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HTLV-1関連脊髄症〔HAM:HTLV-1-associated myelopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1-associated myelopathy:HAM)は、成人T細胞白血病・リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma:ATL)の原因ウイルスであるヒトTリンパ球向性ウイルス1型(human T-lymphotropic virus type 1:HTLV-1)の感染者の一部に発症する、進行性の脊髄障害を特徴とする炎症性神経疾患である。有効な治療法に乏しく、きわめて深刻な難治性希少疾病であり、国の指定難病に認定されている。■ 疫学HTLV-1の感染者は全国で約100万人存在する。多くの感染者は生涯にわたり無症候で過ごすが(無症候性キャリア)、感染者の約5%は生命予後不良のATLを発症し、約0.3%はHAMを発症する。HAMの患者数は国内で約3,000人と推定されており、近年は関東などの大都市圏で患者数が増加している。発症は中年以降(40代)が多いが、10代など若年発症もあり、男女比は1:3と女性に多い。HTLV-1の感染経路は、母乳を介する母子感染と、輸血、臓器移植、性交渉による水平感染が知られているが、1986年より献血時の抗HTLV-1抗体のスクリーニングが開始され、以後、輸血後感染による発症はない。臓器移植で感染すると高率にHAMを発症する。■ 病因HAMは、HTLV-1感染T細胞が脊髄に遊走し、そこで感染T細胞に対して惹起された炎症が慢性持続的に脊髄を傷害し、脊髄麻痺を引き起こすと考えられており、近年、病態の詳細が徐々に明らかになっている。HAM患者では健常キャリアに比べ、末梢血液中のプロウイルス量、すなわちHTLV-1感染細胞数が優位に多く、また感染細胞に反応するHTLV-1特異的細胞傷害性T細胞や抗体の量も異常に増加しており、ウイルスに対する免疫応答が過剰に亢進している1)。さらに、脊髄病変局所で一部の炎症性サイトカインやケモカインの産生が非常に高まっており2)、とくにHAM患者髄液で高値を示すCXCL10というケモカインが脊髄炎症の慢性化に重要な役割を果たしており3)、脊髄炎症のバイオマーカーとしても注目されている。■ 症状臨床症状の中核は進行性の痙性対麻痺で、両下肢の痙性と筋力低下による歩行障害を示す。初期症状は、歩行の違和感、足のしびれ、つっぱり感、転びやすいなどであるが、多くは進行し、杖歩行、さらには車椅子が必要となり、重症例では下肢の完全麻痺や体幹の筋力低下により寝たきりになる場合もある。下半身の触覚や温痛覚の低下、しびれ、疼痛などの感覚障害は約6割に認められる4)。自律神経症状は高率にみられ、とくに排尿困難、頻尿、便秘などの膀胱直腸障害は病初期より出現し、初めに泌尿器科を受診するケースもある。また、起立性低血圧や下半身の発汗障害、インポテンツがしばしばみられる4)。神経学的診察では、両下肢の深部腱反射の亢進や、バビンスキー徴候などの病的反射がみられる4)。■ 分類HAMは病気の進行の程度により、大きく3つの病型に分類される(図)。1)急速進行例発症早期に歩行障害が進行し、発症から2年以内に片手杖歩行レベルとなる症例は、明らかに進行が早く疾患活動性が高い。納の運動障害重症度(表)のレベルが数ヵ月単位、時には数週間単位で悪化する。急速進行例では、髄液検査で細胞数や蛋白濃度が高いことが多く、ネオプテリン濃度、CXCL10濃度もきわめて高い。とくに発症早期の急速進行例は予後不良例が多い。2)緩徐進行例症状が緩徐に進行する症例は、HAM患者の約7~8割を占める。一般的に納の運動障害重症度のレベルが1段階悪化するのに数年を要するので、臨床的に症状の進行具合を把握するのは容易ではなく、疾患活動性を評価するうえで髄液検査の有用性は高い。髄液検査では、細胞数は正常から軽度増加を示し、ネオプテリン濃度、CXCL10濃度は中等度増加を示す。3)進行停滞例HAMは、発症後長期にわたり症状が進行しないケースや、ある程度の障害レベルに到達した後、症状がほとんど進行しないケースがある。このような症例では、髄液検査でも細胞数は正常範囲で、ネオプテリン濃度、CXCL10濃度も低値~正常範囲である。■ 予後一般的にHAMの経過や予後は、病型により大きく異なる。全国HAM患者登録レジストリ(HAMねっと)による疫学的解析では、歩行障害の進行速度の中央値は、発症から片手杖歩行まで8年、両手杖歩行まで12.5年、歩行不能まで18年であり5)、HAM患者の約7~8割はこのような経過をたどる。また、発症後急速に進行し2年以内に片手杖歩行レベル以上に悪化する患者(急速進行例)は全体の約2割弱存在し、長期予後は明らかに悪い。一方、発症後20年以上経過しても、杖なしで歩行可能な症例もまれであるが存在する(進行停滞例)。また、HAMにはATLの合併例があり、生命予後に大きく影響する。6)2 診断 (検査・鑑別診断も含む)HAMの可能性が考えられる場合、まず血清中の抗HTLV-1抗体の有無についてスクリーニング検査(EIA法またはPA法)を行う。抗体が陽性の場合、必ず確認検査(ラインブロット法:LIA法)で確認し、感染を確定する。感染が確認されたら髄液検査を施行し、髄液の抗HTLV-1抗体が陽性、かつ他のミエロパチーを来す脊髄圧迫病変、脊髄腫瘍、多発性硬化症、視神経脊髄炎などを鑑別したうえで、HAMと確定診断する。髄液検査では細胞数増加(単核球優位)を約3割弱に認めるが、HAMの炎症を把握するには感度が低い。一方、髄液のネオプテリンやCXCL10は多くの患者で増加しており、脊髄炎症レベルおよび疾患活動性を把握するうえで感度が高く有益な検査である7)。血液検査では、HTLV-1プロウイルス量がキャリアに比して高値のことが多い。また、血清中の可溶性IL-2受容体濃度が高いことが多く、末梢レベルでの感染細胞の活性化や免疫応答の亢進を非特異的に反映している。また、白血球の血液像において異常リンパ球を認める場合があり、5%以上認める場合はATLの合併の可能性を考える。MRIでは、発症早期の急速進行性の症例にT2強調で髄内強信号が認められる場合があり、高い疾患活動性を示唆する。慢性期には胸髄の萎縮がしばしば認められる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)疾患活動性に即した治療HAMは、できるだけ発症早期に疾患活動性を判定し、疾患活動性に応じた治療内容を実施することが求められる。現在、HAMの治療はステロイドとインターフェロン(IFN)αが主に使用されているが、治療対象となる基準、投与量、投与期間などに関する指針を集約した「HAM診療ガイドライン2019」が参考となる(日本神経学会のサイトで入手できる)。(1)急速進行例(疾患活動性が高い)発症早期に歩行障害が進行し、2年以内に片手杖歩行レベルとなる症例は、明らかに進行が早く疾患活動性が高い。治療は、メチルプレドニゾロン・パルス療法後にプレドニゾロン内服維持療法が一般的である。とくに発症早期の急速進行例は治療のwindow of opportunityが存在すると考えられ、早期発見・早期治療が強く求められる。(2)緩徐進行例(疾患活動性が中等度)緩徐進行例に対しては、プレドニゾロン内服かIFNαが有効な場合がある。プレドニゾロン3~10mg/日の継続投与で効果を示すことが多いが、疾患活動性の個人差は幅広く、投与量は個別に慎重に判断する。治療前に髄液検査(ネオプテリンやCXCL10)でステロイド治療を検討すべき炎症の存在について確認し、有効性の評価についても髄液検査での把握が望まれる。ステロイドの長期内服に関しては、常に副作用を念頭に置き、症状や髄液所見を参考に、できるだけ減量を検討する。IFNαは、300万単位を28日間連日投与し、その後に週2回の間欠投与が行われるのが一般的である。(3)進行停滞例(疾患活動性が低い)発症後長期にわたり症状が進行しないケースでは、ステロイド治療やIFNα治療の適応に乏しい。リハビリを含めた対症療法が中心となる。2)対症療法いずれの症例においても、継続的なリハビリや排尿・排便障害、疼痛、痙性などへの対症療法はADL維持のために非常に重要であり、他科と連携しながらきめ細かな治療を行う。4 今後の展望HAMの治療は、その病態から(1)感染細胞の制御、(2)脊髄炎症の鎮静化、(3)傷害された脊髄の再生、それぞれに対する治療法開発が必要である。1)HAMに対するロボットスーツHAL(医療用)HAMに対するロボットスーツHAL(医療用)のランダム化比較試験を多施設共同で実施し、良好な結果が得られている。本試験により、HAMに対する保険承認申請がなされている。2)感染細胞や過剰な免疫応答を標的とした新薬開発HAMは、病因である感染細胞の根絶が根本的な治療となり得るがまだ実現していない。HAMにおいて、感染細胞は特徴的な変化を来しており、その特徴を標的とした治療薬の候補が複数存在する。また神経障害を標的とした治療薬の開発も重要である。治験が予定されている薬剤もあり、今後の結果が期待される。3)患者登録レジストリHAMは希少疾病であるため、患者の実態把握や治験などに必要な症例の確保が困難であり、それが病態解明や治療法開発が進展しない大きな要因になっている。患者会の協力を得て、2012年3月からHAM患者登録レジストリ(HAMねっと)を構築し、2022年2月時点で、約630名の患者が登録している。これにより、HAMの自然史や患者を取り巻く社会的・医療的環境が明らかになると同時に、治験患者のリクルートにも役立っている。また、髄液ネオプテリン、CXCL10、プロウイルス量定量の検査は保険未承認であるがHAMねっと登録医療機関で測定ができる。HAMねっとでは患者向けの情報発信も行っているため、未登録のHAM患者がいたら是非登録を勧めていただきたい。5 主たる診療科脳神経内科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター HTLV-1関連脊髄症(HAM)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)HAMねっと(HAM患者登録サイト)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)HTLV-1情報サービス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省「HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)に関する情報」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)JSPFAD HTLV-1感染者コホート共同研究班(医療従事者向けのまとまった情報)日本HTLV-1学会(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報NPO法人「スマイルリボン」(患者とその家族および支援者の会)1)Jacobson S. J Infect Dis. 2002;186:S187-192.2)Umehara F, et al. J Neuropathol Exp Neurol. 1994;53:72-77.3)Ando H, et al. Brain. 2013;136:2876-2887.4)Nakagawa M, et al. J Neurovirol. 1995;1:50-61.5)Coler-Reilly AL, et al. Orphanet J Rare Dis. 2016;11:69.6)Nagasaka M, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2020;117:11685-11691.7)Sato T, et al. Front Microbiol. 2018;9:1651.8)Yamano Y, et al. PLoS One. 2009;4:e6517.9)Araya N, et al. J Clin Invest. 2014;124:3431-3442.公開履歴初回2017年10月24日更新2022年2月16日

