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カペシタビンによる術後補助化学療法でHER2陰性乳がんの予後を改善/NEJM

 標準的な術前補助化学療法を受け、病理検査で浸潤がんの遺残が確認されたヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)陰性乳がん患者において、標準的な術後治療にカペシタビンによる術後補助化学療法を加えると、無病生存(DFS)と全生存(OS)が改善することが、国立病院機構 大阪医療センターの増田 慎三氏らが実施したCREATE-X試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年6月1日号に掲載された。HER2陰性原発乳がんの術前補助化学療法の病理学的完全奏効(pCR)率は13~22%で、non-pCR例の再発リスクは20~30%とされ、これら遺残病変がみられるHER2陰性例への術後補助化学療法は確立されていない。カペシタビンはフルオロウラシルの経口プロドラッグで、消化器がんの術後補助化学療法や転移性乳がん(主に2次治療)の治療薬として用いられている。カペシタビンの術後補助化学療法を評価 本研究は、日韓の84施設(日本62施設、韓国22施設)参加の下で行われた、術後補助化学療法としてのカペシタビンの有効性と安全性を評価する非盲検無作為化第III相試験である(先端医療研究支援機構[ACRO]、JBCRG[Japan Breast Cancer Research Group]の助成による)。 対象は、年齢20~74歳、HER2陰性、全身状態(ECOG PS)0/1で、アントラサイクリン系薬、タキサン系薬あるいはこれら双方による術前補助化学療法を受け、病理検査でnon-pCRまたはリンパ節転移陽性のpCRと判定されたStage I~IIIB乳がんの女性であった。 被験者は、標準的な術後治療に加え、カペシタビン(1,250mg/m2、1日2回、1~14日)を投与する群または投与しない群(対照群)に無作為に割り付けられた。主要エンドポイントはDFS期間(割り付け時から再発、2次がんの発現、全死因死亡までの期間)、副次エンドポイントはOS期間などであった。 2007年2月~2012年7月に、910例(日本:606例、韓国:304例)が登録され、最大の解析対象集団(FAS)887例(カペシタビン群:443例、対照群:444例)について解析を行った。カペシタビンの3年DFS率は有意に良好 ベースラインの全体の年齢中央値は48歳(範囲:25~74)、約40%がStage IIIA/B、32.2%がトリプルネガティブ乳がん(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)で、95.3%がアントラサイクリン系薬とタキサン系薬(82.2%が逐次投与、13.1%が同時投与)による術前補助化学療法を受けていた。 事前に規定された中間解析(2015年3月)で主要エンドポイントに到達したため、本研究は早期終了となった。追跡期間中央値は3.6年だった。 最終解析(2016年7月)では、3年DFS率はカペシタビン群が82.8%、対照群は73.9%、5年DFS率はそれぞれ74.1%、67.6%であり、カペシタビン群が有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.53~0.92、p=0.01)。 また、3年OS率は、カペシタビン群が94.0%、対照群は88.9%、5年OS率はそれぞれ89.2%、83.6%であり、カペシタビン群が有意に優れた(HR:0.59、95%CI:0.39~0.90、p=0.01)。解析時に、両群ともOS期間中央値には未到達であった。術後カペシタビン治療の安全性プロフィール 事前に規定されたサブグループの解析では、DFS率、OS率とも、すべてのサブグループに一致してカペシタビン群にベネフィットが認められた。トリプルネガティブ乳がんでは、DFS率(69.8 vs.56.1%、HR:0.58、95%CI:0.39~0.87)およびOS率(78.8 vs.70.3%、HR:0.52、95%CI:0.30~0.90)が、いずれもカペシタビン群で有意に良好だった。ホルモン受容体陽性例では、いずれも有意な差を認めなかった。 カペシタビン群で最も頻度の高い有害事象は手足症候群で、325例(73.4%)に認められた。このうち、49例(11.1%)がGrade 3であった。カペシタビン群で頻度の高い血液毒性として、白血球減少、血小板減少、好中球減少、貧血が、非血液毒性は疲労、悪心、下痢、口内炎などがみられたが、有害事象の多くがGrade 1/2であった。重篤な有害事象は4例に発現したが、いずれも回復した。 著者は、「標準的な術前補助化学療法後の術後カペシタビン治療の安全性プロフィールは、人種によって異なるため注意を要するが、用量と投与スケジュールを適切に調節すれば欧米の患者にも適用は可能と推察される」としている。

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患者報告による症状モニターが、外来進行がんのOSを有意に延長/ASCO2017

 経口抗がん剤の増加により、外来診療が増加している。そのような中、患者の合併症管理は大きな問題となりつつある。進行がんでは症状が頻繁に起こるが、患者が医療者に報告するにはさまざまな障害がある。過去の研究結果によれば、診療医が患者の症状に気付くのは半分との報告ある。質の高いがん診療の管理には症状モニタリングが鍵といえる。そこで、Webベースによる症状モニタリングと患者報告を組み合わせたシステムと、通常ケアの結果を比較する大規模な単一施設無作為化比較試験の生存に関する結果が、University of North CarolinaのEthan Basch氏により米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で発表された。 同試験では、Memorial Sloan Kettering Cancer Centerで転移のある固形腫瘍の外来化学療法を受けている患者を登録し、タブレットコンピュータを介した12の一般的な症状を自己報告する群(セルフレポート群)と通常ケア群に無作為に割り付けた。セルフレポート群では、被験者が重度の症状または症状悪化を報告すると、診察医と看護師は電子メールなどによりリアルタイムで知らされ、医療者はその情報を基に診療にあたる。主要評価項目は、QOL、全生存期間(OS)、救急受診であった。 結果、2007年9月~2011年1月に766例の患者が登録され、2群に無作為に割り付けられた。患者の年齢中央値は62歳、白人87%、黒人7%、アジア人6%。がん種は泌尿器生殖器がん31%、肺がん27%、婦人科がん25%、乳がん17%であった。QOL評価は、セルフレポート群では改善34%、不変28%、対照群では改善18%、不変29%であり、セルフレポート群は対照群に比べ31%QOLが改善した。OSは、セルフレポート群で31.2ヵ月、対照群は26.0ヵ月で、セルフレポート介入群で有意に延長した(p=0.03)。多変量解析でのHRは0.832(95%CI:0.696~0.995)であった。救急受診もセルフレポート群で有意に少なく(p=0.02)、その差は7%であった。■参考ASCO2017 Abstract試験情報(Clinical Trials.gov)

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心不全・心機能低下のないAMI患者におけるβ遮断薬と死亡率の関係

 心不全のない急性心筋梗塞(AMI)患者において、β遮断薬が死亡率を低減させるかどうかについては、はっきりしていない。そこで英国リーズ大学のTatendashe B. Dondo氏らの研究グループは、左心機能の保たれたAMI患者において、β遮断薬と死亡率の関連について検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年6月号に掲載。17万9,810例をプロペンシティスコアによって解析 本研究では、Myocardial Ischemia National Audit Projectという英国とウェールズのレジストリデータを用いて、2007年1月~2013年6月の間に心筋梗塞で入院した患者のうち、心不全または心機能の低下が認められなかった17万9,810例について評価した。 β遮断薬と1年後の生存率の関連を検証する解析には、Survival time inverse probability weighting propensity score(生存時間逆確率重み付け推定プロペンシティスコア)と操作変数法(instrumental variable analysis)が用いられた。 β遮断薬投与群と非投与群で1年後の死亡率に有意差は認められず ST上昇心筋梗塞患者9万1,895例と、非ST上昇性心筋梗塞患者8万7,915例のうち、β遮断薬の投与を受けていたのは、それぞれ8万8,542例(96.4%)と8万1,933例(93.2%)であった。コホート全体の16万3,772人年の観察で、9,373例(5.2%)が死亡した。 非調整の1年死亡率は、β遮断薬投与群のほうが非投与群に比べて優れていた(4.9% vs. 11.2%、p<0.001)。しかし、重み付けと調整の後では、β遮断薬投与群と非投与群ともに死亡率に変化が認められなかった(平均治療効果[ATE]係数:0.07、95%信頼区間[CI]:0.60~0.75、p=0.827)。結果は、ST上昇性心筋梗塞および非ST上昇性心筋梗塞で同様であった(ATE係数:0.30、95%CI:0.98~1.58、p=0.637、ATE係数:0.07、95% CI:0.68~0.54、p=0.819)。AMI後、心不全や左室機能低下のない患者において、β遮断薬の使用はその後1年間において死亡率の低下と関連がなかった。無作為化コントロール研究が必要 筆者らは本研究について、無作為化されたものではないことと、プロペンシティスコアや操作変数法を用いて、その他の多くの交絡因子に対する調整がなされたものの、交絡因子が依然残っている可能性を指摘している。AMI後、左心機能が保たれた患者におけるβ遮断薬の死亡率への効果を調べるには、無作為化コントロール研究が次のステップとして必要であると述べている。■関連記事 循環器内科 米国臨床留学記

