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重症喘息の現状とアンメットメディカルニーズ

 アストラゼネカ株式会社は、日本で専門医を受診している成人喘息患者を対象とした調査研究であるACQUIRE-2試験のサブグループ解析を発表し、その結果からコントロール不良の重症喘息患者におけるQOL低下とアンメットメディカルニーズの存在が示唆された。重症喘息の病態 喘息は、治療を行うことである程度まで良好にコントロールできるようになったものの、吸入ステロイド薬を含む強力な治療を行ってもその効果が十分に現れず、症状をコントロールできない場合がある。症状のコントロールに高用量吸入ステロイド薬および長時間作用性β2刺激薬(LABA)、加えてロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、テオフィリン徐放製剤、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、経口ステロイド薬(OCS)、抗IgE抗体の投与を要する喘息、またはこれらの治療でもコントロールができないような喘息を「重症喘息」または「難治性喘息」という。 ACQUIRE-2試験では、高用量の吸入ステロイド薬と長期管理薬の併用治療を受けている、または経口ステロイド薬を長期管理薬として使用していて、次のいずれかに当てはまる場合に「コントロール不良の重症喘息」と定義した。 ・ACQスコア1)が1.5超 ・全身ステロイド投与が連続3日以上必要な喘息の増悪を研究への登録の前年に2回以上経験 ・1秒量(FEV1)が80%未満 また、喘息にはさまざまな病態が関与しており、好酸球性、好中球性、アレルギー性などのフェノタイプが特定されてきた。このうち、喘息の重症化には好酸球が大きく関わると考えられており、海外では重症喘息患者の半数以上が好酸球性喘息であるとの報告もある2)。コントロール不良な重症喘息患者の現状 ACQUIRE-2試験では、解析の対象となった喘息患者のうち12.3%がコントロール不良の重症喘息患者であると特定された。さらに、そのうち75.3%が夜間症状を経験し、27.2%が睡眠障害を経験していることが明らかとなった。コントロール不良な喘息は日常生活に与える影響が大きく、患者QOLが著しく低下する。発作が命にかかわることもあり、コントロール不良の重症喘息患者の死亡リスクは重症喘息患者の8倍とも言われている3-4)。生物学的製剤の可能性 そのような中、生物学的製剤への期待が高まっている。生物学的製剤は、IgG抗体やサイトカインなどの炎症物質に直接的に作用するため、喘息の重症化予防の観点からも効果が期待されている。現在、喘息に使用可能な生物学的製剤はオマリズマブ(抗IgE抗体)、メポリズマブ(抗IL-5抗体)の2剤であるが、それに加えて抗IL-5抗体であるbenralizumabの開発が進んでいる。 benralizumabは、第III相試験であるSIROCCO試験およびCALIMA試験において、コントロール不良の好酸球性重症喘息に対する効果を示した。標準治療にbenralizumab 30mgを追加することで、症状の増悪頻度の有意な低減(benralizumab投与群とプラセボ群とを比較して年間喘息増悪率が最大51%低下)が認められたほか5)、CALIMA試験の日本人患者83例を対象としたサブグループ解析では、benralizumabの56週投与は、プラセボ群と比較して喘息増悪の年間発生率を最大83%低下させた6)。 benralizumabの使用により、経口ステロイド薬減量の可能性が4倍以上高いことも示されており7)、生物学的製剤は重症喘息患者のQOL改善にも効果が期待できる。重症喘息患者のアンメットメディカルニーズを満たす薬剤として、生物学的製剤が希望をもたらす存在となりつつある。■参考1)Juniper EF, et al. The European Respiratory Journal. 1999;14:902-907.2)Schleich F, et al. Respir Med. 2014;108:1723-1732.3)Price D, et al. NPJ Prim Care Respir Med. 2014;12:14009.4)Fernandes AG, et al. J Bras Pneumol. 2014;40:364-372.5)Bleeker ER, et al. Lancet. 2016;388:2115-2127.6)FitzGerald JM, et al. Lancet. 2016;388:2128-2141.7)Nair P, et al. N Engl J Med. 2017;376:2448-2458.

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心臓サルコイドーシスの診断と予後の評価、心臓MRIは有意義か?

 心臓サルコイドーシスは健康状態を悪化させ、死にもつながる疾患である。心臓に関連した症状がある患者の評価において、心臓MRIは重要な診断ツールであるが、これまでに使われてきたテストに加えてMRIを行うことが、心臓サルコイドーシスの診断に有用であるかは不明である。Vasileios Kouranos氏らによる本研究の目的は、心臓サルコイドーシスにおけるさまざまな検査の診断的価値を評価するとともに、心臓MRIの役割を示し、リスクが高い患者を特定することである。Journal of American College of Cardiology誌12月号に掲載。サルコイドーシス患者321例の検査に心臓MRIを加え、予後をフォロー 本研究では、生検でサルコイドーシスと診断された患者321例に対し、一般的な検査に加えて心臓MRIとガドリニウム遅延造影を行い、1次エンドポイント(全死亡率、持続性心室頻拍エピソード、心不全による入院)と2次エンドポイント(非持続性心室頻拍エピソード)を同定しながらフォローアップした。心臓MRIは心臓エコーが正常な患者でも有用 米国心臓不整脈学会(Heart Rhythm Society)のコンセンサス診断基準に基づき、29.9%が心臓サルコイドーシスと診断された。心臓MRIは最も感度が高く、特異的な検査であった(ROC曲線のAUC:0.984)。心臓MRIによって、心臓に関する症状があるか心電図異常を伴う、もしくはその両方を有するが心エコーが正常な44例に加え、無症状でほかの検査も正常だった15例においても心臓サルコイドーシスが確認された。心臓に関する病歴と心電図に心エコーを加えても、最初のスクリーニングにおける感度は変わらなかった(68.8% vs.72.9%)。一方で、高い陽性的中率(83.9%)にもかかわらず、心エコーは感度が低かった(27.1%)。フォローアップ期間中、患者の7.2%で1次エンドポイントが発生し、3.4%で2次エンドポイントが発生した。ガドリニウム遅延造影は1次エンドポイントの独立した予測因子であった(ハザード比[HR]:5.68、95%CI:1.74~18.49、p=0.004)。ガドリニウム遅延造影、年齢、ベースラインで非持続性心室頻拍を有していることが、すべてのイベントに対する独立した予測因子であった。心臓に関連した症状があるか心電図異常がある、またはその両方を有する場合、心臓MRIは診断の正確性を高め、独立して1次エンドポイントを予測できた(HR:12.71、95%CI:1.48~109.35、p=0.021)。心臓MRIが心臓サルコイドーシスの診断と予後の評価に最も有用 一般サルコイドーシス患者に対する検査の中で、心臓MRIが心臓サルコイドーシスの診断と予後の評価に最も有用であった。心エコーはスクリーニングテストとしての診断的価値に限界がある。心エコーにおける異常は陽性的中率が高いが、確定診断には心臓MRIが必要なケースがあると考えられる。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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初の「サルコペニア診療ガイドライン」発刊