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ドネペジル+コーヒーで治療効果が高まる可能性

 アルツハイマー型認知症(AD)に一般的に用いられる塩酸ドネペジルは、アセチルコリンエステラーゼおよびブチリルコリンエステラーゼ活性に対する阻害作用を示し、認知機能を高める。ヒドロキシケイ皮酸のカフェイン酸(Caffeic acid)成分は、ヒトの食生活に広く存在する。ナイジェリア・Federal University of TechnologyのOdunayo Michael Agunloye氏らは、ドネペジルのアセチルコリンエステラーゼおよびブチリルコリンエステラーゼ阻害活性に及ぼすカフェイン酸の影響についてin vitroでの検討を行った。Journal of complementary & integrative medicine誌オンライン版2017年9月22日号の報告。 ドネペジル5mgを50mLの蒸留水に溶解し、カフェイン酸10mgを100mLの蒸留水に溶解した。サンプルの混合物はA2(ドネペジル0.075mg/mL+カフェイン酸0.025mg/mL)、A3(ドネペジル0.050mg/mL+カフェイン酸0.050mg/mL)、A4(ドネペジル0.025mg/mL+カフェイン酸0.075mg/mL)に調整した。分析のために、すべてのサンプルは4℃で冷蔵庫に保存した。 主な結果は以下のとおり。・すべてのサンプルにおいて、in vitroのアセチルコリンエステラーゼおよびブチリルコリンエステラーゼ活性に対する阻害作用を示し、A4において、最も高い阻害作用を示した(p<0.05)。・すべてのサンプルにおいて、ラットの脳ホモジネート中のプロオキシダント(FeSO4、ニトロプルシドナトリウム[SNP])誘発性脂質過酸化を防ぐことができ、A3およびA4は、FeSO4、SNP誘発性脂質過酸化に対して最も高い阻害作用を示した。・すべてのサンプルは、鉄(II)イオン(Fe2+)のキレート能、ヒドロキシルラジカル(OH・)ラジカル消去能、第二鉄還元力(FRAP)に代表される、抗酸化特性を示した。 著者らは「ドネペジルとカフェイン酸との組み合わせは、ドネペジルの抗酸化特性を高め、副作用が少なく、AD管理における治療補助となる可能性がある。ドネペジル0.025mg/mL+カフェイン酸0.075mg/mLの組み合わせは有望である」としている。■関連記事ドネペジルの治療反応、投与前に予測可能かなぜ、フィンランドの認知症死亡率は世界一高いのかたった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

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総コレステロールは晩年に低下する~10万人のコホート研究