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X染色体遺伝性低リン血症〔XLH:X-linked hypophosphatemic rickets〕

1 疾患概要■ 定義X染色体遺伝性低リン血症(X連鎖性低リン血症性くる病)は、X連鎖性優性遺伝形式を示し、腎尿細管でのリン酸再吸収障害に基づく過リン酸尿、低リン血症、ビタミンD活性化障害、骨石灰化障害を呈する遺伝性疾患である。骨石灰化障害は、成長軟骨帯閉鎖以前に発症するものを「くる病」、成人期のものを「骨軟化症」と呼ぶ。本症はビタミンD欠乏性くる病・骨軟化症とは異なり、天然型ビタミンD投与により完治しないことから、しばしばビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症とも呼ばれる。■ 疫学詳細は不明であるが、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「ホルモン受容機構異常に関する調査研究班」の全国調査から、わが国における年間発症症例数は117例(95%信頼区間 75-160)と推定されている。■ 病因・病態本症はX染色体に存在するPHEX(phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosome)遺伝子の機能喪失に基づく。PHEX遺伝子は主として骨芽細胞や骨細胞に発現している。本症の原因であるPHEXの機能喪失は骨におけるFGF23の過剰産生をもたらし、このFGF23作用の過剰が尿中リン酸排泄増加による低リン血症やビタミンDの活性化障害を引き起こす(図1)。PHEXの機能喪失がFGF23の過剰産生をもたらす機序は明確になっていない。画像を拡大するFGF23は主として骨芽細胞や骨細胞で産生され、近位尿細管におけるIIa型およびIIc型のナトリウム/リン酸共輸送担体の発現を減少させることによりリン酸再吸収を抑制し、血清リン値を低下させる。また、FGF23は、ビタミンDの活性化酵素である1α水酸化酵素の発現を抑制して不活性化酵素である24水酸化酵素の発現を誘導することにより、活性型のビタミンDである1,25(OH)2Dの血中濃度を低下させる。1,25(OH)2Dの低下に伴う腸管でのリン吸収の抑制は血清リン値をさらに低下させる。リンはカルシウム(Ca)とともにハイドロキシアパタイトの主要構成成分であるため、本症における慢性的な低リン血症は、骨石灰化障害であるくる病や骨軟化症をもたらす。低リン血症性くる病・骨軟化症の中には、本症以外にもFGF23作用の過剰による疾患群が存在し、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と総称される(表)。画像を拡大する■ 症状尿中リン酸排泄増加、低リン血症、骨変形やO脚、関節腫脹、低身長、骨単純X線像としての杯様変化や毛羽立ちなどのくる病所見を認め、くる病はビタミンD抵抗性である。ビタミンDの活性化障害が存在するため、低リン血症が存在するにもかかわらず血中1,25(OH)2D値は上昇しない。ほかのくる病・骨軟化症と同様に、血清ALP値は上昇する。多くの場合、副甲状腺ホルモン(PTH)値は正常である。見逃されがちな症状として歯の異常が挙げられ、本症の患者はエナメル質欠損や象牙質石灰化障害、歯根膿瘍などを示す。成人では筋力低下や骨痛が主徴となる。また、後縦靱帯骨化症や腱付着部症(enthesopathy)をしばしば認める。■ 予後従来行われてきたリン酸製剤と活性型ビタミンDを用いた治療により本症患者の成長障害はある程度改善するが、成人身長は平均を下回る場合が多い。また、骨変形の完全な防止は困難であり、筋力低下や骨痛のため服薬が中止できないことが少なくない。前述したように、後縦靱帯骨化症や石灰化を伴うenthesopathyを合併しやすい。また、長期にわたる活性型ビタミンDの投与により尿中Ca排泄が増加し、腎機能に影響を及ぼす場合がある。2019年より、新規治療薬としてヒト型抗FGF23モノクローナル抗体(商品名:クリースビータ)が使用可能となったことから、今後、本疾患の予後が変化する可能性がある。2 診断骨石灰化障害であるくる病や骨軟化症には、本症のようなFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症のほか、ビタミンD欠乏性くる病やビタミンD依存症I型・II型、薬剤性くる病・骨軟化症、ファンコーニ症候群など、さまざまな疾患が含まれる。そこで、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「ホルモン受容機構異常に関する調査研究班」では、日本内分泌学会・日本骨代謝学会との合同で、「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」を作成し1)、学会ホームページ上で公開している。このマニュアルでは、くる病・骨軟化症の症例に遭遇したときには、まず血清リン値を評価し、低リン血症が存在すれば血中FGF23値の測定を行う。血清リン値の基準値は年齢で異なるので、注意が必要である。くる病・骨軟化症患者で低リン血症が存在し、血中intact FGF23値が30pg/mL以上であれば、FGF23関連くる病・骨軟化症と診断する(図2)。FGF23関連くる病・骨軟化症の診断または治療効果判定を目的としたFGF23の測定は、2019年より保険適用となっている。表に示した通り、FGF23関連くる病・骨軟化症には本症以外にもさまざまな疾患が含まれるので、腫瘍性骨軟化症などとの鑑別のために詳細な家族歴の調査が必要となるが、しばしば孤発例も報告されており、診断に苦慮する場合がある。こうした症例ではPHEX遺伝子検査が有用である。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)本症をはじめとするFGF23関連低リン血症性くる病においては、尿中リン酸排泄増加に加えビタミンD活性化障害を伴うため、従来、中性リン酸塩と活性型ビタミンDの併用投与が行われてきた。経口リン酸製剤(例:ホスリボン配合顆粒など)は20~60mg/kg/日を数回に分割して投与する。リン投与が過剰になると消化器症状や副甲状腺機能亢進症のリスクが高まる。活性型ビタミンDとしては通常、アルファカルシドール(1αOHD3)0.03~0.05μg/kg/日で開始し、血清Ca値や尿中Ca排泄を指標に投与量を調節する。成人における治療法は確立していない。活性型ビタミンD投与が長期にわたるため、腎エコー上、腎石灰化が高頻度に認められるが、腎機能の低下を来すことはまれである。近年、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症に対する新規治療薬として、ヒト型FGF23モノクローナル抗体ブロスマブが使用可能となった。XLHに対しては、成人患者では4週毎に1 mg/kg(ただし90 mg以下)を、小児患者では2週毎に0.8 mg/kgを皮下投与する。在宅自己注射も可能となっている。リン製剤や活性型ビタミンD投与による治療からブロスマブ投与に切り替える際には、それまでの治療を中止して血清リン値が低値になっていることを確認しなくてはならない。ブロスマブは血清リン値や症状に応じて増減するが、最高用量は2mg/kg/回(ただし90 mg以下)である。4 今後の展望2019年以降、血中FGF23測定が保険適用となり、ブロスマブが使用可能となったことから、XLHの診療は大きく変化しつつある。ブロスマブの導入により、XLHにおける身長予後や合併症が改善するかどうか、今後の検討が待たれる。5 主たる診療科小児科、内分泌内科、整形外科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療研究情報難病情報センター ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター 原発性低リン血症性くる病(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会XLH Network(米国にある本疾患の患者会サイト。英文だが日本語選択も可能)1)Fukumoto S, et al. Endocr J. 2015;62:665–671.2)Carpenter TO, et al. J Bone Miner Res. 2011;26:1381–1388.3)Haffner D, et al. Nat Rev Nephrol. 2019;15:436–455.4)Carpenter TO, et al. New Engl J Med. 2018;378:1987–1998.5)Imel EA, et al. Lancet. 2019;393:2416–2427.公開履歴初回2017年06月13日更新2022年02月03日