 本邦初となる「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」が2017年12月25日に発刊されたことを受け、2018年1月10日、都内でプレスセミナー(日本サルコペニア・フレイル学会主催)が開催された。セミナーでは本ガイドラインの作成委員長を務めた荒井 秀典氏(国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター長)が登壇し、サルコペニア診療ガイドライン作成の背景と、その概要について解説した。サルコペニア診療ガイドラインはCQ形式で定義・診断から治療まで サルコペニアは、2016年10月に国際疾病分類第10版(ICD-10)のコード(M62.84)を取得し、独立した疾患として国際的に認められた。転倒・骨折につながるなど高齢者の日常生活動作(ADL)低下のリスク因子となるほか、併存疾患の予後にも影響を及ぼすが、早期介入により維持・改善が可能な場合もあることが明らかになっている。しかし、現在のところ本邦の傷病分類には含まれておらず、国際的にも診断・治療の標準となるガイドラインは存在しない。これらを背景に、“現時点での標準的な診療情報を提供すること”を目的として日本サルコペニア・フレイル学会、日本老年医学会、国立長寿医療研究センターが主体となり、ガイドライン作成が進められた。 サルコペニア診療ガイドラインは全編Clinical Question(CQ)形式で構成され、「サルコペニアの定義・診断」「サルコペニアの疫学」「サルコペニアの予防」「サルコペニアの治療」という4つの章ごとに全体で19のCQを設定。予防・治療に関しては、システマティックレビューによるエビデンスの評価に基づき、「エビデンスレベル」「推奨レベル」が提示されている。サルコペニア診療ガイドラインでは診断基準にAWGSのものを推奨 サルコペニアの診断に関しては、複数の基準が提唱されており、今回のガイドライン作成にあたってのレビューでは7種の診断基準が確認された。サルコペニア診療ガイドラインでは、アジア人を対象として設定されたAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)の診断基準を推奨している。「ただし、診断に使われる骨格筋量の測定/分析装置(DXAあるいはBIA)のある医療機関は限られているため、日本人を対象として開発された“指輪っかテスト”等、誰にでもできるスクリーニング法が有用だ。握力テストと組み合わせることで、診療所などでもリスクの高い患者をスクリーニングすることが可能だろう」と荒井氏は述べた。 サルコペニア診療ガイドラインは今後5年ごとの改訂を目指している。荒井氏は最後に、「長期的なアウトカム等、診断から治療まで全体としてまだまだエビデンスが不足している。より簡便・正確な診断法、薬物療法を含む新たな治療法も今後開発されていくと思われ、5年後を目途にエビデンスを蓄積していきたい」とまとめた。

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VATS後の肺合併症の長期的影響

 肺がんは、中国におけるがん死亡の主要な原因であるが、同国における肺葉切除術後の肺合併症(pulmonary complicaions、以下PC)の発生率は15~37%にのぼる。さらに、PCが肺がん患者の長期生存に及ぼす影響の研究は少ない。中国Peking University Hospitalでは、術後NSCLC患者のPC発症、重症肺合併症(major pulmonary complicaions、以下MPC)の長期的影響などの特定を試みた。Journal of Thoracic Disease誌2017年12月号の掲載。 Peking University People’s Hospitalで2007年1月~2015年12月に胸腔鏡補助下手術(video-assisted thoracic surgery、VATS)を受けたNSCLC患者コホートのPCを後ろ向きに分析した。・対象患者:術前StageI~IIのNSCLC 828例(年齢18歳以上、ECOG PS0~1、術前補助化学療法施行患者・放射線療法患者などは除外)・評価項目: Kaplan-Meier法を用いたPCの長期予後への影響の解析。多変量ロジスティック回帰分析を用いたMPCの危険因子の解析。 主な結果は以下のとおり。・828例中139例(16.8%)でPCを発症、そのうち66例(8%)がMPC(air leakの遷延、胸腔穿刺を要する胸水貯留、重症肺炎など)であった。・PC発症患者は非発症者に比べ、ドレナージ期間および入院期間が長く(ドレナージ期間:9日対5日、p<0.001、入院期間:12日対6日、p<0.001)、周術期死亡率高かった(4.3%対0.4%、p=0.001)。・MPC発症患者の無病生存期間(DFS)は非発症者に比べて短く、3年DFS率は68.2%対 78.7%、5年DFS率は44.7%対 70.3%であった(p=0.001)。・MPC発症患者の全生存期間(OS)は非発症者に比べて短く、3年OS率は81.8%対88.6%、5年OS率は66.6%対80.9%であった(p=0.023)。・MPCは肺がん患者の独立した予後因子であった。・MPCの独立危険因子は年齢(HR:1.05、p=0.007)、男性(HR:3.33、p=0.001)、およびASA(アメリカ麻酔学会)グレード(ASA2[HR:4.29、p=0.001]、ASA3[HR:6.84、p=0.002])であった。■参考Shaodong Wang, et a;. J Thorac Dis. 2017 Dec.

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卵の食べ過ぎ、がん死亡率と関連~日本人女性

 NIPPON DATA80のデータ(14年間追跡)では、日本人女性において、卵の摂取量が年齢調整後の血清総コレステロール(aTCH)および全死亡と関連し、男性では関連しなかったことが報告されている。今回、これらの関連について、別の日本人女性のコホート(NIPPON DATA90)で再評価した結果、卵の摂取量とがん死亡・全死亡との関連が示された。この結果から、卵の摂取量を減らすことが、少なくとも日本人女性にとっていくつかの明確な健康ベネフィットとなる可能性が示唆された。European journal of clinical nutrition誌オンライン版2017年12月29日号に掲載。※NIPPON DATA:国が実施した全国調査である循環器疾患基礎調査対象者の長期追跡研究(コホート研究)で、1980年循環器疾患基礎調査の追跡研究がNIPPON DATA80、1990年循環器疾患基礎調査の追跡研究がNIPPON DATA90卵週1~2個群のがん死亡は卵1日1個群よりも有意に低かった NIPPON DATA90研究グループでは、卵の摂取量とaTCH、原因別および全死亡との関連を、NIPPON DATA90データを用いて分析した。栄養調査は1990年のベースライン時に食物摂取頻度調査および秤量法食事記録を用いて実施された。脳卒中・心筋梗塞の既往のない30歳以上の女性4,686人(平均年齢52.8歳)を15年間追跡した。 卵の摂取量と死亡原因の関連を分析した主な結果は以下のとおり。・参加者を卵の摂取量で5群(週1個未満、週1~2個、2日に1個、1日1個、1日2個以上)に分け、それぞれ203人、1,462人、1,594人、1,387人、40人であった。・卵の摂取量はaTCHに関連していなかった(p=0.886)。・追跡期間中、心血管疾患死亡183例、がん死亡210例、全死亡599例が報告された。・背景因子を調整したCox分析で、卵の摂取量は全死亡とがん死亡に直接関連していた(1日1個群に対する1日2個以上群のハザード比:全死亡では2.05[95%CI:1.20~3.52]、がん死亡では3.20[95%CI:1.51~6.76])。・週1~2個群のがん死亡は1日1個群よりも有意に低かった(ハザード比:0.68、95%CI:0.47~0.97)。・卵の摂取量は心血管疾患死亡と関連していなかった。