 疫学研究では、総コレステロール(TC)が低いほど死亡率が高いことが示唆されている。今回、英国・ロンドン大学のJudith Charlton氏らが、80歳超のTCと死亡率との関連について死亡前のTCの低下で説明できるかを約10万人のコホート研究で検討したところ、TCは晩年に終末期の衰退を示すことがわかった。著者らは「逆の因果関係が、非無作為化研究での低TCと高死亡率の関連をもたらしているかもしれない」と考察している。The Journals of Gerontology誌オンライン版2017年9月27日号に掲載。 本研究は、UK Clinical Practice Research Datalink(CPRD)における80~105歳の9万9,758人について、プライマリケア電子健康記録を用いたコホート研究。全死亡のハザード比(HR)は、年齢、性別、フレイル、合併症、血圧、喫煙で調整した。fractional polynomialモデルを用いて、死亡前または研究終了前のTCの縦断的傾向を評価した。調整オッズ比は一般化推定方程式を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・参加者は女性6万3,630人、男性3万6,128人で、平均年齢86歳、死亡人数は2万9,200人であった。エントリー時に4万1,164人がスタチンで治療されていた。・TCが3.0mmol/L未満の人は4,5~5.4mmol/Lの人と比較して、死亡率が高かった。  スタチン治療者-HR:1.53、95%信頼区間:1.43~1.64、p<0.001  無治療者-HR:1.41、95%信頼区間:1.29~1.54、p<0.001・TCの経年的低下は、死亡前の2年間で速まった。・フォローアップ終了前3ヵ月間での、生存者と比較した、死亡者におけるTC 3.0mmol/L未満の調整オッズ比は、無治療者では3.33(2.84~3.91、p<0.001)、スタチン治療者では1.88(1.68~2.11、p<0.001)であった。

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血小板機能検査に基づく抗血小板療法の調節は意味がない?(解説:上田恭敬氏)-751

 本試験(TROPICAL-ACS)は、急性冠症候群(ACS)に対してPCIを施行した症例(2,610症例)を対象として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の2剤目の薬剤を、プラスグレル(添付文書およびガイドラインに従って10mgまたは5mg/日)12ヵ月間とする対照群(control group)と、プラスグレル1週間、その後クロピドグレル(75mg/日)1週間、さらにその後は血小板機能検査の結果に基づいてプラスグレルかクロピドグレルを選択する調節群(PFT-guided de-escalation group)に無作為に割り付け、12ヵ月間の心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、BARC分類class 2以上の出血を主要評価項目として比較して、調節群の非劣性を検討している多施設試験である。 血小板機能検査としては、Multiplate analyser(ロシュ・ダイアグノスティックス社、スイス)によって、抗血小板効果不十分を意味するhigh on­treatment platelet reactivity(HPR)であるかどうかを判定し、HPRであればクロピドグレルからプラスグレルへ戻すとしている。実際、調節群の39%の症例でHPRを認め、その99%の症例でプラスグレルに戻されている。また、プラスグレルの投与量については、FDAの添付文書では体重60kg未満では5mgを考慮することと記載されている。 結果は、群間にイベントの有意な差はなく、非劣性が証明されている。著者らは、統計的な差はないものの、調節群でイベントがやや少なく見えることも考慮して、血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を減弱させることは、通常のDAPTに対して代替的治療手段となりうると結論している。 確かに、理論的には、血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を調節することがイベントを減少させる可能性はあると思われるが、これまでの各種試験では、その有用性は証明されておらず、本試験でもその有用性は示されなかった。労力をかけて調節しても、決まった量を投与しても、アウトカムに影響しないのであれば、調節する意味はないという結論になる。 本試験で抗血小板療法を調節することの優位性が示されなかった1つの理由として、クロピドグレルへ変更(減弱)したままの症例が調節群の60%程度しかなかったことが挙げられているが、抗血小板効果が強過ぎるものも弱過ぎるものも、血小板機能検査に基づいて適切に調節するようなプロトコールであれば優位性が示されたのかもしれない。また、クロピドグレルの効果が常にプラスグレルよりも弱いわけでもなく、各薬剤の投与量が抗血小板効果に影響することは言うまでもない。各群で抗血小板効果が、実際どの程度に調節されていたかの比較も必要であろう。そもそも日本ではプラスグレルの標準投与量が日本人向けに設定されているため、本試験のデザインも結果も日本人には当てはまらない。「血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を調節すること」の有用性を証明して、各個人に最適な治療を届けるという夢は、まだ夢のままである。

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メラノーマ画像診断、皮膚科医 vs.ディープラーニング

 ディープラーニング・コンピュータ画像認識システムは、メラノーマのダーモスコピー画像を正確に分類し、すべてではないが皮膚科医の精度を上回ることが、ISIC(International Skin Imaging Collaboration)主催の国際コンテスト「ISBI(International Symposium on Biomedical Imaging)チャレンジ2016」で示された。ただし著者は、「今回の研究デザインで得られた結果は、臨床診療に外挿することはできない限定的なものである」としている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年9月29日号掲載の報告。 研究グループは、ダーモスコピー画像によるメラノーマの診断精度をコンピュータアルゴリズムと皮膚科医とで比較する目的で、25チームの個々のアルゴリズムの結果と、international computer vision melanoma challengeのデータセットからランダムに選択したダーモスコピー画像100例(メラノーマ50例、母斑44例、黒子6例)を用いて検討した。 個々の自動予測を5つの方法(非学習および機械学習)を用いて「融合」アルゴリズムに統合し、また、8人の皮膚科医が100例の画像について病変の良性・悪性を分類した。 主な結果は以下のとおり。・皮膚科医による分類の平均感度は82%、特異度は59%であった。・分類感度82%における皮膚科医の特異度は、チャレンジアルゴリズムのトップと同程度であり(59% vs.62%、p=0.68)、最良パフォーマンスの融合アルゴリズムよりは低かった(59% vs.76%、p=0.02)。・ROC面積を比較すると、最良融合アルゴリズムのほうが皮膚科医よりも大きかった(0.86 vs.0.71、p=0.001)。・今回の研究では、データセットに臨床診療で遭遇する皮膚病変、とくにびまん性病変が含まれていなかった。また、読影者とアルゴリズムに臨床データ(年齢、既往歴、症状など)が提供されていなかった。

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抗精神病薬の早期治療反応は、長期治療効果を予測可能か

 抗精神病薬による最初の2~3週間での早期治療反応は、数ヵ月後の短期アウトカムを予測可能である。カナダ・マックマスター大学のSean A. Rasmussen氏らは、抗精神病薬の早期治療反応の予測値が、数年間の長期治療において持続するか検討を行った。Human psychopharmacology誌オンライン版2017年9月26日号の報告。 本観察研究では、抗精神病薬での治療開始から平均25ヵ月経過した初回エピソード統合失調症患者64例を対象に、フォローアップ評価を行った。対象患者は、治療開始時にハロペリドール投与またはオランザピン投与に無作為化され、急性期入院後には自由な治療に移行した。治療開始2週または3週目のBPRS(Brief Psychiatric Rating Scale)での早期改善効果が、フォローアップ時の長期改善効果を予測するかどうか、回帰分析を用いて評価した。2次解析として、フォローアップ時の錐体外路系副作用を早期に予測できるかについて検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・2週目でのハロペリドールに対する早期治療反応は、長期フォローアップにおけるBPRS改善を予測した(p=0.002)。・2週または3週目のオランザピンに対する早期治療反応は、長期改善を予測しなかった(それぞれ、p=0.726、p=0.541)。・錐体外路系副作用の割合は、両群間で差は認められず、早期治療反応では予測できなかった。 著者らは「ハロペリドール早期治療反応は長期治療予後を予測するが、オランザピン早期治療反応は予測しない可能性がある」としている。■関連記事精神疾患患者の激越症状に対する新旧治療戦略統合失調症の再発率比較、併用療法 vs.単独療法 vs.LAI安定期統合失調症、抗精神病薬は中止したほうが良いのか