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高齢者の術後せん妄予防にケタミン、悪影響の可能性/Lancet

 高齢者の術後せん妄予防目的のケタミン投与は、効果がないばかりか、幻覚やナイトメア症状を増大する可能性が、米国・セントルイス・ワシントン大学のMichael S. Avidan氏らによる国際多施設共同二重盲検無作為化試験「PODCAST」の結果、示された。せん妄は頻度が高く重大な術後合併症である。一方で、術後疼痛を軽減するために周術期静脈内ケタミンの投与がしばしば行われており、同投与のせん妄予防効果を示唆するエビデンスが報告されていた。研究グループは、高齢者の術後せん妄予防に対するケタミンの有効性評価を主要目的に今回の試験を行った。Lancet誌オンライン版2017年5月30日号掲載の報告。プラセボ vs. 0.5mg/kgケタミン vs. 1.0mg/kgケタミンの無作為化試験 PODCAST(Prevention of Delirium and Complications Associated with Surgical Treatments)試験は4ヵ国10施設(米国6、カナダ2、韓国1、インド1)で、全身麻酔下にて心臓または非心臓の大手術を受ける60歳以上の患者を対象に行われた。コンピュータ無作為化シーケンス法で被験者を1対1対1の割合で3群に割り付け、それぞれ術前の麻酔導入後に、(1)プラセボ(生理食塩水)、(2)低用量ケタミン(0.5mg/kg)、(3)高用量ケタミン(1.0mg/kg)を投与した。参加者、臨床医、研究者に割り付けは明らかにされなかった。 せん妄の評価は、術後3日間、Confusion Assessment Method(CAM)を用いて1日2回行われた。解析はintention-to-treat法にて行われ、有害事象についても評価した。3群間のせん妄発生率に有意差なし、ケタミン群で幻覚、ナイトメアが増大 2014年2月6日~2016年6月26日に、1,360例の患者が試験適格の評価を受け、672例(平均年齢70歳、女性38%)が無作為に3群に割り付けられた(プラセボ群222例、低用量ケタミン群227例、高用量ケタミン群223例)。 術後3日間のせん妄発生率は、プラセボ群19.82%、低用量ケタミン群17.65%、高用量ケタミン群21.30%であった。せん妄発生率について、プラセボ群と低・高用量ケタミン複合群(19.45%)の群間に有意差は認められなかった(絶対差:0.36%、95%信頼区間[CI]:-6.07~7.38、p=0.92)。また、3群間の有意差も認められないことが確認された(Cochran-Armitage検定のp=0.80)。ロジスティック回帰モデルの評価では、ケタミンの低用量群と高用量群がそれぞれ、術後せん妄発生の低下を独立して予測することが示されたが、有意差は認められず、さらに潜在的交絡因子で補正後、せん妄の発生までの時間、期間、重症度について3群間で有意差は認められなかった。同評価では、60歳超、心臓手術、うつ病歴がせん妄の独立予測因子として示唆されている。 有害事象(心血管系、腎機能、感染症、消化管出血)の発生は、個別にみても(それぞれのp>0.40)、総体的にみても(プラセボ群36.9%、低用量ケタミン群39.6%、高用量ケタミン群40.8%[p=0.69])、3群間で有意差はなかった。 一方で、プラセボ群と比べてケタミン群の患者で、術後の幻覚症状(プラセボ群18%、低用量ケタミン群20%、高用量ケタミン群28%[p=0.01])、ナイトメア(8%、12%、15%[p=0.03])が有意に増大したことが報告された。

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PARP阻害薬olaparib、BRCA変異乳がんの生存を42%改善/ASCO2017

 BRCA変異陽性HER2陰性転移乳がん(mBC)に対し、PARP阻害薬olaparibの有効性および安全性を単剤化学療法と比較評価する無作為化オープンラベル第III相試験 OlympiAD試験の結果を、米国Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのMark Robson氏が米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で発表した。 OlympiAD試験では、HER2陰性(HR陽性またはトリプルネガティブ)で2ライン以上の化学療法を受けたBRCA変異陽性mBC患者を、olaparib群と医師が選択した標準的な単剤化学療法(TPC)群に、2:1に無作為に割り付けた(単剤化学療法はカペシタビンあるいはエリブリン)。治療は病勢進行するか毒性が忍容できなくなるまで継続した。主要評価項目は、独立第3者評価機関(BICR) 評価の無増悪生存(PFS)。副次的評価項目は2回目のPDまたは死亡までの期間(PFS2)、客観的奏効率(ORR)、安全性と忍容性、健康関連QOLであった。  結果、302例の患者が登録され、205例がolaparib群に、97例がTPC群に割り付けられた。BICR評価のPFSは、olaparib群7.0ヵ月、TPC群4.2ヵ月と、olaparib群で有意に長かった(HR:0.58、95%CI:0.43~0.80、p=0.0009)。 また、PFS2はolaparib群13.2ヵ月、TPC群で9.3ヵ月と、olaparib群で有意に長かった(HR:0.57、95%CI:0.40~0.83、p=0.0033) 。ORRは、 olaparib群60%、TPC群29%であった。OSはolaparib群19.3ヵ月、TPC群19.6ヵ月と、同等であった。全般的健康関連QOL(EORTC-QLQ-C30)のベースラインからの変化は、olaparib群3.9、TPC群−3.6、とolaparib群が優れていた (差異7.5、95% CI:2.5~12.4、p=0.0035)。Grade3以上の有害事象(AE)は、olaparib群の36.6%、TPC群の50.5%で発現し、olaparib群で頻度の高い項目は、貧血16%、好中球減少症9%などであった。 Discussantであるスタンフォード大学のAllison Kurian氏は、PARP阻害薬と免疫チェックポイント薬の併用への期待、また、今後のPARP阻害薬の役割、効果と耐性のバイオマーカーの特定を研究していくべきであると述べた。 この試験の結果は、学会での発表と同時にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。■参考 ASCO2017 Abstract Robson M, et al. N Engl J Med. 2017. June 4. [Epub ahead of print] OlympiAD試験(Cinical Trials.gov)

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せん妄ケアの重要性、死亡率への影響を検証

 認知症入院患者は、せん妄リスクが高いが、認知症に併発したせん妄(delirium superimposed on dementia:DSD)が患者アウトカムに及ぼす影響については、あまり知られていない。ブラジル・サンパウロ大学のThiago J. Avelino-Silva氏らは、高齢者入院患者におけるDSDと院内死亡率および12ヵ月間の死亡率との関連を調査した。PLOS medicine誌2017年3月28日号の報告。 本研究は、サンパウロ大学付属病院の老人病棟で実施したコホート研究である。対象は、2009年1月~2015年6月までの60歳以上の急性疾患入院患者1,409例。主な変数と指標は、認知症、認知症の重症度(IQCODE[Informant Questionnaire on Cognitive Decline in the Elderly]、CDR[臨床的認知症尺度])、せん妄(CAM[Confusion Assessment Method])とした。主要アウトカムは、院内死亡までの時間および退院した場合では12ヵ月間での死亡までの時間とした。入院時に高齢者総合的機能評価を実施し、死亡または退院時に追加の臨床データを収集した。症例は、認知症単独群、せん妄単独群、DSD群、非認知症/せん妄(どちらも有しない)群の4群に分類した。非認知症/せん妄群を比較のための対照群として定義した。多変量解析では、交絡因子(社会人口学的情報、病歴および身体検査データ、機能および栄養状態、多剤併用など)を調整したCox比例ハザードモデルを用いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、女性の比率は61%、認知症は39%、平均年齢は80歳であった。・認知症単独群が13%、せん妄単独群が21%、DSD群が26%であった。・院内死亡率は、非認知症/せん妄群で8%、認知症単独群で12%、せん妄単独群で29%、DSD群で32%であった(ピアソンのχ2検定:112、p<0.001)。・独立して院内死亡率と関連していたのは、DSD群(ハザード比[HR]:2.14、95%信頼区間[CI]:1.33~3.45、p=0.002)とせん妄単独群(HR:2.72、95%CI:1.77~4.18、p<0.001)であった。・認知症単独群では、院内死亡率と統計学的に有意な関連は認められなかった(HR:1.69、95%CI:0.72~2.30、p=0.385)。・退院後に死亡した24%の患者における12ヵ月死亡率は、いずれの群においても関連が認められなかった(DSD群[HR:1.15、95%CI:0.79~1.68、p=0.463]、せん妄単独群[HR:1.05、95%CI:0.71~1.54、p=0.810]、認知症単独群[HR:1.19、95%CI:0.79~1.78、p=0.399])。・本検討の限界として、アウトカムに対するせん妄の期間や重症度の影響を検討していない。 著者らは「DSD群およびせん妄単独群では、高齢入院患者の予後が不良だった。認知症との併発にかかわらず、せん妄は院内死亡率の予測因子として重要であることを認識すべきである」としている。■関連記事 認知症者のせん妄、BPSDにより複雑化 せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているか 認知症にならず長生きするために