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高齢者のCaやビタミンD補給、骨折を予防せず/JAMA

 自宅で生活する高齢者について、カルシウム、ビタミンD、またはその両方を含むサプリメントの使用は、プラセボや無治療と比較して骨折リスクの低下と関連しないことが、中国・天津病院のJia-Guo Zhao氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果で明らかにされた。骨粗鬆症関連の骨折による社会的および経済的負荷が世界的に増加しており、骨折を予防することは公衆衛生上の大きな目標であるが、カルシウム、ビタミンDまたはそれらの併用と、高齢者における骨折の発生との関連性については、これまで一貫した結果が得られていなかった。著者は、「施設外で暮らす一般地域住民である高齢者に対し、こうしたサプリメントの定期的な使用は支持されない」と結論付けている。JAMA誌2017年12月26日号掲載の報告。カルシウム/ビタミンDとプラセボ/無治療を比較した無作為化試験についてメタ解析 研究グループは、PubMed、Cochrane Library、Embaseを用い、「カルシウム」「ビタミンD」「骨折」のキーワードで2016年12月24日までに発表された論文を系統的に検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 組み込まれた研究は、50歳以上の地域在住高齢者を対象とした、カルシウム・ビタミンD・カルシウム+ビタミンD併用サプリメントとプラセボまたは無治療とで骨折の発生を比較した無作為化臨床試験。なお、新たに公表された無作為化試験の追加検索を、2012年7月16日~2017年7月16日の期間で実施した。 2人の独立した研究者がデータを抽出し、研究の質を評価した。メタ解析では、ランダム効果モデルを用いてリスク比(RR)、絶対リスク差(ARD)、95%信頼区間(CI)を算出した。 主要評価項目は股関節骨折で、副次評価項目は非脊椎骨折、脊椎骨折および全骨折であった。カルシウム、ビタミンD、またはその併用は、骨折リスクと関連なし 33件の無作為化試験(計5万1,145例)が、基準を満たし組み入れられた。プラセボ/無治療と比較し、カルシウム/ビタミンD使用と股関節骨折リスクとの有意な関連は認められなかった。カルシウム使用群のRR:1.53(95%CI:0.97~2.42)、ARD:0.01(95%CI:0.00~0.01)、ビタミンD使用群のRR:1.21(95%CI:0.99~1.47)、ARD:0.00(95%CI:-0.00~0.01)。 同様に、カルシウム+ビタミンD併用群も股関節骨折リスクと関連していなかった(RR:1.09[95%CI:0.85~1.39]、ARD:0.00[95%CI:-0.00~0.00])。また、カルシウム、ビタミンD、またはカルシウム+ビタミンD併用は、非脊椎骨折、脊椎骨折または全骨折の発生とも有意な関連は確認されなかった。 サブグループ解析の結果、これらの結果は、カルシウム/ビタミンDの用量、性別、骨折歴、食事からのカルシウム摂取量、ベースライン時の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度にかかわらず一貫していることが示された。

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カナキヌマブ投与によるCRP低下と心血管イベントの関連:CANTOS無作為化比較試験の2次解析(解説:今井 靖 氏)-796

 カナキヌマブは、インターロイキン-1β(IL1β)に対するモノクローナル抗体であるが、CANTOS試験(Canakinumab Anti-Inflammatory Thrombosis Outcomes Study)はこのカナキヌマブ(3用量[50mg、150mg、300mg])およびプラセボを割り付け3ヵ月に1回皮下注射を行う無作為化比較対照試験で、心筋梗塞の既往がある炎症性アテローム性動脈硬化症患者に、標準治療(脂質低下治療を含む)に加えて追加投与がなされた。その結果として、主要心血管イベント(MACE[Major Adverse Cardiovascular Event]:心血管死、非致死性心筋梗塞および非致死性脳卒中からなる複合エンドポイント)の発現リスクがプラセボ群に比べ有意に15%低下することが示され(150mg、300mg投与群で有効性が証明された)、昨年秋に大いに話題となった。またそのような心血管イベント抑制のみならず、事前に規定された盲検化での悪性腫瘍に関する安全性評価において、カナキヌマブ投与患者ではプラセボ群に比較し肺がんによる死亡率を77%、発症率を67%低下させたと報告されており、炎症低下抑制薬が動脈硬化性疾患、がん治療に導入される可能性・将来性を示した画期的な研究といえる。 今回はこのCANTOS試験の2次解析であるが、どのような患者群が治療に最も奏効するのか、また炎症マーカーである高感度CRPの低下が各々の患者の臨床効果と相関するのかを明らかにするために、事前に規定されていた研究を報告するものである。著者らは、カナキヌマブの主要心血管イベント、心血管死亡、全死亡率に対する効果について治療時における高感度CRPに基づいて評価した。また、到達した高感度CRP値に関連する背景因子を補正するために多変量解析モデルを用い、残存する交絡因子の大きさを確認するために多変量感受性解析を行った。追跡期間のメディアンは3.7年であった。患者の基礎背景に大きな相違は認められなかった。しかしながらカナキヌマブに割り付けられ、高感度CRPが2mg/L未満に到達した患者では主要心血管イベントが25%低下した(多変量解析における補正ハザード比=0.75、95%信頼区間:0.66~0.85、p<0.0001)。しかし、高感度CRPが2mg/L以上であった症例では明らかな有効性は示されなかった。同様に高感度CRPが2mg/L未満に到達した患者においては心血管死亡 (補正ハザード比=0.69、95%信頼区間:0.56~0.85、p=0.0004) 、全死亡 (補正ハザード比=0.69、0.58~0.81、p<0.0001)と低下し、両者とも31%のリスク比低下が得られているが、高感度CRPが2mg/L以上であるものでは効果が認められなかった。同様に、用量、交互作用等も考慮に入れた解析において、予定外の冠動脈血行再建を要する不安定狭心症による入院のような事前に規定されていた副次エンドポイント、高感度CRPのメディアン、高感度CRPの50%以上の低下(半減)、高感度CRPのメディアン%の低下においても臨床的有意差が確認された。 この研究から、カナキヌマブの単回投与による高感度CRPの低下度は、繰り返す治療から最大の効果が最も得られる患者を検出する、最もシンプルな方法といえる。また、カナキヌマブにより“炎症が低く抑えられれば抑えられるほどより良い”ということも示された点で意義深い。