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朝食抜きの人は動脈硬化リスクが高い

 朝食を抜く習慣が、一般的な心血管疾患(CV)リスク因子とは関係なく、非冠動脈性および全身性のアテローム性動脈硬化症のリスク増加と関連することが、スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos IIIのIrina Uzhova氏らの前向きコホート研究で示された。Journal of the American College of Cardiology誌2017年10月10日号に掲載。 著者らは、CVリスク因子および無症候性アテローム性動脈硬化症の存在・分布・進展と、朝食パターンとの関係を調べた。本研究は、ベースライン時にCVイベントのなかった40~54歳の成人の前向きコホート研究であるPESA (Progression of Early Subclinical Atherosclerosis)研究における横断分析。4,052人の参加者から、生活習慣、複数の血管内イメージングデータ、臨床共変量を収集した。朝食パターンは以下の3つで検討した。・高エネルギー朝食:朝食が1日の総エネルギー摂取量の20%超(全体の27%)・低エネルギー朝食:朝食が1日の総エネルギー摂取量の5~20%(全体の70%)・朝食抜き:朝食が1日の総エネルギー摂取量の5%未満(全体の3%) 多変量ロジスティック回帰モデルによる分析の結果、朝食抜きは高エネルギー朝食と比べて、従来の食事性CVリスク因子の存在とは関係なく、非冠動脈性アテローム性動脈硬化症(オッズ比:1.55、95%CI:0.97~2.46)および全身性アテローム性動脈硬化症(オッズ比:2.57、95%CI:1.54~4.31)の高い有病率と関連していた。■関連記事朝食抜きがアテローム性動脈硬化症の増加と関連

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Stage III肺がんのdurvalumab維持療法、QOLを維持:PACIFIC/WCLC2017

 切除不能なStage III局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)における同時化学放射線療法(CCRT)後のdurvalumab維持療法を評価するPACIFIC試験。すでにPFSの改善と高い忍容性が報告されているが、今回は副次評価項目である患者報告結果(PRO)についてオーストラリア・University of Sydney/Westmead HospitalのRina Hui氏が、横浜で開催された第18回世界肺がん学会(WCLC)で発表した。 PACIFIC試験では、2回以上のプラチナベースのCCRTを受けて進行していない上記患者をdurvalumabとプラセボに割り付け12ヵ月治療した。その間に患者の主要症状、身体機能、健康関連QOL(EORTC QLQ-C30 v3、QLQ-LC13)の変化をベースライン時と比較している。アンケート完了率はdurvalumab群、プラセボ群共に80%以上であった。 結果、durvalumab群とプラセボ群で、主要症状、身体機能、健康関連QOLの変化に差はみられなかった。Rina Hui氏は、「現時点では局所進行NSCLC患者の5年生存率はわずか15%であるため、この研究は重要である。durvalumabの維持療法は症状、GHQOLを低下させることはなく、主要症状のベースラインからの変化は最低限であった」と述べ、また「今回の研究結果は、効果と安全性が確認されたPACIFIC試験において、durvalumabのCCRT後の維持療法を一層支持するものだ」と結論付けた。discussantであるオーストラリア・Sydney Cancer CenterのMichael Boyer氏はPROについて、「QOLへの悪影響が生命予後の改善を上回っていないことを確認するためにも、PACIFICのような臨床試験には必要なものだ」と述べている。■参考WCLC2017プレスリリースPACIFIC試験(Clinical Trials.gov)■関連記事WCLC2017プレスカンファレンスでのRina Hui氏の発表durvalumab維持療法、Stage III肺がんのPFSを有意に改善(PACIFIC)/ESMO2017

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durvalumab、Stage III肺がんに対しEMA が販売承認申請を受理

 AstraZeneca(本社:英国ロンドン、最高経営責任者(CEO):Pascal Soriot)とその生物製剤研究開発拠点MedImmuneは2017年10月9日、欧州医薬品庁(EMA)が放射線とプラチナベース化学療法の同時併用療法後に病勢進行の認められない、局所進行切除不能(Stage III)非小細胞肺がん(NSCLC)に対するdurvalumabの販売承認申請(MAA)を受理したことを発表した。EUにおけるdurvalumabの承認申請はこれが初めて。 durvalumabのMAA提出は、第III相PACIFIC試験での無増悪生存期間(PFS)のポジティブなデータに基づき行われた。同試験は、上記患者を対象に、durvalumabによる維持療法を標準療法と比較する無作為化二重盲検プラセボ対照多施設間国際共同試験。現在、引き続き他の主要評価項目である全生存期間(OS)の評価が進められている。安全性情報を含む詳細な結果については、New England Journal of Medicineオンライン版に掲載されている。■参考AstraZeneca(グローバル)プレスリリースAntonia SJ, et al.N Engl J Med. 2017 Sep 8.[Epub ahead of print]PACIFIC試験(Clinical Trials.gov)■関連記事durvalumabとオシメルチニブは新たな標準治療となりうるか:PACIFIC/FLAURA試験durvalumab維持療法、Stage III肺がんのPFSを有意に改善(PACIFIC)/ESMO2017durvalumab、切除不能StageIII肺がんのブレークスルー・セラピーに指定ステージ3切除不能肺がん、durvalumab維持療法が良好な結果:PACIFIC試験

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Stage III肺がんdurvalumab維持療法PACIFIC試験におけるPatient Reported Outcome 世界肺癌学会2017プレスカンファレンスより 第8回【肺がんインタビュー】

第8回 Stage III肺がんdurvalumab維持療法PACIFIC試験におけるPatient Reported Outcome世界肺癌学会2017プレスカンファレンスよりPatient-Reported Outcomes with Durvalumab after Chemoradiation in Locally Advanced, Unresectable NSCLC:Data from PACIFIC