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ミノサイクリンは多発性硬化症進展リスクを抑制するか/NEJM

 初回の局所性脱髄イベント(clinically isolated syndrome:CIS)の発症後は、多発性硬化症への進展リスクが増大する。カナダ・カルガリー大学/フットヒルズ医療センターのLuanne M. Metz氏らは、CIS発症時にミノサイクリン投与を開始すると、6ヵ月時にはこの進展リスクが抑制されたが、24ヵ月時には効果は消失したとの研究結果を、NEJM誌2017年6月1日号で報告した。テトラサイクリン系抗菌薬ミノサイクリンは免疫調節特性を持ち、予備的なデータでは多発性硬化症への活性が示され、2つの小規模な臨床試験で有望な成果が提示されている。副作用として発疹、頭痛、めまい、光線過敏症がみられるものの、安全性プロファイルは良好とされ、まれだが重篤な合併症として偽脳腫瘍や過敏症症候群があり、長期の使用により色素沈着が生じる可能性があるという。カナダの142例が対象のプラセボ対照無作為化試験 研究グループは、脱髄イベントから多発性硬化症への進展リスクに及ぼすミノサイクリンの効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した(カナダ多発性硬化症協会の助成による)。 初回CISの発現から180日以内の患者が、ミノサイクリン(100mg、1日2回)を経口投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。治療は、多発性硬化症の診断が確定するか、無作為割り付けから24ヵ月のいずれかまで継続した。 主要評価項目は、無作為割り付けから6ヵ月以内の多発性硬化症(2005年版McDonald診断基準で診断)への進展とした。副次評価項目は、無作為割り付けから24ヵ月以内の多発性硬化症への進展、そして6ヵ月および24ヵ月時のMRI上の変化(T2強調MRI上の病巣の体積、T1強調MRI上の新たに増強された病巣[増強病巣]の累積数、個々の病巣の累積合計数[T1強調MRI上の新規増強病巣、およびT2強調MRI上の新規病巣と新たに増大した病巣])などであった。 2009年1月~2013年7月に、カナダの12の多発性硬化症クリニックで142例が登録され、ミノサイクリン群に72例、プラセボ群には70例が割り付けられた。さらなる試験で検証を ベースライン(CIS発症時)の全体の平均年齢は35.8(SD 9.2)歳、68.3%が女性であった。脊髄病巣(ミノサイクリン群:34.7%、プラセボ群:51.4%、p=0.04)およびMRI上の増強病巣数≧2(9.7 vs.25.7%、p=0.04)がミノサイクリン群で少なかったが、これ以外の因子は両群に差はなかった。 6ヵ月以内にミノサイクリン群の23例、プラセボ群の41例が多発性硬化症を発症した。6ヵ月以内の多発性硬化症への進展の未補正リスクは、ミノサイクリン群が33.4%と、プラセボ群の61.0%に比べ有意に低かった(群間差:27.6%、95%信頼区間[CI]:11.4~43.9、p=0.001)。ベースラインの増強病巣数で補正すると、進展リスクの差は18.5%(95%CI:3.7~33.3)と小さくなったが、有意な差は保持されていた(p=0.01)。 副次評価項目である24ヵ月時の進展の未補正リスクには、有意差は認めなかった(ミノサイクリン群:55.3% vs.プラセボ群:72.0%、群間差:16.7%、95%CI:-0.6~34.0、p=0.06)。 6ヵ月時のMRI関連の副次評価項目は3項目とも、未補正ではミノサイクリン群がプラセボ群よりも有意に良好であり、補正後も有意差は保持された。これに対し、24ヵ月時は、未補正ではミノサイクリン群がいずれも有意に良好であったが、補正後は有意な差はなくなった。 有害事象の頻度は、ミノサイクリン群がプラセボ群に比べて高かった(86.1 vs.61.4%、p=0.001)。とくに発疹(15.3 vs.2.9%、p=0.01)、歯の変色(8.3 vs.0%、p=0.01)、めまい(13.9 vs.1.4%、p=0.005)には有意な差がみられた。4例(両群2例ずつ)に臨床検査で検出された一過性のGrade 3/4の有害事象が、4例(ミノサイクリン群:1例、プラセボ群:3例)に5件の重篤な有害事象が認められた。 著者は、「これらの結果は、事前に規定された6ヵ月時の未補正リスクの25%の絶対差を満たし、補正すると差は縮小したものの有意差は保持されており、MRI関連の転帰も良好であったが、この差は24ヵ月時までは持続しなかった」とまとめ、「さらなる試験による検証が求められる」と指摘している。

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妊娠中の抗うつ薬服用と児のADHDの関連/BMJ

 母親の抗うつ薬服用と子供の注意欠如・多動症(ADHD)との関連について、住民ベースのコホート研究による知見が示された。中国・香港大学のKenneth K C Man氏らによる報告で、子供のADHDリスクは、母親が抗うつ薬を妊娠中服用していた群と妊娠前まで服用していた群で同程度であった。一方で、抗うつ薬服用の有無にかかわらず、精神障害を有する母親の子供はADHDリスクが高かったという。著者は、既報では家族のリスク因子を補正しておらず過大評価されている可能性を指摘し、「抗うつ薬服用とADHDの因果関係を決して否定はしないが、あるとしても関連の強さは既報よりも小さいものと思われる」とまとめている。BMJ誌2017年5月31日号掲載の報告。香港の住民ベースコホート研究で関連を評価 検討は、香港住民をベースとした電子医療カルテClinical Data Analysis and Reporting Systemのデータを用いて行われた。2001年1月~2009年12月に香港の公立病院で生まれた子供19万618例を2015年12月まで追跡し、母親の妊娠中の抗うつ薬服用と6~14歳児のADHDの関連についてハザード比(HR)を求めて評価した。 平均追跡期間は9.3年(範囲:7.4~11.0年)であった。母親の出産時平均年齢は31.2歳(SD 5.1)。母親が精神障害など交絡因子で補正後は関連性が低下 対象19万618例のうち、妊娠中に母親が抗うつ薬を服用していたのは1,252例であり、ADHDの診断または治療を受けた子供は5,659例(3.0%)であった。 妊娠中の抗うつ薬服用群の粗HRは、非服用群との比較で2.26(p<0.01)であった。しかし、潜在的交絡因子(母親が精神障害、または他の抗精神病薬を服用など)で補正後は、1.39(95%信頼区間[CI]:1.07~1.82、p=0.01)に低下した。 同様の関連結果は、母親が抗うつ薬を妊娠前まで服用していた群と服用歴がない群で比較した場合にもみられた(1.76、1.36~2.30、p<0.01)。 一方、母親の抗うつ薬服用歴がない場合でも、ADHDリスクは、母親が精神障害を有する子供のほうが、精神障害を有さない母親の子供との比較において有意に高かった(1.84、1.54~2.18、p<0.01)。 感度解析の結果もすべて同様の結果が示された。 また、兄弟姉妹を適合した分析において、抗うつ薬の妊娠中の曝露群と非曝露群にADHDリスクの有意な差はみられなかった(0.54、0.17~1.74、p=0.30)。 結果について著者は、「抗うつ薬の出生前使用と出生後ADHDリスクとの関連について、少なくとも一部は、交絡因子として含まれる抗うつ薬の適応によって説明可能であることを示唆するものであった」と述べている。