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韓国人うつ病患者における3種類の抗うつ薬の6週間ランダム化比較試験

 韓国のうつ病患者におけるエスシタロプラム、パロキセチン、ベンラファキシンの有効性、安全性を比較するため、韓国・カトリック大学校のYoung Sup Woo氏らが、検討を行った。Clinical psychopharmacology and neuroscience誌2017年11月30日号の報告。 韓国人うつ病患者449例を対象として、エスシタロプラム、パロキセチン、ベンラファキシン治療にランダムに割り付けた、6週間のランダム化単盲検実薬対照試験を実施した。 主な結果は以下のとおり。・6週間のMADRS(モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度)総スコアの平均差を比較すると、パロキセチンは、エスシタロプラムよりも有意に優れていた(-6.4±0.4 vs.-3.7±0.5)。・6週間のHDRS(ハミルトンうつ病評価尺度)総スコアの平均差を比較すると、パロキセチンは、エスシタロプラムよりも有意に優れていた(-5.4±0.4 vs.-3.1±0.4)。・ベンラファキシンのMADRS総スコア(-5.4±0.4)は、エスシタロプラムよりも有意に低かった。・ベースライン変数で調整した際、パロキセチン群のMADRSおよびHDRSスコアによる治療反応は、エスシタロプラム群よりも有意に大きかった(MADRS[OR:2.43、95%CI:1.42~4.16]、HDRS[OR:2.32、95%CI:1.35~3.97])。・また、パロキセチン群は、ベンラファキシン群との比較においても同様に、有意に大きい治療反応を示した(MADRS[OR:1.94、95%CI:1.17~3.21]、HDRS[OR:1.71、95%CI:1.03~2.83])。・各群の全体的な忍容性は高く、類似していたにもかかわらず、268例(59.7%)が早期に治療を中止していることが、本研究の主要な限界である。 著者らは「本研究の治療完了率が低く一般化可能性は制限されるものの、韓国のうつ病患者において、パロキセチンがエスシタロプラムよりも優れている可能性があることが示唆された。明確な結論を導くためには、さらなる研究が行われるべきである」としている。■関連記事うつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は早期改善が最も期待できる抗うつ薬はたった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

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糖尿病リスクに人種間格差はあるか?/JAMA

 米国において中年期男女の糖尿病リスクは、黒人のほうが白人に比べ有意に高いが、青年期の体格指数や本人・親の教育レベルといった修正可能なリスク因子で補正後は、人種間のリスク格差は認められなくなることが示された。米国・ノースウェスタン大学のMichael P. Bancks氏らが、1985~86年の期間から米国で行われている冠動脈疾患リスクに関する観察研究「CARDIA」(Coronary Artery Risk Development in Young Adults Study)の参加者4,251例のデータを解析し明らかにしたもので、JAMA誌2017年12月26日号で発表した。ベースライン時に糖尿病を有さない18~30歳を対象に追跡 研究グループは、CARDIA試験データを2015~16年の期間まで追跡し、2型糖尿病リスクの人種間格差と、青年期の修正可能リスク因子の関連について検証した。被験者はベースライン時(1985~86年)に糖尿病を有していない18~30歳の4,251例だった。 性別層別化・多変量補正Cox比例ハザードモデルを用いて、糖尿病リスクを解析した。 自己申告に基づく人種、空腹時血糖やBMIなどの生物学的要因、人種差別や貧困といった地域的要因、うつ症状などの心理学的要因、本人や親の教育レベル、現在の職業といった社会経済学的要因、習慣的アルコール摂取や喫煙といった行動学的要因について、糖尿病リスクへの影響を検証した。黒人被験者と白人被験者を比較するため、β係数(対数でハザード比[HR]を算出)の%低下を算出し評価した。生物学的要因など補正前の糖尿病リスク、黒人女性は白人女性の約2.9倍 被験者のベースライン時の平均年齢は25歳(標準偏差:3.6)、黒人は49%(2,066例)、女性は54%(2,304例)だった。平均追跡期間である24.5年の間に、糖尿病を発症したのは504例だった。 性別層別化・多変量補正Cox比例ハザードモデルで解析の結果、年齢および試験センターを補正後、黒人の女性・男性は、それぞれ白人の女性・男性に比べ、糖尿病発症リスクが高かった(黒人女性の白人女性に対するハザード比[HR]:2.86[95%信頼区間[CI]:2.19~3.72]、リスク差:89件/1,000例[95%CI:61~117]/黒人男性の白人男性に対するHR:1.67[95%CI:1.28~2.17]、リスク差:47件/1,000例[95%CI:15~78])。なかでも生物学的要因が、同リスクの人種格差の大きな要因だった。女性における黒人と白人のβ係数の%低下値は112%、男性は同86%だった。 生物学的要因、地域的要因、心理学的要因、社会経済学的要因、行動学的要因で補正後、中年期の糖尿病リスクには黒人・白人による差は認められなかった(黒人女性の白人女性に対するHR:0.79[95%CI:0.55~1.14]/同男性のHR:0.92[95%CI:0.62~1.38])。

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ヒドロクロロチアジドの使用、非黒色腫皮膚がんと関連

 ヒドロクロロチアジドは、米国および西欧で最も使用頻度の高い利尿・降圧薬の1つであるが、光感作性があり、これまでに口唇がんとの関連が報告されている。デンマーク・南デンマーク大学のSidsel Arnspang氏らの症例対照研究の結果、ヒドロクロロチアジドの累積使用量は、非黒色腫皮膚がん(NMSC)、とくに扁平上皮がん(SCC)リスクの著しい増加と関連していることが明らかとなった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年11月30日掲載の報告。 研究グループは、ヒドロクロロチアジドの使用と、基底細胞がん(BCC)および扁平上皮がんのリスクとの関連を調べる目的で、デンマークがん登録データ(2004~2012年)から非黒色腫皮膚がん患者を特定し、これらの症例を対照と年齢および性別でマッチ(症例1に対し対照20の割合)させるとともに、デンマーク処方登録データ(Danish Prescription Registry)からヒドロクロロチアジドの累積使用量(1995~2012年)のデータを得た。 条件付きロジスティック回帰法で、ヒドロクロロチアジドの使用と関連するBCCおよびSCCのオッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ヒドロクロロチアジドの累積使用量が5万mg以上でのORは、BCCが 1.29(95%信頼区間[CI]:1.23~1.35)、SCCが3.98(95%CI:3.68~4.31)であった。・ヒドロクロロチアジドの使用は、BCCおよびSCCのいずれとも、明らかな用量反応関係が認められ、累積使用量が最も多いカテゴリー(20万mg以上)のORは、BCCが1.54(95%CI:1.38~1.71)、SCCが7.38(95%CI:6.32~8.60)であった。・他の利尿薬および降圧薬の使用と、NMSCとの関連は認められなかった。