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第2回 クルマの無い人生なんて【ドクター クルマ専科】

クルマの無い人生なんて皆さんこんにちは。私は循環器内科医として長年病院勤務でカテーテル治療などに携わってきましたが、7年余り前から東京都八王子市でクリニックを開業しています。前回の岩岡先生とは千葉大学の同期で今年9月に62歳になりましたが、彼とは違い、この歳まで未だポルシェは(ましてフェラーリなどは)ハンドルすら握ったことがありません。そんな私がこのようなエッセイを書かせていただくのもおこがましいのですが、クルマ好きには変わりありませんので、現在までの所有車の思い出などを含め、私のきわめて個人的なカーライフを書かせていただこうと思います。医師の先生方にはクルマ好きの方が多いかと思いますので、忙しい診療の合間や当直の夜にでも読んでいただければ幸いです。クルマ好きと言ってもそのスタンスはさまざまです。クルマには3つの楽しみがあると思います。所有する(綺麗に磨き上げる)楽しみ、いじる(自分なりにカスタマイズする)楽しみ、そして運転する楽しみです。それからすると、私を含め周りのクルマ好きたちは、車を運転すること自体が楽しくて仕方ない人がほとんどです。その中には、走りを追及し装備も至れり尽くせりの高級車を所有している人もいれば、Fun to Driveの小型車を所有している人もいます。しかし両者に共通しているのは、所有車が全て「運転して元気になれるクルマ」であることです。クルマを単なる移動手段とは考えていないということです。クルマとの出会い、ラリーとの出会いさて私のカーライフは、大学生が免許を持たない今とは違い、当時は入学とセットのようだった運転免許を取得した所から始まります。家には親のトヨタコロナがありましたが、2年生から下宿を始めたのに合わせ、最初のクルマはイエローの三菱ランサーセレステでした。懇意にしている叔父が三菱自動車勤務だったため、他のメーカーの選択肢は有りませんでした(オーバーフェンダーの27トレノ、レビン…残念でした)。初めてのクルマでまだ運転の楽しみもわからずもっぱら下駄替わりでしたが、当時所属していたスキー部の先輩にクルマ好きが数人いて、その方々の影響が決定的でした。先輩達はラリーが好きで、当時プレイドライブという車雑誌に毎月載っていた「PDラリー」という自主参加型のラリーを走りに行く時に、いつも連れて行ってくれたのです。これで決定的にラリー(特に未舗装路(ダート)走行)が好きになった私と、同期のT君(セリカ1600GT所有、後に37レビン)は、家庭教師のバイト代をつぎ込んでお互いのクルマをラリー用に改造して行きました。当時は、ディーラーでロールバーを装着してくれるようなおおらかな時代でした。サスペンション、ミッション、ノンスリップデフなどを交換装着しましたが、当然お金がないので、近くの修理工場の心優しいご主人に教わりながら、自分達で出来る所は自力でやりました。そのT君と2人で、地元千葉のラリーチームの主宰者の助言を受けながら色々なラリーに参加しました。中級以上のラリーでは、速く走る事だけが目的のスペシャル・ステージという部分が組み込まれていました。一応公道なので、林道を法律上の制限速度60km/hの指示速度で走るというような無謀なものでした。しかし若かったわれわれは、スタートの瞬間から頭の中では一流ラリーストに勝手に変身してしまい、イメージだけはドリフトでダートのコーナーをこなして行くのでした(汗)。しかし、当然のように腕が伴わず、何回も途中でコースアウトを経験しました。横倒しになった車のドアを車内から持ち上げて開けるのが、あんなに重くて大変だという事も初めて知りました。まあこのような訳で、私はクルマの運転の楽しさに惹かれていったのでした。卒業して医者になった後に手に入れた2台目は、当時世界のラリー界で活躍していた三菱ランサーEXターボGSR(通称ランタボ)でした。普通の4ドアセダンですが、かつての初代ニッサン・スカイラインGTRのように“羊の皮をかぶった狼”で、こちらも当然のようにラリー仕様に改造しました(固いサスペンションは、同乗者の評判悪し)。しかし、研修医のわれわれには、なかなかラリーに参加する時間が取れず、時間を見つけては夜中に房総の林道を走りに行きました。夏休みなどにロングドライブに行っても、脇道に素敵なダートがあるとつい道を折れて走ってしまい、目的地に着く予定が遅くなったものです。ページTOPへラテンの外車の虜に千葉での3年間の研修の後、4年目は東京都心の病院での研修でした。当然ダートを走る機会も激減し、そろそろ3台目を考えましたが、やはりラリーが頭から離れませんでした。そこで、当時ラリー界で活躍していたプジョー205T16(ミッドシップ+4WD)のベースである、ガンメタのプジョー205GTIが、わが家にやって来ました。この車は小さいですが元祖ボーイズレーサーと言われ、エンジンも良く回り活発で、車重も軽く、運転していてとても楽しいクルマでした。ダートは卒業して、奥多摩や箱根のワインディングロードを走りに行ってました。ワインディングロードを走る楽しみを教えてくれたのが、この3台目で、私の目を国産車から外車に移らせたエポックメイキングのクルマでした。友人のBMWなども運転させてもらいましたが、なぜかしっくりせず、このクルマ以降ラテン系のクルマばかりになってしまいました(笑)。そんな経緯で4台目は、同じプジョーの濃いグリーンメタリックのプジョー405Mi16 X4(バイ フォーと読みます)になりました。これも普通の4ドアセダンですが、この車種唯一のDOHCエンジンの4WDで、とくに長距離単騎行には最適でした。しかしやはりラテンのクルマ、納車当日に首都高を走りに行った際に右助手席の窓が開かず、クルマから降りて通行料を払いに行った覚えがあります(笑)。高速上でのオーバーヒート等々トラブルもありましたが、忘れられないのはこのクルマで北海道をドライブしたことです。素晴らしい景色の中、気持ち良い運転を堪能しました。毎日いつまでも運転していたいと思ったことを、今でも覚えています。ページTOPへそして、アルファロメオへ画像を拡大する愛車のアルファロメオ155V6この後の5台目で、ついにあこがれのアルファロメオを手に入れました。アルファは常に気になる存在ではありましたが出会いに恵まれませんでした。そんな時、ドイツのツーリングカーレースDTMで活躍するアルファ155の格好良さに一目惚れしてしまいました。何十年振りかでプラモデルも制作してしまいました(笑)。そんな訳でわが家にブラック(ネロ)のアルファロメオ155V6がやって来ました。ラリー用の改造は別としてクルマはほとんどいじらないのですが、この155だけはエグゾーストを憧れのDTMタイプに交換しました。この車は現在も所有しており、すでに21年目です。途中何年もスピードメーターが死んでいたため(どうやって車検通ったのでしょう?)、軽く10万キロは超えていると思いますが、実際の走行距離は分かりません(笑)。画像を拡大する無骨だけれど格好良いV6エンジン20年以上過ごしているため、このクルマとは、さまざまな思い出があります。お年寄りの病気自慢のようになってしまうので、あえて書きませんが、トラブルも多く、随分迷惑も被りました。しかし、1度として手放そうとは思いませんでした。ちょっとしたクルマなら1台買えるくらいの出費をしてからは、ほぼトラブルフリーの優等生になっています。ラテンのクルマ、それもアルファロメオだと思えば、許せてしまいます。ちょっと頭は弱いけど、気立てが良くて放っておけない可愛い女の娘=アルファロメオでしょうか(笑)?高速道路の料金所や流入などで2速で引っ張った時の4,500~6,500回転の自然吸気V6のエンジン音は、本当に官能的です。当時の車雑誌には、「エグゾーストノートは素晴らしく、貧乏人のフェラーリと言っても良い」と書いてありました(笑)。この間に、マニュアルトランスミッションが使えない妻のために(それまでBMW Z3所有)、私の独断でアルファ156スポーツワゴン、次いで159スポ-ツワゴンもやって来て、ガレージには常に2台のアルファロメオがいる、という至福の時を過ごしていました。その後アルファ159の後継車がなかなか発表されず、残念なことに妻のクルマは現在のアウディRSQ3に取って代わられ、ガレージのアルファは1台のみになってしまいました。ページTOPへでも、今は…画像を拡大する愛車のアルファロメオ4Cスパイダーそのタイミングでアルファロメオは、なんと4Cという、何とも魅力的なミッドシップスポーツカーを発表。めったにクルマを誉めない妻の「これ、かっこいいね」というひと言、2シーターとSUVの2台では何かと不便だなと思っていたところに娘の「3台にすればいいじゃん」と言う言葉、親友の「155は十分元とったから4C買ってもバチは当たらないよ」という言葉、これらに背中を押されて(まっ、決めたのは私自身ですが・・・)画像を拡大する浅間山と4Cスパイダー昨年10月に6ヵ月待ってレッド(ロッソ)の4Cスパイダーがやって来ました。この4Cとは、軽井沢の親友を訪れるたびに、毎度色々なワインディングロードを満喫しています。今は155と4Cの2台のアルファ(とアウディ)に挟まれて幸せです。ページTOPへ最後に画像を拡大するアルファロメオのワイン残念ながら紙面が尽きてしまいました。とにかく、この車を運転したいから次の休みはどこへ行こうかな、と後から目的地を考えるのが、クルマ好きの私の思考回路のようです。しようもない超個人的な駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。還暦過ぎても少年のようなクルマ好きがいることを、知っていただければ幸いです。最後に、ワインラヴァーでもある私にとって「No Car or Wine, No Life!!」という事で、今夜は写真のワインを楽しむことにします(笑)。