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ニボルマブ、進行肝細胞がんへの挑戦/ASCO2017

 進行肝細胞がん(HCC)における1次治療薬の選択肢はソラフェニブ(商品名:ネクサバール)だけである。本年(2017年)レゴラフェニブ(商品名:スチバーガ)が2次治療薬として米国食品医薬品局(FDA)に承認されたが、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブはこれらの患者集団における新たな選択肢となるのだろうか。 Checkmate040試験は進行HCC患者に対するニボルマブ(製品名:オプジーボ)の第I/II相試験。シカゴにて開催された米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で、米国Providence Cancer CenterのTodd S. Crocenzi氏らが発表した。 Checkmate040試験ではニボルマブ投与患者を、ソラフェニブ非治療群とソラフェニブ治療群に分け、さらに各群を用量漸増アーム(ニボルマブ投与量0.1~10mg/kg)と拡大アーム(ニボルマブ投与量3mg/kg)に分けて効果と安全性を評価している。今学会ではソラフェニブ非治療群と治療群の生存と効果の持続性の成績が発表された。主要評価項目は用量漸増アームでは安全性と忍容性、拡大アームでは奏効率(ORR)。副次的評価項目はORR(用量漸増アームのみ)、病勢コントロール率(DCR)、初回奏効までの期間、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)であった。 合計264例の患者が登録された。Child-Pughスコアは全例が5以上。多くの患者が重度の治療を受け、肝外転移を有していた。 盲検下独立中央判定(BICR)によるORRは、ソラフェニブ非治療群で20%、ソラフェニブ治療群の漸増アームで19%、同群の拡大アームでは14%であった。DCRは、ソラフェニブ非治療群で54%、ソラフェニブ治療群で55%であった。効果の発現は早く、客観的奏効を達成した患者のうち、ソラフェニブ非治療群の56%、ソラフェニブ治療群の64%が3ヵ月以内に奏効した。DORはソラフェニブ非治療群で17ヵ月、ソラフェニブ治療群では19ヵ月。OSはソラフェニブ非治療群で28.6ヵ月、ソラフェニブ治療群漸増アームでは15.0ヵ月、拡大アームでは15.6ヵ月であった。ニボルマブの効果は、ソラフェニブ治療経験の有無、HCCの病因またはPD-L1発現の有無とは無関係であった。また、ニボルマブの安全性プロファイルは、いずれの群でも既知のものであった。 現在、1次治療でのニボルマブとソラフェニブの第III相比較試験CheckMate459試験が進行中である。■参考 ASCO2017 Abstract Checkmate040試験(Clinical Trials.gov)■関連記事肝細胞がんに対するニボルマブの優先審査を受理:FDA

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体部白癬

【皮膚疾患】体部白癬◆症状胴体や手足に生じる境界鮮明な丸い紅斑で、水ぶくれを伴うことがあります。かゆみが強く、足白癬や爪白癬も併発していることが多いです。◆原因白癬菌による感染で起きます。ステロイド外用薬の誤用で悪化していることもあり、注意が必要です。◆治療と予防・抗真菌薬の外用薬で治療します。・ぺットから感染することもありますので、ペットの皮膚の状態にも目を配り予防しましょう。●一言アドバイス足爪白癬もある場合、再発する傾向が強いので、全部が治るまで治療を中断しないようにしましょう。監修:ふくろ皮膚科クリニック 院長Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.袋 秀平氏

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60歳未満の降圧薬服用者、血圧高いと認知症リスク高い

 血圧と認知症の関係については相反する疫学研究結果が報告されている。今回、ノルウェー科学技術大学HUNT研究センターのJessica Mira Gabin氏らが、認知症診断の最大27年前まで(平均17.6年)の血圧と認知症について調査したところ、60歳以上では収縮期血圧と認知症が逆相関を示したが、60歳未満の降圧薬使用者では収縮期血圧や脈圧の上昇とアルツハイマー病発症が関連していた。Alzheimer's research & therapy誌2017年5月31日号に掲載。 本研究では、ノルウェーのNord-Trondelag郡における1995~2011年の認知症発症データを収集し、専門家パネルが診断を検証した。さらに、このデータを被験者の個人識別番号を用いて、1984~86年(HUNT1)および1995~97年(HUNT2)に実施された大規模な住民健康調査であるNord-Trondelag Health Study(HUNT研究)データと結び付けた。HUNT研究の参加者2万4,638人のうち579人がアルツハイマー病、またはアルツハイマー病と血管性の混合型認知症、または血管性認知症と診断された。 主な結果は以下のとおり。・60歳以上においては、年齢、性別、教育およびその他の関連する共変量を調整後、認知症全体、アルツハイマー病/血管性の混合型認知症、アルツハイマー病では収縮期血圧との逆相関が一貫して認められたが、血管性認知症では認められなかった。・この結果は、降圧薬の使用にかかわらず、HUNT1とHUNT2の両方で観察された。・60歳未満の降圧薬服用者では、収縮期血圧および脈圧とアルツハイマー病との間に有害な関連がみられた。

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EGFR変異陽性肺がんの再発リスクを40%減、ゲフィチニブ補助療法/ASCO2017

 非小細胞肺がん(NSCLC)と診断された患者の20~25%は手術適応である。プラチナベースの術後補助化学療法は、Stage II~IIIA非小細胞肺がん(NSCLC)の患者のスタンダードとなっている。一方、EGFR-TKIは進行EGFR変異陽性NSCLC1次治療の標準である。しかし、EGFR-TKIによる術後補助化学療法については、過去のBR19やRADIANT試験からも利点は証明されていない。 EGFR変異陽性のNSCLC患者の術後補助療法として、化学療法をEGFR-TKIで代替できないか。そこでEGFR変異陽性NSCLCの術後補助療法において、ゲフィチニブと化学療法(ビノレルビン+シスプラチン)を比較する初めての無作為化第III相試験となるADJUVANT試験が行われた。中国Guangdong General HospitalのYi-Long Wu氏が、その結果を米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)にて発表した。 同試験の対象は、完全切除後のStage II~IIIA(TNM分類第7版N1-N2)のEGFR変異陽性NSCLC患者。登録された患者は、無作為にゲフィチニブ(250mg×1/日)24ヵ月間投与群と化学療法群(ビノレルビン25mg/m2を1日目と8日目に投与+シスプラチン75mg/m2を1日目に投与)3週ごと4サイクル投与群に、1:1に割り付けられた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)。DFSの改善は40%以上とした。 結果、2011年9月19日~2014年4月24日に222例の患者が登録された(ゲフィチニブ群、化学療法群ともに111例)。治療期間の中央値は36.5ヵ月で、ゲフィチニブ群の投与期間は18ヵ月以上が最も多く67.9%、化学療法群は4サイクルが最も多く83.0%を占めた。 主要評価項目であるDFSは、ゲフィチニブ群で28.7ヵ月(24.9~32.5ヵ月)、化学療法群で18.0ヵ月(13.6~22.3ヵ月)と、ゲフィチニブ群で有意に長く(HR:0.60、95%CI:0.42~0.87、p=0.005)、その差は10.7ヵ月であった。3年DFS(3yDFS)はゲフィチニブ群の34.0%に対し、化学療法群は27.0%で、ゲフィチニブ群で有意に高かった(p=0.013)。全生存期間(OS)は未達成。 Grade3以上の有害事象の発現率は、ゲフィチニブ群で12.3%、化学療法群は48.3%と、ゲフィチニブ群で有意に少なかった(p<0.001)。健康関連QOLについては、Total FACT-L、LCSS、TOIの3種の評価ともゲフィチニブ群で有意に優れていた。 EGFR変異陽性のStage II~IIIA(N1-N2)NSCLC切除可能患者に対する、ゲフィチニブの術後補助療法は、これらの患者集団における重要な選択肢であると考えられるべきである。 DiscussantであるVU University Medical CenterのSuresh Senan氏は、「DFSの10.7ヵ月の延長は注目すべきである。今後は、どのような患者にベネフィットがもたらされるのかなど、より詳細に研究していくべきである。また、3yDFSの34%という結果は満足できるものではなく、対象症例などに注目してさらなる改善を図るべきであろう」と述べた。■参考 ADJUVANT試験(NCT01405079) BR19試験 RADIANT試験

