが、より重篤で致死率も高い(20~30%)とされています。救命できても麻痺などの後遺症を残すこともあります。「春夏」などと牧歌的な名前のクセに実に凶悪なヤツです。こういう恐ろしいウイルスが、北海道にいるのかと思うと怖いですね…。日本での初症例で当初疑われていたように、日本脳炎との鑑別が問題になると思われますが、わが国での日本脳炎の流行が西高東低であることを考えると、北海道で起こった脳炎では、ダニ媒介性脳炎も鑑別として考慮すべきと考えられます。なお、ダニ脳炎には有効な治療薬はなく、支持療法が主体となります。ダニの予防にはDEET配合防虫剤最後に予防についてですが、ダニ脳炎にはワクチンがあります。流行地域を訪れる旅行者すべてがワクチン接種をする必要はありませんが、流行地域でキャンプをする、あるいは森林地域を行脚するといった予定がある場合には、ワクチン接種が推奨されます。残念ながらダニ脳炎ワクチンは国内で未承認ですので、未承認ワクチンを取り扱っているトラベルクリニックなどで接種をする必要があります。また、「第7回 チクングニア熱に気を付けろッ」で防蚊対策について述べましたが、DEETはマダニにも有効です。DEETを含む防虫剤を適切に使用することで、ダニ刺咬を防ぐことができます。今回は、ダニ媒介性脳炎というほぼ誰も診たことがない感染症を取り上げましたが、次回は今、日本で非常に問題になっている再興感染症の「梅毒」について取り上げたいと思いますッ!1)Richard L. Guerrant, et al. Tropical Infectious Diseases: Principles, Pathogens and Practice. 3rd ed. Amsterdam: Elsevier B.V.;2011.2)Takashima I, et al. J Clin Microbiol.1997;35:1943-1947.

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注意が必要なトランスジェンダーのメンタルヘルス

 中国医科大学のXiaoshi Yang氏らは、同国におけるトランスジェンダー女性のうつ病罹患状況とその背景要因を検討するため横断研究を行った。その結果、中国のトランスジェンダー女性は、うつ病を高頻度に経験していることを報告した。また、彼女たちのうつ病は、トランスジェンダーに関連する差別や性転換の状況よりも、特定あるいは不特定のパートナーの有無により予測できること、セックスパートナーの存在がうつ病に関連していること、また、自己効力感がうつ病の軽減に好影響を与えうることなどを報告した。そのうえで、「彼女たちがうつ病に対処できるよう、またパートナー(とくに特定あるいは不特定の)とのリスキーなパートナーシップの特徴を見極められるように、自己効力感の改善に重点を置いた介入をすべきであることが示唆された」と報告している。PLoS One誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。 トランスジェンダー女性は、性転換に関連する差別や社会的サポートの欠如にしばしば悩まされている。そのことは多大な精神的打撃となり、結果として、この集団における高いうつ病罹患率につながっている可能性がある。自己効力感の増大は、性転換のうつ病が及ぼす悪影響を抑える可能性がある。しかし、トランスジェンダー女性のうつ病予防効果を検討した利用可能な研究はほとんどなく、中国人トランスジェンダー女性のメンタルヘルスを扱った研究も不十分であった。 そこで研究グループは、中国のトランスジェンダー女性におけるうつ病罹患率を調査し、その関連要因を探った。2014年1月~7月に、遼寧省瀋陽市で便宜的抽出法を用いたサンプリング(convenience sampling)により横断研究を実施した。トランスジェンダーの女性209例を対象に、Zungうつ病自己評価尺度(SDS)、人口動態学的特性、性転換の状況、セックス・パートナーシップ、トランスジェンダーであるために経験した差別、ソーシャルサポート尺度であるMultidimensional Scale of Perceived Social Support(MSPSS)、General Self-efficacy Scale(GSES)が網羅された質問票を用いて対面インタビューを行った。SDSスコアに関連する要因を階層多重回帰モデルにより分析した。 主な結果は以下のとおり。・トランスジェンダー女性のうつ病罹患率は45.35%であった。・特定のパートナーあるいは不特定のパートナーのいる性転換女性は、それらがいない場合に比べ高いSDSスコアを示した。・回帰分析により、セックスパートナーの状況はうつ病スコアにおける全分散の多く(16.6%)を説明することが示された。・自己効力感は、うつ病と負の関係にあった。関連医療ニュース うつになったら、休むべきか働き続けるべきか スタイルを気にしすぎる女性はうつに注意を 職場のメンタルヘルス、効果的な方法は:旭川医大  担当者へのご意見箱はこちら

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