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オシメルチニブ、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療でブレークスルー・セラピーに指定

 AstraZeneca(本社:英国ロンドン、最高経営責任者(CEO):Pascal Soriot)は2017年10月9日、米国食品医薬品局(FDA)が転移性EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の一次治療としてオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)をブレークスルー・セラピーに指定したことを発表した。 オシメルチニブのブレークスルー・セラピー指定は、第III相FLAURA試験からのデータに基づき付与された。同試験は、未治療の上記患者を対象に、標準治療のEGFR-TKI(エルロチニブまたはゲフィチニブ)と、オシメルチニブの効果と安全性を比較した二重盲検無作為化試験。同試験では、無増悪生存期間(PFS)の中央値が標準治療群の10.2ヵ月に対し、オシメルチニブ群では18.9ヵ月と約2倍となった。これらの改善は脳転移の有無に関わらず、すべての事前指定されたサブグループにおいてみられた。またオシメルチニブの安全性プロファイルはこれまでと一致し、良好な忍容性を示した。 2017年9月28日、米国のNCCNガイドラインは、上記患者の一次治療にオシメルチニブの使用を含むよう改訂された。オシメルチニブは現在のところまだ、上記患者の一次治療でFDAの承認は得ていない。しかしEGFR-TKI抵抗性のEGFR T790M変異陽性進行NSCLC患者の二次治療として、米国、EU、日本、中国を含む50ヵ国以上で承認されている。■参考AstraZeneca(グローバル)プレスリリースFLAURA試験(Clinical Trials.gov)■関連記事durvalumabとオシメルチニブは新たな標準治療となりうるか:PACIFIC/FLAURA試験HR0.46、オシメルチニブが1次治療で標準治療を上回る(FLAURA)/ESMO2017オシメルチニブ、肺がんFLAURA試験の主要評価項目を達成

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肺動脈圧ガイドにおける左心室収縮能が低下した心不全のマネジメント

 ガイドラインに準じた薬物療法が増えているにも関わらず、左心室の駆出率が低下した心不全(heart failure and reduced ejection fraction:HFrEF)患者の一部は入院、および死亡率が依然高い。そこで、米国Brigham and Women’s HospitalのMichael M Givertz氏ら研究グループが、肺動脈圧の遠隔モニターにより薬物療法の最適化と予後を改善につながる情報を臨床医に提供しうるか検証した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年10月10日号に掲載。CHAMPION試験:LVEFが低下した患者に対するサブ解析 CHAMPION(CardioMEMS Heart Sensor Allows Monitoring of Pressure to Improve Outcomes in NYHA Class III Heart Failure Patients trial)試験では、550例の慢性心不全患者を左室駆出率に関わらず登録し、事前に決められたサブグループ解析で、左室駆出率が低下(LVEF≦40%)した心不全患者の入院と死亡率について、治療群とコントロール群とで比較した。ガイドラインに準じた薬物療法の使用が可能なケースについては、事後解析が行われた。入院と死亡率の解析には、Andersen-GillとCox比例ハザードモデルが使われた。ガイドラインに準じた薬物療法が行われている場合、心不全入院33%、死亡率47%低下 HFrEF患者456例のうち、心不全での入院率は治療群でコントロール群に比べて28%低く(ハザード比[HR]:0.72、 95%信頼区間[CI]: 0.59~0.88、 p= 0.0013)、統計学的な有意差には至らなかったが、死亡率が32%低下する傾向が認められた(HR:0.68、95% CI:0.45~1.02、p=0.06)。試験開始時にガイドラインに準じた薬物療法(ACEI、ARBもしくはβ遮断薬)を少なくとも1種類内服している患者が445例おり、これらの患者では心不全の入院率が33%低下し(HR:0.67、95%CI、0.54~0.82、p=0.0002)、死亡率は47%低かった(HR:0.63、95%CI:0.41~0.96、p=0.0293)。コントロール群と比較して、ガイドラインに準じた薬物療法を2種類とも内服している群(337例)では、心不全の入院が43%低下し(HR:0.57、95%CI:0.45~0.74、p<0.0001)、死亡率は57%低下した(HR:0.43、95%CI:0.24~0.76、p=0.0026)。検証の結果、肺動脈圧を使用した心不全のマネジメントは、心不全の悪化と死亡率を低下させるとともに、血行動態と神経ホルモンの双方を改善するという相乗効果の重要性を明らかにした。CardioMEMS(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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非小細胞肺がんへのatezolizumab、OAK試験の日本人解析/日本肺癌学会