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大規模個別患者データに基づくBayes流メタ解析が“非ステロイド性消炎鎮痛薬(COX-2を含む)が総じて急性心筋梗塞発症リスクを増加させる”と報告(解説:島田 俊夫 氏)-685

 本論文では、急性心筋梗塞(AMI)発症の既往歴を有する6万1,460例を含む44万6,763例(38万5,303例はコントロール)の信頼できる大規模個別データ(カナダおよび欧州)を対象にAMIを主な評価項目とし、COX-2選択的阻害薬と従来型NSAIDsの使用と非使用者でAMI発症リスク差を検証するためにBayes流メタ解析1,2)が行われた。 最初1週目(1~7日)、1ヵ月未満、1ヵ月以上の期間でのNSAIDs投与が、いずれの期間においてもAMI発症リスクを有意に増加させた。最初1週目のNSAIDs使用によるAMI発症リスクの事後確率(オッズ比>1.0の事後確率)は、セレコキシブで92%、イブプロフェンで97%、 ジクロフェナク、ナプロキセンおよびrofecoxib(心血管系の副作用のために2004年に米国で販売中止、日本では未承認)でそれぞれ99%であった。対応する調整オッズ比(95%信頼区間)は、セレコキシブで1.24(0.91~1.82)、イブプロフェンで1.48(1.00~2.26)、ジクロフェナクで1.50(1.06~2.04)、ナプロキセンで1.53(1.07~2.33)、 rofecoxibで1.58(1.07~2.17)と高い発症リスクを示し、NSAIDsの高用量投与でさらにリスクが増加することも明らかになった。 1ヵ月を超える長期に渡る投与でのAMI発症リスクは、1ヵ月未満の投与と比較して、そのリスクを上回ることはなかった。服用中止による30日未満では、AMI発症リスクはわずかに低下するにとどまったが、その後1年間でAMI発症リスクはほぼ前の状態に復した。コメント: NSAIDs服用はAMI発症リスクを増加させると言われていたが、大規模症例の確保が難しい状況もあり信頼に足る大規模研究の実施は困難で、議論の余地が残っていた。従来のNSAIDsとCOX-2を含めた経口非ステロイド性消炎鎮痛薬のAMI発症リスク評価のために、ビッグデータを用いた個別データBayes流メタ解析手法3)を使用することで、症例数の不足やその他の問題点の解決に道が開かれた。 本研究によりナプロキセンを含むすべてのNSAIDsが、AMI発症リスクの増加と密接に関係していることが明らかになった。セレコキシブ(COX-2)のAMI発症リスクは従来のNSAIDsとほぼ同等かやや少ない程度であり、 rofecoxib(COX-2)よりは有意に低かった。AMI発症リスクはNSAIDsの最初の1ヵ月の使用期間中で、しかも高用量投与においてAMI発症リスクが最も高くなった。 要するに、NSAIDsの種類によりAMI発症リスクに多少の差があるけれども、COX-2および従来型NSAIDsともAMI発症リスクは五十歩百歩で、総じて気安く使用することへの警鐘として本論文の結果を真摯に受け止めることは重要である。今後、本論文で使用されたビッグデータとしての個別患者データに基づくBayes流メタ解析は、大規模集団形成が難しい研究に使用される有望な解析モデルになるかもしれない。■参考Kalil AC, et al. Intensive Care Med. 2011;37:420-429.Shimada T, et al. Rinsyo Byori. 2016;64:133-141.Riley RD, et al. BMJ. 2010;340:c221.

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第10回 インスリン療法のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第10回】インスリン療法のキホン―インスリン治療の開始はどのように判断したらよいでしょうか。内服から切り替える場合の基準、製剤選択についても教えてください。 インスリン治療の適応には、インスリン依存状態(1型糖尿病)や高血糖性の昏睡を来した状態(糖尿病ケトアシドーシスなど)、重度の肝・腎障害の合併、糖尿病合併妊婦などの「絶対的適応」と、インスリン非依存状態(2型糖尿病)が対象の「相対的適応」があります。2型糖尿病の場合、「著明な高血糖(空腹時血糖値250mg/dL以上、随時血糖値350mg/dL)を認める」「経口薬のみでは良好な血糖コントロールが得られない」「やせ型で栄養状態が低下」「糖毒性を積極的に解除する必要がある」などが相対的な適応とされています1)(絶対的適応の場合は、専門医に相談)。 インスリン以外で治療中の2型糖尿病患者さんで、たとえば高用量のSU薬に加え、作用機序の異なる薬剤を併用しているにも関わらず、空腹時血糖値が250mg/dLを超える状態が数ヵ月続く場合は、インスリン治療を検討します。その際、内因性インスリンを評価するために、空腹時血中Cペプチドもみるとよいでしょう。朝食前血中Cペプチドの正常値は1.0~3.5ng/mL(0.5ng/mL以下でインスリン依存状態)で、低値であればあるほど、内因性インスリン分泌が低下しており、インスリン療法が必要です。空腹時血中Cペプチドが0.8ng/mL以下であれば、インスリン治療適応と考えてよいと思います。 インスリン導入にあたって、入院と外来の2つの方法があり、インスリンの絶対的適応では入院が望ましく、また、2型糖尿病でも可能であれば入院がよいですが、外来での導入も可能です。導入方法には、内服薬からの切り替えと、現在服用している経口薬を続けながらインスリンを併用するBOT(Basal Supported Oral Therapy)があります。 健康な成人のインスリン分泌は、1日中少しずつ分泌される「基礎分泌(Basal)」と食後の血糖上昇に合わせて瞬時に分泌される「追加分泌(Bolus)」からなります。インスリン治療では、健康な成人にできるだけ近いインスリン分泌パターンを作り、1日の血糖値の動きを正常域内に収めることが求められるため、基礎分泌と追加分泌を補う必要があります。そのため、切り替えの場合は、基礎分泌を補う目的で「中間型」もしくは「持効型」のインスリンを1日1~2回、追加分泌を補う目的で食事毎に「速効型」もしくは「超速効型」のインスリンを注射する「Basal-Bolus療法」が基本です。 経口薬にインスリンを上乗せするBOTでは、作用発現が遅く、ほぼ1日にわたり持続的な作用を示し、基礎分泌を補う「持効型溶解インスリン製剤」を追加します。持効型溶解インスリン製剤は主に空腹時血糖値を低下させるので、併用する(継続する)経口薬は食後の血糖低下効果を持つ薬剤がよいです。インスリン製剤で外因性インスリンを補うことで、疲弊している膵β細胞を休ませ、糖毒性を解除することが期待できます。糖毒性が解除されると、既存の経口薬の効果が増強されることがあるので、血糖低下状況をみながら、インスリンを中止し、経口薬のみに戻すことも可能です。―外来でインスリンを導入する方法と注意点について教えてください。 外来でインスリンを導入する場合、血糖自己測定(SMBG)と頻回の通院(週1回)が必要になります。SMBGは、インスリン治療を行う2型糖尿病でも保険が適用されますが、1日2回までとなっていますので※、その範囲で測定する場合は、1回は朝食前空腹時血糖値に、残り1回は昼食前血糖値あるいは夕食前血糖値と交互にするとよいでしょう。朝食前血糖値が高いと、下駄を履いたまま1日が始まり、全体的に血糖値が底上げされた状態になります。まずは朝食前血糖値をしっかり下げること、そして、そこが落ち着いたら食後高血糖をコントロールしましょう。※血糖自己測定に基づく指導を行った場合、インスリン自己注射指導管理料に加算して、血糖自己測定を1日に1回、2回または3回以上行っているものに対して、それぞれ400点、580点または860点を加算することとされている。 その際、注意することは、朝食前空腹時血糖値を“下げすぎない”ことです。インスリン治療の問題に「体重増加」がありますが、下げすぎると強い空腹感から食べてしまい、体重増加を来します。また、もう1つインスリン治療で問題になるのが「低血糖」です。朝食前空腹時血糖値を下げすぎてしまうと、その前の夜間に低血糖を起こしてしまう可能性があります。強化療法による2型糖尿病患者さんの心血管障害の発症抑制を検討したものの、死亡率が予想を上回ったために早期終了となった「ACCORD:Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes」では、強化療法による厳格な血糖コントロールによって生じた重症低血糖が、死亡リスク増大と関連したことが示されました2)。また、夜間低血糖については、不整脈との関連も示唆されています3)。朝食前血糖値は120~130mg/dLを目指すようにし、100mg/dLを下回らないようにしましょう。さらに、血糖コントロール長期不良例では、急激に血糖を低下させると網膜症や神経障害が悪化する可能性があるので1)、徐々に目標値に近づけましょう。―インスリンの初回投与量の設定について教えてください。 インスリン導入の際には、入院か外来で適切な投与量(単位)を決めますが、開始時の投与量は体重1kg当たり1日0.2~0.3単位(8~12単位)、体重1kg当たり1日0.4~0.5単位(20~30単位)まで増量することが多いとされています1)。単位の変更は、「責任インスリン(その血糖値に最も影響を及ぼしているインスリン)」で決めます。SMBGを同時に開始しますが、Basal-Bolus療法を行っている場合、たとえば昼食前の血糖値が高ければ、その血糖値に影響を及ぼしている朝のBolusを見直す、夕食前の血糖値が高ければ、その血糖値に影響を及ぼしている昼のBolusを見直す、また、朝食前の血糖値が高ければ、朝食前血糖値に影響を及ぼすBasalを見直します。その患者さんに適したインスリン量を決めるにあたり、SMBGの記録は大変重要です。―独居の高齢患者さんや認知機能低下のある患者さんに対するインスリン導入に悩みます。どのように判断したらよいでしょうか? 独居の高齢者でも、認知機能に問題がなく自分で管理できればインスリン治療は可能ですし、認知機能が低下していても、同居家族や補助者がきちんと管理できれば問題ありません。 インスリン治療で最も怖いのは低血糖です。昏睡に至ることもあり、前述のように、心血管疾患との関連も示されています。インスリン導入にあたり、決められた量を決められた時間に打つことができるかどうかを確認することも大切ですが、低血糖管理、とくに低血糖を予防することができるかどうかを見極めることが重要です。インスリン治療を行っている場合、まず、食事を1日3回、必要十分量とる必要があります。とくに高齢者の場合、インスリンを投与し、いざ食事しようとしたら、いつもの量が食べられなかった、ということがしばしばあります。―シックデイのインスリン投与はどのようにしたらよいでしょうか。インスリンの種類による対応の違いと患者さんへの説明の仕方を教えてください。 シックデイで食事がとれない場合は、まず、食事を工夫してできるだけ普段と同じカロリーの食事がとれるようにし、インスリン注射はやめないようにします。どうしても食事がとれないときは、医師や看護師、薬剤師などに相談してもらいますが、その際も、基礎分泌を補うBasalは食事とは関係がないので、中止しないようにします。SMBGもやめないようにしてもらいます。また、できるだけ水分摂取を心がけてもらい、吐き気や嘔吐のために水分もとることができないときは連絡してもらいます。―心理的抵抗がある患者さんにインスリンを導入する場合は、どのように指導したらよいでしょうか? 近年のインスリン製剤の開発や注射器具の改良、簡便なSMBG機器の出現により、患者さんの負担を最小限にしたインスリン治療ができるようになっています。2型糖尿病患者さんにも、幅広く受け入れてもらえるようになりました。しかしそれでもまだ、「インスリン(注射)」と聞くと「最後の治療」と感じてしまう患者さんもいます。そのような患者さんには、「決して最後の治療ではないこと」「インスリンにより糖毒性が解除されれば、また経口薬でのコントロールに戻ることができるようになる」などを説明し、心理的障壁を取り除くようにします。「自分で打つのはいやだけど、医療従事者が打つなら」という患者さんもいます。そのような方で、たとえばリタイアされていて時間があるような場合は、1日1回、持効型溶解インスリン製剤を打ちに来院してもらうという方法をとるのもよいでしょう。また、注射に慣れていただくために、週1回のGLP1-受容体作動薬を来院して打つ、あるいはご自分で打つことから始め、慣れてからインスリンを導入するという手もあります。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2016-2017. 文光堂;2016.2)Bonds DE, et al. BMJ. 2010;340:b4909.3)Chow E, et al. Diabetes. 2014;63:1738-1747.