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出血と血栓:原病が重ければバランスも難しい(解説:後藤信哉氏)-793

 自分の身の周りにもがん死が多いので、がんは特筆に重要な疾患である。日本人は幸いにして静脈血栓塞栓症が少ない。静脈血栓塞栓症を契機にがんが見つかることも多い。本論文の対象であるCancer Associated Thrombosis (CAT)は日本ではとくに重要である。がん細胞が血栓性の組織因子を産生する場合、がん組織が血管を圧迫して血流うっ滞が起こった場合など、血栓にはがんと直結する理由がある。CATでは、血栓の原因となるがんの因子の除去が第一に重要である。 抗凝固薬により血栓の再発予防はできるかもしれないが、出血は増える。本論文は、抗凝固薬が出血合併症を増やして血栓を減らす治療であることを再確認した。ヘパリンであろうがNOACであろうが、抗凝固とされる以上、効果に応じた副作用は避け難い。原病が重篤であるほど出血と血栓のバランスは難しい。血栓症を予防するが、血小板、凝固系に影響を与えない薬物のような新規の発想が必要である。

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統合失調症の再発リスク評価のための新規自己報告スクリーニングツール

 統合失調症患者の再発評価(RASP:Relapse Assessment for Schizophrenia Patient)は、患者の安定性を評価し、切迫した再発を予測するために、不安と社会的隔離の指標を測定する6つの自己報告スクリーナーとして開発された。米国・UT HealthのDawn Velligan氏らは、RASPの開発と心理測定の特徴について報告した。Clinical schizophrenia & related psychoses誌オンライン版2017年11月22日号の報告。 対象患者166例に対し、RASPおよびPANSSによる評価を、それぞれ3度実施した。チャートデータは、患者81例のサブサンプルで収集した。RASPの心理測定分析には、信頼性、構成の妥当性、項目の併用妥当性のテストを含んだ。RASPの因子は、PANSSのサブスケールと相関していた(変化に対する感受性と基準妥当性[RASPと再発エビデンスとの一致])。 主な結果は以下のとおり。・試験‐再試験信頼度は、項目レベルでは妥当なものであり、アンケートレベルでは強く一致した。・RASPは、全体の測定および2つのサブスケールそれぞれにおいて(不安と社会的隔離の増加)、良好な項目応答曲線および内部一貫性を示した。・RASP総スコアおよびサブスケールは、PANSS総スコアおよび陽性症状、興奮、不安のサブスケールと相関する際、良好な併用妥当性を示した。・RASPは、良好な特異性、陰性症状予測力、許容可能な陽性症状の予測力、感度を有する症例の67%において、再発を正確に予測した。 著者らは「この信頼性と妥当性のデータは、RASPの使用をサポートしており、統合失調症患者の再発リスクの簡単な自己報告評価を追加することが有益な可能性がある。使いやすく、スコアリングが容易で、臨床医なしで実施できる点は、ルーチンでの管理と再発リスク評価を可能とする」としている。■関連記事統合失調症患者の再発リスクを低下させるためには統合失調症の再発予防プログラムを日本人で検証:千葉大学うつ病の再発を予測する3つの残存症状:慶應義塾大

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ヘビに陰部を咬まれた男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第106回

ヘビに陰部を咬まれた男性 いらすとやより使用 芸人がヘビを恐る恐る触るシーンがテレビで放送されることがありますが、相手が毒ヘビだととんでもないことになるので注意しましょう。もちろん、テレビでベタベタと触ってるヘビは、おとなしいヘビが多いはずです。 Hussain T, et al.IMAGES IN CLINICAL MEDICINE. A Viper Bite.N Engl J Med. 2015;373:1059.な、な、な、なんと天下の「New England Journal of Medicine」です。そんなトップジャーナルにほんまでっか論文があるというのか。46歳の農夫が主人公です。彼は、ヘビに陰部を咬まれたということで3時間後に救急部を受診してきました。マンガでこんなシーンがあったように思いますけど、実際に陰部をヘビに咬まれる人っているんだなぁ。東方クサリヘビ(Levantine viper)という種類の毒ヘビのようですが、北米の砂利土に覆われた薮やブドウ畑に生息するそうです。陰部を診察したところ、エライコッチャでした。まさに陰茎の周囲にある包皮にヘビがガブリと咬みついたようで、包皮がパンパンに膨れ上がってロールアップしており、大きな水疱が2つできていました。著作権があるので写真は掲載できませんが、例えるなら、包皮がホバークラフトみたいに膨れ上がっている状態です。超音波検査では、陰茎の血流はどうにか保たれていました。よかった。彼は、多価抗ヘビ毒素血清を投与され、36時間後には陰茎の腫脹はゆるやかに改善していきました。いやぁ、よかったよかった。無事、鎮火ならぬチン火ですね。おそまつ。陰茎の腫脹は退院後も4日ほど続きましたが、治療効果の甲斐もあって次第に元に戻っていき、2週間後にはすっかり元どおりになったそうです。めでたしめでたし。男性の読者の方々は、ヘビを触るときには股間にとびついてこないか警戒してくださいね。

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急性期統合失調症に対するパリペリドンの6週間オープン試験

 スペイン・バルセロナ大学のEduard Parellada氏らは、月1回パリペリドンパルミチン酸エステルで治療を行った急性期統合失調症入院患者の再発について、臨床経過を評価した。International journal of psychiatry in clinical practice誌オンライン版2017年11月21日号の報告。 精神科急性期病棟においてパリペリドンで治療された統合失調症患者に対し、6週間のフォローアップによる多施設オープンラベルプロスペクティブ観察研究を行った。 主な結果は以下のとおり。・登録された280例のうち、パリペリドン単独療法患者は61例、他の抗精神病薬との併用療法患者は219例であった。・臨床全般印象評価尺度-統合失調症(CGI-SCH)平均スコアは、ベースライン時の4.7から最終診察時の3.3に減少した(p<0.0001)。パリペリドン単独療法、併用療法ともに、この変化は臨床的および統計学的に有意であった。・機能の明らかな改善および治療に対する高い患者満足度が認められた。・入院後、パリペリドン治療を開始するまでの時間は、入院期間と相関が認められた(p<0.0001)。パリペリドン治療の早期開始は、入院期間の短縮と関連していた。・有害事象は、患者の7.1%で観察されたが、すべて重篤ではなかった。 著者らは「パリペリドン治療は、単独療法および他の抗精神病薬との併用療法ともに、統合失調症の急性期症状の治療において、効果的かつ良好な忍容性を示す。急性期統合失調症エピソードにおけるパリペリドン治療の早期開始は、入院期間の短縮をもたらす可能性がある」としている。■関連記事措置入院後の統合失調症患者における再入院リスク要因統合失調症の再発率比較、併用療法 vs. 単独療法 vs. LAI急性期統合失調症に対するアリピプラゾール持効性注射剤の効果を解析