 2017年10月14日、第58回日本肺癌学会学術集会で、岡山大学病院の久保 寿夫氏が、国際共同第III相臨床試験OAK試験の日本人集団の解析結果を発表した。OAK試験は、プラチナ製剤を含む化学療法中または後に増悪した局所進行・転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者1,225例を対象に、抗PD-L1抗体atezolizumabの有効性と安全性をドセタキセルと比較検討したオープンラベル無作為化試験。主要評価項目は、全患者およびPD-L1で選別されたサブグループ患者の全生存期間(OS)、副次評価項目は客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性などである。すでに発表されている全集団における解析では、ドセタキセル群と比較してOSを4.2ヵ月延長し(OS中央値:13.8ヵ月 vs.9.6ヵ月、ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.62~0.87)、良好な安全性が示されている。 日本人集団(OS解析対象の64例)のOS中央値はatezolizumab群で21.3ヵ月、ドセタキセル群で17.0ヵ月、ハザード比は0.80(95%CI:0.41~1.57)であり、全集団同様PD-L1の発現状態にかかわらず、atezolizumab群で改善が認められた。 有害事象については日本人101例を対象に解析され、Grade 3 以上の有害事象の発現率はatezolizumab群が26.8%、ドセタキセル群が91.1%とatezolizumab群で低かったが、免疫関連有害事象を含む投与中止に至った有害事象についてはatezolizumab群で多かった(17.9% vs.6.7%)。外国人集団との比較においては、Grade 3 以上の有害事象は日本人集団で少なかった(26.8% vs.40.1%)。日本人集団で多くみられたのは発熱(35.7%)、鼻咽頭炎(19.6%)などであった。 なお、atezolizumabはOAK試験ならびに第II相無作為化臨床試験であるPOPLAR試験の結果に基づき、上記患者に対して2016年10月に米国食品医薬品局(FDA)、2017年9月に欧州委員会(EC)により承認されている。■参考OAK試験(Clinical Trials.gov)中外製薬のプレスリリース■関連記事抗PD-L1抗体atezolizumab、非小細胞肺がんのOSを延長/Lancet抗PD-L1抗体atezolizumab、肺がんに承認:FDA

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BPSDに対するイチョウ葉エキスの効果~メタ解析

 イチョウ葉抽出エキスであるEGb761が認知症のBPSD(認知症の行動と心理症状)治療に有効であることが、無作為化比較試験で報告されている。スイス・チューリッヒ大学のEgemen Savaskan氏らは、これらの無作為化試験についてメタ解析を行った。International psychogeriatrics誌オンライン版2017年9月21日号の報告。 特定のBPSDに対するEGb761の効果を評価するため、臨床的に有意なBPSD(NPI総スコア6以上)が認められる(アルツハイマー病[AD]が疑われる、脳血管性認知症もしくは脳血管疾患を有するADが疑われる)認知症患者を対象とした、20週以上の無作為化プラセボ対照試験を抽出した。データをプールし、NPI single item compositeおよびcaregiver distressスコアの共同解析を、固定効果モデルのメタ解析により実施した。 主な結果は以下のとおり。・4つの研究より1,628例(EGb761群:814例、プラセボ群:814例)が抽出された。治療期間は、22~24週であった。EGb761の1日用量は、すべての研究において240mgであった。・すべての研究の全分析セットのデータを含むプールされた分析(EGb761群:796例、プラセボ群:802例)では、EGb761群はプラセボ群よりも合計スコア、10の単一症状スコアで有意な優越性が示された。・caregiver distressスコアに関しては、EGb761群はプラセボ群よりも妄想、幻覚、多幸を除くすべての症状において有意な改善が認められた。・EGb761のベネフィットは、主にベースライン時の症状改善であるが、いくつかの症状において発症率の低下が認められた。 著者らは「イチョウ葉抽出エキスEGb761を用いた22~24週の治療は、統合失調症様症状を除くBPSDと、それらの症状によって引き起こされる介護者の苦痛も改善した」としている。■関連記事BPSD治療にベンゾジアゼピン系薬物治療は支持されるか認知症になりにくい性格はなぜ、フィンランドの認知症死亡率は世界一高いのか

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オシメルチニブ、FLAURA試験の日本人サブグループ解析/日本肺癌学会

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、第3世代EGFR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が、第1世代EGFR-TKIによる標準治療と比較し病勢増悪および死亡のリスクを減少させたことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)で発表されたFLAURA試験の初回解析結果から明らかとなっている。同試験の日本人サブグループ解析結果が、2017年10月14日、第58回日本肺癌学会学術集会で国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎氏により発表された。 FLAURA試験は、Del19またはL858RのEGFR遺伝子変異を有する未治療の局所進行または転移性NSCLC患者556例を対象に、オシメルチニブと、ゲフィチニブまたはエルロチニブによる標準治療の効果を比較した第III相二重盲検無作為化試験。主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性などが検討された。 日本人患者120例を対象としたサブグループ解析では、PFS中央値はオシメルチニブ群で19.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.6~23.5)、標準治療群(日本人は全例ゲフィチニブ)で13.8ヵ月(95%CI:8.3~16.6)であり、ハザード比0.61(95%CI:0.38~0.99、p=0.0456)と全体解析での結果と同様、PFSの延長傾向が認められた。 ORRはオシメルチニブ群が75%、標準治療群が76%(オッズ比:0.98)であった。DOR中央値はオシメルチニブ群18.4ヵ月、標準治療群9.5ヵ月と、オシメルチニブ群で約2倍近く延長している。また、オシメルチニブ群2例で完全奏効(CR)がみられている。OSについては、イベント発現割合がオシメルチニブ群で14%、標準治療群で18%とまだ十分なイベントが発現しておらず、今後の解析が待たれる。 主なグレード 3 以上の有害事象の発現率は、オシメルチニブ群が28%、標準治療群が49%とオシメルチニブ群で低かったが、間質性肺疾患(オシメルチニブ群で12%)およびQT延長(オシメルチニブ群で22%)については、オシメルチニブ群で多く発現している。また全体での結果と比較すると、日本人サブグループで両群の毒性が強い傾向がみられた。■参考FLAURA試験(Clinical Trials.gov)■関連記事HR0.46、オシメルチニブが1次治療で標準治療を上回る(FLAURA)/ESMO2017オシメルチニブ、肺がんFLAURA試験の主要評価項目を達成

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新規性のある抗がん剤の幕開けに期待したい(解説:折笠秀樹氏)-746

 2009~13年に欧州医薬品庁(EMA)が承認した48薬(68適応)の抗がん剤に関する調査結果である。承認時に延命ベネフィットを立証していたのは35%のみで、中央値で2.7ヵ月しか延命していなかった。QOLベネフィットの立証についてはわずか10%だった。 ところで、抗がん剤の延命ベネフィット有無とは何のことだろうか。それは、European Society for Medical Oncologyという学会が2015年に開発した、ESMO-MCBSスコアというもので定義された。いろいろな様式があり、たとえば様式1は補助療法・新規治療法向けである。グレードA、B、Cが定義され、グレードA・Bを「延命ベネフィット有り」と定義した。逆に、「延命ベネフィット無し」のグレードCの基準をみると、長期(3年以降)生存率の延長は3%未満であり、無病生存率(DFS)に対するハザード比が0.8以上(リスク低下20%以下)などであった。3%すら長期生存率を延ばさないようなら、「延命ベネフィット無し」と定義するのは妥当のように思った。 調査は固形がんと血液がんに分けられ、固形がんの対象となった臨床試験は96%がランダム化比較試験(RCT)であった。プラセボ対照は48%、実薬・標準薬(上乗せ)は50%であった。半数は実薬との比較なので、それに対してリスク低下20%以上、あるいは長期生存率を3%以上延長させる(つまり、延命ベネフィットを立証する)のは容易ではないだろう。 従来型の抗がん剤(化学療法・ホルモン療法など)では、著しい延命ベネフィットを示すことは容易ではないことを示している。分子標的薬の一種である免疫チェックポイント薬や遺伝子標的に基づく個別治療薬が出てくると、効く患者と効かない患者は存在するだろうが、効く患者では相当の延命ベネフィットを示すことが想像される。分子標的薬では副作用も軽減することが多いため、顕著なQOLベネフィットを示す抗がん剤も出てくるだろう。2009~13年に承認された抗がん剤のベネフィットは小さかったが、新規性のある抗がん剤の幕開けにより治療成績の大幅改善を期待したい。