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MTXによる表皮壊死、初期徴候と予後因子は

 メトトレキサート(MTX)誘発性表皮壊死症(Methotrexate-induced epidermal necrosis:MEN)は、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)に類似した、まれな、しかし致命的な皮膚反応である。台湾・国立陽明大学のTing-Jui Chen氏らは、MENの臨床病理、リスク因子および予後因子について調査し、MENはSJS/TENとは異なる臨床病理的特徴を示すことを明らかにした。著者は、「ロイコボリンが有効な場合があるので、初期徴候と予後因子を認識しておくことが重要である」と述べたうえで、「MENのリスクを低下させるためには、高リスク患者へのMTX投与を避け、MTXの投与量は葉酸を併用しながら漸増していかなければならない」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年5月10日号掲載の報告。 研究グループは、MENを呈した24例ならびに対照150例を登録し、患者背景、病理学および血漿中MTX濃度について解析した。 主な結果は以下のとおり。・MEN患者は、広範囲な皮膚壊死(総体表面積の平均33.2%)を呈し、標的病変はなく、病理組織学的にはケラチノサイトの変性を示した。・MENの初期徴候は、痛みを伴う皮膚びらん、口腔の潰瘍、白血球減少および血小板減少であった。・79.2%の患者がロイコボリン治療を受けたが、死亡率は16.7%に上った。・MENのリスク因子は、高齢(>60歳)、慢性腎疾患、および葉酸を併用せずにMTXの投与を高用量から開始することであった。・腎機能不全によりMTXのクリアランスが遅延した。・重篤な腎疾患および白血球減少は、MENの予後不良の予測因子であったが、TEN重症度スコアはいずれもMENの死亡率とは関係していなかった。

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新たなアンチセンス薬、動脈硬化進展を抑制/NEJM

 マウスAngptl3遺伝子を標的とするアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)は、マウスのアテローム性動脈硬化の進展を抑制し、アテローム生成性リポ蛋白を低下させることが、米国・Ionis Pharmaceuticals社のMark J. Graham氏らの検討で示された。ASOの第I相試験では、ヒトANGPTL3遺伝子を標的とする戦略の有用性を示唆する知見が得られた。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年5月24日号に掲載された。疫学研究やゲノムワイド関連分析により、アンジオポエチン様3をコードするANGPTL3遺伝子の機能喪失型変異は、血漿リポ蛋白の低下と関連することが示されている。開発中のIONIS-ANGPTL3-LRxは、肝のANGPTL3 mRNAを標的とする第2世代リガンド結合アンチセンス薬(GalNAc結合ASO薬)である。治療標的の可能性を前臨床と無作為化第I相試験で評価 研究グループは、心血管疾患のリスク低減における、循環代謝性疾患の治療標的としてのANGPTL3遺伝子の意義を評価するために、前臨床試験と二重盲検プラセボ対照無作為化第I相試験を行った(Ionis Pharmaceuticals社の助成による)。 前臨床試験では、マウスを用いて、血漿脂質値、トリグリセライド(TG)・クリアランス、肝TG含量、インスリン感受性、アテローム性動脈硬化に及ぼすASOの効果を評価した。 引き続き、第I相試験で健常成人ボランティア44例を、ASOの単回皮下投与(20、40、80mg)、6回皮下投与(10、20、40、60mg/週×6週)、それぞれのプラセボ投与群にランダムに割り付け、安全性、副作用、薬物動態、薬力学の評価を行い、脂質値、リポ蛋白の変動について検討した。用量依存的にANGPTL3蛋白、脂質値が低下 ASO投与マウスでは、用量依存的に肝臓でのAngptl3 mRNA、Angptl3蛋白、TG、LDLコレステロール(LDL-C)が低下するとともに、肝TG含量とアテローム性動脈硬化の進展が抑制され、インスリン感受性が増大した。 ヒトの単回投与(被験薬群:9例、プラセボ群:3例)の検討では、15日時のANGPTL3蛋白、TG、VLDL-C、非HDL-C、総コレステロール(TC)の値が低下するとともに、ベースラインからの平均低下率が増大し、用量依存性の傾向が認められた。これらの結果には、有意な差はみられなかったが、サンプル数が少ないのが原因と推察された。 6回投与(被験薬群:24例、プラセボ群:8例)の検討では、43日(最終投与から1週後)時のANGPTL3蛋白の発現が、すべての用量でプラセボ群に比べ有意に抑制された(すべて、p<0.01)。また、ANGPTL3蛋白のベースラインから43日時の平均低下率は、10mg群が46.6%(プラセボ群との比較で、p=0.001)、20mg群が72.5%(p=0.003)、40mg群が81.3%(p=0.001)、60mg群は84.5%(p=0.001)と、用量依存的に増大した。 さらに、6回投与では、TG(各用量の43日時の平均低下率:33.2、63.1、53.8、50.4%)、LDL-C(1.3、4.3、25.4、32.9%)、VLDL-C(27.9、60.0、48.5、48.7%)、非HDL-C(10.0、17.6、31.1、36.6%)、アポリポ蛋白B(3.4、13.3、25.7、22.2%)、アポリポ蛋白C-III(18.9、57.8、50.7、58.8%)も、全般に高用量で低下率が高く、40mg群と60mg群は、これら6つの項目の低下率がすべてプラセボ群に比べ有意に増大した。 試験期間中に重篤な有害事象は発現しなかった。6回投与の20mg群の1例が5回目投与後にフォローアップできなくなったが、これ以外に投与中止は認めなかった。また、注射部位反応の報告はなく、単回投与では有害事象は発現しなかった。6回投与では、3例に頭痛(プラセボ群の1例を含む)、3例にめまい(プラセボ群の2例を含む)がみられた。