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抗血小板薬3剤併用、脳梗塞急性期への有効性は/Lancet

 虚血性脳卒中(脳梗塞)や一過性脳虚血発作(TIA)の急性期患者における抗血小板薬3剤併用療法は、再発とその重症度を減少させることはなく、大出血リスクは有意に増大することを、英国・ノッティンガム大学のPhilip M Bath氏らが、無作為化非盲検第III相優越性試験「TARDIS試験」の結果、報告した。これまでの検討で、脳梗塞急性期の2次予防として抗血小板薬2剤併用療法は単剤療法より優れていることが示唆されている。3剤併用療法はそれらガイドラインで推奨されている抗血小板療法より有効である可能性があったが、結果を踏まえて著者は、「抗血小板薬3剤併用療法は、日常診療で使用されるべきではない」とまとめている。Lancetオンライン版2017年12月20日号掲載の報告。アスピリン+クロピドグレル+ジピリダモール vs.標準療法で検討 TARDIS(Triple Antiplatelets for Reducing Dependency after Ischaemic Stroke)試験は、4ヵ国(デンマーク、ニュージーランド、ジョージア、イギリス)の106施設にて実施された。 対象は、発症後48時間以内の脳梗塞またはTIAの成人患者で、抗血小板薬3剤併用療法群(アスピリン[初日300mg、以降50~150mg/日、通常75mg/日]+クロピドグレル[初日300mg、以降75mg/日]+ジピリダモール[徐放製剤200mgを1日2回、または通常製剤100mgを1日3~4回]と、標準療法群(ガイドラインに基づいた治療:クロピドグレル単剤またはアスピリン+ジピリダモール2剤併用療法、各薬剤の用法用量は3剤併用療法群と同じ)に、コンピュータを用い1対1の割合で無作為に割り付けた。 割り付けは、国およびイベント(脳梗塞、TIA)で層別化するとともに、ベースラインの予後因子(年齢、性別、発症前の機能、収縮期血圧、病型)、薬剤使用歴、無作為化までの時間、脳卒中関連因子、血栓溶解で最小化した。 主要有効性アウトカムは、90日以内の脳卒中(虚血性または出血性、修正Rankin Scale[mRS]で評価)またはTIAの再発とその重症度で、電話による追跡調査によって評価された(評価者盲検化)。解析はintention–to-treatにて行われた。3剤併用療法で再発は減少せず、出血リスクは増加 2009年4月7日~2016年3月18日の期間に、3,096例が無作為化された(3剤併用療法群1,556例、標準療法群1,540例)。 本試験は、データ監視委員会の勧告により早期中止となった。脳卒中/TIAの再発は、3剤併用療法群93例(6%)、標準療法群で105例(7%)に発生し、両群で有意差は認められなかった(補正後共通オッズ比[cOR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.67~1.20、p=0.47)。一方で、3剤併用療法は、より重度の出血と関連していた(補正後cOR:2.54、95%CI:2.05~3.16、p<0.0001)。 なお、著者は研究の限界として、幅広い患者層で検証していること、非盲検下で抗血小板薬が投与されていること、早期中止となり検出力が低いことなどを挙げている。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第51回

第51回:予後を正確に知るとQOLが下がる? …コミュニケーションの話キーワード肺がんメラノーマ動画書き起こしはこちらこんにちは。ダートマス大学腫瘍内科の白井敬祐です。最近うちの科の抄読会で話題になったのはJournal of Clinical Oncology…JCOですね。あのTemelさん、2010年に、New England Journal of Medicineに、Massachusetts General Hospitalで行われたRandomized Trialで、早期から緩和ケアが介入したほうが、QOLが上がるだけではなく予後も2~3ヵ月、StageIVの肺がん患者で伸びたといって、ずいぶん話題になったんですけど…その筆頭著者のJennifer Temel先生が書いた「予後を正確に知った患者さんのほうが、QOLが下がる」という、少し衝撃的な論文がJCOに出ていました。たとえばStageIVの患者さんに僕らはよく、「残念ながら、がんの状況はNon Curable…治癒をゴールした状況ではありません。ただ、がんはコントロールできるかもしれないし、抗がん剤を使うことで症状を防いだり(症状が)出てくるのを遅らせ、QOLを維持することができる可能性が高いので治療しましょう」という説明をするんですけども。そのNon Curable Cancer、「自分のがんが治るわけではない」ということがわかった患者さんのほうが、QOLのスコアは下がると(いうことです)。今まで多くの緩和医療のStudyでは、予後を告知したり、そういう話題に対してしっかりと向き合うことは必ずしもQOLには影響しない、むしろ準備ができて悪いことはない、という感じの論調が多かったんですけども。今回のStudyでは、QOLのスコアが少し低く出たと報告されていました。正確に自分のがんの状態を理解するというのは…「正確に」とは何を意味するのか…本当に難しいですよね。肺がんについて、統計学的な数値をわかることが正確に理解したことになるのか? そうではないですよね。1人の患者さんはそれぞれ違うので、統計学的なことを知っても、ご本人がそれに当てはまるかどうかというのは、まったく別の話なので。そういう意味では問題提起というか、議論のネタになる良い論文だったと思います。興味があれば、読んでいただくと非常に参考になると思います。あと、フェローに「これは絶対必読だからベッドタイムリーディングで読みなさい」ってみんなに勝手に送りつけたんですけれども、ASCOのコミュニケーションガイドラインが出ました。「こういう家族がいたらどのように説明するか」「こういう患者さんがいたら、家族がいたら、どうサポートするのが良いのか」、本当によく書かれています。細かいところまで配慮してrecommendationを入れているのだなと、編集委員の方の苦労が伝わってくるような、非常に良いガイドラインだと個人的には思います。これもチャンスがあれば読んでいただけると非常に良いと思います。僕はフェローに「絶対読め」と言いましたけど。コミュニケーション能力については僕も興味があり、今度ワークショップに参加することになりました。Atul Gawandeというハーバード大学の外科医がいるのですが…皆さんも本を読まれたことあるかもしれないですが、『Being Mortal』という本を出されていて日本語訳にもなっているんですけども…彼は医療の質を上げるようなシンクタンク(?)そういう組織のトップになっていて、コミュニケーションだけではなく、チェックリストを作ることで、いかにComplicationを減らす…『Complications』という題の本を出しているんですね…手術のエラーとか、あるいは医療のミスをどうやったらコントロールできるのか、ということに興味を持たれている外科医です。非常に暖かい人で、何年か前の緩和ケアの学会で、『Being Mortal』が出たときに、本にサインしてもらうために並んだ記憶があります。彼が今やっているプロジェクトの1つ、SICG(Serious Illness Conversation Guide)では、重篤な病状の患者さんあるいは家族と、どのようにコミュニケーションを取るのが良いのかということについて、いろいろと模索をしています。そのSerious Illness Conversation Guideのワークショップに、科を代表して数人の同僚と一緒に参加します。そこでは、どういうシナリオを使って、フェローにあるいはレジデントにコミュニケーションの大切さを伝えるか、ということについて研修を積んでくる予定です。この話もぜひ(次回以降お話し)できたらと思うので、がんばって吸収してきます。Jennifer S. Temel JS, et al.Early Palliative Care for Patients with Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer.N Engl J Med. 2010;363:733-742.Nipp RD, et al. Coping and Prognostic Awareness in Patients With Advanced Cancer.J Clin Oncol.2017 ;35:2551-2557. Gilligan T, et al.Patient-Clinician Communication: American Society of Clinical Oncology Consensus Guideline.J Clin Oncol.2017;35:3618-3632. Atul Gawande著 Being MortalAtul Gawande著 ComplicationAtul Gawande著 The Checklist Manifesto: How To Get Things RightThe Conversation Project