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日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの長期効果は

 東京都立小児総合医療センターの市川 宏伸氏らは、日本人小児(6~17歳)の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の治療に対する、アリピプラゾールの長期安全性および有効性を評価した。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2017年9月23日号の報告。 本研究は、以前行われた8週間の二重盲検無作為化プラセボ対照試験のオープンラベル後続研究として実施された。登録患者には、アリピプラゾールが本邦で自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の適応を取得するまで、フレキシブルドーズ(1~15mg/日)にて投与を行った。 主な結果は以下のとおり。・登録された86例のうち、70例(81%)が48週間の評価を完了した。・平均治療期間は、694.9日であった。・治療期間中のアリピプラゾール1日平均用量は7.2mg、最終平均用量は8.5mgであった。・最も一般的な治療中の有害事象(20%以上)は、鼻咽頭炎、傾眠、インフルエンザ、体重増加であった。・これらの有害事象の大部分は軽度から中等度であり、死亡例はなく、プロラクチン低下、バイタルサイン、身長、ECGパラメータを除く臨床検査値に関連する所見は認められなかった。・48週時の、異常行動チェックリスト日本語版(ABC-J)の易刺激性サブスケールスコアにおけるベースラインからの平均変化量は、以前の試験のプラセボ群と比較し-6.3、以前の試験のアリピプラゾール群と比較し-2.6であった。 著者らは「アリピプラゾールは、日本人小児の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の長期治療に対し、一般的に安全であり、良好な忍容性と有効性が認められた」としている。■関連記事日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの効果は母親の体格がADHD、自閉症リスクと関連か妊娠中の抗うつ薬使用、自閉スペクトラム症への影響は

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新インフルエンザ治療薬S-033188、第III相試験結果発表/IDWeek2017

 新たな作用機序キャップエンドヌクレアーゼ(CEN)阻害のインフルエンザ治療薬であるS-033188の第III相試験CAPSTONE-1の結果が、米国感染症学会週間Infectious Disease Week 2017(IDWeek2017)で発表された。 CAPSTONE-1試験は、多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験。対象は、年齢12〜64歳、発熱(腋窩温38.0℃以上)、一般症状と呼吸器症状(中程度〜重度)を有し、発症48時間以内の患者。20〜64歳の患者は、S-033188(経口単回投与)、プラセボ、オセルタミビル(75mg×2/日、5日間)の3群に、2:2:1で無作為に割り付けられた。12歳〜19歳の患者は、S-033188とプラセボの経口投単回与に2:1で無作為に割り付けられた。主要有効性評価項目は、インフルエンザ症状の罹病期間(TTAS)であった。鼻咽頭スワブによる投与前後のウイルス力価およびRNA含量も分析された。 主な結果は以下のとおり。・計1,436人の患者が無作為化された。・TTASはS-033188群53.7時間、プラセボ群80.2時間で、S-033188群で有意に短かった(p<0.0001)。・ウイルス排出期間中央値は、S-033188群24時間、オセルタミビル群72時間(p<0.0001)、プラセボ群96時間(p

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突然やってくる!? 外国人患者さん対応エピソード集 第7回

第7回 訪日外国人患者の医療費で未収を発生させないために<Case7>高齢の中国人夫婦が来院。妻が骨折と診断され手術が必要となり、すぐに入院することになりました。医事課職員が概算医療費(約300万円)の提示と支払い方法の確認をしたところ、夫婦が持っているカードは中国国内で主にデビットカードとして発行されている「銀聯(ぎんれん)カード」のみでした。病院の会計では銀聯カードの決済対応はしておらず…。対談相手市立千歳市民病院事務局次長 貫田 雅寿 氏事務局総務課調整係 係長 黒田 尚樹 氏事務局医事課医事係 主任 菊地 真一 氏左から菊地氏、貫田氏、黒田氏JIGH:今回は、北海道千歳市の市立千歳市民病院事務局の貫田さん、黒田さん、菊地さんにお話を伺います。このご夫婦の支払いはどうなったのでしょうか。菊地:支払い方法について相談した結果、コンビニATMで引き出し限度額を毎日引き出してもらうことで、何とか退院日までに全額をお支払いいただくことができました。JIGH:北海道では訪日外国人数が右肩上がりで増加しており、「外国人患者さんの受け入れ」は注目度の高いトピックだと伺っています。この事例では、会計時の支払いについての課題が浮き彫りになっていますね。菊地:私たちの病院は空港のすぐ近くにあるので、患者さんが空港から運ばれてきたり、帰国直前の患者さんが来院したりすることがあります。そういった方々は手元に現金(日本円)がなかったり、この事例のように利用できるクレジットカードを持っていなかったりして、医療費の未払いが発生するリスクがどうしてもあります。JIGH:医療費の未払い防止のため、何か対策は取られているのでしょうか。貫田:今回紹介した事例を受け、銀聯カード決済の導入を決定しました。北海道にはアジア圏からの観光客が多く、実際に銀聯カードしか持っていないという方も多くいらっしゃいます。銀聯カードの決済手数料は少し高いのですが、患者さんに対するサービス向上という側面のほかに、高額となる医療費の未払いリスクを回避するという点でメリットの方が勝るという判断で、導入しました。JIGH:先進的な取り組みですね。導入後の利用状況はいかがですか。黒田:これまで実際に銀聯カードで決済をされた患者さんは、1名です。ただ、この患者さんは脳神経外科での手術が必要で、医療費は700万円と高額でした。利用実績は少ないものの、今後もいつ発生するか分からない高額医療費の未収を防ぐための、体制整備という意味合いが大きいですね。JIGH:銀聯カードへの対応のほか、未収金発生防止のために取り組まれていることがあれば教えてください。菊地:外国人患者さんが受診されたら、まず医事課職員が医療費の概算を事前に提示し、支払い方法について確認します。保険に加入されている外国人患者さんは、肌感覚では4割程度という印象です。ただしほとんどの場合、いったんは患者さんが医療機関に医療費を支払う保険内容になっているので、どうしても患者さんに支払い義務が発生します。そのため事前のオペレーションを徹底し、患者さんに納得していただくことで、未払いリスクを回避するようにしています。JIGH:やはり体制整備が重要ということですね。本日はありがとうございました。<本事例からの学び>訪日外国人患者さんの医療費未払い防止には、多様な支払い方法への対応と、事前の概算確認が重要!

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