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ホルモン抵抗性乳がんに著明な効果、CDK4/6阻害薬abemaciclib/ASCO2017

 CDK4/6選択的阻害薬abemaciclibのフルベストラントとの併用における忍容性と臨床活性が第III相試験であるMONARCH 2試験で支持された。米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)においてスタンフォード大学のGeorge W. Sledge氏が発表した。 MONARCH 2試験は、ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がんで内分泌療法を受けた女性669例を対象とした第III相二重盲検試験。対象はネオアジュバント/アジュバント内分泌療法で進行した患者、または転移のある乳がんで初回内分泌療法で進行した患者。参加者は、abemaciclib+フルベストラント(A+F)群とプラセボ+フルベストラント(P+F)群に2:1に無作為に割り当てられた。 主要評価項目は、治験担当者評価による無増悪生存期間(PFS)、副次的評価項目は、客観的奏効率(ORR)、その他の有効性および安全性であった。abemaciclib+フルベストラント群のハザード比(HR)は0.703と仮定した。 結果、19.5ヵ月間の追跡期間(中央値)のPFSは、A+F群で16.4ヵ月、P+F群で9.3ヵ月と、A+F群で有意に改善した(HR:0.553、95%CI:0.449~0.681、p<0.0000001)。また、測定可能な疾患を有する患者のORRは、A+F群で48.1%、P+F群では21.3%と、A+F群で2倍以上の結果となった。A+F群で多く見られた治療関連有害事象は、下痢86.4%(P+F群24.7%)、好中球減少46.0%(P+F群4.0%)、悪心45.1%(P+F群22.9%)、疲労感39.9%(P+F群26.9%)であった。Sledge氏は、下痢は早期に起こり(典型的には初回の治療サイクルで発現)、その強度と頻度はabemaciclibの開始用量と強く関連していると解説した。 DiscussantであるIngrid A. Mayer氏(Vanderbilt-Ingram Cancer Center and Vanderbilt University Medical Center)は、MONARCH 2試験におけるPFSと最近公表されたPALOMA-3試験(palbociclib+フルベストラントまたはプラセボの試験)の結果との違いについて触れた。HRが同等であるにもかかわらずPALOMA-3試験のPFSがMONARCH 2試験より短い(palbociclib群9.5ヵ月、プラセボ群4.6ヵ月)のは、MONARCH 2試験の被験者の適格基準は化学療法未経験であるが、PALOMA-3試験には化学療法経験者が含まれていたことによるものであると述べた。この試験結果は、学会発表と同時にJournal of Clinical Oncology誌で公開された。■参考ASCO2017 AbstractSledge GW, et al. J Clin Oncol.2017 Jun 3.[Epub ahead of print]MONARCH 2試験(Clinical Trial.gov)

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慢性期統合失調症、陰性症状に有効な補助療法

 統合失調症の陰性症状を緩和する際、リスペリドンの補助薬としてのホスホジエステラーゼ3選択的阻害剤シロスタゾールの有効性、安全性について、イラン・Kurdistan University of Medical SciencesのFarzin Rezaei氏らが評価を行った。Human psychopharmacology誌オンライン版2017年4月18日号の報告。 対象は、慢性期統合失調症患者84例。リスペリドンのアジュバント療法としてシロスタゾール(50mg、1日2回)群とプラセボ群に無作為に割り付け、8週間投与を行った。ベースラインおよび2、4、6、8週目にPANSSを用いて評価した。主要アウトカム指標は、PANSS陰性尺度スコアの改善とし、シロスタゾール群の有効性をプラセボ群と比較した。主な結果は以下のとおり。・一般線形モデル反復測定では、PANSS陰性尺度スコア(p<0.001)とPANSS総スコア(p=0.006)において、時間×治療相互作用の有意な改善効果を示したが、PANSS陽性尺度スコア(p=0.37)、PANSS総合精神病理尺度スコア(p=0.06)では、有意な効果は認められなかった。・有害事象の頻度は、両群間で有意な差は認められなかった。・重篤な有害事象は、観察されなかった。 著者らは「リスペリドンの補助薬としてシロスタゾールを用いた8週間の治療は、統合失調症患者において良好な安全性と有効性プロファイルを示した」としている。■関連記事 各抗精神病薬、賦活系と鎮静系を評価 初発統合失調症、陰性症状の経過と予測因子 統合失調症に対する増強療法、評価が定まっている薬剤はこれだけ

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抗精神病薬使用は長期死亡リスクに悪影響なのか

 統合失調症患者は、他の精神疾患患者よりも死亡リスクが高い。これまでの研究では、抗精神病薬治療の長期死亡リスクとの関連については確定的ではなかった。オランダ・Academic Medical CenterのJ. Vermeulen氏らは、統合失調症患者の長期死亡率と抗精神病薬曝露との関連について、文献のシステマティックレビューとメタ解析を実施した。Psychological medicine誌オンライン版2017年4月11日号の報告。 いずれかの抗精神病薬を用いた統合失調症患者の長期死亡率を明らかにし、抗精神病薬を使用していない患者との比較を行った。また、累積曝露と死亡率との関連を調査し、死因を評価した。死亡率と抗精神病薬の使用に関して1年以上のフォローアップ期間を設けた研究を、EMBASE、MEDLINE、PsycINFOのデータベースよりシステマティックに検索した。主な結果は以下のとおり。・基準を満たした研究は、20件であった。・これらの研究では、患者数13万3,929例(82万1,347例年)のうち、2万3,353例の死亡が報告されていた。・死亡率は、研究ごとに大きく異なっていた。・4つの研究のサブグループにおけるメタ解析では、フォローアップ期間中に抗精神病薬を使用していない統合失調症患者で、長期死亡リスクの一貫した増加傾向が認められた。・抗精神病薬へのあらゆる曝露を支持する、プールされたリスク比は0.57(LL:0.46、UL:0.76、p<0.001)であった。・統計学的異質性が高かった(Q:39.31、I2:92.37%、p<0.001)。 著者らは「抗精神病薬を使用していない統合失調症患者の死亡リスク増加の理由は、さらなる研究が必要である。今後の検証研究では、抗精神病薬曝露の一定基準、死因の分類が必要とされる」としている。■関連記事 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか 抗精神病薬の高用量投与は悪か 統合失調症と気分障害の死亡率、高いのは

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