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餅による窒息での院外心停止、三が日に集中

 餅は日本における食品窒息事故の主な原因であるが、餅が原因の窒息による院外心停止(OHCA)の疫学はよくわかっていない。今回、大阪府心肺蘇生効果検証委員会のウツタイン大阪プロジェクトにおける集団ベースの観察研究で、窒息によるOHCAの約10%が餅による窒息が原因であり、その25%が正月三が日に発生していたことが報告された。Journal of epidemiology誌オンライン版2017年10月28日号に掲載。 本研究では、2005~2012年のOHCAデータを大阪府の集団ベースのOHCAレジストリから取得した。救急医療サービス(EMS)要員の到着前に発生した窒息によるOHCAを経験した20歳以上の患者について、窒息の原因(餅、餅以外)により、患者特性、病院前医療、転帰を比較した。主要アウトカムはOHCA後の1ヵ月生存率であった。 主な結果は以下のとおり。・期間中に計4万6,911例の成人OHCAが観察された。・OHCAのうち窒息が原因だったのは7.0%(3,294/46,911)、そのうち餅が原因の窒息は9.5%(314/3,294)、そのうち24.5%(77/314)が正月三が日に発生した。・粗解析による1ヵ月生存率は、餅による窒息では17.2%(54/314)、その他の原因による窒息では13.4%(400/2,980)であった。・すべての原因による窒息の多変量解析では、「低い年齢」「バイスタンダーに目撃された心停止」「早いEMS反応時間」が高い1ヵ月生存率と有意に関連していた。

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1型糖尿病発症予防は見果てぬ夢か?(解説:住谷哲氏)-790

 1922年に初めてインスリンが臨床応用されるまで、1型糖尿病は不治の病であった。その後、1型糖尿病のnatural historyが明らかとなり、現在では1型糖尿病発症に至る3つのstageが提唱されている1)。1型糖尿病発症の高リスクグループの同定が可能となったことで、1型糖尿病発症予防の試験がこれまでにいくつか実施されてきた。大規模試験としては、インスリン投与による1型糖尿病発症予防を検討したDiabetes Prevention Trial-Type 1 Diabetes(DPT-1)2,3)と、ニコチンアミドの有効性を検討したEuropean Nicotinamide Diabetes Intervention Trial(ENDIT)4)があるが、残念ながら両試験において結果はnegativeであった。 DPT-1は独立した2つの試験から構成されている。これまでの研究から、膵島関連自己抗体と静脈内ブドウ糖負荷試験(IVGTT)でのインスリン初期分泌能を組み合わせることで、1型糖尿病患者の近親者における、将来5年間の1型糖尿病発症リスクをほぼ正確に予測することが可能となっている。本試験では、まず膵島細胞自己抗体(ICA)でスクリーニングを行い、ICA陽性患者に対してインスリン自己抗体(IAA)、抗グルタミン酸脱炭酸酵素抗体(GAD-Ab)、抗インスリノーマ関連抗原-2抗体(IA-2-Ab)、さらにIVGTTの結果を総合して各患者の発症リスクを計算した。5年間の発症リスクが>50%の群に対してヒトウルトラレンテインスリンの皮下投与を、26~50%の群に対しては経口ヒトインスリン(7.5mg/日)を投与して、約4年間にわたり1型糖尿病の発症頻度をプラセボと比較した。その結果はすでに述べたように、両試験において1型糖尿病の発症は予防できなかった。しかし経口ヒトインスリン投与試験のサブ解析では、IAA>=80nU/mL患者においては、プラセボ群と比較して相対リスク減少(ハザード比[HR]:0.566、p=0.015)を示唆する結果であった。そこでDPT-1を引き継いだ本試験では、DPT-1とは異なりICAではなくIAAでスクリーニングを行い、その他の膵島関連自己抗体とIVGTTの結果を用いて各患者のリスクを計算し、リスクごとに患者を4群(Primary Stratum、Secondary Stratum 1、Secondary Stratum 2、Secondary Stratum 3)に分けて経口ヒトインスリンの効果を検討した。 その結果は、主要評価項目であるPrimary Stratum(これがDPT-1でのIAA>=80nU/mL患者に相当する)での1型糖尿病発症は、経口インスリン投与により有意な減少を認めなかった(HR=0.87、p=0.21)。一方、Secondary Stratum 1ではプラセボと比較して有意に発症が減少していた(HR=0.45、p=0.006)。しかしこれは多重検定について未調整であり、あくまで仮説生成(hypothesis generating)と見なすべきだろう。 動物実験の結果や、ヒトにおける少数のパイロット試験の結果のみに基づいて臨床判断を決定することは、患者に害を与える可能性がある。さらにこれまでの大規模臨床試験において、サブ解析や副次評価項目で有効性が示唆された場合でも、それを主要評価項目に設定し直して確認することで有効性が否定されたことも少なくない。1型糖尿病発症予防の研究の歴史も、まさにこのことを証明している。したがって、今回の研究で有効性が示唆された患者群を対象として、同様のRCTを実施することが次のステップとなる。残念ながら現時点では1型糖尿病発症予防は見果てぬ夢といえるだろう。

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fremanezumabとerenumabは片頭痛の予防治療に有効(中川原譲二氏)-789

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)受容体を阻害するヒトモノクローナル抗体であるfremanezumabとerenumabは、ともに片頭痛の予防治療薬として研究されているが、両薬剤の第III相試験でその有効性が相次いで報告された。1)慢性片頭痛の予防治療としてのfremanezumab第III相試験fremanezumabを3ヵ月に1回、または毎月投与で有効性を検討 米国・トーマス・ジェファーソン大学のStephen D.Silberstein氏らの研究グループは、2016年3月~2017年1月の間、132施設において、慢性片頭痛患者(持続時間や重症度にかかわらず頭痛が月に15日以上あり、そのうち片頭痛が8日以上ある患者)1,130例を対象として、無作為に以下の3群に割り付けた。(1)fremanezumabを3ヵ月に1回投与(ベースライン時675mg、4、8週時はプラセボを投与、376例:3ヵ月ごと投与群)、(2)毎月投与(ベースライン675mg、4、8週時は225mg投与、379例:月1回投与群)、(3)プラセボ投与(375例)。薬剤、プラセボをそれぞれ皮下注した。 主要エンドポイントは、初回投与後12週時点における月平均頭痛日数のベースラインからの平均変化値とした。評価対象とした頭痛の定義は、連続4時間以上持続しピーク時重症度が中等度以上であった頭痛、または持続時間や重症度にかかわらず急性片頭痛薬(トリプタン系薬やエルゴタミン製剤)を使用した頭痛で、それらを呈した日数をカウントした。月平均頭痛日数が、fremanezumab群の2用量群とも約4割で半減 ベースライン時の被験者の月平均頭痛日数は、3ヵ月ごと投与群が13.2日、月1回投与群が12.8日、プラセボ群が13.3日だった。月平均頭痛日数の最小二乗平均値の減少幅は、3ヵ月ごと投与群4.3±0.3日、月1回投与群4.6±0.3日に対し、プラセボ群は2.5±0.3日であった(いずれもプラセボ群に対してp<0.001)。月平均頭痛日数が50%以上減少した患者の割合は、3ヵ月ごと投与群38%、月1回投与群41%に対し、プラセボ群は18%であった(いずれもプラセボ群に対してp<0.001)。試験薬に関連したものと考えられる肝機能異常は、実薬群でそれぞれ5例(1%)、プラセボ群で3例(<1%)と報告された。 本研究では、慢性片頭痛の予防薬としてのfremanezumabは、この12週試験において、プラセボよりも頭痛の頻度が低かった。副作用としては、薬物に対する注射部位の反応がよくみられ、長期の効果持続性と安全性については、さらなる研究が求められるとした。2)反復性片頭痛に対するerenumab第III相STRIVE試験約1,000例で、erenumab 70mgまたは140mgの有効性と安全性を検討 STRIVE(Study to Evaluate the Efficacy and Safety of Erenumab in Migraine Prevention)試験では、2015年7月~2016年9月5日の期間に、121施設において、18~65歳の反復性片頭痛患者955例を対象として、erenumab 70mg、140mgまたはプラセボの3群に無作為に割り付け(それぞれ317例、319例、319例)、いずれも月1回皮下投与を6ヵ月間行った。 主要エンドポイントは、片頭痛を認めた日数(月平均)のベースラインから投与4~6ヵ月の変化。副次エンドポイントは、片頭痛の月平均日数が50%以上減少した患者の割合、急性期片頭痛治療薬の使用日数のベースラインからの変化、身体機能スコア(Migraine Physical Function Impact Diary[MPFID:0~100点、スコアが高いほど片頭痛が身体機能に与える影響が大きい])における機能障害・日常生活領域のスコアの変化などであった。70mgおよび140mgともに片頭痛の頻度が有意に減少 片頭痛月平均日数は、ベースライン時は全集団において8.3日であったが、投与4~6ヵ月時は、erenumab 70mg群で3.2日減少、同140mg群で3.7日減少したのに対し、プラセボ群では1.8日の減少であった(各用量群ともプラセボ群に対してp<0.001)。片頭痛の月平均日数が50%以上減少した患者の割合は、70mg群43.3%、140mg群50.0%に対し、プラセボ群は26.6%(各用量群ともプラセボ群に対してp<0.001)、また、急性期片頭痛治療薬の使用日数の変化量はそれぞれ1.1日減少、1.6日減少に対し、0.2日減少であった(同p<0.001)。機能障害スコアは、70mg群4.2点、140mg群4.8点の改善であったのに対して、プラセボ群は2.4点の改善であった。同様に日常生活スコアもそれぞれ5.5点、5.9点、および3.3点の改善であった(各用量群ともプラセボ群に対してp<0.001)。有害事象の発現率は、erenumab群とプラセボ群で同程度であった。 本研究では、erenumab 70mgまたは140mgの月1回皮下投与は、反復性片頭痛患者において、6ヵ月以上、片頭痛の頻度、片頭痛の日常生活への影響および急性片頭痛治療薬の使用を有意に減少させた。erenumabの長期的な安全性と効果の持続性に関しては、さらなる研究が必要であるとした。片頭痛のCGRP誘発機序と新たな先制予防治療薬の登場 片頭痛患者では、三叉神経末端が刺激され、そこからカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が分泌されて血管拡張を誘発し、急性片頭痛が起こるとされる(CGRP誘発機序)。このため片頭痛の発症予防治療薬として、CGRP受容体の拮抗薬が有効ではないかとする研究が行われてきた。今回報告された慢性の反復性片頭痛患者を対象としたCGRP受容体を阻害するヒトモノクローナル抗体であるfremanezumabまたはerenumabの第III相臨床試験の結果は、片頭痛のCGRP誘発機序の妥当性とCGRP受容体の拮抗薬の発症予防における有効性を証明するものであり、両薬剤は片頭痛に対する先制予防医療の突破口を開く治療薬として注目される。

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ALK陽性肺がんでのアレクチニブ1次治療、日米欧の3極で承認

 中外製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役会長 CEO:永山 治)は2017年12月21日、F. ホフマン・ラ・ロシュ社(本社:スイスバーゼル市、CEO:セヴリン・シュヴァン)がアレクチニブ(商品名:アレセンサ)に関して、欧州委員会より「成人のALK陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)へのアレクチニブ単剤での一次治療」について承認を取得したことを発表。 今回の追加承認は、第III相国際共同治験ALEX試験の成績に基づいている。ALEX試験は、1次治療におけるアレクチニブとクリゾチニブの有効性および安全性を比較した第III相臨床試験。有効性については、治験参加医師判定で、クリゾチニブ投与群に対しアレクチニブ投与群では、病勢進行または死亡リスクが53%低下した(HR:0.47、95%CI:0.34~0.65、p<0.001)。無増悪生存期間中央値は、独立評価委員会判定で、アレクチニブ投与群では25.7ヵ月(95%CI:19.9~未到達)、クリゾチニブ投与群では10.4ヵ月(95%CI:7.7~14.6)であった また、中枢神経への転移および中枢神経病変の増悪は、クリゾチニブ投与群に対しアレクチニブ投与群で84%低下した(HR:0.16、95%CI:0.10~0.28、p<0.001)。中枢神経系で最初の病勢進行が認められた患者は、アレクチニブ投与群で12%、クリゾチニブ投与群では45%であった。■参考ALEX試験(ClinicalTrials.gov)■関連記事ALK陽性肺がん1次治療におけるアレクチニブの成績発表:ALEX試験/ASCO2017

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